ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第111話 “求めた力”

それから少して、桃香は連合軍の陣に戻って来た。

 

桃香は陣内を歩きながら、まだ赤く腫れている頬に手を添え、先程のルフィの言葉を考える。

 

―――――でも、あいつらをバカにするのは絶対許さねェからな…!

 

(私が…関羽さん達を馬鹿にしてる…?)

 

「「ハァーーーッ!」」

 

「!」

 

不意に前方から声と太刀音が聞こえ、顔をあげると華琳と春蘭が得物を手に勝負していた。

近くには香風もいる。

 

「まだまだよ!春蘭、もっと来なさい!」

 

「はい!」

 

返事をするなり春蘭は華琳に突っ込み、一切の容赦もなく華琳に斬りかかる!

 

「ハァーーーッ!」

 

華琳の方も春蘭の攻撃を全て捌き、鬼気迫る勢いで春蘭に得物を振るう!

 

(すごい…!)

 

桃香はその様子を瞬き一つせずに見入っていた。

 

「華琳様ー春蘭様ーそろそろ時間ー」

 

しばらくして、香風が声をあげると2人は得物を下げた。

 

「そう…。春蘭、いい稽古になったわ。ありがとう」

 

「はっ!では、私は部隊の訓練に向かいます!」

 

「ええ。いってらっしゃい」

 

春蘭は香風と一緒に去って行った。

 

「……!劉備!」

 

「あ…曹操さん…。すいません、覗くつもりはなかったんですけど…」

 

「別に構わないわ。どうしてここに?」

 

「その…考え事をして歩いてたら、いつの間にか…」

 

「そう。……所で、その腫れ上がったほっぺたはどうしたの?」

 

「こ、これは…その……」

 

「……ひょっとして、ルフィに殴られた?」

 

「えっ⁉」

 

「その様子だと図星みたいね」

 

「な、何でわかったんですか⁉」

 

「私もあるのよ。彼に殴られてお説教された事がね。だから何となくね…」

 

「そうだったんですか…」

 

「……ねェ、良かったら少し話さない?」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は華琳の天幕に移動し、向かい合わせに席に着いた。

 

「お口に合うといいのだけれど…」

 

「ありがとうございます。まさか、曹操さん自らお茶を淹れてくれるなんて…」

 

「構わないわよ。それに今は将や太守ではなく、ただの曹操孟徳としてあなたと話をしたいから」

 

「そうですか…」

 

「言っておくけど、あなたとルフィの間に何があったのか、無理に聞き出すつもりはないわ」

 

「え?」

 

「話しにくい事もあるでしょうし、あなたが話したいなら聞いてあげても良いけど」

 

「……いえ、もう少し自分で考えたいですから…」

 

「そう」

 

「……それにしても驚きました。曹操さんも武術の鍛錬をするんですね…」

 

「ええ。戦場で何もせず後ろで見ているより、先陣を切って兵を率いる方が性に合ってるもの」

 

「私、武術の事とか何もわかりませんけど、さっきのを見ていただけで、曹操さんがとても強いんだって事は良くわかりました」

 

「当然よ。そこら辺の将に劣るつもりはないわ」

 

「美食の会の時の料理といい、曹操さんって本当に何でもできるんですね…」

 

「……そう言って貰えるのは嬉しいけど…私、あの後反省したのよ…」

 

「え?」

 

「あの時まで、私は誰かに食べさせる為に料理を作るという考えが全くなかった。

能力というのは、役立ててこそ価値があるもの。それなのに私はただ自分を着飾る為だけに使っていた。調理技術に限らず、様々な能力をね…。恥ずかしかったわ…」

 

「それでも…私は曹操さんが羨ましいです。強くて、頭もよくて、色んな事ができて、力とか名誉とか、私にはないものを沢山持っていて…」

 

「……劉備、あなたは私の様になりたいの?」

 

「はい」

 

「……本当にそう思っているの?」

 

「……どういう事ですか?」

 

「……さっき、私もルフィに殴られたっていったわよね?―――私はその時、自ら命を絶とうとしていたの」

 

「え⁉」

 

「そんな私に、彼は『そんなの最低だ』って、そう怒鳴ったわ」

 

「?“最低”ですか?」

 

「何とか逃げ延びて皆と合流し、城に戻った時、その意味が良くわかったわ」

 

「…………」

 

「私はその時、すでに自らの野望の為に何人もの部下を戦わせ、死なせてきた」

 

「っ!」

 

「私が自ら命を絶つ事は、私自身の手でその者達の死を無駄にする行為だった。

それだけじゃない。私が死んだら主を失った私の部下達、領主を失った陳留の領民達はどうなるか…?私の死は、その者達の暮らしを壊す事になりかねない。

だから私は軽々しく死ぬ訳にはいかないのだって…何百人、何千人もの部下を死なせても、私が生きる事で何万、何十万もの命が救われるなら、私は生きなければならないのだって…そう気付いたわ。

私が犠牲にされる部下の側になったとしても、これは正しい考えだと思うわ…」

 

「…………」

 

「さっきも言った通り、能力や力は役立ててこそ価値があるもの。

ただ持っているだけでは意味がない。

劉備、あなたは本当に私の様になりたいの?

大勢の兵と民…人の命を握り、それを使()()立場になりたいの?」

 

「…………」

 

『お姉様、少々よろしいでしょうか?』

 

「栄華?ちょっと待ってて、今行くわ」

 

天幕の外から栄華の声が聞こえ、華琳は立ち上がる。

 

「悪いわね劉備、少し待ってて貰える?」

 

「いえ、私ももう戻りますから…」

 

「そう…。劉備」

 

「?」

 

「あなたは少し前までただの庶人だったのだから、すぐに答えが出る訳ないわ。ゆっくり考えなさい。

ただ、それがどういう事かよく知らないまま望み、叶った後に後悔する様な事はしないようにね。

周りにも迷惑だし、あなた自身の為にも良くないわ」

 

華琳はそう言い残すと、天幕を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(大勢の人の命を…使う…)

 

華琳の天幕を出てから、桃香は先程の華琳との会話を思い返しながら歩いていた。

 

「劉備殿」

 

「!孫権さん!」

 

すると、前方から馬に乗って来た蓮華と鉢合わせた。

 

「どちらへ?」

 

「黄巾党の陣を見に行って戻って来たの」

 

「孫権さんもですか?」

 

「“も”って事は…あなたも?」

 

「はい、少し前に」

 

 

 

 

 

 

休憩もかねて、蓮華はそこで少し桃香と話をしていく事にした。

今は馬を降り、桃香と並んで地面に腰を下ろしている。

 

「すごい数でしたよね」

 

「そうね、もしあれと正面から戦っていたら、相当厳しい戦になっていたわね。……ありがとう劉備」

 

「え?」

 

「あなたが武力討伐以外の作戦を提案してくれたおかげで、解決の糸口が見えて来た。

その事であなたに一言お礼を言っておきたかったの」

 

「…でも、私はただ感情任せに反対しただけで…」

 

「それでもよ。あなたがああ言わなければ、誰も武力討伐以外の方法を考えようとしなかったわ。

私達は無意識の内に、自分達の行動の選択肢を自分で減らしてしまっていた。

だから、あれはあなたの功績よ」

 

「……そう言って貰えると嬉しいです。ありがとうございます」

 

「そう。……実を言うと、私も戦は嫌いだから、武力討伐の前にそれ以外の策が二つも用意できて、すごく安心したの…」

 

「孫権さんも戦は好きじゃないんですか?」

 

「当たり前じゃない。

戦になれば敵味方問わず何人もの人が死ぬ。

それに戦を行う為に、沢山のお金や武器、食料が必要になって民を疲弊させる…。

好きになんてなれる訳ないでしょう?」

 

「……そうですよね」

 

「正直に言うと、母様や姉様が迷わず戦に奔れる事が、恐ろしくて仕方がなかったわ……」

 

「私…孫策さんには会った事ないですけど、孫堅さんちょっと怖そうですよね…」

 

「ええ、本当にね…。でも…」

 

「?」

 

「今は少し尊敬しているわ。

戦には多くの犠牲が付きまとうし、敗北すれば悲惨な結末になる。

かといっていつまでも迷って決めかねていれば、敵がなだれ込んでくる。

大勢の民の命と生活を背負って、決断を下す事ができる二人の凄さが、今更になってようやくわかって来たわ」

 

「…………」

 

「どんなに正義や義理を掲げても、それだけでは人は生きていけない。

人が生きる為には食物が必要で、家が必要で、その為には土地やお金が必要。そしてそれらを守る為の力が…。

悲しいけれど、人の不幸を何とも思わない人間が世の中にはいる。

その様な者は、自分が生きる為に他者を苦しめ、飢えさせる事を平気で行う。

その様な者達から守る為の力がなければ、民を守る事はできない。

私は…孫呉の民を守りたい…!だから、その為に敵を倒す力が欲しい…!」

 

「………!」

 

「…って、今ではそう思えるようになったわ。ルフィのおかげでね」

 

「ルフィさんの?」

 

「ええ。彼に会うまでは、私が戦をしなければ民は平和だなんて、甘い考えだったわ。

私がどう思っていても、敵は襲ってくるのにね…」

 

「孫権さん…」

 

「あの時倒しておけば、今襲われることはなかった。

目先の平和に惑わされて戦を避けた為に、その後にもっと大きな犠牲を払う事になってしまった。

私は…そんな愚かな結末を、民に迎えさせたくないわ…!」

 

「………っ!」

 

「ちょっと長話になってしまったわね…。私は自分の天幕に戻るわ。あなたもそろそろ戻りなさい」

 

そう言うと蓮華は馬に乗り、去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮華と話した後、桃香は義勇軍の集合場所に戻り、長机で夕食をとっていた。

 

(皆の暮らしを守る為…その為に敵を倒す力…)

 

「劉備殿」

 

「関羽さん!」

 

「隣よろしいでしょうか?」

 

「はい。いいですよ」

 

愛紗は桃香の隣に座り、少し黙っていたが…

 

「あの…劉備殿…」

 

「何ですか?」

 

「実は私…あなたに謝らなければいけない事があるのです…」

 

「謝る?」

 

「劉備殿は以前、『自分も世の中の為に何かをしたい』と、そうおっしゃって下さいました…」

 

「はい。それで関羽さんが『世の中の為に一緒に戦おう』って、義勇軍に誘ってくれましたよね」

 

「はい…ですが、私はその前からあなたを、何とか義勇軍に引き込めないかと、そう考えていたのです…」

 

「え?」

 

「ルフィに出会う前、私は一人で旅をして各地で山賊達を退治していました。

そんなある日、私はある村が賊に襲われている所に出くわし、戦いました。

無論、賊は簡単に追い散らせたのですが…。その後、大勢の苦しむ人々が私の目に映りました。

飢えに苦しむ者、病に苦しむ者、そして私が村に来る前に賊に殺されてしまった者…。

その時私は、初めて自分の無力さを―――自分が目の前にいる賊を退治する事しかできないという現実を……思い知らされたのです…。

自分が救世主にでもなったかの様に図に乗って、病や飢えや悪政に対して、何もできない事実から目を背けていた事に……気付かされたのです…」

 

「…………」

 

「それから私は、もっと大きく特別な“力”を求めて旅を続けました。

そしてルフィ達の“天の御遣い”という威光、そして桃花村で“中山靖王”という血脈を持った男に出会い、官軍に取り入る好機を得て『ようやく、力が手に入る』と、そう思っていました…。

ですが…あの男は偽者で、結局私の望んだ“力”は手に入りませんでした…。

それからあなたが村を訪れた時、私は何とかしてあなたを義勇軍に取り入れ、また朝廷に取り入る機会を得たいと、心のどこかでそう思いました…。

宝剣を取り戻す旅に同行したのも、ただの親切心ではなく、あなたに恩を売りたいという下心があったのかもしれません…」

 

「関羽さん…」

 

「劉備殿。今思えば、あの場でいきなりあなたを勧誘し、考える時間や断る選択肢を与えない様な事をしたのは、大きな間違いでした!」

 

そう言うと、愛紗は勢いよく立ち上がり…

 

「今更この様な事を言うのはおかしいですが、改めてお願いします!我々と共に、世の中を変える為に戦ってくれませぬか⁉」

 

そう言って、深々と頭を下げた。

 

「…………」

 

「無論、返事は今すぐでなくても構いませんし、断っても構いません。

この黄巾の乱で、あなた初めて戦というものを…殺し合いを知る事になると思います。

ですから、この遠征が終わった後に、改めて返事を聞かせて下さい」

 

「関羽さん…」

 

 




今回華琳が言っていた「何百人、何千人もの部下を死なせても、私が生きる事で何万、何十万もの命が救われるなら、私は生きなければならない」って、ワンピース原作でスパンダムが似た様な事を言ってるんですよね。
でもスパンダムは自分が犠牲にされる側になったら、絶対に180度意見を変えると思うんです。
あいつにはそんな覚悟ないと思うんです。

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