ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回と次回は、三国志の頃の時代背景等の説明が多くなっております。




第101話 “恩師との再会”

ルフィ達が桃花村に帰って来てから数日後。

 

「どう劉備さん?桃花村での生活には慣れた?」

 

拠点の屋敷の廊下を、ナミと桃香が歩いていた。

 

「はい。まだ、義勇軍の総大将としては実感が湧かないですけど…」

 

桃花村に帰って来た後、桃香は義勇軍の総大将を務める事になり、ルフィ達と一緒に屋敷で暮らしていた。

 

「ま、その内何とかなるわよ」

 

「ありがとうございます。そういえば、チョッパーさん達も村の人達に受け入れて貰えて良かったですね」

 

「そうね。あっちの方がよっぽど心配だったわ」

 

「心配っていえば、霧の中で逸れた趙雲さん、結局見つかりませんでしたけど…」

 

「ああ、アレは本当に放っておいていいから」

 

「そ、そうですか…」

 

冷たく言い放つナミに、桃香は引き気味になるのだった。

 

「あの…皆さんにも話そうと思っているんですけど…私一度、故郷の村に帰って、宝剣の事とか、義勇軍に入る事とか、母に話しておこうと思うんです」

 

「そうね…確かに一度話しておいた方がいいわね。そういえば、劉備さんの故郷ってどんな所なの?」

 

「はい。幽州涿(たく)郡の涿(たく)県にある村で、楼桑(ろうそう)村っていうんです。

小さな村ですけど、旅人の宿場になる事が多いので、結構賑わっているんですよ。

私の家の前には大きな桑の木があって、この村程ではないですけど、桃の花が咲く岡もあって…あと、前にも話しましたけど、蟠桃河っていう川が流れていて…」

 

「ルフィ殿~!関羽殿~!他の皆様も~!」

 

「「?」」

 

不意に屋敷の外から声が聞こえ、二人が窓から覗いてみると、一人の義勇兵が門前で叫んでいた。

 

「どうかしたのー?」

 

ナミが訊ねる。

 

「村の門に官軍の兵がやって来まして、将らしき人物が皆様にお会いしたいと言っているのですが…」

 

「「⁉官軍⁉」」

 

二人は思わず顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐさま2人はルフィや愛紗達にも知らせ、全員で村の門に向かった。

 

「あれか⁉」

 

「それにしても、官軍が何故この村に⁉」

 

門の外に数台の荷車と共に数百人の兵が待機しており、先頭には将らしき女性が2人、馬から降りて立っている。

 

「うおっ⁉どちらも綺麗なお姉様じゃねェか!」

 

やがてその人物の顔がハッキリと見え…

 

「!“風鈴(ふうりん)”先生⁉」

 

桃香が声をあげた。

 

「桃香ちゃん!」

 

官軍の将の片方も、桃香の真名を呼んで駆け寄る。

 

「風鈴先せーい!」

 

「桃香ちゃーん!」

 

互いに名前を呼びながら2人は抱き合う。

 

その一方で…

 

「“楼杏(ろうあん)”!久し振りだな!」

 

「翠さん、蒲公英ちゃんも久し振りね!」

 

「最後に会ったの、いつだったっけ?」

 

もう片方の将も翠、蒲公英と会話をしている。

 

「皆様はお知り合いなのですか?」

 

愛紗が訊ねる。

 

「はい!この人は私が通っていた私塾の先生なんです!」

 

「初めまして。私は“盧植”、字は“子幹(しかん)”と申します。今は、中郎将を務めております」

 

「私は同僚の“皇甫嵩”、字は“義真(ぎしん)”よ。翠さん達と同じ、涼州の出身なの」

 

「ちゅ、中郎将⁉そ、それは失礼しました!」

 

愛紗は慌てて頭を下げる。

 

「そんなに硬くならないで頂戴。私も楼杏さんも、あまりそういうのは好きじゃないから」

 

「さ、左様でございますか…」

 

「それにしても…どうして中郎将が二人もこの村に?」

 

朱里が首をかしげる。

 

「朝廷からこの村への届け物があったから、私が桃香ちゃんの、楼杏さんは翠さん達の顔を見たいと思って、その役を買って出たのよ」

 

「届け物?」

 

「まァ、こんな所で立ち話も何だし、取り敢えず屋敷までどうぞ」

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて」

 

サンジの言葉に、全員屋敷に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このお茶菓子、美味しいわね」

 

「天の国のお菓子で、クッキーといいます」

 

一行は風鈴と楼杏を屋敷の中に招き、それぞれ自己紹介を済ませた後、サンジがお茶とお菓子を出してもてなしていた。

他の兵達は外で待機しており、お茶を全員分用意するのは無理なので、さ湯とクッキーを用意した。

 

「それにしても、風鈴先生が訪ねて来るなんて本当にびっくりしました」

 

「私も、桃香ちゃんが義勇軍を結成したって聞いた時は驚いたわ」

 

「あー…それなんですけど…」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

「そんな事があったのね…」

 

桃香は風鈴に、自分がある男に宝剣を盗まれ、その男が自分に成りすまして義勇軍を結成した事、それを取り戻す為に旅をした事、そして旅の中で義勇軍に加わる決意をした事を話した。

 

「朱儁さんの報告と風鈴さんの話が食い違っていたのは、それが原因だったのね」

 

「そういえば、あの男が朱儁殿の御前で名を名乗った時、朱儁殿が腑に落ちない顔をしていたが、そういう事だったのか」

 

楼杏の言葉に愛紗は頷く。

 

「それにしても、大切な伝家の宝剣が盗まれたうえ、雷で粉々になってしまうだなんて…災難だったわね…」

 

「でも、そのおかげでルフィさんや関羽さん、他にも沢山の人達と知り合えましたし、パイパイちゃんにも再会できましたから!」

 

「パイパイちゃん…?」

 

「伯珪ちゃんの事ですよ。ほら、よく私の隣にいた…」

 

「伯珪…?桃香ちゃんの隣…?……ああ!あの子の事ね!思い出したわ!」

 

(やっぱり忘れられていましたね…)

 

(…っていうか劉備さん、また名前間違えてるし…)

 

朱里とナミは心の中で白蓮を憐れむのであった。

 

「所で、届け物って何なんだ?」

 

ウソップが本題に入ろうと話を振る。

 

「そうだったわね、本題に入りましょう。あなた達、前に長安で天子様と劉協様を助けたでしょう?」

 

「その時の報酬として、金品や軍需物資を届けるように言われたの。これがその目録よ」

 

そう言って楼杏は木簡を一つ差し出す。

 

「報酬ですか?」

 

朱里がそれを受け取り、開けてみると…。

 

「はわわっ⁉こ、こんなに沢山⁉」

 

「何て書いてあるのだ?」

 

「金銀各一千両!緞子(どんす)百匹!糧食五千石!馬五十頭にその為の馬具や秣も沢山!武器や鎧に旗指物も三千人分はありますよ!」

 

「そ、そんなに⁉」

 

「おれ達500人ちょっとの義勇軍からすれば、とんでもねェ量だぞ⁉」

 

朱里が読み上げた内容に桃香やフランキーを始め、全員驚く。

 

「驚いたわね…普通に報酬をくれるだけでも珍しいのに、ここまで優遇してくれるだなんて…」

 

「ああ…しかもあたし達みたいな雑軍に…」

 

「?おい翠、紫苑も、それはどういう意味だ?」

 

「今の朝廷は手柄を立てても、それを報告して貰う為に賄賂を渡さないといけないの。それがないと逆に濡れ衣を着せられて、罰せられちゃうんだよ…」

 

ゾロの疑問に蒲公英が答えた。

彼女達は正式な武官として勤めていた経験がある為、政治の内情に詳しい様である。

 

「手柄を立てたのに金払わねェといけねェのか⁉おかしいじゃねェか!」

 

「ええ。おかしいのよ今の世の中は…」

 

ルフィの言葉に楼杏は表情を曇らせる。

 

「けど…それならどうしておれ達は報酬を貰えたんだ?」

 

チョッパーが訊ねる。

 

「今回は事情が特別だったのよ」

 

「特別?」

 

「あなた達が長安で天子様達に会った時、青い髪の女性と、日焼けした肌の女性が傍にいたでしょう?」

 

「そういえばいましたね。青い髪の方は何者かわかりませんでしたけど、日焼けした方はたしか“何進大将軍”を名乗っていましたね」

 

ブルックは思い出す。

 

「その通り。そして青い髪の方は“趙忠”。宮中を統べる“十常侍(じゅうじょうじ)”の次席よ。黄金や食料、緞子は彼女が、軍馬や武器は何進将軍が手配したの」

 

「なっ⁉」

 

「はあァ⁉」

 

「じゅ、十常侍の次席⁉」

 

「あの人が⁉」

 

「ぞ、ゾロさん達十常侍に会ったの⁉」

 

風鈴の言葉に、愛紗、翠、紫苑、朱里、蒲公英は驚愕する。

 

「な…何なんですかそのジュウジョウジというのは?」

 

「そんなにすごい人達なの?」

 

愛紗達の異様な反応に、ブルックとナミが訊き返す。

 

「十常侍というのは、張譲という人物を筆頭に徒党を組んだ宦官達の事よ」

 

「カンガン?」

 

「陛下の食事を用意したり、着付けの手伝いをしたりする、いわば宮中における雑用係の事よ」

 

「雑用係?何で雑用係がこんなに沢山の高級品を手配できるのよ?」

 

「話せば長くなるのだけれど…」

 

そして風鈴と楼杏は説明を始めた。

 

「この国は天子様…つまり皇帝陛下によって統治されていて、天子様が亡くなるとそのご子息、もしくは血族から次期陛下が選ばれるのだけれど…。

二代目の皇帝である明帝(めいてい)以降、皇帝が早死にして、次期皇帝が幼いまま即位される事が増えてきたの」

 

「幼い陛下は、当然政治の事などわからないから、宮中にいる他の人間が助言をする事で、国を治めてきたのだけれど…。

幼い皇帝陛下が助言を求めたのは、政治の専門家や学者ではなく、自身の母親や年上の親族などの外戚(がいせき)、そして自身の身の回りの世話をしていた宦官達だったの」

 

「顔も名前も知らない、赤の他人の賢人より、物心ついた頃からずっと身近にいた者達を信頼するのは、当然と言えば当然だったわ。

勿論、外戚や宦官の中にも、賢く仁徳に溢れる方達はいたわ。その様な者達を重用する事は良かったのだけれど…」

 

「代を重ねるごとに、陛下のその者達、とりわけ宦官達への信頼が、極端に強くなっていったの。

外戚でさえ宦官達と意見が食い違う者は、嫌われる様になったわ。

ついには、正否を問わず宦官達の意見を採用する様になり、何もかも宦官達の言葉に従って政治を行う様になってしまった」

 

「味を占めた宦官達は皇帝の威光を利用して、自分達に都合の悪い者達を無実の罪で処罰し、自分達と自分達に都合の良い達者に地位や権限を与えていった。

奴らの悪行を訴える者達は、みんな皇帝の機嫌を損ね、処罰されてしまった」

 

「その一方で皇帝に骨が腐るような贅沢を与えて、政治に興味を持たない様にした。

今の霊帝陛下が即位した頃には、国政に関わる権力は全て宦官達のものになり、完全に国を乗っ取られてしまっていたわ」

 

「その宦官達の中でも、とりわけ強い権力を持っているのが、その“十常侍”って訳ね」

 

二人の話を聞き、ナミが言う。

 

「ええ。今宮中にいるのは奴らに賄賂を贈り、機嫌を取り続けた者達ばかり。

誰が正しく、何が間違っているかも、全て奴らが賄賂の量で決めていると言っても、過言ではないわ」

 

目つきを鋭くしながら、楼杏が言う。

 

「霊帝陛下に至っては、政治でけでなく、普段の生活まで誰かの指示通りに送る、操り人形になってしまったわ」

 

「ひでェ話だな…」

 

「しかし…だとしたらおれ達が報酬を貰えた事が、尚更不思議だな」

 

「全くだ。聞いた限りじゃ、そいつらが皇帝の後ろ盾を利用しているとはいえ、皇帝を助けたくらいで恩を感じるとは思えねェな」

 

「むしろ恩を仇で返しそうな気がするが…」

 

ウソップ、フランキー、ゾロが言う。

 

「それは、趙忠殿が特別だったからよ」

 

…と、楼杏。

 

「特別?」

 

「彼女はどういう訳か、政治的な権限や自分の贅沢に興味がないらしくて、他の十常侍達とも距離を置いているのよ。

まるで宦官本来の役割の様に、いつも天子様のお傍でお世話をしていたわ」

 

「え?でも、天子様の味方って訳ではないんですよね?」

 

桃香が訊ねる。

 

「ええ。天子様を堕落させる事には、積極的に加担していたわ」

 

「もしかしてその人、その皇帝を愛玩動物みたいに思っているんじゃないの?」

 

「確かに…それはあり得るかもしれないわね…」

 

ナミの言葉に、風鈴は考え込む。

 

「成程、自分にとって可愛くてしょうがない皇帝を助け出してくれた事には、さすがに感謝せずにはいられなかったって訳か…」

 

サンジが呟く。

 

「あの…話を聞いてて思ったんですけど、風鈴先生達は大丈夫なんですか?賄賂を渡さないと、無実の罪で罰せられるって…」

 

桃香が心配そうに訊ねる。

 

「私達は今の所大丈夫よ。何進将軍のおかげでね」

 

「え?でも何進って成り上がり者で、名ばかりの大将軍だろ?やってる事だって十常侍とも大差ないって話だけど…」

 

風鈴の言葉に、翠が訊ねる。

 

「成り上がり?」

 

「何進将軍は、元々は洛陽で肉屋を営んでいた商人で、料理人だったの。

彼女には傾国の美女と呼ばれる程に美しい妹がいて、その妹が宮中に出入りしている者の目に留まって、天子様の遊び相手として宮中入りしたの。

それに便乗して何進将軍も宮中入りして、大将軍のになったのよ」

 

「あー!そういえば長安で、何進さんの事を『姉様』と呼んでいた、とてもお美しい女性がいましたね!」

 

ブルックの言葉で、ルフィ達も思い出す。

 

「何ィ⁉お前らそんな美女に会ったのか⁉」

 

「それじゃああの女は、大将軍を名乗ってはいるが、大して強いわけじゃねェんだな」

 

ゾロはサンジを無視してそう言う。

 

「その通りよ。何進さんだけじゃないわ。

今洛陽にいるのは、賄賂で官位を買った肩書だけの将軍や、間に合わせで任命した雑号将軍がほとんどよ」

 

「ザツゴウショウグンって何なのだ?」

 

楼杏の言葉に鈴々が訊ねる。

 

「将軍っていうのは、本来は一定数の兵卒を指揮する役割を持つ奴の、肩書の事なんだ。

だからあちこちで戦が起きて、何万、何十万もの兵士が動くと、将軍も沢山必要になる。

それで数合わせに沢山の将軍を作ったんだよ…」

 

翠がため息交じりに説明する。

 

(傾国の美女……かの“海賊女帝”や“人魚姫(マーメイドプリンセス)”にも匹敵する美しさなのか⁉)

 

因みに、サンジは完全に妄想に夢中になっており、話しが耳に入っていない。

 

「翠さんの言う通り。そのせいで武の腕もない、頭も良くない、指揮能力もない将が増えてるの。

当然兵の鍛錬も疎かになって、軍がかなり弱体化している」

 

「自分達を守る兵が弱くなっている事には、十常侍達も危機感を感じて、弱将の筆頭である何進将軍を誅殺しようと目論み始めたわ。

何進将軍の方も、軍の弱体化と十常侍達の企みに気付いて、身の安全を確保しようと躍起になっているの。

だから私や楼杏さん、朱儁さんみたいな腕の立つ者は、宮中に残れているのよ」

 

「今回、何進将軍あなた達に武具を送ったのも、あなた達を自分の味方につけておきたいっていうのと、軍を強化して、いざという時に自分を守って貰おうっていう魂胆があっての事なのよ」

 

「弱ェ奴の考え方だな…」

 

…と、フランキー。

 

「ろくに戦の経験もないまま大将軍になってしまったからね、実際小心者なのよ…。

この間も、魚の切り身に骨が入っていたからって『誰かが自分を殺そうとしている』って大騒ぎして…」

 

ため息交じりに楼杏が言う。

 

「何だそりゃ?魚の骨は食いモンだろ?」

 

「魚の骨を食いたくねェとは…好き嫌いの多い奴だな…」

 

「いや…それは好き嫌いではないと思うのだが…」

 

愛紗を始め、一同はルフィとゾロの発言に言葉を失うのであった。

 

 





字数の都合により、続きは次回になります。

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