社「ド、ドーラさんまで居たんですか…。まさか昨日、あの後家に泊まったんですか?」
ド「ひまわり殿が寝床まで準備してくれたからの。その、申し訳ないじゃろ?そもそもお前さんが寝てしまうのが悪い。」
社「ぐぬぬ、仕方がないじゃないですか。睡魔には勝てませんって…。」
ひまわりにはまだ理解ができる会話だったが、何も知らない葛葉はこの後の築からされるであろう質問を予測し、それに対する返答を考えていた。
ひ「ねぇ、葛葉くん。」
ひまわりがコソッと葛葉に話しかける。
葛「はい…、なんすか?」
ひ「パパからの質問ってひま達がどんな関係かってことだよね?」
ひまわりは自分の考えを簡単にまとめた結果を葛葉に聞いた。
葛「…へ?ど、どんな関係って、いや、別に何もないじゃないですか…。もしかして女人の部屋で勝手にベットで寝ることって、しかも朝2人で出てくるところ見られたから…。でっでも!」
ひ「ひまは人助けしただけやしなぁ。特に関係性なんてないもんな〜。」
葛葉が思っているほど、ひまわりが発した2人の関係の意味は浅かった。
葛「…まぁ、そうことですよね。はい、その通りだと思います。」
ひ「だよね!ならこれで良いっか。」
ひまわり達のコソ話が終わった頃、築とドーラの話も終わった。
ド「そうだ社築!わしはお前に話があって…!」
社「あっ、話が途切れてたな。すまん、ひまわり。もう一回最初から話してくれ。ドーラさん、これから大事な話があるのでそれが終わり次第聞きます。」
ド「なっ、くぅ…。」
何とも言えなくなったドーラは静かに築の隣の椅子に座った。
ひ「じゃあ、今度こそ話すね。」
社「あぁ。詳しく頼む。」
再び息を整え、ひまわりは葛葉との出会いを2人の関係性を明らかにした上で話した。
社「…なるほどな。『葛葉』くんというのか、じゃあ葛葉くんはなんで街灯の下で倒れていたんだい?」
今度は葛葉に質問が行く。
葛「そうっすね〜…、家から出てきて、宛てもなくて行き倒れた感じですかね。」
葛葉の言ったことはあながち間違ってはいない。ただ世界線が違うだけだった。
社「なんで家出したの?言いにくかったら別に良いんだけど、一応ね。」
葛「家出した理由か…、特に無いんすよね。」
社「え、無いの?親が厳しいとか、身の回りが不十分だったとか、色々。」
葛「欲しいものはなんでも手に入ってたから、別に不十分だとかは無いし。親も共になんでもしてくれたしなぁ…。」
これには築もひまわりも驚いていた。
ひ「え、葛葉くんの家ってお金持ちだったの⁉︎」
葛「お金持ちっていうか、(吸血鬼の中では)名のある一家だったっすね。」
社「そんな裕福な家なのに特に理由も無く出てきたの⁉︎」
葛葉がここ(人間界)に来た理由を思い出す。
葛「あ、えっと思い出しました。家出した理由。家の外の世界を見たくて出てきたんでした。」
社「という事は、家出っていうより一人旅的な感じだね。」
ド「外の世界、か…。」
話に入れないドーラが葛葉の言った言葉に反応する。
社「どうかしましたか、ドーラさん?」
ド「え、あっ思ったことが出てしまっただけじゃ!気にしないで良いぞ…!」
ここでひまわりがドーラに質問した。
ひ「ところでドーラさん。パパに話があるって言ってたけど、なんだったの?」
社「あれまだ話終わってない…。」
ド「あぁ、そのことなんじゃが。社築、お前さんに一つ頼みがあるんじゃ。昨日はうまく逃げられたが、今はもう逃げられんからの。」
社「な、なんでしょうか…。」
築が息を飲む。
ド「昨日も言ったのじゃが、お前さんにここを案内して欲しいんじゃ。」
社「…え、案内?って具体的にどこらへんですか?」
ド「わしはここにきたのは初めてなのじゃよ。だから何一つわからんくてな。最初にあったのがお前さんじゃったから頼んでみたのじゃが…。どうじゃ?」
社「案内って言われても、どこを案内すれば良いのか分かんないし…。それより案内なんてとっても時間かかりますよ?」
ド「そうじゃな…。見ず知らずのドレ、奴に言われても困るだけじゃもんな…。他をあたることにする。」
ドーラは悲しそうな顔をして、席を立った。
ひ「待ってよドーラさん!」
ひまわりがドーラを呼び止める。
ド「ひまわり殿、これ以上は迷惑かけられんよ。」
ひ「迷惑じゃないよ!だってひま、いつもパパと2人だったけど今は4人いるんだよ。ひまからしたらいつもと違くて楽しいんだ!」
それを聞いていた3人が驚く。
ド「楽しい…?勝手に来て、勝手に泊まったのに?」
葛「迷惑じゃないんですか?ひまわりさんの良心で助けられたのにも関わらず、勝手にベットで寝て、勝手に約束破って、今こうして集められて…。俺だったら迷惑でしかないっすよ。」
社「ひまわり…。」
ひ「ひまは、ずっとおんなじ生活でつまんなかったの。朝起きて、お弁当作って、学校行って、夕飯作って、寝る。ずっと変わらない、少しの楽しみはあるけどもっと違うことがしたかったの。それが昨日2人と会って変わったんだよ!葛葉くんを助けて、ドーラさんを泊まらせて。これからどうなるんだろうってワクワクしてるんだ。だから葛葉くんの事も、ドーラさんの事も迷惑だと思わないよ。むしろ居てくれた方がひまは嬉しいんだ‼︎」
ひまわりは自分が思っていることをはっきりと伝えた。
ド「ひまわり、殿…。」
葛「ひまわりさん…。」
ひ「ねぇ、パパ。ひまはパパがとっても頑張ってるのを知ってる。だから無理なお願いをしないようにしてたの。でも今だけで良いから、一回だけで良いからひまのお願い、聞いて欲しいいの。」
3人が築の方を向く。
社「…ひまわりが私に何かをねだった事は未だ無い。そして私自身、常日頃家事を任せっきりのひまわりに何かしてやりたいと思ってたところだ。なんとなく予想はできるが、言ってみてくれ。」
ひまわりが覚悟を決める。
ひ「お願いパパ。しばらくの間、葛葉くんとドーラさんを家に泊めさせてください。」
ド「わしからもお願いする。」
葛「お願いします。」
社は少し下を向いてから息を吐いた。
社「はぁ〜〜、こんなん断れねぇよぉ…。ひまわりも今回は良いけどさ、その頼み方次から禁止な。断れねぇもん。」
ひ「て、ことは…。」
社「良いですよ。でも、そのかわりしっかり規則的なものは付けさせてもらいますからね!」
ド・葛・ひ「やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!ありがとうございます!!」
3人はイスから立って喜んだ。その光景を見た社は少し疲れていたが、どこか嬉しそうだった。
社「じゃあ、一緒に規則を決めようか。各々これはやらせてって事があるなら言ってください。」
ドーラ、葛葉は何かあるか考えた。
ド「わしは、1日一回外に出たいな。家の前で良いから。」
社「何かするんですか?」
ド「まぁ、日課的な?あまり見せられないが…。」
社「え、それって人の目に入るとこでやっても良い事ですか?というか、いかがわしい事じゃ無いですよね?」
ド「そのような事じゃ無い!2〜3分だけで良いし、人がいないときにササっとやるだけじゃ。」
社「はぁ…、分かりました。ドーラさんはそれだけで良いですか?」
ド「うむ!」
ドーラは決まった。あとは葛葉だ。
社「葛葉くんは何かある?」
葛「そうっすねぇー、俺は別に外に出なくても良いっすね。」
社「えっ、良いの?」
葛「あとは特に無いんすよね…。」
社「そっか。分かった。なら次は家での2人の仕事を決めよう。」
ド「仕事か。すまぬがわしはお前さん達の食べ物をまだ知らぬから、料理は出来ぬぞ?」
葛「(仕事とかあるのかよ。いつも豚に任せっきりだったから何ができるんだ俺に⁉︎)」
社「料理はひまわりの仕事なので大丈夫ですよ、ドーラさん。じゃあ、ドーラさんには食後の皿洗いと部屋の掃除をお願いします。で葛葉くんは、洗濯と風呂掃除をお願いするね。」
ド「良かった、それなら出来る。ひまわり殿、詳細をこのあと教えてくれぬか?」
ひ「良いよ〜!」
社「じゃ、ひまわり頼んだ。私は葛葉くんに教えよう。」
葛「お願いしまスゥーー…。」
社「じゃあ、解散ッ‼︎」
2人はそれぞれ築とひまわりに自分の仕事内容を教えてもらった。
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社「…で、これを片付ければおしまい!」
葛「ふぅ、思ってたより大変だ…。」
社「慣れれば簡単だよ。それより仕事内容は大丈夫かい?」
葛「大丈夫っす。把握しました。」
社「よし!じゃ、戻ろうか。」
築は葛葉に洗濯の仕方と干し方を教え、リビングに戻った。
ひ「…それで、あとは流して終わり!」
ド「なるほど、これを捻れば水が出るのか…。すごいな。」
ひ「ドーラさん、蛇口見た事ないの?」
ド「わしが住んでたところは基本水が流れっぱなしじゃったからな。」
ひ「そうだったのかぁ!ところでやることは覚えれた?」
ド「あぁ、完璧じゃ!」
ひ「よっしゃ!」
社「そっちはどうですか?」
ちょうど終わった時に築達が帰ってきた。
ひ「こっちは終わったよ!パパの方は?」
社「こっちも終わったところだよ。」
ひ「次は2人部屋だね!でも、その前にお昼食べよう〜。お腹減ったよぉ…。」
社「そういや、話し合いしたから朝ご飯食べてないんだった。そりゃ腹減るよな。じゃあ昼飯を作るか!」
ひ「今日はパパとひまでお昼作るから、ドーラさんと葛葉くんは座ってて!」
ド「良いのか?」
社「良いですよ!」
ドーラと葛葉は2人が昼食を作っている間何も出来ないため、リビングのテーブルに座って待っていた。何気に2人っきりになるのは初めてだった。
葛「…あれっすね、話すの初っすよね…。」
ド「そ、そうじゃな…。あっ、わしはドーラって言うんじゃ。よろしくな…。」
葛「スゥーーーーーーー…、俺は…、葛葉って言いまスゥーーーね…。よろしくお願いします。」
リビングが気まずい空気になる。特に話すことのない2人は、どうやって時間を潰すか考えていた。その様子を準備をしながら眺めるひまわり。
ひ「ねぇパパ。あの2人、すごく気まずそうだよ。」
社「そうだな…。よし!あっ、そうだ。2人の部屋をこのあと決めたいんですけど、2階にある空き部屋を2人の部屋にしたいんですよね。そこでどっち部屋が良いか、見てきても良いので話し合って決めといて下さい。こっちまだ掛かるんでね。」
築はこれから一緒に暮らす仲間として、距離を縮めさせるために2人に話す機会を与えた。
ひ「パパナイス!」
社「これで少しは話せるだろう。」
これを聞いた2人は、もちろん戸惑っていた。
ド「(2人きりで話せ、というのか⁉︎葛葉殿と話せる自信がないのじゃが…。)」
葛「(この場合って俺が先に決めるのか?それかドーラさんに先に決めさせるのか?究極の二択だな…。でも大体目上の人が先に決めるんだっけ?あれどっちだっけ、ヤバイ⁉︎)」
ド「そ、そうなのか…。な、なら、葛葉殿。見に行きますか…?」
葛「そうっっっっすねーーーーー……………。行きましょーか…。ハイ。」
そう言うと2人はぎこちない距離のまま、二階へと上がっていった。二階の空き部屋というのは、築の部屋の奥にあった。手前に一つと突き当たりに一つだ。とりあえず手前の部屋から見に行くことにした。
ガチャ…
この部屋は窓が大きく、日差しが良く入る部屋だった。
ド「昨日わしが寝た所より広いの。ここなら家から出ずに事が済むかも知れん。」
葛「んー、日差しが入るのか…。キツいかもなぁ。」
次に突き当たりの部屋へ行った。
キィ…
さっきの部屋より窓が小さく、日がほぼ入らない部屋だった。しかも少しボロい。
ド「日が入らないだけでこんなに変わるのか。ここは少し怖いなぁ…。」
葛「日差しがほぼ無い。少しいじれば家の俺の部屋みたいになるかもな。」
2人は部屋を見終わり、リビングへ帰ってきた。
ド「ど、どうじゃった?どっちが良いか葛葉殿は決めれたか?」
葛「スゥーーーーーーー…。そうすねぇ…、まぁ、はい。決めました…。」
2人はせーのでどっちが良いか言った。
ド「手前!」
葛「奥の部屋で。」
特に話し合いもなしに決まってしまった。まさか仕掛けた築も会話がほぼ生まれずに物事が一つ終わるなんて思っていなかった。
築「う、嘘でしょ…?せっかくの仲良しチャンスだったのに…。」
ひ「逆にすごいね…。」
そんな事をしているうちに昼飯ができた。ひまわりは食べる支度をする様に2人に言った。
ひ「じゃあ、葛葉くんはこれとこれを運んで。ドーラさんはこっちお願い!」
葛葉とドーラは言われた通りに食器類を運んだ。この日の昼飯はオムライスだった。
社「よし、みんな揃ったところで!いただきますをしようか。」
ド「待て社築。『いただきます』ってなんのことだ?」
ひ「え、ドーラさん。いただきます知らないの⁉︎」
いただきます、を知らないドーラに驚くひまわり。
社「そういえば外国の方でしたものね。日本では食事の前に『いただきます』と言ってその食べ物に感謝をするんです。命をいただきます、ということでね。」
ひ「こうやって手を合わせて言うんだよ。」
ド「なるほど。食べ物に感謝、か。今まで思ったこともなかったことだ。」
社「葛葉くんは知ってた?」
葛「あ、知ってます。前に、はい…。」
社「そっか。それじゃ仕切り直して。ひまわり、お願い。」
ひ「手を合わせて。」
全「いただきます!」
4人息を合わせて、いただいますをした。社は普通に、ひまわりは元気に、ドーラは見様見真似で、葛葉は小声で。皆様々に。
ド「この料理はなんていうのだ?」
ドーラは初めて見る人間の料理に興味津々だった。今まで肉以外食べたことなかったドーラは鳥の卵を使ったオムライスに興味と食欲がそそられていた。
社「オムライスっていうんですよ。ケチャップで味付けしたチキンライスを、薄く焼いた卵で包む料理なんです。実は、私の得意料理なんですよね…!」
少し自慢げに説明する社を横目に、初めて見るオムライスをじっくり観察するドーラ。そんなこと気にせず食べる葛葉とひまわり。葛葉に至っては初めて見る料理なのに、社の説明を聞きながらもうすでに食べていた。
ひ「黙々と食べてるけど。どう、美味しい?」
葛「築さんも料理上手いっすね。ひまわりさんと同じくらい美味しいです…。」
ひ「やったぁ〜!パパと同じ位だって言われたぁ!じゃ、今度はひまが作ってみるから食べ比べてみてね!」
葛葉は食べながらうなずく。嬉しそうに食べるひまわり。それを見て微笑ましい表情になるドーラと築。そのままみんな昼飯を食べ終えた。
社「ふぅ…、腹一杯だな。」
ひ「ひまも〜。」
ひまわりは、お腹をポンポンと叩くという築と同じポーズをした。
社「みんな食べ終わったところで、今度は『ごちそうさまでした』と言って食事を終わります。」
ド「『いただきます』と『ごちそうさま』か…。大事なことじゃろうから覚えておくか。」
ひ「手を合わせて!」
全「ごちそうさまでした!」
今度はドーラとひまわりが食事の片付けをする。その間、築と葛葉はこれから生活に必要なものを決めようと話始めた。
社「とりあえずベッドと机は用意するとして、ほかに葛葉くんは何か欲しいものはある?」
葛葉は今まで魔界で生活していた中で、必要不可欠な物は何か思い出していた。しかしほぼ毎日寝ていた葛葉にとって必要な物はベッド以外無かった。
葛「そうですね、必要な物…か。あ、出来ればカーテンを分厚いものにして欲しいです…ね。」
一応、葛葉は吸血鬼なのだが日光も十字架もにんにくも平気という吸血鬼の中でも類を見ないつよつよ吸血鬼の一族なのだ。しかし平気とは言っても長時間浴びると、体に不調が出るらしい。主に頭痛、目眩、力が抜けるといった症状だ。
社「分厚いカーテン、ってそれだけで良いの?」
葛「そんなもんで良いですよ。特にやることないですし、家にいるだけだから。」
そこに洗い物を終えたドーラが来た。
社「あっ、ドーラさんは何か欲しいものありますか?」
ドーラは今まで何もない場所で他のドレイクたちと暮らしていたし、まして人間の生活など知らないから何が必要なのかと聞かれても分からないので、店で見て決めると言った。
ひ「ひまもなんか見たいから行く〜。」
社「じゃあ、みんなで行くか!」
葛「…マジか。」
ひ「葛葉くんも行こうよ!」
面倒くさがってるの葛葉も、ひまわりに手を引かれ半ば無理やり連れて行かれることになった。今日の午後は、みんなで買い物へ行くことになった。これから始まる4人の生活の大事な基盤となることだから多少の出費は大目に見よう、と築は思っていた。