ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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真・恋姫†無双 乙女大乱編
第120話 “大乱の兆し”


桃香が正式に桃花村義勇軍の総大将となり、ルフィ、愛紗、鈴々と義兄妹となってから、数十日後。

 

義勇軍の拠点である屋敷の一室で、朱里は手紙を書いていた。

 

(『拝啓、雛里ちゃんお元気ですか?私はとっても元気です。ルフィさんや桃花村のみんなも元気にしているよ。

まだ雛里ちゃんが会った事がない人もいるから、早く紹介したいな』)

 

「朱里ちゃん、ちょっといいか?」

 

「サンジさん。どうかしましたか?」

 

「保存食作ろうと思って、手伝って貰えないか?」

 

「はい、いいですよ」

 

朱里は返事をすると、角の一つが割れた硯に筆を置き、部屋を出た。

 

「ひょっとして勉強の途中だった?」

 

「いえ、雛里ちゃん宛の手紙を書いていたんです。今度張世平さんが荊州の方まで行くらしいので、お願いしようと思って」

 

「そうか。そういえば前にも書物を送っていたけど、何の本を送ったんだ?」

 

「はわわっ⁉それは訊かないで下さい!あれは殿方が読むと呪われてしまう恐ろしい書物なんです!」

 

「そ、そうか…。(一体、何を送ったんだ?)」

 

サンジは気にはなったが、それ以上その話をするのは止める事にした。

 

「しかし、ここから荊州までの行き来が可能になるとはな…」

 

「はい。やはり黄巾党の本隊が倒れた事は大きかったですね。あの後、大陸各地の黄巾党が勢いを失って次々と敗れましたから。

あの黒山賊も含め、多くの賊が黄巾党に加担していた様でしたから、多数の賊を一掃できたみたいです」

 

「そのおかげで桃香ちゃんは曹操ちゃんや孫権ちゃんと文通できる様になって、情報交換や義勇軍の運営について助言を貰える様になった。

張世平さんの商売も盛り返して、ウソップの火薬やフランキーのコーラの原料を調達して、少しずつ生産できる様にもなった。

愛紗ちゃんは軍事以外の事にも、時間を割く事ができる様になったから学舎を開設して、鈴々ちゃんや蒲公英ちゃんはそこで勉強できる様になった。

張角ちゃん達も“数役萬三姉妹”として活動再開」

 

「何より桃香さんの名声が上がり、義勇軍も千人以上に増えました!中山靖王の名が、想像以上に義勇軍の名を高めているみたいですね」

 

「桃香ちゃんを総大将にして正解だったな」

 

「はい!…でも、喜んでばかりもいれらませんね…」

 

「そうだな…世の中を乱している張本人の権力者、そして肝心の太平道を倒せていねェからな…。

不吉な事を言いてェ訳じゃねェが、今の平和はほんの一時の、嵐の前の静けさの様な気がするな…」

 

「私もそう思います…」

 

そう言いながら、2人は厨房に着いた。

 

「あ…そういえばサンジさん、星さんの壺漬けメンマ、腐ってきているみたいなんですけど…」

 

「趙雲ちゃん、メンマには相当うるさいからな…。

ウチにはつまみ食いの常習犯も多いから『腐ってたから捨てた』って言っても信じて貰えるかわかんねェし、放っといていいんじゃねェか?」

 

「そうですね」

 

「それにしても趙雲ちゃん…まだ帰ってこないけど、どこで何やってるのかな?」

 

「それはわかりませんけど、色んな意味で強い人ですから、心配しなくても大丈夫ですよ」

 

「…そうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日前、洛陽の王宮、謁見の間。

 

「皆、揃ったな⁉」

 

傾は空丹と白湯が座る玉座の隣に立ち、部屋を見回す。

 

そこには黄や張譲などの政務官や楼杏、風鈴、朱儁らを始めとした武官、各地の諸侯の代表として呼ばれた麗羽とその側近である猪々子、斗詩、真直がいた。

 

「劉協様、陳留からのご足労心より感謝いたします」

 

「う、うむ…」

 

空丹の隣にいる瑞姫が声を掛ける。

 

「ではこれより、評定を開始する!趙忠、報告を!」

 

「はっ!」

 

傾の言葉で黄は手元の書簡を読み始める。

内容は黄巾党の討伐についてである。

 

黄が報告をしている間、白湯は熱心に内容を聞いていたが、空丹は退屈そうにあくびをしていた。

 

「報告は以上で終わりです」

 

「そうか。皇甫嵩!盧植!朱儁!」

 

「「「はっ!」」」

 

「たかが賊退治ごときにここまで時間を掛けおって!それでも皇帝陛下の直属の武官か⁉」

 

「……おっしゃる通りです」

 

「……ごもっともです」

 

「……返す言葉もございません(貴様らがもう少し贅沢を控えれば、多くの兵を動かして、もっと早く片付ける事ができたわ!)」

 

朱儁は頭を下げながらも、密かに傾達を睨みつける。

 

「我らの役に立たない者は宮中には要らぬ!今後はもっと精進せよ!」

 

「はっ!」

 

「御意!」

 

「承知!(我々は陛下の為に働くのであって、貴様の為ではない!それに我らが戦場にいる間もずっと宮中に閉じこもっていた、一番の役立たずに言われとうないわ!)」

 

「よろしい!次に袁紹!」

 

「はっ!」

 

「貴殿を始め、此度の乱の鎮圧における諸侯の働きは実に大義であった」

 

「勿体なきお言葉、感謝いたしますわ」

 

「各諸侯には後日、功績に応じて恩賞を送ろう。所で、貴殿は此度の一番の功労者は誰だと存じる?」

 

「それはやはり、曹操さんを始めとした黄巾党本隊を討伐した方々かと」

 

「曹操と貴殿は犬猿の仲だと聞くが?」

 

「それはわたくしの私怨ですもの。政に持ち込む訳には参りませぬわ」

 

「わかった。では曹操を始め、黄巾党本隊を討伐した連合軍の者達には、特別な恩賞を送ろう」

 

「何進大将軍」

 

不意に一人の文官が声をあげた。

 

「何か?」

 

「その連合軍についてですが…いささか聞き慣れない者の名前がありまして…」

 

「何者だ?」

 

「“劉備”そして“ルフィ”と名乗る者です」

 

(……ルフィ?)

 

(ルフィ!)

 

(桃香ちゃん⁉)

 

(あの二人が⁉)

 

(ああ…あのお二人…)

 

空丹、白湯、楼杏、風鈴、麗羽は二人の名前に反応する。

 

「確かに聞かぬ名だな…」

 

「何者だ?」

 

「何か、詳細が書かれた物はないのか?」

 

他の武官、文官達もざわめきだす。

 

「こちらにありました!その二人は幽州の雑軍の将でして、“劉備”なる者は中山靖王の末裔、“ルフィ”なる者は天の御遣いと噂されている者だとか…」

 

「なんだそれは⁉」

 

「中山靖王の末裔に天の御遣い⁉大法螺を吹きおって!」

 

「実にけしからんやつだ!」

 

「将軍!その様な不義の輩はすぐに処罰するべきですぞ!」

 

「左様!この様な者を放っておけば、何の能力もない自称英雄や自称豪傑が次々とのさばり天下は乱れるばかり!」

 

「ましてや卑しい庶人の分際で天子の一族を騙るなど、不敬な事この上なしですぞ!」

 

「そうですぞ!何の手柄もない奴が天の御遣いなどと称して宮中に取り入ろうなど、断じて許してはなりませぬ!」

 

その場にいた者の大半が憤る中…

 

「あら、そんな事ないわよ」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

空丹の静かな声が響き渡った。

 

「しゅ、主上様?その様な事はないとは?」

 

「だってルフィはすごっく強いのよ。彼が賊退治で大活躍したって言うなら、それはきっと本当よ」

 

「あの…天子様はその庶人をご存じで?」

 

「何進大将軍、ルフィと申す者は、以前長安で天子様と劉協様を李傕、郭汜の手からお救いになった者です」

 

「ああ!あの男か!」

 

風鈴に言われ、ルフィの名前を知らなかった傾、瑞姫、黄はハッとする。

 

「し…しかし、その時に活躍されたからといって、今回の功績が事実だとは…」

 

「だったら本当なのかどうかちゃんと調べなさいよ!」

 

「は、はいっ!ごもっともでございます!」

 

文官の一人が反論するが、空丹は声をやや強めにして言い返し、その文官は縮こまってしまった。

 

「あのう、その劉備とルフィなる者でしたら、わたくしも存じ上げておりますわ」

 

「袁紹殿⁉真でございますか⁉」

 

「ええ。お二人共とても見所のある人物ですから、今回の件を機に、官軍に起用する事を検討なさってはいかがかと」

 

「ふむ…袁紹殿もそうおっしゃるとは…」

 

「失礼」

 

「何でしょう趙忠殿?」

 

「今簡単に確認してみました所、そのお二方の活躍は曹操殿、袁術殿、孫権殿全員の報告で一致しております。

ですから、功績が事実である事は確かかと…」

 

「さ、左様でございますか…」

 

「では、後々報酬を与えるとしましょう」

 

その後も様々な議題が上がり、評定は進んで行った。

 

「…では、以上で評定を終わる!」

 

傾が終了を宣言し、皆は謁見の間を出て行く。

 

「ふう…」

 

「袁紹殿」

 

「!これは張譲殿」

 

「評定、ご苦労様でした」

 

「……張譲殿こそお疲れ様でした…」

 

「実は少々気になっている事がございまして…」

 

「?何でしょう?」

 

「貴殿の従妹の袁術殿なのですが、最近どうも働き振りが悪い様でして…。少々気に掛けてあげていただけないでしょうか?」

 

「ええ、よろしいですわ。わたくしの可愛い従妹ですもの」

 

「では、よろしくお願いしますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王宮を出て渤海郡に戻る道中…

 

「キィーーーーーッ!腹立ちますわ!」

 

麗羽は完全にご機嫌斜めだった。

 

「宦官の分際で、宮中で大きな顔をして!名門袁家の現当主であるわたくしに『ご苦労様』⁉完っ全に上から目線になって!

あの肉屋も肉屋ですわ!自分も霊帝陛下と同格になったつもりで!あの女も我々と同じ臣下の筈ですわよ!」

 

「「「…………」」」

 

その様子を猪々子、斗詩、真直は少し距離をとってみている。

 

「はァ~…はァ~…」

 

「それで…麗羽様、評定が終わった後に張譲が言っていた事はどうするんですか?」

 

麗羽がやや落ち着いたのを見て、猪々子は話し掛ける。

 

「『働き振りが悪い』というのは、おそらく『賄賂が少ない』って事だと思いますけど…」

 

「まァ…どんな事情であれ、美羽さんの事は気にはなりますし、近い内に訪ねてみましょう」

 

「わかりました」

 

「それにしても…」

 

「?どうしましたか真直さん?」

 

「いえ、評定の際に、麗羽様がルフィ殿と劉備殿を庇い立てしたのが意外で…」

 

「あ、それ私も驚きました。『見所のある人物』って言うだなんて…」

 

「あたいも…」

 

「ええ。わたくしあのお二方の事は結構気に入っていますから。だって…」

 

「「「だって?」」」

 

「袁家に代々伝わる白鳥の回しと、わたくしの高笑いの素晴らしさを理解できる方々ですもの!嫌う理由なんてありませんでしてよ!おーほっほっほっほ!」

 

(((そういう事ですか…)))

 

もの凄くどうでもいい理由に3人は肩を落とすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王宮の一室。

 

「ふふふ…!さっきの評定、宦官達いい気味だったわね」

 

「楼杏さん、あまり口にすると誰かの耳に入るわよ」

 

楼杏と風鈴がお茶を飲んでいた。

 

「それにしても、天子様が評定に口出しするだなんてね…」

 

「ええ。ルフィ君の事が話題になったから、反応せずにはいられなかったんでしょうね」

 

「楼杏さんは、明日劉協様と陳留に向かうのよね?」

 

「ええ。劉協様、今日は久し振りに天子様と一緒に過ごすらしいわ」

 

「早くまた、二人で暮らせる日が来るといいわね…」

 

「そうね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王宮の厨房。

 

「…………」

 

「…………」

 

空丹はそこで調理の様子をじっと見ており、白湯はその隣に立っている。

 

少し距離をとって、傾、瑞姫、黄と数名の兵士もいる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

空丹達がいるせいか、料理人達は緊張している様である。

 

「……あの、お姉様」

 

「何?白湯?」

 

「お姉様は、よくここに来るのですか?」

 

「ええ。ここにいると色んなものが見られて楽しいもの。あと、庭で動物や虫を見たり、街を歩くのも好きよ」

 

「街を歩いたりもしているのですか?」

 

「ええ。楽しいもの」

 

「そうですか」

 

「……ねェ白湯」

 

「何でしょう?」

 

「あなたとこうして一緒に過ごす事って、何日もなかったわね」

 

「はい。私は遠くにいましたから」

 

「何なのかしらね?こうしてまたあなたの顔を見られて、嬉しい気がするわ」

 

「お姉様…!」

 

二人がそんな会話をしている一方で、瑞姫が黄に話し掛けていた。

 

「黄、あなたよく空丹様がそこまでするのを許可したわね」

 

「目に見えて不機嫌になっていましたので、やむを得なかったのです…」

 

「今日の評定でも思ったけど、空丹様大分変ってきているみたいね」

 

「ええ。まァ、かといって政務に関心を持つとは思えませんし、瑞姫殿達や私共の生活に悪影響はないでしょうから、特に気にしなくてよろしいかと」

 

「だといいんだけどね…姉様はどう思う?」

 

「…………」

 

「?姉様?」

 

(あの男、肉の捌き方が全くなっていないな…。包丁の入れ方も間違っているし、その向きで肉を置いたら…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王宮の一室。

 

「ええい!忌々しい!」

 

張譲はイライラしながら机を叩く。

 

「劉宏め…!大人しく我らの傀儡に…道具になっていればいいものを!生意気に口出ししおって!」

 

「いよいよあの女も目障りになってきたな…」

 

部屋の隅にいた一人の男が話し掛ける。

 

薄茶色の短髪で、白装束を着た男だ。

 

「“左慈(さじ)”、仕込みは?」

 

「完全に終わっている。西の方の奴らからも報告が来た。いつでも始められるぞ」

 

「そうですか…では早速、事実上の帝位簒奪を…」

 

『張譲殿、おられますか?』

 

「その声、朱儁殿ですな」

 

外から呼び掛けられ、張譲は部屋の戸を開ける。

 

「貢ぎ物が届いたそうじゃ。皆騒いでおったぞ」

 

「おお、そうか。わざわざ済まないな」

 

「構わぬ。妾もこちらに用があったのでの」

 

「そうか。……そういえば朱儁殿」

 

「何じゃ?」

 

「あなたは嫌いな動物ってありますか?」

 

「そうじゃの……怖いとか苦手という訳ではないが、猫は大っ嫌いじゃな」

 

「そうですか…」

 

答えを聞くと張譲の姿は廊下の向こうへ消えて行った。

 

 

 

 

 

サンジと朱里の言う『嵐』の時は、一刻一刻と迫りつつあった。

 

 

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