ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回、革命シリーズのキャラが新たに2人登場します。




第100話 “救世主”

「離宮が欲しい……ですか?」

 

「うん…!可能な限り早く…!」

 

翌日、白湯は空丹や傾、瑞姫、黄を始めとした幾人かの重臣達を呼び集め、話をしていた。

張譲の姿はない。

 

「いいじゃない。叶えてあげなさいよ」

 

「しかし主上様…今の司隷には利用できそうな宮殿はなく、急に用意するのは難しいかと…」

 

「別に司隷の外でも構わない」

 

黄の言葉に白湯は返す。

 

「どう思う?」

 

「正直言って劉協殿の生真面目さは目障りだったからな…」

 

「陛下に余計な事を吹き込んで、我々の立場を危うくしかねなかったし、王宮の外に出てくれるのなら丁度良いのではないか?」

 

「そうだな」

 

重臣達はそんな事を話す。

 

「わかりました。すぐに手筈を整えましょう」

 

「うむ。ありがとう」

 

黄の言葉に白湯はにっこりとして頷く。

 

「それと…もう一つ頼みがあるのですが…」

 

「?何でしょうか?」

 

「私が洛陽から離れる事になるのなら、護衛に皇甫嵩と盧植をつけて欲しいのですが…」

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

白湯の言葉に重臣達は驚く。

 

「劉協様、あのお二方は陛下の身をお守りする重要な役割がございます」

 

…と、傾。

 

「やはり駄目?」

 

「しかし何進将軍、劉協様の望みならば可能な限り叶えて差し上げねば」

 

「左様ですぞ」

 

「それに、天下の大将軍何進殿が常に隣におられるのであれば、別に構わないのでは?」

 

…と、その二人とついでに傾にも王宮から消えて欲しい重臣達は白湯に賛同する。

 

「し、しかしだな…陛下の身はこの国で最も大切な事、厳重にしておくに越した事はないだろう?」

 

傾も反論する。

 

「ぐ…」

 

皇帝の威光を利用している佞臣達は、空丹の身に何かがあると困る為、何も言えなくなる。

 

「でしたら、最初はお二人を同行させて、その後は交代でどちらかが劉協様のお傍に控え、もう一人が洛陽に残るというのは如何でしょう?

中郎将でしたら朱儁殿もおりますし、それで十分かと…」

 

…と、黄。

 

「むう…それが良さそうだな…(賄賂も貰い易くなるし、身の安全も守られそうだな…)」

 

「確かに…」

 

「我々はそれで構いません」

 

傾を始め、重臣達も賛同する。

 

「(私は空丹様を可愛がる事ができるのであれば、()()()()()()()どうでもいいですし…)劉協様もよろしいですか?」

 

「うん」

 

黄に訊かれて白湯も頷く。

 

「では、すぐに手筈を整えましょう」

 

その日の話し合いはそれで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、洛陽の王宮にある謁見の間に、黒い着物を着て眼鏡をかけた堅実そうな女性―――“皇甫嵩(こうほすう)”と、白い長髪に眼鏡をかけたおしとやかな雰囲気の女性―――“盧植(ろしょく)”は呼び出されていた。

 

玉座には空丹と白湯が座り、隣には傾、瑞姫、黄が控えている。

 

「私達が陳留に…⁉」

 

黄から(みことのり)を聞き、皇甫嵩は思わず声をあげる。

 

「はい。劉協様は今日より陳留王に封じられましたので、その護衛として随行するように。これは劉協様自身のご希望でもあります」

 

「うむ」

 

黄が説明し、白湯が頷く。

 

「しかしそれでは、陛下の身辺が手薄になってしまうのでは?」

 

「なァに、陛下のおそばには常にこの大将軍何進がいるし、朱儁もいる。

それに貴様らも常に陳留にいる訳ではなく、交代で定期的に戻って来て貰う。

それなら問題ないであろう?」

 

「は、はァ…」

 

「…………」

 

皇甫嵩の問いに傾が答える。

 

「では、すぐに支度を整えろ!」

 

「「はっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして皇甫嵩と盧植を指揮官とし、すぐさま護衛部隊が編成された。

白湯の乗る車蓋と簾のついた馬車、家財道具や金銀財宝を積んだ荷車、世話係の侍女や童子なども用意され、大行列となって洛陽を出発した。

 

(ん?)

 

張譲はその様子を窓から見て、近くの者に訊ねた。

 

「おい、あれは一体何の行列だ?」

 

「陳留王に封じられた劉協様と、その護衛の皇甫嵩殿と盧植殿の行列です」

 

「何⁉」

 

返事を聞き、張譲は声を荒げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!蹇碩!段珪!」

 

その後、張譲は城内を歩き回り、2人を見つけると話し掛けた。

 

「これは張譲殿」

 

「どうなされました?」

 

「劉協が陳留に向かったそうだな⁉皇甫嵩と盧植を連れて!」

 

「はい。それが何か?」

 

「僕はそんな話聞いていないぞ!何故何の相談もなく勝手に決めた⁉」

 

「相談する程の事でもないと思いましたから…」

 

「ええ。それに劉協、皇甫嵩、盧植と目障りだった者達が皆揃って王宮から出て行くのであれば、万々歳ではないですか」

 

「………っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの愚か者共め!」

 

その後、自室に戻った張譲はイライラした様子で壁を蹴飛ばした。

 

「あの三人が宮中にいれば我々の監視下にあり、妙な動きもできなかったものを…!

皇甫嵩と盧植が劉協という後ろ盾を得て、司隷から出てみろ…!

野に放たれた虎も同然になるぞ!

それがわからぬ馬鹿共め…!

趙忠の奴は頭が切れると思っていたが、それに気付かぬ程度の奴だったとは…!」

 

そこまで言うと張譲は執務用の机に向かって座る。

 

(こんなんでは駄目だ…!他の奴らは当てにならん!

私の支配をより確かなものに…宮中の全てを我が手中に…!

誰もが私の許可なしでは何もできぬ程の力を手に入れねば…!)

 

張譲の目は怪しく輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、ルフィ達が去った後の陳留に白湯の一行がやって来た。

 

「天子様の妹様か…」

 

「どんな方なんやろうな~…?」

 

「き…緊張してきたの~…」

 

そんな事を話すのは先日曹操軍の部将になった凪、真桜、沙和達である。

 

白湯が滞在するのは華琳の城下町とは別の街だが、郡太守としての責任がある為、華琳ら曹操軍の首脳陣達も迎えに来ていたのである。

 

美食の会の後、正式に曹操軍に加入した流琉も一緒である。

 

「秋蘭は春蘭を、柳琳は華侖を、流琉は季衣を、稟は風をしっかり見張っていて頂戴ね」

 

「華琳様ーどうして風もなのでしょうかー?」

 

「あなたが居眠りをしないようによ」

 

「ぐー…」

 

「…って言った傍から!」

 

「!華琳様、劉協様の御一行と思われる隊が見えました」

 

弓使いであるため視力の良い秋蘭が行列を見つけた。

 

「全員整列!」

 

華琳の号令で兵士達は全員、静まり返って直立不動となり、華琳達も馬上で姿勢や身だしなみを整える。

 

やがて皇甫嵩と盧植が乗った馬を先頭に、白湯の一行が目の前に現れた。

 

「貴殿は陳留郡太守、曹孟徳殿であられるか?」

 

皇甫嵩が訊ねる。

 

「いかにも。貴殿は?」

 

華琳が訊き返す。

 

「劉協様の護衛として随行した、中郎将の皇甫嵩である!」

 

「劉協様は何処におられるか?」

 

「ここに!」

 

再び華琳が訊ねると、皇甫嵩らのすぐ後ろにある馬車から返事が聞こえて簾が上がり、白湯が姿を現す。

 

「まァ!」

 

現れたのが自分好みの美少女だった為、栄華は小さく声をあげて目を輝かせる。

 

「……曹操!」

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

少し間を置いて白湯が声をあげた。

 

「貴殿は私を迎えに参ったのか⁉攫いに来たのか⁉」

 

声も容姿も幼いが、目をらんらんと輝かせはきはきとした声で言う姿に、華琳達は威風を感じた。

 

「迎えに参りました」

 

華琳が答える。

 

「なら何故馬から降りぬ!無礼であるぞ!」

 

その言葉に曹操軍の首脳陣達は皆馬から降り、拱手する。

 

「…………」

 

しかし、華琳は降りようとしない。

 

「貴様!無礼で…」

 

「もうよい!」

 

皇甫嵩が何か言おうとするが、白湯はそれを制止する。

 

「劉協様⁉」

 

「礼を尽くさぬというのであれば、私かこやつがその程度の者という事だ」

 

「それはどの様な意味でしょうか?」

 

華琳が訊ねる。

 

「前者であれば私が未熟であるという事であるが故、今後精進するだけの事。

後者であればお主が不義の輩であるという事。そのような輩は我が配下には必要ない」

 

「成程…」

 

白湯の言葉に華琳は頷き…

 

「先程はとんだご無礼を。誠に申し訳ありませんでした」

 

馬から降りて拱手した。

 

「よろしい」

 

「遠路はるばるからのご足労、さぞかしお疲れでしょう。もてなしの準備ができておりますゆえ、城の方へどうぞ」

 

「うむ、ありがとう」

 

白湯の一行は華琳に案内されて入城した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉様…肝が冷えましたわよ…」

 

「はい…流石に天子様の一族を試す様なマネをするのは…」

 

白湯達の迎賓を終えて帰路につく途中、華琳は栄華と稟に諫言されていた。

 

「悪かったわ。私が礼を尽くすほどの相手かどうか、どうしても確かめておきたかったのよ」

 

「華琳様…さすがに今回は私も度が過ぎるかと…。

下手をすれば華琳様の名声に傷がつきかねませんよ…。それが原因で、華琳様の下に不義の輩が集ったらどうするおつもりですか?」

 

「桂花にそこまで言われるとはね…。でも確かに、そう言われるともう少し気を付けるべきね…」

 

華琳は素直に反省する。

 

「けど…試した甲斐があったわね」

 

「華琳様、随分楽しそうですね」

 

春蘭が訊ねる。

 

「ええ。天子様の一族というから、てっきりとんだ腑抜けが来るのかと思っていたけれど、霊帝陛下よりよっぽど皇帝に相応しい威風の持ち主だったもの。それに…」

 

「それに…?」

 

「頭が回るみたいだしね」

 

「どういう事ですか?」

 

柳琳が訊き返す。

 

「香風、あなた一緒に来ていた皇甫嵩と盧植の事は何か知らない?」

 

「うん。二人共不正や賄賂に加担しないで、腐敗した朝廷を立て直そうとしている忠臣だった。将としての指揮能力も高かった」

 

「やはりね…」

 

「えっと…どういう事ですか?」

 

今度は季衣が訊ねる。

 

「劉協様は真面目で政務についても関心がある方だと聞いたわ。そんな彼女が漢を立て直そうとする二人を連れて洛陽を離れた……どう思う?」

 

「空を飛ぶ鳥の様に、佞臣達の目を逃れて自由に行動できる…といった所でしょうか?」

 

…と、風。

 

「ちょっと!私が答えようとしていたのに盗らないでよ!」

 

桂花は声を荒げる。

 

「おそらく正解よ。……けど困ったわね。もしあの様な方が力を得て霊帝を廃し、皇帝になれば私が天下を獲る為の大きな障害になるわ」

 

「華琳様、嬉しそうに言わないで下さい!」

 

…と、桂花。

 

「それはさておき……太守としての責任がある以上、今後は定期的に劉協様の様子を見に行き、世話をする者が必要になるわね」

 

「お姉様!その役目は是非わたくしに!」

 

すかさず立候補する栄華。

 

「……華侖、お願いできるかしら?」

 

「「「「「「「「「「え⁉」」」」」」」」」」

 

「ほえ?あたしっすか?」

 

意外な指名に全員が声をあげる。

 

「か…華琳お姉様!さ、さすがに姉さんは…!」

 

「そ、そうですよ!失礼ですが無礼や粗相が多いかと…!」

 

柳琳と流琉の言葉に全員頷く。

 

「ええ。でも劉協様は華侖の様な者の方が喜ぶんじゃないかと思うのよ。お願いできるかしら?」

 

「うーん…よくわかんないっすけど、華琳姉がそう言うなら、あたしやるっす!」

 

「それじゃあ、任せたわよ」

 

「はいっす!」

 

(ああ…わたくしがやりたかったですわ…)

 

一人落ち込む栄華であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お呼びでしょうか劉協様」

 

陳留に着いたその日の夜、白湯は皇甫嵩と盧植を自分の部屋に呼び寄せた。

 

「うん。二人に訊きたい事があるの」

 

「訊きたい事?」

 

「何でしょう?」

 

「お姉様や何皇后達は毎日の様に贅沢三昧をし、何進や張譲らは様々な者から大量の金品を受け取っております。

私は政治の事はよくわかりませんが、アレは良くない行いなのではないのですか?」

 

「…………」

 

「…それは…」

 

「天子の妹と遠慮せずに、正直に答えて下さい」

 

「…でしたら、その通りでございます。陛下の贅沢は国の所有するお金を浪費し、国の問題解決に使える量を少なくしてしまっております」

 

「また、何進殿達が貰っている金品は賄賂といい、悪行を見逃して貰う事や、能力もないのに高い役職に就く事などを目的に渡されているのです」

 

「やはり悪い事だったんですね…」

 

白湯は落ち込むがすぐに顔を上げ…

 

「皇甫嵩、盧植、二人にお願いがあります」

 

「お願いとは?」

 

「私は…姉様とこの国を何とかしたい、その為に力を貸して欲しいのです!」

 

「「!」」

 

「洛陽にいた時、何進や張譲の仲間が二人を良く思っていないという話を聞きました。

だから、二人なら協力してくれると思いました。

ここなら洛陽と違って誰も邪魔しないと思います。

ですから、私が政を行える様に色んな事を教えて貰いたいのです」

 

「劉協様…」

 

「そこまで考えて…」

 

「……駄目でしょうか…?」

 

不安そうになる劉協。

 

「劉協様、一つだけよろしいでしょうか?」

 

盧植が口を開く。

 

「何でしょうか?」

 

「それは、私達が新たに国造りを行う際にも、ご協力頂けるという事でしょうか?」

 

「え?」

 

「具体的には兵を起こして洛陽に攻め込んで、佞臣共を()()()にし、霊帝陛下を皇帝の座から引きずり降ろします。

そして劉協様に新しい皇帝となって貰います。

それを劉協様の御意志で行ったという事にして頂くのです。

無論、霊帝陛下に怪我をさせる様な事は致しません。」

 

「……っ!」

 

話を聞き、白湯は一瞬体を震わせ思い悩むが…

 

「構いません!国を…民を救う為ならば全ての責任を私がとります!」

 

覚悟を決めて、そう口にした。

 

「…わかりました。では私達も、劉協様に犬馬の労をとらせて頂きます」

 

「私も。学舎で教育をしていた経験もありますゆえ、政治についてお教え致しましょう」

 

「うん。ありがとう」

 

「所で…私からも一つお伺いしてよろしいでしょうか?」

 

今度は皇甫嵩が口を開く。

 

「何でしょう?」

 

「その…失礼ながら私には、劉協様が突然変わられたというか、急に成長なされた様に見えまして…。

聞けば陛下も、自らの意志や意見を持って、出歩く様になられたとか…」

 

「私も…お二人共、丁度長安での一件を境に、随分と変わられた様ですけど…長安で何かあったのですか?」

 

「わかりました、お話ししましょう…」

 

そして、白湯は嬉しそうに語りだした。

 

「私とお姉様は長安で……“救世主”に会ったのです」

 

「“救世主”ですか?」

 

「はい。暗闇の中に閉じ込められて、そこで泣く事しかできなかった私に、一筋の光を見せてくれました。

その光の中に立ち『あとは自分で歩いて来い』と言いました。

彼のおかげで、私は闇の中を光に向かって歩く勇気を持つ事ができました。

お姉様はあらゆる物に心を動かす事を思い出せました。

あの方ならきっと大陸中に巣くう悪鬼を祓い、人々を導き、民を塗炭の苦しみから解放し、国を覆う暗雲を晴らしてくれる。

そんな救世主に、私達は出会ったのです」

 

「……そうだったのですか」

 

白湯が嬉しそうに話す様子をみて、2人は微笑む。

 

「劉協様、夜も更けてきましたし、今日はもうご就寝なさって下さい。明日から、色々とお教えしましょう」

 

「うむ。ありがとう」

 

盧植はそう言って、皇甫嵩と一緒に部屋を出て行く。

 

「劉協様」

 

戸を閉める直前、盧植が扉越しに話しかけてきた。

 

「劉協様が帝位につかれた暁には、是非ともその救世主様にも宮中入りして頂き、国造りに協力して貰いたいですね」

 

「うん!」

 

二人は去って行った。

 

その後、白湯は明かりを消して寝台に潜り込む。

 

(私が皇帝になったら…ルフィには相国(しょうこく)になって……また私が駄目になりそうな時に叱って欲しいな…)

 

そんな事を思いながら眠りにつくのだった。

 

 




皇甫嵩と盧植登場!

これで英雄譚以降に新登場したキャラを、無事全員登場させることができました。

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