ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第106話 “黄巾党”

亞莎が軍師として起用されてから数日後。

 

「初陣ですか⁉」

 

亞莎は軍議の為、謁見の間に呼び出されていた。

 

軍師として起用された亞莎は、今までの親衛隊の服装ではなく、全周に反り返ったつばがついている赤紫色の帽子を被り、同じ色の袖の大きな服を着ている。

 

謁見の間には亞莎の他に、玉座に座る雪蓮とその左右に控える冥琳、蓮華。

玉座の前には炎蓮、小蓮、雷火、粋怜、祭、穏、思春、明命、梨晏、包、大喬、小喬といった孫策軍の首脳陣。

そしてロビンも一緒にいた。

 

「ええ。ついさっき袁術から参陣要請が届いてね。周瑜、詳細を」

 

「はっ!討伐対象は近頃各地で暴動を起こしている『黄巾党』、その本隊が青州の州境に布陣しており、袁術殿がその討伐を命じられ、我々の手を借りたいと言って来た」

 

「コウキントウ…って何ですか?」

 

明命が訊ねる。

 

「きっと雪蓮姉様みたいな人達の集まりよ」

 

「尚香様、それを言うなら脳筋党ですよ」

 

「ふーん…シャオ、包、死にたいの?」

 

「言われたくないのなら少しは自重しろ」

 

「冥琳まで…」

 

雪蓮は頬を膨らませるのだった。

 

「『黄巾党』というのは、今大陸各地で暴れている乱賊の事だ。

賊徒の多くが体に黄色い(きれ)を身に付けている事から、黄巾党と呼ばれている。

一ヶ月ほど前、“張角”、“張宝”、“張梁”という三人がある街で、多数の党員を率いて役人に反旗を翻した事が始まりらしい。

その後、黄巾党は服従してくる者達を取り込んで勢いを増し、今日(こんにち)では各地で何千、何万という賊徒が蜂起し、各地で殺戮と略奪を繰り返しているそうだ。

官軍は勿論、各地の州牧、太守が兵を率いて鎮圧にあたっているが、一向に鎮まる気配がない」

 

冥琳が説明する。

 

「その張角、張宝、張梁という三人は一体何者なの?」

 

「それが…」

 

粋怜の質問に対し、冥琳は眉をひそめる。

 

「全くわからないそうだ」

 

「全くわからない?」

 

「官軍の方で、何人かの捕虜を尋問してみたのだが、張角達の素性や容貌については誰も口を割らず、割ったとしても情報に統一性が無く、噂程度の話しか聞けていないらしい。

ある者は一騎当千の武人だとか、またある者は仙術で人を救う道士だとか…とにかく正確な情報は何もないらしい」

 

「さてと…魯粛、呂蒙」

 

冥琳が話し終えると、雪蓮が2人に向き直って口を開く。

 

「今までの話から、あなた達は黄巾党の事をどう考える?」

 

「そうですねー…捕虜から聞いた情報については、容貌だけなら嘘をついている事も考えられますが、人物像まで統一性が無いのは流石におかしいと思いますね…」

 

…と、包。

 

「それに一ヶ月という短い期間で、大陸各地で何万もの数が蜂起するまでに勢力が拡大のは、いくら何でも速すぎると思いますし…」

 

亞莎もそう言い…

 

「「その張角達が役人と衝突した事に便乗して、張角の事を何も知らない大勢の賊徒が、勝手に黄巾党を名乗って、各地で暴れているだけなのではないかと」」

 

2人は口をそろえてそう言った。

 

「うむ!二人の見解は我々のものと全く同じだ!」

 

冥琳は嬉しそうに言う。

 

「は~…よ、良かったです…見当違いの考えじゃなくて…」

 

「包はちょっと不満です。実力を試す様なマネをされて…」

 

亞莎が胸を撫で下ろすのに対し、包は頬を膨らませる。

 

「何にせよ、そうなのだとしたら話は早い」

 

「ええ。張角達本人が倒れたと知ったら、便乗しているだけの奴らはすぐに弱腰なるものね」

 

祭と粋怜が言う。

 

「その通りだ。故に今回は兵を出す事はすでに決まっている。だが、孫策様は病み上がりでまだ出陣できそうにない。そこで今回の出陣は孫権様を総大将とする」

 

「私が⁉母様ではなくて⁉」

 

冥琳の言葉に蓮華は驚く。

 

「丁度良い機会だからな。蓮華、お前もそろそろ大軍を率いて戦う事を経験しておけ」

 

「母様……わかりました!この孫仲謀、黄巾の乱の鎮圧に全力を尽くします!」

 

「魯粛、呂蒙。今回の出陣は私と太史慈、大喬と小喬も参加しない。故にお前達にもそれなりの規模の部隊を指揮して貰う!良いな⁉」

 

「はい!お任せ下さい!」

 

「は、はい!全力で頑張らせていただきます!」

 

冥琳の言葉に2人は返事をする。

 

「二人共、私の妹を頼むわよ。それで、残りの者達についてだけど……張昭、程普、黄蓋、陸遜、甘寧、周泰は出陣するとして…母様と尚香はどうするの?」

 

「付いて行くに決まってんだろ!留守番なんて退屈だ!」

 

「シャオも!出陣させて下さい!」

 

「…だと思いました」

 

予想通りの返事に冥琳は苦笑いする。

 

「……ねェ」

 

その時、不意にロビンが口を開いた。

 

「その出陣、私も一緒に行ってもいいかしら?」

 

「「「「「「「「「「えっ⁉」」」」」」」」」」

 

思いもよらない発言に、全員が驚く。

 

「その黄巾党の本体が陣取っている場所は、ここから北上した所にあるのでしょう?だったら私の目的地の通り道に当たるわ。それに…」

 

「それに?」

 

「私の船長は、そういう騒ぎがある場所にいる事が多いから、そこに行けば再会できるかもしれないわ」

 

「成程ね…」

 

ロビンの話を聞き、雪蓮を始めルフィを知っている者達は皆苦笑いした。

 

「構わないかしら?」

 

「ええ、いいわよ。ただし、黄巾党を倒すまでは客将として加勢して貰うわよ」

 

「わかったわ」

 

「それじゃあ話は決まりね。出陣する者達は、直ちに支度を整えよ!」

 

「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」

 

雪蓮の言葉に、蓮華達は直ちに動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮華達とロビンが黄巾党討伐に向けて準備をしていた頃、ルフィ達の所にも同じ様な参陣要請が届いていた。

 

そして今、麦わらの一味の8人と桃香、愛紗ら義勇軍の首脳陣に蒲公英も加え、15人で会議をしていた。

 

「…以上が、曹操さんからの参陣要請です」

 

「しかし…天和さん達がそんな事をするなんて…にわかには信じがたいですが…」

 

朱里が読み上げた華琳からの参陣要請を聞き、ブルックは考え込む。

 

「鈴々も、あのお姉ちゃん達が悪い事をするなんて、絶対におかしいと思うのだ!」

 

「けど、曹操さんからの手紙から考えても…討伐命令が出ているのは本当みたいだし…」

 

ナミの言葉に全員が考え込む中…

 

「よし!考えてもわかんねェから、とりあえず行ってみよう!」

 

「私も!ルフィさんに賛成です!」

 

ルフィと桃香が勢いよく立ち上がる。

 

「黄巾党が本当に人々を苦しめているのなら、放っておく訳にはいかないですし、もし違っていたのなら、それはその時に考えればいいと思います」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

桃香の言葉に一同は少々呆気に取られていたが…

 

「ふふふ…」

 

愛紗が静かに笑い出し…

 

「確かに…二人の言う通りだ…」

 

「ああ。ここで考えても何にもならねェしな」

 

「考えるにしても、情報を得ない事にはどうにもなりませんし…」

 

「ルフィといい、劉備さんといい…何でこうも核心を突けるのかしらね…」

 

「じゃ…やる事は決まったな」

 

ゾロ、朱里、ナミ、フランキーを始め、全員立ち上がる。

 

「それじゃあ…」

 

「よォし!出陣だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、張三姉妹は州境にある荒野に、数万の雑軍と陣を築いていた。

その中心にある天幕で、張三姉妹は円卓に座り飲茶していた。

 

「だいぶ人数も増えたわね」

 

「ちぃ達の思惑通りになって来たわね」

 

そんな会話をしながら、人和と地和は茶をすする。

 

「…………」

 

対して天和は、一人暗い顔をして項垂れていた。

 

(どうして…こんな事になっちゃたんだろう…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少々遡り、ブルックが離脱してから数日後。

張三姉妹は大舞台での講演を行っていた。

 

ただ以前と違い、3人は手に楕円形の球が付いた棒のような物を手にし、球の部分を口元に寄せて歌っている。

さらに舞台の両端に、大きい箱のような物がいくつも置かれている。

 

『『『き~ぼ~う~の空~へ~と~♪舞い上がれ♪ユ・メ♪蝶ひらり~♪』』』

 

『『『『『『『『『『ほわっ!ほわっ!ほわーーーっ!』』』』』』』』』』

 

『みんなー!今日も来てくれてありがとーう!今日も楽しんで…』

 

天和が挨拶を始めるが…

 

『おい!足踏むんじゃねーよ!』

 

『踏んでねーよ!」

 

『『『⁉』』』

 

『『『『『『『『『『⁉』』』』』』』』』』

 

観客の間でケンカが始まる。

 

『証拠でもあんのかよ⁉』

 

『うるせー!』

 

『ちぃちゃん』

 

『ええ』

 

地和は頷くと、手に握っている棒に向けて…

 

『そこの二人ィー!喧嘩は止めてー!仲良くしてねー!』

 

そう叫ぶと、舞台上にある箱からその声が拡大されて流れだし、会場全体に広がる。

 

『わかったー…喧嘩止めるー…』

 

『仲良くするー…』

 

…と、先ほどまで言い争っていた二人は途端にケンカを止める。

 

『仲良くする…』

 

『仲良くする…』

 

よく見ると、会場にいる観客全員が同じ様に呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台後、3人は楽屋でくつろいでいた。

 

『今日も大盛況だったわね』

 

『すいませーん。今お時間宜しいでしょうか?』

 

『あ!はーい!良いですよー!』

 

外から声が聞こえ、天和が戸を開ける。

 

『于吉さん、お久し振りです』

 

『はい、お久し振りです。それでいかがでしょうか?私がお渡しした道具は?』

 

『もう素晴らしいですよ!』

 

『于吉さんがくれた音を記録できる“蓄音機”!あれのおかげで、ちぃ達今まで通り歌に集中できるし!』

 

『声を大きくする“まいく”と“拡声器”のおかげで、今までよりも沢山お客さんを呼べるようにもなったわ』

 

『そうですか。“拡声器”についている例の“暗示機能”はどうですか?』

 

『あれすっごく便利ね!』

 

『うん!今日もあれのおかげで、お客さんの喧嘩をすぐに止める事が出来たの』

 

『とても助かってるわ。でも…』

 

人和が不思議そうな顔をする。

 

『あんな凄い機能、どうして自分で使わないで私達に?』

 

『ああ。あれは私には使えない機能ですから』

 

『?どういう事?』

 

『えっとですね…“まいく”に向かってめ…お願いをするとそれが“拡声器”を通して拡大され、広範囲に伝わる。

そして“拡声器”を経由することで暗示機能が加わり、聞こえた人々に願いをきいて貰う事ができる。

ここまでは以前説明しましたね?』

 

『はい…』

 

『ですが、これには暗示の効果が弱いという欠点がありましてね。

お願いをする前から、“拡声器”の音に強く聞き入っている必要があるんです。

そのうえ、効果の持続時間が短い為、命令の度に音に聞き入らせる必要があるのです。

ですから、声や音で強く人を惹きつける事ができる方でないと使えないんです』

 

『じゃあ、ちぃ達の歌を気に入っている人達が、ちぃ達の言う事をきいてくれるだけって事?』

 

『そういう事になりますね』

 

『ふーん…』

 

『ああ、そうでした。皆さん、少しその“まいく”を貸して頂けないでしょうか?』

 

『『『?』』』

 

于吉は“まいく”を受け取ると棒状の部分の一部を外し、中から少し黒ずんだ金色の延べ棒を取り出す。

 

『あのー…何をしているんですか?』

 

『この“まいく”は使用できる期間に制限がありましてね。

今、私が取り出した金色の延べ棒は『金仙丹(きんせんたん)』というのですが、これが完全に黒くなると使えなくなってしまうんです』

 

そう言いながら、懐から金色の金仙丹を取り出し、代わりに“まいく”の中に入れる。

 

『定期的に取り換えないといけないので、今後も皆様がこれらを使用するのであれば、度々皆様の所を訪れてお取替えします。

料金の方は要相談ですが、いかが致しましょう?』

 

『そうですね。私達の活動にこれらは必要不可欠だし、お願いします』

 

『了解しました。では、“拡声器”の方もお取替えしますね。“蓄音機”の方は不要ですのでご安心ください』

 

于吉は“すぴーかー”の方も同様に『金仙丹』を取り換え、出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後のある早朝、張三姉妹が宿の一室で寝ていると、何者かが部屋の戸をノックする音が聞こえてきた。

 

『……誰よ…?こんな朝早くから…』

 

人和が目をこすりながら戸を開ける。

 

『お届け物でーす』

 

男が一人、風呂敷に包んだ箱を手渡した。

 

『…?何かしら?』

 

人和は受け取り寝台に戻ろうとするが…

 

『…?』

 

再びノックの音が聞こえ、足を止めて戸を開ける。

 

『お届け物でーす』

 

すると同じ様な包みを渡された。

 

『…?』

 

少しするとまたノックの音が聞こえ…

 

『お届け物でーす』

 

『え?』

 

その後も…

 

『お届け物でーす』

 

『お届け物でーす』

 

『お届け物でーす』

 

『え?え?え⁉』

 

何人もの人が来て同じ様に包みを渡し、部屋の中はその包みで一杯になってしまった。

 

『人和ちゃ~ん…どうしたの~…?…って、えっ⁉』

 

『も~…朝からうるさいわね~…って、何よこれ⁉』

 

天和と地和も起きてきた。

 

 

 

 

 

 

『すっごい量の小包みだね~』

 

『何なのかしら?』

 

地和が包みの一つを開けてみると…

 

『あ!これ十万斤饅頭だ!私これ大好物なのよね~!』

 

そう言って地和は嬉しそうに饅頭を頬張る。

 

『!地和ちゃん、これも十万斤饅頭だよ!』

 

別の包みを開けて天和が言う。

 

『⁉姉さん達、こっちも十万斤饅頭よ!』

 

『『え?』』

 

3つ目の包みを開けた人和の言葉に、さすがにおかしいと思った3人は送られてきた包みを全て調べだす。

 

その結果…

 

『こ…これ全部十万斤饅頭⁉』

 

『ど、どういう事⁉今までも贈り物や差し入れは何度かあったけど、こんなに沢山!しかもみんな同じ物って⁉』

 

『この量からみて、昨日の舞台に来ていた人のほぼ全員が贈ってくれたみたいね…』

 

『えーっと…十万斤饅頭が大安売りされていたから…とかは無いかな…?』

 

『天和姉さん、いくら何でも無理があるわよ。それに贈り物をする人が突然、極端に増えた事はどう説明するの?』

 

『!も、もしかして…⁉』

 

『ちぃちゃん?』

 

『地和姉さん、何か心当たりがあるの?』

 

『ほ…ほら、昨日の舞台の最後に私が挨拶したとき…

 

 

 

 

 

―――――私十万斤饅頭が大好物だから、沢山差し入れして欲しいな~!

 

 

 

 

 

…って、言っちゃったじゃない?』

 

『まさか…それが“まいく”と“拡声器”を通して伝わったから…』

 

『みんな…暗示にかかった状態で…』

 

『ちぃ達もしかして…実は凄い力を手に入れていた…?』

 

3人は思わず顔を見合わせるのだった。

 




字数の都合で、次回に続きます。

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