ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第109話 “立候補”

しばらくして、拘束された華佗が春蘭と秋蘭に連行されて来た。

春蘭は華佗の首に刀を押し付けている。

 

「華佗…わざわざ自分から首を差し出しに来るとはいい度胸じゃない」

 

華琳は未だに華佗の事を許していないらしく、ドスの効いた声で話しかける。

 

「あなたが私に浴びせた恥辱の言葉、忘れてないわよ」

 

「ご…誤解だ!おれはただお前の…」

 

「貴様無礼であるぞ!」

 

「曹操様と呼ばぬか!」

 

秋蘭と春蘭が怒鳴りつける。

 

「そ…曹操様のべ…」

 

「それ以上言ったら本当に首を刎ねるわよ?」

 

「⁉」

 

絶大な怒気を含んだ華琳の言葉に、華佗は青ざめて言葉を飲み込んだ。

 

「わ…わかったからとりあえず話を聞いてくれ…!」

 

「ま…まァまァ曹操殿…とにかく話だけでも聞いてみてはどうだろうか?」

 

「そうだぞ。こいつ悪い奴じゃねェし」

 

「まァ…あなた達がそこまで言うのなら…」

 

愛紗とルフィの言葉に、華琳はようやく少し落ち着きを取り戻した。

 

「いいわ。とりあえず話だけは聞いてあげましょう」

 

「ほっ…」

 

「ただし!」

 

「⁉」

 

「もしくだらない事だったらその時は容赦なく首を刎ねるからそのつもりでね!」

 

「っ!」

 

どす黒い笑みを浮かべながらそう言う華琳に、華佗は冷や汗をかくのだった。

 

 

 

 

 

 

そして、華佗が持ち込んで来た情報というのは…

 

「何ですって⁉黄巾の乱は『太平道』の仕業⁉」

 

「ああ。おれが掴んだ情報によると、太平道の妖術使いが張三姉妹に接触し、妖術を用いた道具を舞台に使うよう勧めたらしい。

その道具には、音や声で人に暗示をかけて操る機能があったそうだ」

 

「では黄巾党の者達は、皆それで張三姉妹に操られているという事ですか?」

 

稟が訊ねる。

 

「ああ。だが、本当に問題なのはそれではない」

 

「…と言うと?」

 

「その道具には、張三姉妹にも知らされてなかった、恐ろしい副作用がったのだ」

 

「恐ろしい副作用?」

 

「持ち主の悪しき心を増幅させ、悪行へと奔らせる作用だ」

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

「成程…それの力に操られて、この様な騒動を起こしてしまったと…」

 

ブルックは嘆く様に呟く。

 

「ああ。張三姉妹は最初、暗示機能を使い、舞台中に起きる観客同士のいさかい収めていたらしいが、ある街で舞台公演を行っていた所、役人から言いがかりをつけられ、身の危険を感じ…」

 

「暗示機能を使って支持者達を操り、抵抗した所、暴力沙汰になってしまったという訳ですね…」

 

…と、朱里。

 

「ちょっと待って!あなた達は一体何の話をしているの⁉」

 

話に追いつけなくなっていた蓮華が声をあげる。

 

 

 

 

 

 

「大陸の支配を目論む妖術使いの集団ね…」

 

華佗は孫家の面々や美羽らに『太平道』の事を説明した。

 

もっとも、美羽はつまらなそうにあくびをし、七乃も特に興味なさそうにしていたが。

 

「妖術などにわかには信じがたいが、天の御遣いが実在する以上、妖術使いがいたとしてもおかしくはないな…」

 

…と、雷火。

 

「何にせよ、この大陸中での混乱がそいつらの思惑なのだとしたら、これ以上事態が大きくなるのは何としても防がないと…!」

 

「そうね!これ以上そいつらの思惑通りになったら、確実に良くない事が起こるわ!まずは何としてでも黄巾の乱を沈めましょう!」

 

蓮華の言葉に華琳は頷く。

 

「ではその為にも、黄巾党本体の党員並び、張三姉妹を討伐し…」

 

「っ!ちょっと待って下さい!」

 

桂花の言葉を遮り、桃香が大声をあげた。

 

「黄巾党の党員は張三姉妹に操られているだけで、張三姉妹だって太平道の妖術で操られているだけなんですよね⁉

だったら、その原因になっている妖術の道具を何とかすればいいだけで、別に黄巾党を討伐しなくても…!」

 

「あなた…事態が良くわかっていないみたいだから、もう一度わかりやすく説明してあげるけれど、張三姉妹は数万の黄巾党に守られているのよ」

 

桃香は必死に訴えるが、桂花は冷たく返す。

 

「それはわかっています!」

 

「なら、黄巾党を討伐しないと、その妖術の道具には手も足も出ないことぐらいわかるでしょ?」

 

「でも、みんな操られているだけなのに…!本当に悪いのは太平道なのに…!」

 

「馬鹿言わないで!誰の血も流さないでこの事態を収めるなんて、不可能だという事ぐらい、その帽子置き場にしかならない頭でもわかるでしょ⁉

黄巾党を皆殺しにしてからでないと、張三姉妹に会う事すらできないのよ⁉

説得するにしたって、まずはそれからでしょ⁉」

 

「で、でも…それなら…」

 

「それに、張三姉妹に『妖術の道具を渡して下さい』って言えば、簡単に渡して貰えるとか、まさかそんな風に考えてはいないわよね⁉」

 

「えっと…そこは…」

 

「いい加減にしなさいよ!それとも何⁉数万の黄巾党を素通りして、張三姉妹に直接会いに行けて、張三姉妹を説得する事ができるとでも言うの⁉」

 

「ハーイ!私できるかもしれませーん!」

 

「ほら見なさい!やっぱりできるんじゃ………」

 

 

 

「「「「「「「「「「………え?」」」」」」」」」」

 

曹軍、孫軍の全員の視線が、挙手したブルックに集った。

 

因みに、美羽と七乃は未だに我関せず状態である。

 

 

 

 

 

 

「…という事なんです」

 

「へェ…張三姉妹とあなた達にそんな接点が…」

 

朱里からブルックと張三姉妹がかなり親しい仲である事、その人脈により桃香達と張三姉妹が知り合いである事を聞き、華琳達は驚いた。

 

「確かに…そこまで親しい仲で、支持者達にも顔が広いのだとしたら、張三姉妹に直接会って説得する事ができるかもしれないわね……荀彧?」

 

「ぐぎぎぎぎぎ…!」

 

華琳の言葉に、桂花は苦虫を噛み潰した様な表情になる。

 

「荀彧、自分の意見を主張するのは良いけど、もう少し他人の話を聞く姿勢も持ちなさい」

 

「は…はい……!」

 

「で…でも…私達なら説得できるかもしれないというのは途中で思いついただけで、どちらかというと私はただ感情任せに反対していただけですから…」

 

桂花があまりにも険しい表情をしている為、桃香は思わず庇い立てする。

 

「それはそれ、これはこれよ。途中からあなたの話を聞く気が、明らかに無くなっていたもの。

それにどうもこの子は自分以外の我が軍の軍師が気に入らないらしくて、きつく当たる事が多いのよね…」

 

「少しでも意見が違うと、徹底的に否定したがりますからね…」

 

「口調や態度も、華琳様に対するものと明らかに違いますしねー」

 

『しかも途中で明らかにただの悪口を混ぜて来るしなー』

 

「~~~っ!」

 

華琳、稟、風さらには宝譿にまで言われ、桂花は人間離れした形相になるが、否定も反論もしなかった。

 

実の所、ここ最近華琳の周りに女が増え、さらにそれまで自分が独占していた“曹軍の軍師”という立場に風と稟が現れた為、桂花はかなりイライラしていた。

その為、半ば八つ当たりで他者にきつく当たっていたのは事実だったのである。

 

「しかし…張三姉妹が本当はただの旅芸人だったとはのう…」

 

…と、ブルックが説明の為にどこからか持って来た、張三姉妹の貼紙を手に雷火が呟く。

 

(ぶ…ブルック…!テメェまでこんな可愛い子さん達と~~~!)

 

因みに、サンジはその貼紙を見て、憤怒の形相を浮かべている。

 

「曹操さん達は、本当に張三姉妹の事を何も知らなかったの?」

 

ナミが訊ねる。

 

「ええ。大陸各地で黄巾党を名乗る輩が暴れていたけれど、そいつらは張角の正体を全く知らないみたいなのよ。

大半の連中はまるで神様か何かの様に崇めていたわ」

 

「まァ…美しい女性が神に匹敵する存在だという事に関しては、激しく同意だがな…」

 

「こんな汚らわしい奴らに崇められるだなんて…黄巾党の首魁も大変ね…」

 

「全くですわ…本当におぞましい…」

 

桂花と栄華は、サンジを蔑む様な目で見る。

 

「―――とにかく、そういう訳で朝廷や諸侯の間でも、正体は謎のまま。

だから旅芸人の張三姉妹と、黄巾党の首魁である張角達が同一人物である事は、最初に本人達と対立した役人達と、ここにいる私達ぐらいしか知らないわ」

 

「因みに、朝廷から渡された張角の人相書がこれなのですが…」

 

そう言って柳琳が取り出した紙には…

 

「うわー…何だこの怪物…」

 

ウソップが言う通り、そこに描かれていたのは口が耳まで裂け、腕が8本、足が5本で毛が生えており、角に牙、尻尾まで生えているヒゲモジャの男だった。

 

「すげーなー!こんな奴いたら仲間にしてェ!」

 

「「「フザけんなァ!」」」

 

ルフィの言葉にゾロ、ウソップ、サンジがツッコむ。

 

「しかし…顔も素性も知らない人物を崇拝する者が、短期間で大陸各地にそこまで現れるとはな…」

 

愛紗が呟く。

 

「その事だが…おれが調べた所、張三姉妹が事件を起こすかなり前から大陸各地―――それも無法地帯や暴政による貧困が激しい所で、ある噂が流れていたそうだ」

 

「噂?」

 

「『近々、黄色い布を身に纏った人物が朝廷に反旗を翻す』と」

 

「成程…そこに黄色い布が目印の張三姉妹が役人と対立した事件が知れ渡れば、国に不満を持っていた民衆や安全に略奪を行いたい賊は、みんな黄巾党に加担するでしょうね」

 

…と、華琳。

 

「おそらくその噂や、張三姉妹が役人と対立したのも、裏で太平道が糸を引いていたのだろうな…」

 

「―――だが、何にせよ…」

 

華佗が説明を終えると、雷火が口を開く。

 

「ブルック殿がこちら側にいたのは、まさに天の助けじゃな」

 

「そうですね~。張三姉妹がいる黄巾党の本体なら、ブルックさんの事を知っている本来の支持者も多いでしょうし~、張三姉妹にとっても恩人に近い人物なら、降伏を促す事もきっとできますよ~」

 

雷火と穏は言うが…

 

「けど…少し不安もありますね…」

 

亞莎が口を開く。

 

「華佗殿の話では、張三姉妹は妖術のせいで性格が悪くなっているとのこと。恩を仇で返す可能性も否定できません」

 

「それに…青州は全体的に善政が施されていませんから、この辺りの住民が黄巾党に加入しているのだとしたら、張三姉妹本人達やその支持者達よりも敵対心を持っている方が多いかもしれません…。

それでは、張三姉妹が降伏しても党員が抵抗するかもしれませんし、ブルック殿が張三姉妹に会えない可能性も…」

 

「確かに…それはあり得るわね…」

 

「もしそうなった場合、我々がここに布陣している事もバレる。ブルック殿が説得に失敗した場合の策も考えておくべきね」

 

亞莎と包の言葉に、蓮華と華琳は言う。

 

「大丈夫♡何万の敵が来ようとも、ちゃんと女性だけはおれが守るぜ♡」

 

「お主がただの馬鹿だという事はよーくわかったわ」

 

雷火は冷たく言い放つのだった。

 

「……ねェ華佗さん、ちょっと思ったのだけれど…」

 

先程から何かを考えていたロビンが口を開く。

 

「何だ?」

 

「張三姉妹は暗示で黄巾党の党員を操っているという話だったけれど、その暗示を私達で解く事や妨害する事は出来ないの?

それができれば、黄巾党の統率された行動に乱れが生じて、少しは有利になると思うのだけれど…」

 

「ふむ…。確かに不可能ではない…というより、単に暗示を解くだけなら、そこまで難しくはないが…」

 

「どういう事ですか⁉」

 

桃香が強めの口調で訊ねる。

 

「まず、張三姉妹が使っている妖術の道具だが、それには“音を記録し再生する道具”と“音を大きくして広範囲に伝える道具”、そして“声で命令を伝える道具”の三つがある。

この内、暗示機能があるのは“音を大きくする道具”で、張三姉妹が“声を伝える道具”に命令すると、“音を大きくする道具”を経由して人々に伝わり、操る事ができる。

だが、この暗示は効果が弱く、“音を大きくする道具”から流れる音に強く聞き入っている人物にしかかからない。

そのうえ、暗示自体の持続時間が短い為、定期的に暗示をかけ直す必要があるんだ」

 

「成程…その道具から聞こえる張三姉妹の歌で人々の心を奪い、それを利用して暗示をかける。

張三姉妹が定期的に舞台を開催しているのは、暗示をかけ直す為だったのね」

 

「それじゃあ、暗示自体は放っておけば勝手に解けるから、後は黄巾党の奴らの気を、張三姉妹の歌から逸らす事ができれば、妨害できるって事か…」

 

蓮華とウソップが呟く。

 

「そういう事だ…」

 

「目には目を歯には歯をと言いますし…歌から気を反らすのであれば、他の歌い手の歌を使うのが良いかもしれませんね…」

 

…と、亞莎。

 

「でもそれは、張三姉妹に匹敵する歌い手がいなければ不可能よ」

 

…と、桂花。

 

「歌ならブルックだ!コイツならきっと大丈夫だ!」

 

「ルフィさん、この作戦は私が天和さん達の説得に失敗した時の為の作戦です。私は参加できない可能性もありますから、私以外の人物から選ばなければ…」

 

「う~ん…」

 

ルフィが首をひねったその時…

 

「歌なら妾に任せるのじゃ!」

 

「「「「「「「「「「え⁉」」」」」」」」」」

 

意外にも、それまで我関せずだった美羽が立候補した。

 

「七乃、一曲披露して見せようぞ!」

 

「はーい!」

 

 

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