ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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少し遅くなりましたが、第113話投稿します!




第113話 “野望”

黄巾党本体の討伐の為に結成された連合軍、その陣内に武器庫として設営された天幕を一人の少女が訪れていた。

 

(私は…誰かを傷付けたくない…。ただ、みんなが笑顔で暮らせる世界を作りたかった…)

 

少女は一本の剣を手に取る。

 

(でも…今の世の中では、誰かの命を…笑顔を奪わないと何もできない…)

 

剣を鞘から抜き、その刀身を―――そこに映る自分の顔を見つめる。

 

(私にはできなくても…私の後の誰かが、私の理想の世界を作れるようになるのなら…!)

 

少女は剣を腰につけると天幕を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、軍議用の天幕でルフィ、ナミ、サンジ、ロビン、ブルック、愛紗、朱里、華琳、桂花、華侖、柳琳、栄華、風、蓮華、雷火、祭、穏、明命、亞莎、包、華佗が軍議を行っていた。

 

「ここ数日、黄巾党の陣を観察した所、最初はこの辺りに少人数で接近し、ブルック殿を敵陣に送ります。

説得に失敗した場合は、この道順で袁術殿達を張三姉妹の舞台に接近させるのがよろしいかと…」

 

地図上に碁石を置いて亞莎が説明する。

 

「全員、この考えに異議はないわね?」

 

華琳が確認する。

 

「潜入するのは袁術殿と張勲殿と郭嘉殿、護衛として楽進殿、李典殿、于禁殿、華佗殿、ルフィ達“麦わらの一味”に私と鈴々、軍師として朱里、連絡係に黄蓋殿と周泰殿」

 

「作戦が成功した時は一本、失敗ならば二本、それ以外の事態が生じた場合は三本わしが鏑矢を放ち、周泰はチョッパー殿と陣に戻り詳細を伝える」

 

「策が二つとも失敗した場合は、私と姉さんが虎豹騎を率いて駆けつけますが…四方を大軍に囲まれている以上、かなり厳しい状況になるかと…」

 

「まさに決死隊ね…」

 

「袁術は気付いていないみたいだけどね…」

 

桂花の言葉に蓮華は苦笑いする。

 

「大丈夫さ。おれ達がいる以上、脱出するぐらいなら難なくやってみせるさ!

そんなおれの勇姿見たら♡きっとみんなあんなアホ共より♡おれの事好きになるぜ~♡」

 

「はいはい。ブルック殿、袁術達の準備の方は?」

 

サンジの言葉を軽く受け流し、華琳が訊ねる。

 

「はい、歌も振り付けも完璧です。あれなら天和さん達に十分対抗できるかと…」

 

「おーい、こっちも準備できたぜー!」

 

ブルックが答えると同時に、天幕内にフランキーが入ってきた。

 

 

 

 

 

 

「これは…!」

 

一同が外に出てみると、きらびやかな装飾が施されたステージトラックならぬステージ馬車が用意されていた。

 

内部に待機しているウソップや真桜が一部の絡繰りを作動させると、装飾の花が動き出したり、花吹雪が吹き出す。

 

「素敵ですね~」

 

そう言う穏を始め、皆はその様子に思わず見とれる。

 

「中に20人ぐらいまでなら乗れる構造になっている。あと、これらも作っておいた」

 

そう言ってフランキーは2つの箱を前に出す。

 

一つは片手で持てるサイズの箱。

もう一つはフランキーの体格と同じぐらいの大きな箱で、胡弓や笛など様々な楽器が組み込まれており、片側にハンドル、反対側にレバーが付いている。

 

「それは?」

 

「まずコイツはおれ様特性“オーケストラ・オルゴール”だ!」

 

フランキーは大きい方の箱を示して答える。

 

「おうけすとらおるごおる?」

 

「オーケストラってのは楽団って意味の天の国の言葉、オルゴールってのは音楽を奏でる絡繰りの事だ。こっちの取っ手を回すと…」

 

~~~♪~~~♪

 

「!音楽が…!」

 

「すごいわね…」

 

「こっちにある取っ手で、演奏する曲を変える事ができる」

 

「やるじゃない、変態の癖に…」

 

「オイオイ変態って~」

 

「だから何でそっちで照れるのよ⁉」

 

「こっちもできたの~!」

 

今度は沙和がやって来た。

その後ろには…

 

「まあ!なんて素敵な衣装!特に袁術ちゃんが可愛らしいですわ!」

 

「ははははは!そうであろうそうであろう!遠慮せずもっと褒めるが良いぞ!」

 

「歌い手に楽曲、舞台に衣装、これで全ての準備が整いましたね!」

 

「ああそうだ!袁術、お前らに渡しておくものがある」

 

そう言ってフランキーは小さい方の一つの箱を開ける。

中には球体が付いた棒が3つ入っていた。

 

「それは?」

 

「これは天の国にある“マイク”っていう道具だ。あの舞台馬車の内部に置いてある“拡声器”と連動して、声を大きくする事ができる」

 

「何だか張三姉妹が使っている道具と似ていますね…」

 

包が呟く。

 

「暗示機能はねェけどな。これがあれば音量で張三姉妹に負ける事もねェだろ」

 

「助かります」

 

「これを持って歌うのじゃな?」

 

稟達3人はマイクを受け取る。

 

「ただしだ。この道具が機能するには燃料が必要で、その燃料には限りがある」

 

「つまり、絡繰りが起動する時間に制限があるという事?」

 

「ああ。歌合戦で勝負できるのは、コレが起動している時間内だという事だ」

 

「成程。ちなみにその燃料は何を使っているの?」

 

「木炭を塩水に浸けて薄い金属で巻いたものと柑橘系の果実に金属を突き刺したものだ」

 

「いや~まさかあんなので絡繰りの燃料ができるとは思わんかったで!」

 

「そうだ!ブルック殿、ちょっといいか?」

 

華佗が何かを思いついたようだ。

 

「何ですか?」

 

「今、フランキー殿の話で思い出したのだが、張三姉妹が使っている妖術の道具も、起動させるには燃料―――つまり妖力が必要なのだ。

それを貯め込み供給する為に、『金仙丹』と呼ばれる金色の結晶石が使われているらしく、道具の内部にはそれが組み込まれている筈だ。

もし張三姉妹の説得に成功したら、降伏の条件として、それをこちらに渡す様に言ってくれ。

失敗した場合も、何とかしてそれを奪うだけでもできないか、試して貰えないだろうか?」

 

「なるほど、了解しました。身軽さや素早さには自信があるので、試してみましょう」

 

「天の御遣いの実力を疑っている訳ではありませんが、本当に大丈夫ですか?」

 

…と、明命。

 

「ご心配でしたら、私の実力を少々披露いたしましょうか?」

 

 

 

 

 

 

少しして、ブルックの前に一本の丸太が用意された。

 

「何をするつもりじゃ?」

 

祭が訊ねる。

 

「えっとですね…まずこれをご覧ください。私のこの杖は仕込み杖でして、中に剣が隠されているのです」

 

ブルックは少しだけ剣を抜いて見せる。

 

「うむ?」

 

「ハイ、もう終わりました」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

「“鼻唄三丁”…“矢筈(やはず)斬り”‼」

 

そう言って剣を収めると同時に、丸太がスライスされる。

 

「なっ⁉」

 

「は、速い⁉」

 

「き…気を抜いていたとはいえ、わしにも見えぬとは…」

 

「屍の御遣いの『隠なる剣を扱う』というのは、『目にもとまらぬ速さで斬る』という意味だったのですね…」

 

「成程…これほどの速さなら、張三姉妹からその『金仙丹』とやらを奪うのも不可能ではないかもしれないわね…。

これで準備は全て整ったわ!明日、作戦を決行する!」

 

華琳のその宣言で、軍議は終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍議後、ルフィは一人で陣内を歩いていた。

 

「ルフィさん」

 

「!」

 

不意に背後から声をかけられ、振り返ると桃香が立っていた。

 

「…………」

 

ルフィは何も言わず、桃香が腰につけている剣に視線を向ける。

 

「少し…いいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフィは桃香に連れられ、黄巾党の陣が見える崖沿いにやって来た。

 

「私は…戦が嫌いです…」

 

黄巾党の陣を向き、ルフィに背を向けながら桃香は語り始めた。

 

「だから、何でも戦わないで解決したいって、戦のない世の中に…みんなが笑顔で暮らせる世界にしたいって思っていました…」

 

「…………」

 

「今も、その思いは変わっていません。

でも、ルフィさん達と一緒に旅をして、曹操さんや孫権さんと出会って、この世界が私が思っていたよりずっと複雑だって知って……戦よりも嫌いなものが二つできました…。

一つは、今のこの世界です…。

沢山の人が苦しむ事を笑う人達が支配して、誰かを傷付けて苦しめる事でしか誰かを助けられなくて…誰かを笑顔にする為に誰かの笑顔を奪わないといけない、この世界が嫌いです…!」

 

桃香は手を握りしめ、震わせる。

 

「もう一つは……そんな世界に対して何もできない―――何もしない私自身です!」

 

「…………」

 

「今のこの世界に対して…何もできないで、何もしないで、他人任せにして、祈っているだけの私が大っ嫌いです!

今の世界が嫌いなのに、今の世界に納得していないのに…満足しているフリをして、ただ見てるだけの私が大っ嫌いです!

そんな事をしてるくらいなら…手を汚してでも、誰かを傷付けてしまっても、今のこの世界を壊して、作り変えたいです!

今の世界じゃ、みんなが笑顔で暮らせる世界を…誰傷つかないで済む世界を…目指す事すらできないから!

それならせめて、そんな世界を目指せる世界を私は作りたい!」

 

「…………」

 

「でも…今の私には、そんな力なんてない!ただ世の中に流されて、自分の身を守る事しかできないんです!今の私は本当に無力だから!

だから……だからルフィさん!」

 

桃香はそこで振り返り―――

 

「私に“力”を貸して下さい‼」

 

深々と頭を下げた。

 

「お願いします‼」

 

()()

 

「!」

 

自分の真名を呼ぶ声と同時に、頭に何かが乗せられる感触を覚え、桃香が顔をあげると…

 

「お前の()()…よくわかった…!」

 

自身の麦わら帽子を桃香の頭にかぶせ、力強く笑いかけるルフィがいた。

 

「一緒に戦おう!」

 

「……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、いよいよ作戦決行の時を迎えた。

 

舞台馬車をフランキーのマウンテンバイクと鞍を付けたチョッパーにつなぎ、それぞれにフランキーと明命が跨る。

ウソップと祭は見張りの為に馬車の屋根に上り、ゾロとサンジは馬車を押す為に後方に待機する。

中にオルゴールを積み、決死隊のメンバーが乗り込む。

説得係のブルック、歌い手の稟、美羽、七乃、絡繰りの操作係として凪、真桜、沙和、華佗、軍師として朱里、護衛としてルフィ、ナミ、ロビン、愛紗、鈴々、そして…

 

「劉備殿、本当に一緒に来られるのですか?」

 

「うん。作戦を提案したのは私だから、私が責任を持って見届けないと。大丈夫、ちゃんと覚悟はできたから」

 

腰につけた剣に手を添え、桃香は言う。

 

「わかりました」

 

桃香も入れ、総勢15人が乗り込む。

 

華侖と柳琳は陣の外に虎豹騎を率いて待機し、連合軍の残りの主要な将・軍師は全員軍議用の天幕に武装して待機する事になっている。

 

「じゃあ行ってくるぜ」

 

「気を付けるっすよ」

 

「作戦の成功をお祈りしております」

 

華侖と柳琳達に見送られ、決死隊は出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その道中、馬車の中にて…

 

「もうすぐだな“こんぺーとー”の奴らの陣」

 

「黄巾党よルフィ」

 

「ぷはー!蜂蜜水で喉の調子もばっちりなのじゃ!」

 

「そういえば劉備殿、その帽子は…」

 

愛紗は、桃香の頭にある麦わら帽子視線を向けて訊ねる。

 

「ああコレ、昨日ルフィさんが被せてくれたんです。それで、今日の出陣まで借りていいか訊いてみたら、許してくれたので…」

 

「そうですか…」

 

「関羽さん?どうかしましたか?」

 

「い、いえっ!何でもありません!」

 

「?」

 

「でも、桃香お姉ちゃんにもよく似合っているのだ」

 

「本当⁉」

 

「うん!さすが、頭が帽子置き場みたいなだけあるのだ!」

 

「あ、ありがとう鈴々ちゃん…」

 

苦笑いする桃香だった。

 

「おーし!まずはここまでだ!」

 

外から聞こえたフランキーの声と同時に馬車が停まる。

 

「では、行ってまいります!」

 

「あまり目立つ所にはできないけれど、私も“目抜き咲き(オッホスフルール)”と“耳抜き咲き(オレッハフルール)”でできるだけ陣内の情報は探っておくわ」

 

「危なくなったらおれも援護するから、安心して行ってこい!」

 

「わかりました!決死の覚悟で行ってきます!もう死んでますけど!」

 

ブルックは一人、黄巾党の陣へと向かって行った。

 

「おれ達はしばらくここで待機だな」

 

「チョッパー殿、頸環(くびわ)を外しておきますので、いつでも走れるように待機していて下さいね」

 

「おう、わかった」

 

明命はチョッパーの頸環を外し始める。

 

「ウチらもいつでも絡繰りを動かせられるよう、待機しとくで」

 

「ああ」

 

真桜の言葉に、凪達はそれぞれの持ち場に着く。

 

「退屈じゃのー早く歌いたいものじゃ」

 

「まーまーお嬢様、楽できるならそれに越した事はないでしょう?」

 

「説得…成功すると良いな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほどなくして、ブルックは黄巾党の陣の入口に着いた。

 

「ヨホホホホ!御免下さーい!」

 

「ん?何だてめェは?」

 

「妙な格好した奴だな…」

 

「あ!あなた…いや、あなた様は!」

 

「ブルック殿じゃないですか!」

 

「ん?お前ら知ってんのかコイツ?」

 

「馬鹿!この方は張三姉妹の師範的な存在の方だぞ!」

 

「ええ⁉大賢良師様達の⁉」

 

「知らないって、お前ら新入りか⁉」

 

「あのー…張角さん達にお会いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

「どうぞどうぞ!あなたなら全然構わないですよ!」

 

「ぜひ会ってあげて下さい!張角ちゃん達もきっと喜びますよ!」

 

「…………(とりあえず、中には入れましたね)」

 

「おい、誰だあいつ?」

 

「なんか、張角様達の古い知り合いらしいぞ」

 

「あー!ブルック氏じゃねェか!」

 

「騒ぎを聞いて戻って来たのかな?」

 

陣内を悠々と歩いていくブルックを、張三姉妹の本来のファン達は懐かしい目で、蜂起後に加わった者達は奇妙な目で見ている中…

 

「……妙な奴が来たぞ」

 

「どうする?」

 

「張三姉妹に会いに行くようだ。見張っておくぞ。あと報告もしておけ」

 

「了解」

 

明確な敵意を持った目で見ている者が数名いた。

 

 

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