ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第110話 “バカにするな”

「「胸の♪奥にしまい~♪今を♪もっと信じて~♪」」

 

…と、七乃が胡弓を演奏し、美羽と2人で歌って貰った。

 

「ふふん!どうじゃ?」

 

「すごかったです!」

 

「袁術ちゃんも張勲さんも本当に上手ね!」

 

「いや~音程や抑揚も素晴らしい!実に見事な歌でした!」

 

桃香、ナミ、ブルックが絶賛し、他のみんなもあまりの上手さに驚いている。

 

「意外ね…袁術にこんな特技があったなんて…」

 

「蜜を舐めるしか能がない生き物だと思っていたのに…驚いたわね…」

 

蓮華と華琳も驚く。

 

「蜜を舐めては綺麗な声で歌を歌うだなんて、まるで蟋蟀(コオロギ)ね」

 

「どっちかっていうと(セミ)じゃないですか?」

 

…と、桂花と包は皮肉を言う。

 

「わははは!苦しゅうない!もっと褒めるが良いぞ!」

 

「「…………」」

 

しかし、美羽には全く効かなかった。

 

「さすが美羽様!どんな皮肉も通じないおめでたい頭は、天下一ィ!」

 

「そうであろう!そうであろう!」

 

「あの張勲っていう人、さりげに酷い事言うわね」

 

「言われた方が気づいてねェんだから、わざわざ言ってやるな…」

 

ロビンとウソップはそんな会話をする。

 

「曹操さん、これなら何とかなるんじゃないでしょうか?」

 

朱里が進言する。

 

「そうね…。ただ、張三姉妹は三人組…。できればこちらももう一人歌い手が欲しい所だけれど…」

 

華琳は考え込む。

 

「そういえば、関羽さん前に袁紹さんの所で歌った時、結構上手でしたよね?」

 

「あ、いえ…音痴ではありませんが、張三姉妹に対抗できる程では…」

 

「こんな事なら、姉様に頼んで大喬と小喬を連れてくれば良かったわね…」

 

「そうじゃのう…あとは太史慈の奴も中々上手かったし、あやつだけでも来て貰えばよかったのう…」

 

「よし!仕方ねェ!おれが歌う!」

 

そう言って炎蓮が立候補した。

 

「「「げっ⁉」」」

 

「孫堅殿は歌が上手なのですか?」

 

「まァ好きではあるな!」

 

「それでは、歌って貰えるかしら?」

 

「おう!」

 

愛紗と華琳がそんな風に話している間に、蓮華、雷火、穏は天幕の隅に逃げ、両耳を塞ぐ。

 

そして炎蓮はスウーと息を吸い込み、歌いだした。

 

そこから先はまさに阿鼻叫喚の地獄だった。

骨は砕け、皮膚がただれ、腸が引きちぎれるかの様な苦しみが、その場にいた全員を襲った。

 

歌い終わった時、耳を塞いでいた3人以外、全員地に伏し、意識がもうろうとしていたという。

 

「どうだ?」

 

「すげ~な…お前の歌…」

 

感想を求められ、何とかルフィが言葉を絞り出した。

 

「ウチの怪物3人組が…全員倒れるとはね…」

 

「いや~…耳が壊れるかと思いましたよ…。私、耳ないんですけど…」

 

「曹操さ~ん…大丈夫ですか~…?」

 

「わ…私は大丈夫よ…。というより…この状況で他人を気遣うなんて…あなた凄いわね…」

 

思わぬ形で華琳の桃香への評価が上がった。

 

「ああ…蜂蜜が…飲みたい…の…じゃ…」

 

「ああ~!美羽様ァ~!逝っては駄目です~!」

 

「お師さ~ん…蓮華様達も~…ひどいですよ~…」

 

「そ…そういう事なら…先に言って下さい~…」

 

「ごめんなさい…二人は最近になって首脳陣入りしたから、知らなかったわよね…」

 

「少し前までは宴の度に歌いおっての…それはもう大変じゃったわい…」

 

「ルフィさんが例の踊りを教えてからは、そっちに夢中になって歌わなくなっていたんですけどね~…。ここに来て再来するとは…」

 

「―――で、どうだ?三人目はおれでいいか?」

 

「えっとその…歌は…まあ良かったのですが…声の相性というか、方向性が袁術さん達とは異なっている様だったので…お二人と一緒に歌うにはちょっと…」

 

ブルックがやんわりと却下する。

 

「ちぇっ!そうかよ…」

 

「こうなったら、我が軍の中から選ぶしかないわね…」

 

華琳は起き上がると、腕を組んで再度考え込む。

 

「あー…ごほん!ごほん!」

 

「春姉、どうしたっすか?急に咳して?」

 

「風邪でもひいたのか姉者?」

 

「我が軍で歌が上手い者…」

 

「ごほん!げほん!ごっほん!」

 

「……誰かいたかしら?」

 

「おっほん!ごっほん!げっほん!」

 

「夏侯惇、少し静かにして貰えるかしら?」

 

「あう~~~…」

 

「姉者静かにしろ、うるさくしては曹操様の思慮の邪魔になるぞ」

 

「うう…」

 

「あの~…お姉様…」

 

「何?曹純?」

 

「良かったら、私にやらせて貰えないでしょうか?」

 

「あなた、歌に自信があるの?」

 

「自信があるという訳ではないですけど、実はよく歌う事があって…」

 

「へェ…知らなかったわ…。じゃあ、試しに一曲歌って貰えるかしら?」

 

「はい!」

 

…で、柳琳に歌って貰ったが…

 

「ららら~ら~らら~♪辣油(ラーゆ)♪りりり~り~りり~♪林道~♪るるる~る~るる~♪柳琳~♪れれれ~れ~れれ~♪蓮華(レンゲ)~♪ろろろ~ろ~ろろ~♪驢馬(ロバ)~♪」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

自作と思われる微妙な歌詞に、お世辞にも―――否、百歩譲っても上手とは言えない歌唱力に、全員黙り込んでしまった。

美羽に至っては、歌があまりにも退屈なのか居眠りをしている。

 

「…いかがでしたでしょうか?」

 

歌い終わった柳琳は感想を求める。

 

「すげーなお前ー!」

 

「柳琳の歌、頭の中にすっごく響いたっす~!」

 

「本当に凄かったのだ!」

 

皆がコメントに困る中、ルフィ、華侖、鈴々が称賛する。

 

「それで…私が三人目という事でよろしいでしょうか?」

 

「えっと…やはり相性が良くないかと…」

 

「そうですか…」

 

ブルックにの言葉に柳琳は若干落ち込む。

 

「えっと…曹純?」

 

「何ですかお姉様?」

 

「あなたはその…今みたいな歌を良く歌うの?」

 

「はい。ちょっと恥ずかしいので人目を避けて、時々…」

 

「華琳様…そういえば住民から時々人気のない山奥から、不気味な呪歌が聞こえてくるという訴えがあったのですが…」

 

「桂花、帰ったらすぐにその件を処理するわよ。内密かつ迅速にね…」

 

「どうかしましたか?」

 

「何でもないわ。それよりも、早く三人目の歌い手を決めないと。どうしたものかしらねェ…?」

 

「華琳様ー。他に当てがないんでしたら、稟ちゃんなんていかがでしょうかー?」

 

「郭嘉が?」

 

「ちょっ⁉風⁉何を言って…!」

 

「稟ちゃんは故郷の村では、“黄河の歌姫”と呼ばれていた程、お歌が上手でしてねー」

 

『風呂上がりに全裸のまま、鏡の前で大声で歌って悦に浸っている事もあるしなー』

 

「これ宝譿、そういうのは所謂、人には聞かれたくない話というやつなのですから、大勢の前で喋ったりしてはなりません」

 

「うう……」

 

羞恥のあまり稟は顔を赤くする。

 

「それは意外ね。郭嘉、試しに歌って貰える?」

 

「は、はい…」

 

 

 

 

 

 

「絆♪熱い♪絆♪抱いて〜♪」

 

「すごいですねー!」

 

「中々やるではないか!」

 

一曲歌って貰い、桃香と美羽を始め皆称賛する。

 

「ブルック殿、これなら良いんじゃないかしら?」

 

「そうですね!歌もおじょ……相性が良さそうですし!」

 

「それじゃあ、これで人員は決まりね。劉備」

 

「は、はい!」

 

「ブルック殿による説得、袁術、張勲、郭嘉による歌姫の策。この二つが失敗したら、黄巾党並びに張三姉妹を武力で討伐する。それでいいわね?」

 

「はい!」

 

華琳の問いに、桃香は答える。

 

「よーし!作戦は決まったな!」

 

「それじゃあ、まずは歌合戦の準備をして、それから説得を試みましょう。ブルック殿、作詞作曲を手伝って貰えるかしら?」

 

「はい。では手伝いますから下着見せて貰って…げふっ⁉」

 

「やめんかァ!」

 

「死ね!万年発情妖怪!」

 

ナミと桂花がブルックをしばく。

 

「よーし!ならば妾達はさっそく練習を始めるぞ!七乃、そこの眼鏡も一緒に来るのじゃ!」

 

「はーい」

 

「は、はい!」

 

「それじゃあおれは舞台でも作るか!ウソップ手伝え!あと曹操、真桜達の事ちょっと借りるぜ!」

 

「構わないわ」

 

「それだったら、ウチの甘寧も使って頂戴。船の整備を自分でやっているから、多少は大工作業の心得があるの」

 

「そりゃ助かるぜ。それから…楽器が得意な奴ら何人か手伝ってくれねェか?あと、柑橘系の果実や木炭、おれが言う通りの金属を用意して貰いてェんだが」

 

「?わかったわ。曹洪、予算をやり繰りして、彼らが欲しい物をできるだけ用意してあげて」

 

「わかりましたわ」

 

「魯粛、我が軍の金品管理はお主に任せる。可能な限り、あやつらの要望を叶えてやれ」

 

「任せて下さい!」

 

「あとは…私とロビンで衣装も作っておこうかしら?」

 

「それでしたら、私もお手伝いします。筵や草鞋をずっと編んできましたから、手先の器用さには自信があるので」

 

「わたくしも!袁術ちゃんに似合う、それもう可愛いのを作って差し上げますわ!」

 

「長期戦になりそうだな…チョッパー、薬や食料の備蓄、後で確認しておくぞ」

 

「おう!」

 

「ねーねー、鈴々達は何をすればいいのだ?」

 

「鈴々ちゃんや他の部将さん達には、フランキーさん達の手伝いや、これ以上黄巾党の数が増えない様に、近隣の道を封鎖して貰いましょう」

 

「了解っす!」

 

「ぐこー」

 

「…で、テメェはいつまで寝てんだ居眠りマリモ!」

 

「お?朝か?」

 

「夜になってねーよ!」

 

「ぐー…」

 

「風!あなたまで何寝てるんですか⁉」

 

「おおっ⁉」

 

「夏侯惇さん、元気ないわね…」

 

「絡むとまた面倒な事になるだろうから、放っておいてくだされ」

 

「私は~小鳥~…♪歌えぬ~小鳥~…♪」

 

 

 

かくして作戦が決まり、連合軍の陣は慌ただしく動き始めた。

 

基本的には歌と踊りの練習をする稟、美羽、七乃。

舞台作りを行うウソップ、フランキー、真桜、思春。

作詞作曲を行うブルックと華琳。

衣装作りを行うナミ、ロビン、桃香、沙和。

それらに必要な予算や物品を調達する栄華と包。

それ以外の軍師、ルフィら武闘派。

この6グループに分かれて行動した。

 

美羽達の所には時々ブルックがやって来てコーチをしたり、桃香や沙和、シャオが振付についての意見を出し合っていた。

チョッパーと華佗も毎日の様に訪れては3人の体調をチェックしたり、サンジと流琉が喉の調子を整える飲み物などを差し入れしたりもした。

 

フランキー達の大工作業は力仕事が多い事もあり、ルフィら武闘派が毎日交代で手伝いに来ていた。

フランキーは予算や材料調達の点で栄華と包、ブルックや華琳など楽器を得意とする者達と長時間話し合う事も多かった。

ウソップはナミ、栄華、沙和、包と舞台の着色や装飾、デザインについて話し合う事も多かった。

 

ブルックと華琳による作詞作曲は、何日にもわたり行われた。

人の心を惹きつける為、聞く側が飽きない様になるべく沢山曲を作った。

 

衣装作りはナミとロビンを中心に、天の国の衣服を参考にして行われた。

材質や構造は多少異なるが、人を惹きつけるには十分だった。

 

それ以外の軍師、武闘派は黄巾党のいる平野に通じる道を岩や大木で塞いだうえ、兵士を待機させて完全に封鎖した。

 

 

 

そんなある日の事。

 

「ほっ…」

 

桃香は一人、馬に乗って黄巾党の陣の近くに来ていた。

 

布陣の事については何もわからないが、義勇軍の総大将である以上、一度確認しておいた方が良いだろうと考えたのである。

 

「あれが黄巾党の陣…」

 

崖沿いから陣を見下ろし呟く。

 

自分達の何倍もの天幕が張られ、その真ん中に大きな舞台がある。

その舞台と一体化する形で一つの天幕が張られ、近くに箱型の馬車が停められていた。

 

(あそこに張角さん達が………!)

 

その時、視界の隅に一人の先客が胡坐をかいて座っているのが映った。

 

「ルフィさん!」

 

「桃香」

 

座ったまま返事をするルフィに、桃香は馬から降りて駆け寄る。

 

「黄巾党…すごい数ですね…」

 

「そうだな」

 

「でも良かったです。上手く行けば、戦わないで解決する事ができそうで…」

 

「……なァ桃香」

 

「何ですか?」

 

「お前、本当に悪い奴としか戦わないつもりなのか?」

 

「はい、勿論です!だって悪い人でないのなら、話せばわかってくれるでしょうから、戦う必要なんてないですし…」

 

「甘いんじゃねェか?」

 

「………え?」

 

一瞬、桃香は聞き間違えたのかと思った。

 

桃香自身、最初の軍議の際に桂花に反対された事もあり、自分の考えが甘いのかもしれないという自覚は少なからずあった。

しかし、それをルフィに言われるとは思っていなかった。

 

何故なら桃香はルフィの事を、どことなく自分と同じ様な人間だと思っていたからである。

実際、今までルフィは真っ先に桃香の考えに賛同してくれる事が多かった。

 

故に、今自分の考えを甘いとハッキリ否定された事が信じられず、桃香は固まってしまった。

 

「見ろよ」

 

桃香が何も言えずにいると、ルフィは顎で張三姉妹のいる天幕を示し、口を開く。

 

「あいつらはあんな遠い所にいるんだ。お前の声なんて聞こえるワケねェ」

 

「…………」

 

「この国の偉い奴らだってそうだ。偉い奴はみんなデカい建物の中にいて、簡単に中には入れねェ。お前が何言ったて聞こえるワケねェぞ」

 

「……何が言いたいんですか?」

 

「小物は何もできねェ」

 

「っ!」

 

「この国は今()()()()()()になってんだ。

良い奴だろうが好きな奴だろうが、戦う理由があるなら戦わねェとダメだし、悪い奴だろうが嫌いな奴だろうが、戦ったらダメな理由があるなら戦ったらダメだ。

それができねェといつまでも小物だぞ」

 

「だ…だったら…!」

 

「…………」

 

「だったら私は大物になれなくたっていいです!小物のまま、小物なりにできる事をやって…!」

 

ドォン!

 

そこまで言った瞬間―――桃香はルフィに頬を殴られた。

 

「……?……っ⁉」

 

混乱した桃香が顔をあげると、憤怒の形相を浮かべたルフィが立っていた。

ルフィは桃香に近づき、その胸倉を掴む。

 

「お前本気で言ってんのかァ⁉」

 

「っ⁉」

 

その言葉には、桃香が宝剣を奪われたいきさつを話した時や袁術の暴政を知った時よりも、ずっとずっと激しい怒りが込められていた。

桃香は殴られた事やその痛みより、それ程までに激しい怒りが自分に向けられている事が衝撃的だった。

 

何故そこまで怒っているのか?

何がそこまで気に食わなかったのか?

訳がわからず、桃香は完全にパニックになってしまった。

 

「お前!愛紗が!あいつがどんな思いで力を欲しがって、手に入れて、使ってるかわかってんのかァ⁉華琳や蓮華、おれ達だってそうだ!」

 

「………⁉」

 

「フー…フー…」

 

ルフィはそこまで怒鳴ると桃香を話し、その場から立ち去ろうとする。

 

「……()()

 

「っ!」

 

…が、途中で立ち止まり、振り返らずに話しかける。

 

「義勇軍をやるのもやめるのも、お前の勝手だ。好きにすればいい」

 

「…………」

 

「でも、あいつらをバカにするのは絶対許さねェからな…!」

 

「…………」

 

そう言い残すと、ルフィは去って行った。

 

 

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