勝手にド葛本社   作:めーけろー

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 軽く前回のあらすじを紹介すると、ドーラと葛葉が住むことになった為これから必要になるものを買いに行った。しかし2人にとって必要なものがほとんど無かったので結局、ベットとカーテン類を揃えた。それから生まれて初めて風呂を体験したドーラ(番外編参照)であった。そして今回は初めての日課をこなすのである。


勝手にド葛本社 第四話「再開と信頼」

ひまわりが家を出た後ドーラは朝の洗い物を、葛葉は洗濯を各々始める。

 

ド「えーとこのすぽんじを使って…。」

 

 朝ひまわりが社のと自分の分の弁当、それからドーラ達の昼飯を用意した時に使ったものと、食べ終わった昼飯で出た洗い物をするのがドーラの仕事だ。

 

ド「これは何で作られているんじゃろうか、わしらの使ってたものより硬い素材でできてるんじゃな。」

 

 人間界の皿や鍋に興味が生まれたドーラ。

 

ド「ん?こっちの皿はさっきのより軽いし柔らかい素材でできているのか。あまり力を入れないようにしないとすぐに壊れてしまいそうじゃの。」

 

 陶器とプラスチックの素材の違いに気づき、たった二つの皿を洗うのに10分以上かけているドーラである。一方葛葉というと…。

 

葛「一応社さんには教えてもらったけど、あっちにいた頃は全部任せてたからな。なんか新鮮だな。」

 

 初めてする洗濯に新鮮さを見出していた。

 

ピッ…

 

葛「っと、これで良いんだっけ?んー、考えてもわかんねぇわ。あ、でここに表示されてる時間が終わったら次の作業に移るって言ってたな。」

 

 洗濯が終わるまでやることがない葛葉は、今自分にどのくらいの魔力が残っているか気になった。

 

葛「その前に、ドーラさんは今何してるかみとかないと。」

 

 見られたらすっごくマズいので確認しに行くことにした。

 

ガチャ…

 

葛「…。」

 

 リビングの扉を少しだけ開け、そこからドーラを覗く作戦だ。

 

ド「この黒い取手のついた皿はなんじゃ。デカいな。」

 

葛「フライパンを知らないのかあの人(超小声)。」

 

ド「…?そこに誰かおるのか。」

 

葛「今のが気付かれた⁉︎」

 

 即座に脱衣所まで下がって洗濯し終わった感を出して待つ葛葉。そこにリビングからドーラが出て来た。

 

ド「…?ここら辺から音がしたんじゃけどな。あっ葛葉殿、さっきリビングの辺りに来たかの?」

 

葛「え、今洗濯し終わったんですよ。」

 

ド「そうじゃよな、わしの勘違いのようじゃ。スマンの。」

 

 そう言ってリビングに戻るドーラ。

 

葛「…地獄耳にも程があるだろ。」

 

 ドーラの周りではあまり変なことへはできないと思った葛葉だった。

 

ピー、ピー…

 

葛「あ、ほんとに洗濯終わった。」

 

 カゴに洗い終わった洗濯物を入れ外に干しに行く。

 

ガララ…

 

葛「ズボンはそのまま干して良いと。で、細かいのは物干しハンガー、Tシャツ系はハンガーに、か。」

 

 社の教えを思いしながら干していく。

 

葛「これはこっち、これはこっち、…ん?なんだこれ。」

 

 ズボンやシャツに埋もれてた何かを見つけ、手に取ると。

 

葛「なっ!これ、ひまわりさんのパ…。」

 

 洗濯機に入れた時には気づかなかったひまわりの下着に驚く葛葉。目を背けながらササっと干していく。

 

葛「俺が洗うのに無神経なのかあの人は、クッソ顔が熱い…。」

 

 思わぬことに赤面しながらも淡々と干していった。その頃ドーラはやっと洗い物を終わらせたところだった。

 

ド「ふぅ、これで終わりか。何をしようかの?」

 

 特にやることもなかったので気になっていたテレビを見始めた。

 

ド「こんな薄い板の中で人が動いておるなんて、人間はすごいのを作るな。」

 

 現代の技術に感銘を受けるドーラ。昨日社が使っていたのを真似てリモコンで操作する。

 

ド「おぉ、色んな場面に変わる。面白いな。」

 

 チャンネルを次々に変えて遊び始める。

 

ド「どれか見てみるか、えい。」

 

 適当にリモコンを押し、映った番組を見るようだ。

 

ド「なんじゃこれは。」

 

 偶然にも映ったのはとある恋愛ドラマのクライマックスシーンだった。

 

ド「人間の男女の家族の話か?」

 

 その時、恋人同士でキスをしたシーンがアップで映る。

 

ド「な、何をしてるんじゃ⁉︎変じゃ、見てるだけなのに身体が熱くなってくる…。変な感じじゃ。」

 

 初めてみるキスシーンに心が反応していた。

 

ド「心臓がドクドクしてる。人間の家族はこんなことをするのか…。」

 

 恥ずかしながらも画面に見入っていた。そこに洗濯物を干し終えた葛葉が入って来た。

 

葛「終わりました〜、って何してるんですか?」

 

ド「…い、いや何もしとらんかったぞ。」

 

 いきなり入ってきた葛葉に驚き、すぐにテレビを消したため変なポーズになっていたところだけ葛葉に見られたドーラだった。

 

葛「あれっすね、腹減ってないですか?」

 

ド「え、言われてみれば確かに減ってるかも。」

 

葛「ひまわりさんがなんか飯用意して言ってましたよね。…食べましょうか?」

 

ド「そうじゃな…、食べようか。」

 

 気付けば時刻は12:00を過ぎていた。2人は無言で食べる用意をし始めた。

 

葛「あれっすね、完全に冷めてるんで温めますか。」

 

ド「どうやるんじゃ?」

 

葛「これに入れてボタン押すだけっす。」

 

ド「便利じゃの、冷えてる飯は美味しくないからの。」

 

葛「っす。」

 

チン!

 

ド「これで出来たんか?」

 

葛「取り出して、あっつぁ‼︎」

 

ド「熱いものなら任せてくれ!熱さには慣れておるから大丈夫じゃ。」

 

葛「感謝…。」

 

 用意を終え食べ始める二人。

 

ド「いただきます!」

 

葛「いただきます。」

 

ド「ん〜美味い!知らない料理じゃが、流石ひまわり殿じゃな。」

 

葛「これはチャーハンですね。俺もあんまり食べたことはないっすけど、今までで一番の美味さっす。」

 

ド「ちゃーはん、か。面白いな名前だな!」

 

 それから特に会話も生まれずに食べ続ける二人。何かをしていれば無言でも気にならないらしい。そのまま食べ終わるまで何もなかった。

 

葛「ご馳走様でした。」

 

ド「ごちそうさまでした!」

 

葛「ドーラさんはこの後また洗い物ですか?」

 

ド「そうじゃな、これらを洗って終わりじゃ。」

 

葛「わかりました。俺は自分の部屋にいるんでなんかあったら…、では。」

 

ド「了解じゃ。」

 

 ドーラは再び洗い物を、葛葉は自分の部屋でさっきの続きをし始めた。

 

バタン…

 

葛「ここなら見つからないだろう。よし、やるか。」

 

 残りの魔力を確認するのは簡単だ。身体中の魔力を一箇所に集めて具現化させるだけだ。

 

葛「…ハッ!」

 

 気合を入れると葛葉の右手のひらに青いモヤが現れる。

 

葛「嘘だろ、これしかないのか。使えるのはほとんど無いな。どうやって補充するんだっけ。」

 

 魔力の補充方法を思い出していると、他の大事なことを思い出した。   

 

葛「なんかあったって誰か言ってたよな〜…、あっ豚だ‼︎」

 

 そう、世話係の豚の存在を今のいままですっかり忘れていたのである。

 

葛「そういやここ(人間界)に来て落下した時にはぐれたのか。あいつに聞かねぇとわかんねーのに、ったくめんどくせぇな…。探すしかないか。」

 

 とは言うものの、豚がいまどこにいるかなんて知るはずもない。

 

葛「はぁ〜勿体無いけど使うしかないな、『千里眼』!」

 

 葛葉の片目が光り願った特定の物が見えるようになる特殊能力である。今の魔力で使えるギリギリの力だ。

 

葛「どこだ…、もしかして誰かに捕まって喰われたか?あれは俺のモンだぞ…。あっいたぞ!」

 

 なんとか豚を見つけた。まだ喰われてはいない様だ。

 

葛「結構遠いな、見失う前に捕まえに行くか。」

 

 飛ぼうと思ったが万が一のために魔力を残しとこうと思い、歩いて探しに行くことにした。リビングにいるドーラに一言言ってから出ていく。

 

葛「ドーラさん俺ちょっと出かけてきます!」

 

ド「えっ、あ、わかったぞ!」

 

バタンッ!

 

 玄関が勢いよく閉まった。

 

ド「…何を急いどるんじゃろう?」

 

 家を出て、さっきの豚の反応があった方へ走る。しかしずっと寝て過ごしていた葛葉にとって体を動かしたのが久しぶりですぐに疲れていた。

 

葛「はぁ、はぁ…、結構走ったと思ってたけど、全然じゃねーか。こんなに衰えてるとは、今までの怠惰の証か。」

 

 過去のぐうたらな自分を反省しまがら少しは体を動かそうと思った葛葉だった。

 

葛「えーと、さっき豚の反応があったのは…、こっちか!」

 

 大通りに出たかと思ったらその横の薄暗い路地の方から豚の反応がする。

 

葛「なんか気味が悪いな、こんなとこで何してんだアイツ…。」

 

 その時、葛葉の足元で何かが動いた。

 

葛「あはァァァァァァァァァァ!!!!????」

 

 足元の謎の感覚に驚き、軽く後ろに2mほど飛び跳ねた。

 

葛「な、なんだっ!…あ?なんだよ、ただの野良猫かよ…。ったく驚かせんなや!」

 

 よく見ればただの黒猫。

 

葛「また随分とのぺっとした猫だな。なんか普通の猫とは違う…って今はそれどころじゃないんだった!」

 

 その黒猫をまたぎ、路地裏の先へ行く。しかしその先は行き止まりだった。

 

葛「嘘だろ、確かにこの先なのに…!」

 

サワッ…

 

葛「ヒヤァッ!!ってまたお前かよ!」

 

 行き止まりに立ち尽くしていると、再び足元に触れた黒猫に驚いた。

 

葛「なんなんだよ、俺は食いもん持ってないぞ。」

 

猫「ネ〜ゴ…。」

 

 その黒猫は薄く開いた黄色い目で葛葉を見て鳴き、そこに積み重なっているゴミを飛び乗って行く。

 

葛「…そうやって行けば良いのか?」

 

猫「ナ〜ゴ…。」

 

 半信半疑ながらも何かを黒猫から感じ、その跡を追う葛葉。

 

葛「なるほどこうやってこの壁を乗り越えるんだな。てことはこの先に豚がいんのか!」

 

 行き止まりかと思っていたその壁を越えた先に小さな広場があった。

 

葛「おい!どこにいんだ豚!」

 

 葛葉が呼ぶと正面から声が。

 

豚「ぁ、ラ…ラグーザ様…。」

 

葛「…!そこにいんのか豚!」

 

 豚の声の方に進もうとして広場に出た途端…。

 

バサッ!

 

葛「ぬあ!!」

 

 待ち伏せていた野良猫たちに押し飛ばされた。

 

葛「なんだこの量…⁉︎20〜30匹はいるぞ!」

 

豚「ここは、この野良猫たちの、集まり場所なんです…!」

 

葛「クソッ!にしても数が多すぎる…、どうしたら、ん?」

 

 どうやって豚を助けるか考えていると、また足元に何かが触れた。

 

猫「ニャ〜ゴ…。」

 

葛「さっきの黒猫、すまんが今は遊んでられねぇんだ!」

 

 その黒猫を端へ寄せようとした時、黒猫が葛葉の方を踏み台に広場の真ん中まで跳んだ。

 

猫「…。」

 

葛「おい、こっちに来い!」

 

 すると黒猫はまた薄く開いた目で葛葉を見て、今度は何も言わず振り返った。

 

猫「…ナ〜ゴ、ニャ。」

 

 黒猫が静まり返った広場の真ん中でそう鳴くと、周りの野良猫は静かに広場から逃げていった。

 

葛「え、お前ここの長かなんかか?」

 

猫「フニャ…。」

 

 黒猫はそう鳴くと葛葉の足元に触れ広場から出て行った。

 

葛「なんだったんだ、あの猫。ハッ!おい豚、大丈夫か?」

 

豚「はい、ラグーザ様…。よくご無事で。」

 

 豚の声はすごく弱っていた。

 

葛「お前、あの時から何か食べたのか?」

 

豚「落下の途中でラグーザ様と離れてしまった後、近くにいるだろうと思い探したのですがここは人間界なので人に見つかるとまずいので路地裏に隠れたんですよ。それがここで…、今までここで捕らわれてました。」

 

葛「そうだったのか、それとお前に言わなきゃいけない事があるんだ。」

 

 葛葉は豚に今の自分の状況を伝えた。

 

豚「…ラグーザ様が、人間の家に住ませてもらっている?」

 

葛「俺を助けてくれた人に恩を返さなきゃなんないだろ?それに人間界に他に住むところなんてないし。」

 

豚「ですが…、万が一、ラグーザ様が吸血鬼だとバレたらどうするんですか?」

 

葛「バレないようにするしかない。」

 

豚「そんな、簡単に言いますけど!…うっ。」

 

葛「おい大丈夫か⁉︎」

 

ギュルルルルル…

 

豚「すいません、何も食べてないんです。」

 

葛「はぁ〜、心配させんなや!」

 

 葛葉は豚を服の中に隠し、路地裏をあとにして家へ戻った。

 

ガチャ…

 

葛「…ただいまです。」

 

ド「お、葛葉殿帰ったか。」

 

葛「また上にいますね。」

 

ド「はーい。」

 

 そそくさと自分の部屋に戻る。

 

バタン…

 

葛「はぁーー、疲れた。」

 

豚「ぷはっ、本当に家に住んでるんですね。」

 

葛「んだよ、信じてなかったのかお前。」

 

豚「そりゃいつもぐうたら寝てるラグーザ様が人間界でうまくやってけると思ってませんでしたからね。」

 

葛「あーなんか急に肉食いたくなってきたなー。」

 

豚「すいません嘘ですって!そんな肉に飢えたマンティコアみたいな目で見ないでください!」

 

葛「まぁ良いや、聞きたいことがあるからなんか食える物探してくる。」

 

 キッチンに向かい何か食べれそうなものを探しているとドーラが来た。

 

ド「何しとるんじゃ?」

 

葛「え、あっいや、別に何もしてないですよ?」

 

ド「そうか、それともうそろそろ洗濯物乾いたと思うんじゃが…。」

 

葛「あっ忘れてた。」

 

 自分の仕事をすっかり忘れていた。

 

ド「ひまわり殿はあの時計ってのに書いてある3の時に帰ってくるって言ってたぞ。」

 

葛「そうなんすね…。(あと2時間後には帰ってくるのか。早めにやらないとな。)」

 

 手当たり次第にキッチンを探したが特に食べれるものがどこにしまってあるのか分からず、結局何も見つからなかった。仕方がないので洗濯物だけ取り込んでおくことにした。

 

葛「ちゃんと乾くものなんだな。」

 

 初めて洗濯を一から自分で行った葛葉にとってそれは喜びなのかもしれない。

 

豚「ラグーザ様…?」

 

 頭の上から豚の声が聞こえた。

 

葛「ぶ、豚⁉︎お前何してんだよ!バレたらヤバいってお前が言ってただろうが!」

 

 上を向いていっては見たものの、そこには豚の姿はなかった。

 

豚「あ、もしかしてこの能力のこと忘れてました?」

 

葛「お前どこにいんだよ。」

 

豚「『ビジブル』」

 

 豚がそう言うと葛葉の足元にフッと現れた。

 

葛「お前それ、魔術か!」

 

豚「そうです。ラグーザ様が以前に父上様に覚えろと言われ渡されていた本で学んだのですよ。もしもの時に使えるって兄上様も言ってたの覚えてませんよね。」

 

葛「あ〜、なんか言ってたような気がしてきたわ。てかそれ使えるんだったらなんで野良猫なんかに捕まってんだよ。」

 

豚「それがまだ未熟だったため気配が残ってたらしいです。」

 

葛「なるほどね、でもそれ使えばお前もここで過ごせるじゃん。」

 

豚「そうなんですが、あまり長時間使えないんですよね。これ結構集中力使うんで長くても30分くらいですね。」

 

葛「俺も使えるのか?」

 

豚「簡単ですよ。消える時は『インビジブル』。現れる時は『ビジブル』って唱えるだけです。」

 

葛「よし、『インビジブル』。」

 

 唱えたが特に体に変化はない。自分じゃ消えてる感がないようだ。

 

葛「なぁこれ消えてんのか?」

 

豚「さすがラグーザ様、魔術特性をお持ちのようで。全く気配を感じません。一度、余計なことを考えて集中を途切らせてみてください。」

 

葛「…、どうだ?」

 

豚「全く感じません、何も変わらないなんて。この術は魔力を詠唱時にしか使用しないので時間は関係ないし、消費もほぼ無いです。」

 

葛「これは使えるな。よし!」

 

 洗濯物を畳んで、早速外へ食べ物を探しにくことにした。

 

豚「ラグーザ様!この魔界で使用できる紙幣をこちらで使えるように変換するのでお待ちを。」

 

葛「お前色々持ってきてたけど、そんなんまで持ってきてたのな。」

 

豚「どう考えても必要でしょう!」

 

葛「どうせお前が持ってくるって思ってたから俺は持ってきてないけどね。」

 

豚「『コンバージョン』。はいこれが人間界で使えるお金です。」

 

葛「おぉ、なんだこれ紙と丸い金属?」

 

豚「それぞれの価値まではわかりませんが、多分この金色の一番でかい丸が高額でしょう。」

 

葛「ならこれ持って行くか。」

 

 お金を握り締め、部屋を出てリビングへ向かう葛葉を止める豚。

 

豚「待ってください!」

 

葛「なんだよ!」

 

豚「せっかく覚えた魔術、使わないんですか?」

 

葛「あ、そっか。なんだっけ『インビジブル』だっけ。」

 

豚「あ待ってください!見えなくなりますから!『インビジブル』。」

 

葛「なんだ同じ術使えばうっすらお互いのこと見えるのか。」

 

 こうして家からバレずに抜け出す方法が見つかった葛葉であった。近くの通りに出て何か食べ物を買えるところを探す。

 

豚「ラグーザ様、あそこに人間界での一般的な便利屋であるコンビニがありますよ!」

 

葛「なんだそれ?行ってみるか。」

 

 とりあえず見つけたコンビニまで行ってみた。

 

葛「何が売ってんだろ。」

 

豚「そうですねぇ、ワタシが知ってる情報だと食べ物から軽い日用品、本、雑誌なども売っているところって聞いたことがあります。」

 

葛「本当に便利屋じゃねーか!早速なんか買うぞ。」

 

豚「お待ちください!ラグーザ様は魔術を切らないとですよ!」

 

葛「そういや忘れてた。『ビジブル』。」

 

 店の影で魔術を解除し、いざ入店する。

 

ウィーーン…

 

店「いらっしゃいませー。」

 

葛「うっ⁉︎…なんだこう言う挨拶かよ。」

 

豚「人間界では挨拶は基本になってますからね。まぁお店での挨拶は返さなくて良いですけど、対人の場合はしっかり答えてあげてくださいよ?」

 

葛「分かってるよ気付かれるから黙ってろ!」

 

豚「ふぎゅっ!」

 

 肩にしがみついて講釈を垂れる豚の額をデコピンして黙らせる。店に入って雑誌コーナを過ぎ、突き当たりにある飲み物コーナの前で立ち止まる。

 

葛「めっちゃ飲み物ある。どれか買おうかな?」

 

豚「…補足いいですか?」

 

葛「んまぁ長く無いならいい。」

 

豚「ラグーザ様の容姿だとこちらから見て左側の酒類の物は買えないのでご注意を。」

 

葛「なんでだ?俺あんま飲まないけど酒飲めるじゃん。」

 

豚「簡単に言いますと人間界では生まれてからどのくらい経ったかを示す年齢というものが大体の物事の基準とされています。それは売買にも適応されておりこの酒類は20歳以上では無いと買えないのです。」

 

葛「お前俺が何歳だと思ってんの?軽く100は超えてんだぞ。」

 

豚「ですけども!ラグーザ様が20歳を超えているという証明ができないんですよ。今のラグーザ様の容姿だとどうしても20歳には見えないんですよ。」

 

葛「見た目で判断されんのかよ…、まぁいっか酒買わねぇし。」

 

豚「他にもありますけど、その時が来た時に言いますね。」

 

 一通り説明し終え、適当に飲み物を買い弁当コーナーへ行く。

 

葛「これ全部こっちの料理か、色々あるな。」

 

豚「こっちの弁当と呼ばれる箱型の入れ物に入った方は結構お腹いっぱいになります。それからそっちにある三角型の包みに入っているのはおにぎりといって、日本の古くから食べられている物です。」

 

葛「俺はさっき食べたからいいけど、お前はどれが食いたい?」

 

 豚はゆっくりとコーナーを見て気になったおにぎりに決めた。

 

豚「これでお願いします!」

 

葛「シーチキン?どんな生き物だよ…。これだけか?」

 

豚「え、もう一ついいんですか⁉︎」

 

葛「まぁお前が持ってきた金だしな…。」

 

豚「じゃ、じゃあこれも!」

 

 豚は嬉しそうにおにぎりをもう一つ頼んだ。

 

葛「これをどこで買うんだ?」

 

豚「その正面のレジというとこです。」

 

 葛葉は恐る恐るレジに近く。

 

店「お待ちのお客様、こちらへどうぞ。」

 

葛「あっはい!」

 

豚「そこに買う物を置いてください。」

 

店「えー、飲み物2本…。」

 

 店員が会計を進めていく。

 

店「…で、合計500円ですね。」

 

豚「ラグーザ様、先程のお金を出してください!」

 

葛「えーと、これか!」

 

チャリーン…

 

店「…。」

 

葛「あれ、違った?」

 

豚「まさか足りない…⁉︎」

 

店「500円ちょうどですね。ありがとうございましたー。」

 

葛「あれ、終わり?」

 

豚「そのようですね。買ったもの持って出ましょうか。」

 

 会計での金銭感覚がわからないまま店を出る。

 

葛「本来の目的達成できたし、いっか。」

 

豚「そうですね!」

 

 そのままコンビニの影へ行き買ったものを食べ始める。

 

葛「…どうだ?」

 

豚「…!お、美味しいですよ!」

 

葛「まじで⁉︎一口くれ!」

 

豚「…どうですか?」

 

葛「…うまいけど、ひまわりさんの作った飯の方がうめぇ。」

 

豚「これより美味しいのですか!あぁワタシも食べたい…。」

 

 買ったものを食べ終え、家へ帰ろうとすると。

 

葛「『インビジブル』。」

 

豚「『インビジブル』。あれ?」

 

 豚の魔力が切れてしまった。

 

葛「お前、魔力切れかけてたのな。」

 

豚「使い過ぎました…。」

 

 しょうがないので葛葉の服の中に隠れて帰ることになった。

 

葛「あれ、こっちだよな。」

 

豚「道覚えてないんですか?」

 

葛「途中までは覚えてんだけど…、あれ〜?」

 

豚「心配ですよ…。」

 

 その後家近くの通りまで戻ったのはいいものの、そこから家とは真逆の方へ行ってしまった。

 

葛「あれ、ここどこだ?」

 

豚「どこに行ってるんですか?」

 

葛「…迷ったかも?」

 

豚「やっぱりこうなると思ったぁ〜!!」

 

葛「落ち着けってまだ何か手掛かりがあるかもって、ん?」

 

 葛葉が道の先を目を凝らして見る。するとそこにはドーラとひまわりが歩いていた。

 

葛「やっべぇ!!こっちだ!」

 

豚「ぷぎゃ⁉︎」

 

 すぐに道の端に隠れた。

 

葛「どうするか…。」

 

豚「ぷはっ!どうしたんですか?」

 

葛「ひまわりさん達があっちから来てた。」

 

豚「ていうことは家はあっちじゃないですか!どんな回り道したんですか!」

 

葛「そんなことより、このままいくとバレる。俺はバレずに家に帰りたいんだ。」

 

豚「インビジブルで姿消せば、あ。ワタシが消えないのか。」

 

葛「その手があったか!」

 

豚「え、何ですかそのキラキラした目は!まさかワタシを置いて行くのですか⁉︎」

 

葛「俺は消えて通り過ぎるからお前は物陰に隠れながら頑張ってついてこい!」

 

豚「そんな無茶ですって!」

 

葛「じゃあな『インビジブル』!」

 

豚「…⁉︎待ってくださいラグーザ様!」

 

 葛葉は豚の声も聞かずに走って行ってしまった。

 

葛「(このまま通りすぎてクリアだ!)」

 

ひ「あれ!葛葉くんじゃん。何してるの?」

 

葛「…え、見えてるの?」

 

 あまりの驚きにその場で固まる葛葉。

 

豚「だから待ってて言ったのに〜!」

 

 自身も魔力が切れかかっていたことを忘れていた葛葉だった。

 

ひ「家にいないと思ったらこんなとこにいたのね。ドーラさんが気づいたらいなくなってたって言ってたから心配してたんだ。」

 

葛「…スゥーーーー、そうっすね、さ、散歩したくなって。すいません何も言わずに出て行ってしまって…。」

 

ひ「なんだ、そうだったんだ。でも今度からはちゃんと誰かに行ってから出かけるようにね!」

 

葛「ほんとすいませんでした。」

 

ド「まぁ葛葉殿も反省してるようじゃし。そうじゃ!葛葉殿もこのまま買い物一緒に買い物へ行かんか?」

 

葛「行かせてもらいます。」

 

 反省の意を込めてひまわり達の買い物に付き合うことにした。その葛葉を物陰に隠れながら追い続ける豚。

 

豚「ラグーザ様をどこへ連れて行くんでしょう⁉︎」

_________________________________________

 

 ひまわりはいつも学校帰りに寄っている商店街に来た。

 

ひ「ここでいつも買い物をしてから家に帰るんだ。」

 

ド「たくさん食べ物があるな。これは売ってるんか?」

 

ひ「もちろん!そうだな〜、ドーラさん今日何が食べたい?」

 

ド「えっ、わしはひまわり殿が作ったものならなんでも良いぞ!」

 

ひ「えへへ〜嬉しいな!でもリクエストはない感じ?」

 

ド「そうじゃな、わしはまだここの料理をよく知らんしな。」

 

ひ「そっかぁ、じゃ葛葉くんは何かある?」

 

葛「俺も特には…、あぁ肉系が食べたいですかね。」

 

ひ「お肉、ね。おっけ〜今日の夜ご飯決定!さぁ買いに行こう。」

 

 商店街をぐるぐる周り必要なものを買い揃えて家へ帰る。その3人の後を未だ何をしてるか分からずついて行くしかない豚であった。

 

ひ「葛葉くんはどこ辺まで散歩行ってたの?」

 

葛「ほんと近場までっすね。コンビニあたりまで。」

 

 葛葉の言葉を聞き、何か思い出したドーラ。

 

ド「葛葉殿が言っておるコンビニとやらはあっちの坂上にあるやつか?」

 

 ドーラが方向を指差しながら聞く。

 

葛「そうです。ドーラさんも行ったことあるんですか?」

 

ド「わしが築と出会ったのはあのコンビニじゃったもん。」

 

ひ「えぇ〜!パパと初めて会ったのそこなんだ!」

 

葛「出会いが運命みたいですね。」

 

ド「そうなのか?」

 

葛「そんな事なかなか無いですよ。」

 

ひ「でも葛葉くん。あそこ覚えてる?」

 

 ひまわりが指をさしたところには一本の電柱が立っていた。葛葉が何の事か思い出していると。

 

ピカッ!

 

葛「うわっ!めっちゃ明るい、ってここは俺が気を失う前にいたとこ…?」

 

 ひまわりは葛葉の方に振り返る。

 

ひ「そうだよ!ふふっ、ひまが葛葉くんと初めて会ったとこだよ。」

 

ド「他のものより明るいな…。」

 

葛「俺、この光に誘われたみたいにここに来たんだ。」

 

ド「これも運命というやつかもな…。」

 

 3人は微笑みを浮かべながら家へ帰った。その明るい電柱の光は3人を包み込むように見えた。

 

豚「ラグーザ様、ワタシのことまた忘れてませんか…?」

 

 ここまでずっと物陰に隠れながら後を追ってきていた豚は葛葉に対する不満をどう解消するか悩んでいた。

 

ガチャ…

 

ひ「ただいまぁ。」

 

ド「ただいま。」

 

葛「ただいま。」

 

 買い物に時間がかかってしまいすぐに夕飯の支度をするひまわり。

 

ひ「ひまはこれから急いで夜ご飯の準備するから、葛葉くんはお風呂追い焚きつけてきて!ドーラさんは暇のお手伝いしてくれる?」

 

ド「わしにできることなら手伝うぞ!」

 

葛「うっす…。」

 

 ドーラはひまわりとキッチンへ向かい夕飯の支度をし、葛葉はひまわりに言われたことをするために風呂場へ向かう。すると廊下の窓を叩く音に気づく。

 

コンコン…!

 

葛「なんだ?」

 

 窓の外には疲れ切った豚がいた。

 

豚「…ラグーザ、さま。ワタシのこと忘れてましたよね。はぁはぁ…。」

 

葛「あ、いや、そんなことは、あるかも…。」

 

豚「後でお話があります。先にお部屋に戻ってますね…。」

 

葛「バレないように、な…。」

 

 葛葉に顔を合わせないまま物陰に潜み、二階へと消えて行った。

 

葛「若干ピキってるな、あれ…。」

 

 豚に対して少しだけ罪悪感が生まれたが、終わったことだしという気持ちでその感情は無くなっていった。追い焚きを終えリビンングへ戻るといい匂いがしてきた。

 

ひ「葛葉くんお風呂ありがとね!今こっちで色々作ってるから食べれる準備お願い!」

 

葛「何作ってるんですか?」

 

ひ「ふふ〜まだ内緒!」

 

ド「わしにも教えてくれんのじゃよ。」

 

 何か嬉しそうに料理を進めているひまわり。

 

葛「用意するのは箸だけで良いっすか?」

 

ひ「今日はナイフとフォークも使うから、ドーラさん後ろの棚の真ん中から出してくれる?」

 

ド「ナイフとフォーク?これか?」

 

葛「それっすね。」

 

 人数分を準備しテーブルに運んで並べて行く。

 

ひ「あっ、パパの分はまだ準備しなくていいよドーラさん。」

 

ド「そうなのか?」

 

ひ「パパはいっつも帰ってくるのが遅いからね。」

 

ド「よし、こっちは並べ終わったぞ!」

 

葛「ひまわりさん、この辺の出来たの運びますね。」

 

ひ「うんお願い!」

 

ド「わしも手伝おう!」

 

 ひまわりが作った料理を交互に運んでいく二人。

 

ひ「最後にこれ運んで終わり!」

 

葛「俺運びます。」

 

ド「それじゃあわしは座っておこう。」

 

 葛葉が運び終え、席に座る。

 

ひ「それでは、手を合わせて!」

 

ド・葛・ひ「いただきます!」

 

ド「今日の料理はなんじゃ?」

 

ひ「今日は葛葉くんのリクエストのお肉料理です!鶏肉の照り焼きステーキですね。」

 

葛「ホントに肉料理にしてくれたんですね。」

 

ひ「リクエストされたし、最近肉料理無かったしね。」

 

 短時間で仕上げたものとは思えないほど、綺麗に焼き目がついており焼き加減もちょうど良いものだった。

 

葛「これ、うまいですね…。俺これ好きな料理っす。」

 

ひ「良かった、気に入ってもらえて!」

 

ド「ひまわり殿は本当に料理が上手じゃな。昼に食べたチャーハンも美味かったぞ!」

 

ひ「えへへ〜嬉しいな〜。…今まではね、この時間は一人で食べてたんだ。」

 

ド「築は?」

 

ひ「パパは今日みたいに平日の日はほとんど帰りが9:00以降なの。だから、こうやってパパ以外の人と家で過ごすのが新鮮で楽しいな…。」

 

 少し寂しい表情を浮かべながらひまわりは箸を置く。

 

ひ「でも今はこうしてみんながいるからひまは全然寂しくないんだ!」

 

ド「そうじゃな!わしらがおるよ。」

 

葛「そうですね…。」

 

 わいわい話をして、それぞれ片付けた。

 

ひ「ひま達洗い物するから先に葛葉くんお風呂入っちゃって。」

 

葛「ちょっとやる事あるんで、それ終わらせてから入ります。」

 

ひ「やること?ま、分かったよ。」

 

 葛葉は自分の部屋に行き、静かに鍵を閉めた。

 

葛「…豚、どこだ。出てこい。」

 

 すると葛葉のベットの中からモゾモゾと出てきた。

 

豚「ふぁい、ラグーザ様…。」

 

葛「誰がそこで寝て良いって言った⁉︎」

 

豚「ハッ!しまった、つい気持ち良くて!」

 

葛「飯食ったばっかだけど喰われてぇのかお前は‼︎」

 

豚「困ります!すいません!」

 

 鍵は閉めていたものの葛葉の声はリビングに届いていた。

 

ド「…何を騒いどるんじゃろう?」

 

ひ「葛葉くん〜、大丈夫?」

 

葛「やべ、聞こえてる!」

 

豚「⁉︎」

 

ひ「何かあったの?」

 

葛「いやッスーー、む、虫がいてですね…、驚いただけです。」

 

ひ「そっか、結構聞こえてたから静かにね〜。」

 

葛「気を付けます…。」

 

パタン…

 

豚「ラグーザ様、気を付けましょうね。」

 

葛「チッ!」

 

ガツン!

 

豚「プギャ!」

 

 葛葉は注意された原因である豚に煽られたことにイラ立ち、軽く豚の頭を殴った。

 

葛「いいか?ここは俺の部屋なんだ。雑用係のお前が寝ていいところじゃないんだ。」

 

豚「ワタシいつからラグーザ様の雑用係に?世話係じゃなかったですっけ…。」

 

葛「ここ(人間界)では世話はしなくていい。だから雑用係にした。」

 

豚「はぁ…。それでワタシはどこで過ごせばいいのですか?」

 

葛「そうだな〜。」

 

 部屋を見渡して何か隠せそうな場所を探す。

 

葛「あ、ここはどうだ?」

 

豚「どこです?」

 

 葛葉が指したのは扉脇のクローゼットだった。

 

豚「クローゼット…?」

 

葛「そんなに服ないし、しまう物もないからそこで過ごしてくれないかな〜って。」

 

 豚は少し悩む。

 

豚「う〜ん…。」

 

葛「やっぱダメか?」

 

豚「ここ以外となると、もうない感じですか?」

 

葛「あとは…、ベランダ。」

 

豚「クローゼットで。」

 

 こうして豚は葛葉の部屋のクローゼットで過ごすようになった。

 

葛「そういやお前、他に何持ってきたんだ?」

 

豚「え、そりゃあ色々ですよ。」

 

葛「見せて。」

 

豚「必要に応じて出します。」

 

葛「なんで。」

 

豚「無駄遣いするからです。」

 

葛「…誰が。」

 

豚「あなたが。」

 

葛「…何も言えねぇ。」

 

豚「大体ラグーザ様が必要とするであろうものばかりですので、ご自身で気付かれたら出します。」

 

葛「あっ、じゃあ枕あるか?」

 

豚「はい。」

 

 豚は持ってきたリュックから葛葉が使っていた枕を取り出す。

 

葛「俺が必要とするってこういうことか。」

 

豚「理解しましたか。」

 

葛「俺これ使おうかと思ったけど買ってもらったのあるからいいや。」

 

豚「枕類も買ってもらったのですか⁉︎」

 

葛「大体は。」

 

豚「感謝ですね。」

 

葛「本当にな…。」

 

タンタンタン…

 

 誰かが階段を上がってくる。

 

葛「誰か来る!」

 

豚「『インビジブル』!」

 

コンコン…

 

ひ「葛葉くん起きてる?」

 

 二階に上がってきたのはひまわりだった。

 

葛「(豚は、消えてるか。)起きてますよ。」

 

ひ「葛葉くんがお風呂入んないから先に入っちゃったよ。」

 

葛「あ、忘れてた。」

 

ひ「それと、ちょっとお部屋入って良い?」

 

葛「ちょっと待ってくださいね。(豚の荷物を隠さねぇと!)」

 

 葛葉は急いでクローゼットに荷物を隠す。

 

葛「大丈夫だよな…、入って良いですよ。」

 

ガチャ…

 

ひ「失礼します…、ごめんね夜遅くに。」

 

葛「大丈夫っすよ、全然眠くなかったので。」

 

ひ「さっきの虫のせいで?」

 

葛「そうっすね〜、変な虫のせいで。」

 

 葛葉は微かに感じる豚の気配のする方へ視線を送る。

 

ひ「何かいるの?」

 

葛「あ、いえ何も。それより何か急用ですか?」

 

ひ「ううん、今日一日どうだったかなって。」

 

葛「今日一日、そうですね…。まず洗濯は簡単でしたけど干す時に、あっ。」

 

ひ「干す時に…?」

 

 葛葉は干していた時にあった出来事を思い出す。

 

葛「いや、なんでもなかったです…。」

 

ひ「洗濯物もしっかり乾いてたからこれからもお願いね!」

 

葛「了解っす。」

 

 葛葉は場を繋ごうと気になっていることを聞く。

 

葛「そういえば、ひまわりさんの母親ってどこにいるんですか?」

 

 葛葉は発言した瞬間にとんでもない間違いをしたことに気づいた。その質問は聞きたくとも簡単には聞けない質問であることを理解していたはずだった。しかし場を繋がねばという焦りからか、判断力が低下しいていたのか軽々と口にしてしまった。

 

ひ「…。」

 

 さっきまでの笑顔を隠すように、ひまわりは俯く。

 

葛「あっ、なんでもないです。ごめんなさい、聞かなかったことに…。」

 

 その様子を見て葛葉は自分のしたことの愚かさを感じていた。ひまわりはスッと顔を上げる。

 

ひ「ううん大丈夫だよ。」

 

葛「すいません。」

 

 葛葉はひまわりが向けたその笑顔が偽物であることに気づいていた。ひまわりはまた顔を隠すように葛葉から顔を背ける。そして語り出す。

 

ひ「あのね、ひまのママはひまを産んですぐに亡くなったってパパから聞いたの。ひまが物心ついた頃にはパパ一人で育ててくれてたの。ひまはね、ママを知らないの。パパ二人でと写ってる昔の写真の中のママしか。」

 

 ひまわりは自分の母親について葛葉に教える。

 

ひ「パパは昔からひまが悲しむからってママの話をひまの前ではしないの。だからひまもママがいなくたって悲しくはないんだ。でもパパは今でも悲しんでるんだ、ママがいなくて。だからひまがママの代わりにパパを手伝わないといけないんだ。」

 

葛「ひまわりさん…。」

 

ひ「パパの手伝いをしてるうちに料理も掃除も上手くなってきたんだ!それにパパも喜んでいるみたいだしさ、ひまも嬉しいんだ!」

 

葛「…じゃあ、なんでそんな悲しい顔で笑うんですか。」

 

 葛葉はひまわりが隠している気持ちに気付いた。

 

ひ「別に、いつもと変わらないよ!」

 

葛「いつものひまわりさんの笑顔と違うんですよ。俺でもわかるくらい見分けやすいです。」

 

ひ「…。」

 

葛「俺が馬鹿な質問したからひまわりさんが悲しんでいるのは俺が悪いですけど、自分の気持ちに背いて悲しくなっているんだったら話は違いますよ。」

 

ひ「ひまは、悲しくなんかない。」

 

葛「自分の母親がいなくて悲しくない子供がどこにいるんですか。どこかで母親に対する気持ちがあるはずです。あなたはそれから逃げてる。社さんのためだと嘘をついて!」

 

ひ「…違う!ひまは、ママがいなくても、パパがいれば、それで。」

 

葛「じゃあなんで泣いてるんですか。」

 

ひ「ぐずっ…。」

 

 ひまわりは葛葉に自分の隠してた気持ちを気付かされ母親に対する気持ちが溢れていった。

 

ひ「ひまだって、他のみんなみたいにママがいて欲しい…、みんなみたいにママに甘えたい、けどぉ、ひまのママはいないんだもん…。ひまのわがままじゃ、パパを困らせるだけなんだもん。ひまが諦めないと、パパも辛いんだもん。うわ〜ん…。」

 

 ひまわりは今まで秘めていた思いを全て放った。悲しい顔で作っていた笑顔が崩れ、涙を流し泣いた。

 

葛「それが普通なんですよ。その気持ちを今まで秘めれていたんだから、ひまわりさんはとても強いですよ。」

 

ひ「うわぁ〜ん…。」

 

 葛葉はひまわりに対し強い、というとひまわりは葛葉の肩にもたれかかって泣いた。葛葉はなくひまわりの頭を優しく撫でていた。ひまわりが泣き止むまで。ひまわりは子供のように心から泣いた。溜め込んでいたものを全て解放するように。

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 それからしばらく時間がたった。ひまわりは泣き疲れたのか葛葉の肩にもたれかかったまま眠りについていた。

 

葛「寝たのか?」

 

 そっとひまわりを抱えて部屋まで運ぶ。

 

葛「…ひまわりさんの、母親がいない気持ちは俺には分かりませんがそれでも周りのために自分を犠牲にできるその心は、誰よりも強いと思います。だから…。」

 

 葛葉は言葉に出して誓った。

 

葛「これからはどんな事があっても俺がひまわりさんを護ります。だからもう一人で抱え込まないで下さい。俺ができるのは、これしかないですから…。」

 

 葛葉が部屋を出かけた時。

 

ひ「…うん。」

 

葛「!」

 

 ひまわりは涙まじりの声で返事をした。

 

葛「明日も忙しいのにこんな辛いことさせて、すいませんでした。」

 

ひ「いいの、逆に葛葉くんに打ち明けられて良かった。」

 

葛「俺は何も知らないのに、勢いで物言って…。」

 

ひ「ひまはそのお陰で気持ちが晴れたよ。今までパパにも隠してた気持ちが、自分でも隠してた気持ちを心強い君に打ち明けられたんだから。」

 

 ひまわりが葛葉に向けた笑顔は、太陽に向かって咲く向日葵のような、そんな笑顔だった。

 

葛「フッ、ひまわりさんにはその笑顔が似合いますよ。今日はもう遅いですし、俺は風呂入りますね。」

 

ひ「うん、おやすみ。」

 

葛「おやすみなさい。」

 

ガチャ…

 

ひ「ありがとう…!」

 

バタン…

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社「…21時か。」

 

 これはひまわり達が夕飯を食べ終わり、片付けてる頃の社築である。いつも通りの残業を終え会社を出る。

 

社「いつもより早く上がれたな。アイツのとこいくか。」

 

 築はケータイを取り出し、とある奴に電話をかける。

 

プルルル…

 

?「珍しいね、そっちからかけてくるのは。」

 

社「まぁね、今から店行って話したいんだけど良い?」

 

?「なんだ飲みにくるんじゃないのね。良いけど、他のやつも呼んどく?」

 

社「いや、お前だけで良い。」

 

?「そう、じゃ待ってる。」

 

ピッ…

 

 築は会社の近くの飲み屋街へ向かう。今向かっている店は築がよく飲みにいく場所だ。

 

コンコン…ガチャ…

 

?「いらっしゃい、社。」

 

社「急にスマンな、チャイカ。」

 

チ「どうしたの急に。私に何を聞きたいの。」

 

社「先週あったことなんだ…。」




 築は今の自分の状況を細かく話し始めた。飲み屋街の外れにひっそりと建っている、とあるオカマのバーの中で。




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 Twitter@moro_roi で作品状況を報告しています。自分の好きで書いている小説ですが、気に入ってくれたり続きが気になる方はフォローしてくれるとモチベがすこぶる上がります。(リプとかなら尚更)
 これからも引き続き書いていきますので気長にお待ち下さい。               めーけろーより
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