ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回で第二席編は終わりです。



第10話 “解決”

愛紗と趙雲が坑道内を探索していた頃―――

 

いつでも出陣できるように、準備をしていた公孫賛のところに、1人の文官が報告をしていた。

 

「ルフィ殿と張飛殿が?」

 

「はい…『あまりに暇だから自分達も、赤銅山に行って賊の隠れ家を探す』と…」

 

「我々が何日かけて探しても、見つからなかったのだぞ。それによく道を知らないまま行けば、間違いなく迷子になるぞ」

 

「私もそう言ったのですが、『いいから、場所を教えろ』と…」

 

「…それで、教えたのか?」

 

「はい…そしたら、あっと言う間に飛び出していきまして…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、赤銅山の山中にて―――

 

「う~ん…」

 

「道がわからないのだ…」

 

飛び出していった2人は、案の定迷子になっていた。

 

「隠れ家があるはずなのに、全然建物がないのだ…」

 

「う~ん、もしかしたら木の上とかにあんのかな?」

 

「木の上に隠れ家があるのか?」

 

「ああ、おれも昔木の上に家作ったりしてたからな」

 

「でも木は沢山あるのだ…」

 

「そうだよな~…」

 

「そうだ!ルフィが首を伸ばして、上から探せば良いのだ!」

 

「おお!そうだよ!頭いいな鈴々!」

 

「にゃはは」

 

「よォし!“ゴムゴムの”…“展望台”!」

 

そう言うとルフィは真上に首を伸ばす。

そして、周りを見渡した後(頭が)降りてきた。

 

「どうだったのだ?」

 

「家はなかったけど、あっちに洞窟があったぞ!あれが隠れ家かもしれねェ!」

 

「じゃあ、行ってみるのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坑道の隠れ家の、最も奥まった場所に牢屋はあった。

 

その中には4人の子供達が閉じ込められており、1人の賊が見張りをしていた。

 

「―――ったく、宴の時に見張り番なんてついてねェな…」

 

カタン

 

「?」

 

不意に物音がし、見張りの賊は音がした方を見る。

 

すると壁際から形の整った脚が現れた。しかも裸足である。

 

(おおっ⁉)

 

さらにほっそりとした腕が現れ、誘惑するように手招きをする。

 

(へへへ~♡)

 

すっかり色香に惑わされた賊は、警戒する事なくのこのこと壁の向こうへとおびき寄せられ…

 

「フゲッ⁉」

 

その美脚の持ち主、趙雲に仕留められた。

 

「これで鍵は手に入った…ついでにコレも貰っておこう」

 

そう言って趙雲は賊が持っていた牢の鍵と槍、剣を拝借するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供達を助け出した愛紗達は、趙雲を先頭に坑道の中を走っていた。

 

「娘よ、出口の検討はつかないのか⁉」

 

「すみません!私達も捕まった後すぐに目隠しをされて、牢屋に連れて行かれたので…!」

 

「そうか…!マズイ!」

 

趙雲達は前方の横道から歩いて来た、賊の1人に出くわしてしまった。

 

「いたぞー!こっちだー!」

 

愛紗達は慌てて引き返す!

 

しばらく走ると前方に光が見えてきた!

 

「!出口だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、赤銅山の山中―――

 

「洞窟はあったけど…」

 

「これじゃあ中に入れないのだ…」

 

ルフィが上から見たときはわからなかったが、その洞窟の入り口は断崖絶壁のど真ん中にあり、ルフィと鈴々は近くの崖からそれを見ていた。

入り口付近には、数人が乗れそうな足場があるだけで、辿り着くのはまず不可能だった。

 

「どうするのだ?」

 

「よし、おれが飛んで中見てくる」

 

そう言うとルフィは近くの岩に摑まる。

 

「“ゴムゴムの”…」

 

「しまった!行き止まりだ!」

 

「「⁉」」

 

ルフィが飛ぼうとする寸前、洞窟から何人かの人が出てきた。

その内の2人は見覚えがあった。

 

「愛紗!」

 

「そんな所で何をしているのだ?」

 

「!ルフィ殿!鈴々も!」

 

それは坑道で出口を探していた愛紗達だった。

愛紗達が見つけた光は、この入り口に通じていたのだった。

 

愛紗達も向かいの崖にルフィと鈴々がいる事に気づき、大声で呼びかける。

 

「ルフィ殿!あなたの能力(チカラ)でこの者達をそっちに…」

 

「追い詰めたぞ!」

 

「「「「「「「「!」」」」」」」」

 

しかし、それよりも早く賊が追いついてきた。

 

「観念しやがれ!」

 

「クッ…!」

 

「「愛紗!」」

 

まず3人の賊が坑道内から、崖に突き出た足場へと出てくる。

 

愛紗と趙雲は応戦しようと、先ほど賊から奪った武器を構える。

ルフィと鈴々も愛紗達が危ない事を知り、何とか援護しようと考えるが…

 

バキィッ!

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

突然嫌な音が響き、愛紗達が乗っていた足場が崩れた!

 

「「「きゃァァァァァ⁉」」」

 

「「「うわァァァァァ⁉」」」

 

愛紗に趙雲、村の娘や子供達も皆真っ逆さまに落ちていく!

 

「うわァァァァァ⁉」

 

「た、助けてくれー!」

 

愛紗達と同じ足場に乗っていた賊達は必死に、坑道内に残っていた仲間の足に摑まり、助けを求めるが…

 

「うわっ!やめろ!」

 

「手を放せ!」

 

「俺達まで巻き込まれるだろ!」

 

「ええっ⁉」

 

「そんなァ⁉」

 

無慈悲にも手を叩き落される。

 

その様子を見ていたルフィは―――

 

「鈴々!おれの足しっかり持ってろ!」

 

「わかったのだ!」

 

そう叫び、崖に身を投じた。

 

 

 

 

 

 

(くそっ!この高さでは助からん!)

 

落下していく中、趙雲は自分の命運が尽きた事を悟り、思わず目を閉じる。

 

すると―――

 

「⁉」

 

不意に落下が止まり、目を開けてみると…

 

「なっ⁉」

 

「んぎぎぎぎぎ……!」

 

ルフィが胴体と首を伸ばし、趙雲の服を口にくわえていた。

同じように落下していた愛紗や娘達も、ルフィが伸ばした腕でぐるぐる巻きにされ、しっかり摑まれていた。

 

「こ、これは…?」

 

「おおおおおっ!」

 

そのままルフィは全員を引き上げた。

 

「ふ~…間に合った…」

 

「た、助かりましたルフィ殿…」

 

「な、何今の…?」

 

「体が…伸びた…?」

 

「お、お主は一体…?」

 

趙雲達はルフィの身体が、人間とは思えないほど伸びていた事に驚く。

 

「た、助かったのか…?」

 

「い、生きてるよな…おれ達?」

 

「⁉」

 

後方から大人の男の声が聞こえ、趙雲が見てみると、一緒に落下していた賊達がそこにいた。

 

「お、お主賊まで助けたのか⁉」

 

「だって、ほっといたら死んじまうだろ」

 

「そ、それはそうだが……」

 

ルフィの行動に趙雲は驚いたような、呆れたような顔をした。

 

「さて…」

 

「「「⁉」」」

 

愛紗はその3人の賊に武器を向ける。

 

「形勢逆転だな。どうする、まだやるか?」

 

「う…」

 

愛紗と趙雲は落下しつつも武器を放さなかったが、賊の方は武器を放り投げ丸腰となっていた。

 

「わ、わかった、降参するよ…」

 

「これじゃあ勝ち目ねェし…」

 

「助けて貰った恩もあるしな…」

 

「…なら良い」

 

「おい!あいつら生きてるぞ!」

 

「!」

 

声の方を見ると、洞窟の中から数人の賊がこっちの様子を見ていた。

 

「あいつらまさか、官軍の間者か何かか?」

 

「マズイ!隠れ家のことがばれるぞ!」

 

「お頭に報告だ!」

 

「…どうやら、急いで公孫賛殿に報告する必要がありそうだな」

 

「しかし、間に合うか?」

 

「よし!お前ら先に行ってろ!」

 

「ルフィ殿は?」

 

「あいつらブッ飛ばしてくる!“ゴムゴムの”…“ロケット”!」

 

そう言うとルフィは洞窟へ飛んで行った。

 

その様子を見た後、愛紗は賊に向き直る。

 

「おい貴様ら」

 

「は、はい!」

 

「坑道の出入り口がどこに通じているか、わかるな?」

 

「は、はい。一応、出入り口の場所は全部把握しています」

 

「では、この辺りの太守の屋敷まで道案内して貰うぞ。良いな?」

 

「はい」

 

「なァ…二人共…」

 

愛紗が賊と話をつけると、趙雲が訊ねてきた。

 

「あの男は…一体?」

 

「ルフィは―――天の国から来た人間なのだ!」

 

「…“天の国”…⁉」

 

鈴々の答えに趙雲は、またもや驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坑道でルフィは大勢の賊に囲まれていた。

 

「間者を送るとは生意気なマネしてくれるじゃねェか」

 

「お前一人…丸腰で戻って来るとは、いい度胸だな」

 

「こっちには百人以上の兵がいるが、お前一人で相手するつもりか?」

 

「ああ。そのつもりだぞ」

 

賊の問いかけに、ルフィは拳を握りながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗達は賊に案内をさせ、公孫賛の屋敷へと急いでいた。

 

「あとは道なりに進めば、太守様の治める街の南門に出る筈です!」

 

「そうか!」

 

「なァ、本当に良かったのか?」

 

走りながら趙雲が愛紗に訊いてきた。

 

「何がだ?」

 

「あの男を一人で賊の隠れ家に置いてきてだ!」

 

「心配ない!」

 

「ルフィは鈴々達の中で一番強いのだ!あんな奴ら何人いたってちょちょいのぷ~なのだ!」

 

「だが、何の武器も持たないで…」

 

「もともとルフィ殿は武器を使わん!だから問題ない!」

 

「なんと…!」

 

またしても驚く趙雲だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坑道内。

 

「―――“槍”ィ!」

 

「ぐああっ!」

 

「この野郎!」

 

「一斉にかかれ!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおっ!」」」」」」」」」」

 

「“ゴムゴムの”…“花火”!」

 

「「「「「「「「「「うぎゃァァァァァ!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公孫賛の屋敷。

 

「成程、坑道を…。おい、そこの賊ども!」

 

「「「は、はい!」」」

 

「坑道の出入り口と、内部構造を詳しく教えろ!そうすれば多少は罰を軽くしてやる」

 

「「「は、はい!」」」

 

「公孫賛殿、可能な限り早くお願いします!」

 

「なァに心配するな、出兵の準備は既にできている。あとは道がわかれば良いだけだ!」

 

「そうですか」

 

「どうした関羽殿?あの男は強いのだから問題ないのだろう?」

 

「ええ、確かにルフィ殿は私達の中で一番強いのですが…一番頭が悪いのも彼なので…」

 

「成程…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん、困ったな…」

 

賊を全て片付けた後、ルフィは坑道で迷子になっていた。

 

「誰かに訊きてェけど、みんなぶっ飛ばしちまったからな~…。あ、そうだ!壁ブッ壊して出りゃいいんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗達は公孫賛の軍勢と一緒に、山中を進んでいた。

 

「すごい数の白馬ですな」

 

「公孫賛殿の白馬軍…実際に行軍を見るのは初めてだな…」

 

愛紗と趙雲がそんな事を話している隣で…

 

「『我が名は白馬将軍、公孫瓚!我が白馬軍の強さ、思い知るがいい!』…いや『我が白馬軍の恐ろしさ、とくと味わえ!』の方が良いか?」

 

「愛紗、あのお姉ちゃん何をやっているのだ?」

 

「鈴々、アレは気にしては駄目だ…」

 

「?」

 

ボコォォォォォン!

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

その時、突然近くの岩壁が吹き飛んだ。

 

「な、何だ!?」

 

皆が警戒していると、少しずつ砂煙が晴れ…

 

「よっしゃー!出られたー!」

 

ルフィが姿を現した。

 

「る、ルフィ殿⁉」

 

「おお、お前ら!何やってんだこんな所で?」

 

「それはこっちの台詞です!一体何を⁉」

 

「いや~賊は全員ぶっ飛ばしたんだけどよ、出口がわかんなくて壁ぶっ壊して出てきたんだ」

 

「お、おい…ちょっと待て…」

 

「?」

 

公孫賛が話に入ってきた。

 

「賊を全て倒したのか?」

 

「ああ、全員中でのびてるぞ」

 

「じゃあ私が戦う必要は…?私の出番は…?」

 

「ねェぞ」

 

「はは、そうか…まァ賊が成敗されたから、良しとするか…」

 

「?」

 

白馬にまたがり、ガックリと肩を落とす公孫瓚。

そして白馬も溜め息をつくのだった。

 

その後、賊は全員逮捕。

その坑道はいざという時の避難所として再利用される事になり、公孫賛が管理する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ルフィ達は公孫瓚のもとに一泊し、再び旅に出たのだが…

 

「お前、ホントによかったのか?おれ達と一緒に来て?」

 

「私達は仕官するつもりはなかったが、趙雲殿は公孫賛殿のもとにいれば、一角の将として名をあげることもできただろうに…」

 

そう。趙雲がルフィ達について来たのである。

 

「確かに公孫瓚殿は良い太守だ。だがそれだけだ。天下に覇を唱えられるような人物ではないし、影も薄い」

 

「か、影って…それはちょっと酷くないか?」

 

「この広い蒼天の下…私が仕えるべき主となる人物は、きっと他にいる。それに天の国の人間にも興味が湧いたし、何よりお主達といた方が、この先面白そうだ」

 

「…そうか」

 

「ふふ…」

 

「にゃはは」

 

「せっかくだから、私の真名を預けよう。これから私の事は“(せい)”と呼んでくれ」

 

「いいのか?」

 

「しばらく共に旅をする仲だ。それに…お主達ほどの武人なら、真名を預ける事に不満はない」

 

「では私の事もこれからは“愛紗”で構わん」

 

「鈴々の事も“鈴々”で良いのだ」

 

「おれは真名はねェから“ルフィ”でいい」

 

「わかった。―――では、私が仕えるべき主が見つかるまで、よろしく頼むぞ」

 

こうして、ルフィ達は新たに“趙雲子龍”こと“星”を仲間に加え、旅に出たのであった。

 

 


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