ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第12話 “ゾロvs.馬超”

そして武闘大会会場。

 

『只今より、武闘大会を開始します!大陸全土から集った猛者達が、最強の座をかけて競い合います!

司会進行は私、“陳琳(ちんりん)”が務めさせていただきます!

それでは、大会開催に先立って、今大会の主催者からご挨拶いただきましょう!

冀州渤海郡太守にして、超名門!袁家の現当主!袁紹様です!』

 

眼鏡をかけた女性の司会者、陳琳の言葉と共に試合用のステージであろう台座、その後方にある壇上に麗羽が現れる。

同時に、ステージの前方、左右にそれぞれ待機している猪々子、斗詩、真直が、“歓呼声(歓呼の声)”“鼓掌(拍手)”と書かれた看板を掲げ、観客に場を盛り上げるよう促す。

 

「名門?“えんけ”?」

 

「袁家は三代連続で“三公(さんこう)”を輩出した名門なんだ」

 

知らない言葉にゾロが首をかしげていると、先ほど立て札の前で会った女性が教えてくれた。

 

「何だその“サンコウ”ってのは?」

 

「この国で常設されている官職のなかで、最高位の三つの官職ことさ。

軍事の最高権力である“太尉(たいい)”、民生を司る“司徒(しと)”、治水や土木関係の最高責任者“司空(しくう)”の三つだ。

あそこにいる袁紹の一族は、あいつの親を含めた三代前の親族、さらにはその兄妹も三公をを務めた名門なんだ」

 

「なるほど…で、あいつ自身はどうなんだ?」

 

「ああ、それは…」

 

「お~ほっほっほ!」

 

「「⁉」」

 

その時突然、妖艶な高笑いが響き渡った。

 

「みなさァ~ん!今日はこのわ・た・く・し、袁本初が主催の武闘大会にようこそおいで下さいました!

大陸各地から集まった武芸者達の中で最強を決める、云わば大陸最強の武芸者を決定する大会が、必然かもしれませんが、このわ・た・く・し、袁本初の治める街で開催される事を、心から光栄に思いますわ!

お~ほっほっほ!」

 

「…………」

 

「まァその…無能だとか暴君だって訳じゃないらしいけど…」

 

「もういい…なんとなくわかった…」

 

2人がそんな事を話している間も、麗羽の挨拶は続いている。

 

「今日は大陸中から集まった武芸者達の対決を、心行くまで楽しんでいってくださいね。我が名族、袁家は代々……」

 

『袁紹様!ありがとうございました!さァ!袁紹様からありがたいお言葉を賜ったところで、早速試合に参りましょう!』

 

「…………」

 

明らかに長い無駄話が始まる前に、陳琳が次のプログラムへと進める。

この人、司会進行としてかなり優秀である。

 

袁紹本人は不機嫌そうであったが…。

 

「おれは第一試合だな。早速行ってくるか」

 

「あ、ちょっと待った」

 

「?」

 

「自己紹介、まだだったよな。あたしは“馬超(ばちょう)”、字は“孟起(もうき)”ってんだ。お前は?」

 

「“ロロノア・ゾロ”だ。おれとお前が戦うとしたら、決勝戦だな。楽しみにしてるぜ」

 

「こっちこそな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『では第一試合の前に、試合形式について説明します。

今大会は一対一の勝ち抜け戦で、舞台上から落下する、舞台上で倒れる、気を失う、降参を宣言する、このいずれかで負けとなります。

それでは第一試合の選手に入場してもらいましょう!』

 

その声と共に、2人の選手が舞台上に上がる。

 

『第一試合は優勝候補の一人でもある、身の丈十尺!重量十斤の大鉞を使う“鉄牛(てつぎゅう)”選手!』

 

「「「「「「「「「「おおおっ!」」」」」」」」」」

 

その筋肉隆々の巨体に観客は驚き、声をあげる。

 

『対するは、海の向こうの異国の地よりやって来た“ロロノア・ゾロ”選手!

異国の剣術がどの様なものか、是非見てみたいところですが、これではその機会があるかどうか…』

 

そして、試合開始の銅鑼が鳴る。

 

ジャーン!

 

「おらァァァァァ!」

 

『あーっと!鉄牛選手が先手を取ったー!早くも勝負あったかー!?』

 

陳琳をはじめ、観戦者の多くが鉄牛の勝利を確信する。

しかし、ゾロは慌てる様子もなく1本の刀“秋水(しゅうすい)”を抜き―――

 

「へっ!」

 

「⁉」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

『あーっと受け止めたーっ!ゾロ選手!常人では持ち上げることができない、大鉞の一撃を!剣一本で!受け止めましたー!』

 

「こ、こいつ…」

 

「中々の力だが…その程度じゃおれには勝てねェ!」

 

そう言うとゾロはさらに1本の刀“鬼徹(きてつ)”を抜き、構える。

そして―――

 

「“二刀流”……“(サイ)”……“(クル)”!」

 

「ぐあああああ⁉」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

そのまま、相手の巨体を場外に吹き飛ばした。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

『………あ…しょ、勝利ーーー!ゾロ選手、優勝候補の一人、鉄牛選手を破りましたーーー!』

 

「「「「「「「「「「……お、オオオーーーッ!」」」」」」」」」」

 

一瞬、その場にいた全員が呆然としていたが、すぐに歓声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

『さァ第十二試合は荊州の槍の名手、“陳応(ちんおう)”選手に対するは、西涼出身の馬超選手の試合となっております!それでは早速、試合開始!』

 

ジャーン!

 

「はあああああっ!」

 

銅鑼が鳴ると同時に、陳応と呼ばれた女性は凄まじい速さで槍を振るい、馬超に襲い掛かる!

 

「―――っ!」

 

対して馬超は守備に徹する。

 

『おーっと、もの凄い槍の猛攻!馬超選手は防戦一方か⁉』

 

陳琳の言う通り、一見馬超が不利なように見える。

 

しかし、ゾロの考えは違った。

 

(あの馬超って女、必要最低限の動きで避けてやがる。息も全く乱れてねェ。それに対して陳応って奴は、少しずつ息が上がっている。この勝負、馬超の勝ちだな)

 

「ハァ…ハァ…」

 

しばらくして、陳応が攻撃の手を止めると…

 

「…終わりか?じゃあ、こっちから行くぜ!」

 

「⁉」

 

「ハァァーーーッ!」

 

馬超は陳応よりも速いスピードで攻撃を繰り出す!

 

「ぐっ!…うっ!」

 

最初に攻撃を仕掛けすぎたため、疲弊していた陳応はその攻撃を受け切れず…

 

「ぐあっ!」

 

吹き飛ばされ、気を失ってしまった。

 

「急所は外しておいたぜ」

 

『決まったーーー!第十二試合、勝者は馬超選手ーーー!』

 

 

 

 

 

 

その後も………

 

「オラァァァァァッ!」

 

『ゾロ選手!圧勝です!』

 

 

 

 

 

 

ゾロと馬超は………

 

「でりゃァァァァァ!」

 

『馬超選手!秒殺です!』

 

 

 

 

 

 

順調に………

 

「“鷹波(たかなみ)”!」

 

『ゾロ選手!またもや一撃で決めました!』

 

 

 

 

 

 

勝ち進み………

 

「“白銀乱舞(はくぎんらんぶ)”!」

 

『馬超選手!ついに優勝に王手をかけたー!』

 

ついに決勝で対決する。

 

 

 

 

 

 

『さァ、今武闘大会も、いよいよ最終決戦です!

異国の剣豪、ゾロ選手対、西涼の暴れ馬、馬超選手!

これまでの試合で圧倒的な強さを見せてきた二人がついに対決します!』

 

「「「「「「「「「「おおおおおっ!」」」」」」」」」」

 

両選手が桁違いの強さを見せてきたため、観客の盛り上がりも最高潮を迎えている。

 

「おめェと勝負するの、楽しみにしてたぜ」

 

「あたしもだよ。…っていうか、正直に言うと、あんた以外は眼中になかったしな!」

 

『それでは早速、試合開始ー!』

 

ジャーン!

 

銅鑼の音と同時にゾロは2本の刀を、馬超は十字の槍“銀閃(ぎんせん)”を構える。

 

「「…………っ!」」

 

しばらくにらみ合った後、両者は走り出しステージの真ん中で武器を交える!

 

「「―――っ!」」

 

そのまま少し押し合った後、両者は距離を取り再び武器を交える!

 

「オラァッ!」

 

ゾロが先手を取り、左右から刀を振るう!

 

「ハァッ!」

 

ゾロの二刀を馬超は(やじり)石突(いしづ)きで受け流しつつ、刺突を繰り出す!

 

ゾロは刺突を受けつつ、今度は二刀を縦に振り下ろす!

馬超は槍で受けながら横に跳び、槍でなぎ払う!

その一撃を、ゾロは後ろに飛び退いて躱し、距離をとった後斬りかかる!

 

時に躱し、時に距離を取り、時に押し合いながら2人は激戦を繰り広げる!

 

『これは凄い!両者一歩も譲らない!この決勝戦にふさわしい激戦に、私目が離せません!』

 

陳琳だけでなく、観客達も瞬き一つせず見入っている。

 

ゾロと馬超はしばらく打ち合い、また距離をとった。

 

「なかなかやるな!」

 

「てめェもな!」

 

そう言うとゾロは、左腕に着けていた黒い手拭いを被る。

さらに3本目の刀“和道一文字(わどういちもんじ)”を抜き…

 

『あーっと、ゾロ選手!三本目の刀を抜き、なんと口に咥えました!三刀流です!私、このような剣術初めて見ました!』

 

観客達や馬超も見た事のない剣術に驚く。

 

「…少しばかり本気で行くぜ」

 

「来い!(こいつ…さっきまでと様子が違う…!)」

 

「“三刀流”…」

 

(来る…!)

 

「“鬼”…」

 

(―――っ!)

 

「“斬り”!」

 

ドン!

 

「…………」

 

「…………」

 

『…………』

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

一瞬、空気が静まり返り…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ウゥッ……」

 

馬超が膝をついた。

 

「安心しろ、峰打ちだ」

 

「はは…参った…」

 

『馬超選手降参!よって冀州一武闘大会、優勝はロロノア・ゾロ選手です!』

 

「「「「「「「「「「おおおおおっ!」」」」」」」」」」

 

陳琳の宣言と同時に会場は大歓声に包まれた。

 

「優勝したゾロ選手と準優勝者の馬超選手は、副賞として我が屋敷での夕食にご招待しますわ!それでは皆さん、閉会の言葉を名族たる……」

 

袁紹の明らかに無駄に長そうな話が始まる前に、観客は勿論、出場選手、陳琳を始めとした大会運営スタッフも会場から消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、麗羽の宮殿でゾロと馬超は夕食をとっていた。

 

「はぐっ…むぐ…んぐ…」

 

「あむっ…ん~んんっ…」

 

「二人とも凄い食べっぷりだな~」

 

「文ちゃんも顔負けだね」

 

「異国の殿方の方は、お酒の方も凄いわね…」

 

「あ~…まともなメシなんて久しぶりだ~…」

 

「は~…美味かった~…」

 

「ご満足いただけたようで何よりですわ。それにしても、今日のあなた達の戦い、他の方々とは比べ物にならない程、素晴らしかったですわ」

 

「そりゃどうも」

 

「へへへ!」

 

「ところで、お二人に相談なのですけど…」

 

「「?」」

 

「今、天下は大きく揺らぎ、各地の諸侯が覇を競い合う世の中になっております。

私はこの乱れた世を終わらせ、天下太平のために、強い軍を、そして強い将を求めておりますわ。

そこで、お二人に我が軍で将として働いて頂きたいのです。

なんなら、客将(かくしょう)としてでも構いませんわ」

 

「“カクショウ”?」

 

「お客として招かれている将の事だよ」

 

ゾロが首を傾げていると、また馬超が解説してくれた。

 

「いかがでしょう?勿論衣食住はこちらで保証しますし、お給金は…」

 

「悪いがおれは断る」

 

「「「「「え?」」」」」

 

麗羽が条件を言い終わらない内にゾロが断った為、麗羽は勿論、猪々子、斗詩、真直、馬超も驚いた。

 

「それはどうしてですの?」

 

「簡単だ。おれの上に立つ人間はすでに決まっているからだ。

訳あって逸れちまったが、今はそいつを探して旅している途中なんだ。

客扱いとはいえ、同時に2人の人間の下につく気はしねェ」

 

「…なら仕方がないですわね。馬超さん、あなたはどうですの?」

 

「う~ん…あたしもやめておこうかな…」

 

「わかりましたわ。田豊さん!二人に賞金を」

 

「あっ、はい!」

 

麗羽に言われ、真直がゾロ達に賞金を渡した。

 

「ありがとう。じゃあ失礼する」

 

そう言ってゾロは立ち去る。

 

「あの…玄関はあっちですけど…」

 

((((さっき入って来たばっかりなのに、何で間違える⁉))))

 

全員が驚いた。

 

「ま、まァ今日はもう遅いですし、部屋をご用意しましたので泊って行かれるといいですわ」

 

麗羽がそう言うので、ゾロと馬超は泊っていく事にした。

 

 

 

 

 

 

その後、麗羽の私室にて。

 

「麗羽様、本当に良かったのですか?」

 

「何がですの?」

 

「あの二人…ゾロと馬超の事ですよ。

『千兵は得やすく一将は求め難し』と言いますし、いかに天下が広く人材が豊富といえど、あれ程の剛の者は中々いませんよ」

 

「二人ともそのつもりがないのですから、仕方がないでしょう」

 

「そこはもう少し、お給金の話でもすれば…」

 

「その程度で考えを変える様な人間、ましてや主を変える様な人間なんて、手元に置いておきたくありませんもの」

 

「…………」

 

麗羽の言葉に真直は何も言えなくなった。

 

「麗羽様、こういうところはしっかりしているよな」

 

「ホントにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

「こんだけありゃ、しばらくは食っていけるか…?」

 

麗羽の屋敷を後にしたゾロが、貰った賞金を確認していると…

 

「お~い」

 

「ん?お前は…」

 

馬超が後を追いかけてきた。

 

「良かった、見つかって」

 

「どうしたんだお前?」

 

「あのさ…その…」

 

「?」

 

「頼む!あんたの旅に同行させてくれないか⁉」

 

「は?」

 

「あたし…武者修行の途中でさ…あんた凄く強いから、あんたの胸を借りたいんだ!

それに、あんた余所者だから知らない事多いだろ?きっと役に立つから…頼む!」

 

「(確かにコイツがいなかったら、武闘大会の事もわからなかったな…)おれとしてはありがてェが、一つ断っておく」

 

「何だ?」

 

「おれは海賊だ」

 

「え?」

 

「おれと一緒にいりゃお前にも悪評がつきかねねェし、お前だって海賊にいい印象はねェだろ。それでも良けりゃ歓迎するが…」

 

「…ああ。良いよ」

 

「そうか?」

 

「あたしの母ちゃんがいつも言ってたんだ。

『武術というのは正直なものだ。心に嘘や偽り、やましいもや悪いもの、(よこしま)なものがあれば、対峙した時に気の濁りとなって現れる』ってな。

昨日勝負したとき、あんたの気は清らかだった。だから、あんたは信用できる!」

 

「そうか…なら、よろしく頼む」

 

「おう!じゃあ改めて…あたしの名前は“馬超”字は“孟起”、真名は“(すい)”だ。これからは“翠”って呼んでくれ」

 

「“ロロノア・ゾロ”だ。“マナ”ってのはよくわからねェが、よろしく頼むぜ、“翠”」

 

「そうか…ま、とにかく…よろしくな“ゾロ”じゃあまずこの国の事について、もう少し説明するか」

 

こうして、ゾロは“馬超孟起”こと“翠”と共に行動することになった。

 

 




第三席編完結です。

猪々子、斗詩との対決は省略させていただきました。
楽しみにしていた皆さん、申し訳ありません。

あと、馬騰については最後まで悩んだのですが、今作では母親にしました。

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