ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第121話 “脾肉の嘆”

ある日、桃花村。

 

ルフィ、桃香、愛紗は一本の木に寄り掛かって座っていた。

ルフィは昼寝、愛紗は読書、桃香は鈴々に膝枕をしている。

 

「あ~…やっぱりお日様の下では勉強よりもお昼寝なのだ」

 

「勉強中も寝ているだろ」

 

「でも、鈴々ちゃんって本当にお昼寝好きだよね」

 

「あと、膝枕も大好きなのだ!愛紗の膝も気持ち良いけど、桃香お姉ちゃんの膝も一味違うのだ」

 

「一味違うって…どう違うの?」

 

「愛紗の膝より柔らかくて、すっごくプニプニしているのだ!」

 

「お~い!桃香~!」

 

少し離れた所から、ウソップが声を掛けてきた。

 

「お前にお客さんだぞ~!」

 

「?私にお客さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義勇軍の首脳陣や麦わらの一味と一緒に行ってみると、訪ねて来たのは以前フランキーと合流した村―――龍河村に住んでいる少年とその父親だった。

 

屋敷の応接間に移動し、用件を伺った所…

 

「この剣を私に⁉」

 

「はい。皆様が村を去った後、川の土砂を片付けていた所、中からこの宝剣が見つかったのです」

 

少年の父親が説明する。

 

「村の住民で伝承に詳しい者に訊ねてみた所、きっとこれは龍神様が授けて下さった宝剣に違いないとの事でした。

それでどうしようか皆で相談した結果、ご先祖様から受け継いできた大切な宝剣を犠牲にしてまで村を守って下さった、劉備殿に差し上げようという事になりまして…」

 

「劉備様、黄巾の乱でも大活躍したんでしょ⁉高貴な血筋の人は違うって、みんな噂しているよ!」

 

「大活躍だなんて…そんな大袈裟な…」

 

「え?でも作戦の提案から党員の処罰まで、全部劉備様が仕切って、戦闘中でも大活躍だったってみんな言ってるよ?」

 

「だ、誰がそんな事を?」

 

「曹操様や孫権様の所の人達だよ。袁術様も『劉備ばかり目立ってつまんなかった』って言ってるみたいだし…」

 

「袁術ちゃんはともかく、曹操さんと孫権さんは他人の手柄を横取りするのは嫌いでしょうしね」

 

「まァ、事実なのですから恥ずかしがる事はあるまい」

 

ナミと愛紗は言う。

 

「お気持ちは嬉しいですが…いいんですか?龍神様から授かった大切な物を、余所者である私が貰って?」

 

「私らが持っていても、飾っておく事しかできませんから。それよりも志のある方に差し出し、世の中の為に役立てた方が龍神様も喜ぶでしょう」

 

「おれも大きくなったら劉備様の家来になるからさ!これを使って、悪い奴らをやっつけてよ!」

 

「でも…」

 

「桃香!」

 

「!」

 

「ちゃんと貰え!」

 

「ルフィさん…」

 

「そうですぞ姉上。これはきっと姉上の志に応えて、失われた宝剣の代わりに龍神様が与えて下さったのでしょう!ありがたく受け取っておきましょう!」

 

「そうなのだ!神様がくれるって言った物を要らないなんて言ったら、(ばち)が当たるのだ!」

 

愛紗と鈴々もそう言い、他の者達も3人の言葉に賛同する様に笑いかける。

 

「わかりました!劉玄徳!龍神様より授かりしこの宝剣!有難く頂戴します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方、桃香は自室で一人悩んでいた。

 

それは宝剣や義勇軍、世の中の事ではなく、昼間鈴々に言われた一言についてだった。

 

―――――愛紗の膝より柔らかくて、すっごくプニプニしているのだ!

 

(そんなにプニプニしているかな?)

 

試しに自分の太腿を触ってみる。

 

ぷにっ

 

「っ⁉」

 

触った感触に嫌な予感を覚えた桃香は、腹回りにも手を伸ばす。

 

(た、確かに旅をしていた頃はもう少し引き締まっていたかも…)

 

腹回りの肉を引っ張りながら、そんな事を思う。

 

「よし!今日の夕飯からお代わり禁止にして減量しよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、食堂。

 

「あ、桃香さん」

 

「遅いぞ姉上、食事が冷めてしまうではないか」

 

意を決した桃香が食堂に着くと、そこにはすでに他の者達は集合しており、サンジ、朱里、紫苑、璃々が盛られた料理を食卓に並べていた

 

「ほい鈴々ちゃん、大盛り」

 

「おおーーー!」

 

「メッシだーーー!」

 

「ディナァ~~~♪」

 

「ロビンさんどうぞ」

 

「ふふ…ありがとう璃々ちゃん」

 

「今夜は、劉備さんの好きな狼の肉の煮込みですよ」

 

そう言いながら朱里は桃香の席の前に大きな鍋を置く。

 

「狼の肉?」

 

「村の家畜を襲っていた群れをルフィがぶっ飛ばしてな。山ほど採れたぜ」

 

「おお!美味そうだな!」

 

「…………(げ、減量は明日からでいいかな…?)」

 

不思議な事に、明日というのはいつの間にか今日になっており、永遠に訪れる事のない幻の時間なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食後。

 

「ああ~…やっぱり食べちゃった分だけお肉増えてるかも…」

 

桃香はさっそく自室で後悔していた。

 

「……でもこれは食べた直後の一時的なもので、消化してしまったらすぐに元に戻る筈よね?絶対そうだよね?元に戻るよね?」

 

『あ~…食った食った~…』

 

「!」

 

桃香が自分に言い聞かせていると、外からルフィの声が聞こえてきた。

何となく戸を開けて見てみると、腹がまん丸になったルフィが自室に入って行くのが見えた。

 

(そういえばルフィさんって、あんなに沢山食べているのにちっとも太らないな…。

腹筋とかも割れているし、やっぱり普段から体動かしてるからかな?……食後に特別な運動とかしているのかな?)

 

気になって部屋の中を覗いてみると、膨らんだ腹のままルフィは寝台で寝ていた。

 

「ぐー…」

 

(そのまんま寝ちゃってる。朝起きた後とかに運動しているのかな?)

 

「ぐー…」

 

(あれ?なんかルフィさんのお腹、さっきより小さくなっている様な…?)

 

「ぐー…」

 

(また小さくなってる⁉絶対に気のせいじゃない!)

 

「ぐー…」

 

(もうほとんど元通り⁉何で⁉寝ているだけなのに⁉)

 

「ぐー…」

 

「駄目だ…ルフィさんは全然参考にならないや…。明日翠さん達にでも特訓に混ぜて貰えないか頼んでみよう…」

 

「肉~…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?あたし達と一緒に特訓したい?」

 

翌日、早速桃香は翠と蒲公英に頼んでみた。

 

「はい!お願いします!」

 

「別に構わないけど…結構きついぜ?」

 

「たんぽぽ達についてこられる?」

 

「はい!頑張ります!」

 

「よし、わかった!じゃあ一緒にやるか!」

 

 

 

 

 

 

そして、3人で特訓をする事になったが…

 

「まずは重りを着けて斜面を兎跳びで登る!」

 

「ひ~ん!」

 

桃香は一歩も進まない。

 

 

 

 

 

 

「木の枝にぶら下がって腹筋!」

 

「うう~…」

 

木の枝にぶら下がる時点で苦戦している。

 

 

 

 

 

 

「重りを背中に乗せて腕立て伏せ!」

 

「うぎぎぎぎ…!」

 

桃香は翠を背中に乗せてやってみるが、大苦戦。

 

 

 

 

 

 

「素振り!」

 

「はァ…はァ…」

 

どことなく力が入っていない感じはするが、何とか付いて行く。

 

 

 

 

 

 

「異国の舞踊!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」

 

「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」

 

「はい!…はい!」

 

2人に比べてペースは遅く、脚も上がっていないが、こちらも何とか付いて行く。

 

 

 

 

 

 

「よし!じゃあ準備運動はこれくらいにして…」

 

「え~~~⁉今までのが準備運動⁉」

 

「?何驚いてんだよ?」

 

「だって十分しんどいのに準備運動だなんて~…!こんなの人間のやる特訓じゃないよ~…!」

 

「……なァ桃香」

 

「ちょっと、たんぽぽ達に付いて来てくれる?」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、3人は少し移動し…

 

「アレ…見てみろ…」

 

そう言って翠が示した先には…

 

「!」

 

「725…726…727…」

 

先程、翠達が使っていた5倍の量の重りを使って腕立てをするゾロの姿があった。

しかも片手である。

 

「すごいだろ…あれだけやらないと準備運動にならないって言ってんだぜ…」

 

「……翠さん達は…まだ人間に入る部類ですね…」

 

「だろ?ま、天の国の人間って、やっぱり何か違うのかもな…」

 

「さ、桃香さん、特訓に戻ろう」

 

「……はい」

 

そして3人は静かにその場を離れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二十三…二十四…」

 

その後、『やっぱりいきなり無理をさせるのはよくない』という蒲公英の言葉で、桃香は素振りや筋トレをして過ごす事になった。

 

「翠姉様!行くよ!」

 

「おう!骨の二、三本折るつもりで来い!」

 

その近くで、翠と蒲公英は長い棒を手に対峙する。

 

「………!」

 

(…姉様の気…!水の様に澄んでいて隙が無い…!それなら…)

 

「!」

 

「あー!あっちで(トンビ)が鷹を生んでるー!」

 

「エ~~~?」

 

蒲公英の言葉に翠はわざとらしく後ろを向く。

 

「ししし!隙あり!」

 

すかさず蒲公英は殴りかかる!

 

が…

 

「ふん!」

 

「⁉」

 

翠はわかっていたかの様に振り返り、蒲公英の棒を突き飛ばす!

 

「ハァーーーッ!」

 

衝撃で体勢を崩した蒲公英を横から殴り飛ばし、さらに飛び上がって真上から殴りかかる!

 

「うう…!」

 

「おおっ!」

 

「うあっ⁉」

 

蒲公英は何とか受け止めるが、翠はそのまま押し切り、腕力と勢いに押された蒲公英は吹き飛ばされる!

 

「はァっ!」

 

「っ!」

 

そして蒲公英の喉元に、翠の棒の先端が突き付けられた。

 

「ま…参りましたァ…」

 

蒲公英はヘナヘナとその場に座り込む。

 

「いいかたんぽぽ。武術というのは正直なものだ。心に嘘や偽り、やましいものがあれば、それが気の濁りとなって現れる。

汚い手を使おうとしたって、こっちはお見通しなんだからな」

 

「ちぇーっ…そんなのわかってるよ…」

 

「だったらガキの喧嘩じゃないんだから、そんなセコイ手を使うなよ」

 

「はーい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて日が暮れて、桃香達は屋敷に戻ってきた。

 

「飯だ~♪飯だ~♪」

 

「今日~のおかずはな~にかな~♪」

 

歌いながら翠と蒲公英が食堂に入り、その後から疲れ切った様子の桃香が入ってくる。

 

(特訓確かにきつかったけど…あれだけ運動すれば、お腹のお肉も少しくらいは減っている筈よね…?これで食べる量をいつもくらいに抑えれば…)

 

そう考えながら桃香は席に着く。

 

しかし…

 

「今日は、皆さんが好きな羊の肉を焼いたのですよ」

 

「んまほ~~~!」

 

「鈴々このお肉大好きなのだ!」

 

「肉汁たっぷりで美味しそうね~!」

 

(抑えれば…)

 

「それから、紫苑さんが釣って来た鯉です」

 

「鱗がパリパリになるまでじっくり揚げて、特製の餡をかけてあるのですよ」

 

「ん~!こりゃいい匂いだ!」

 

「舌なめずりが止まりませんね~!私舌ないんですけど~!」

 

(抑えれば…)

 

「そして、おれ特性のふわふわオムレツだ!今朝、ニワトリが沢山卵を産んでたから作ったんだ」

 

「本当にふわふわね。焼き色もきれい」

 

「天の国の料理、どれもすっごく美味しいから蒲公英大好きなんだー!」

 

(抑え…れば…)

 

「他にも、昨日の狼の肉を燻製にしてみたのがあるから、試食してみくれるか?」

 

「これは食欲をそそる匂いだな」

 

「酒に合いそうだなコリャ」

 

(おさえ…れば…)

 

「あと、フランキーのコーラを今日は少し飲んでいいってよ」

 

「あまり保存できねェから、勿体ねェし飲んじまおうぜ」

 

「あたしこれ、結構好きなんだよなー!」

 

(オサエ…レバ…)

 

「食後には胡麻団子もありますからね」

 

「アレ甘くて美味しいから、おれ好きなんだよなー!」

 

「璃々も璃々も~!」

 

(オ…サ…エ…レ…バ……………じゅるり…)

 

その日、桃香は『食欲』という名の敵に大敗を喫したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は風呂の日であった為、桃香は夕食後、一人入浴していた。

 

「ん~満腹満腹~!運動した後は食が進むわよね~!そしてゆったりとしたお風呂…!」

 

…と、桃香は湯船の中でくつろぐ。

 

「……って、幸せに浸ってちゃ駄目なのよ!」

 

そこでようやく我に返り、腹回りを調べる。

 

「あああ~~~!何だか昨日よりも増えてる気がする~!運動すると余計食べちゃって、逆効果なのかな~…?」

 

そして桃香が考えついたのは…

 

「ええい!こうなったら『食べない!動かない!太らない!』の三ない運動よ!」

 

間違ったダイエット方法の代表とも言える方法だった。

 

一応、断食により減量する事も可能ではあるらしいが、それは専門家などの正しい指導の下で行うべきであって、素人がいきなり何も食べない生活を送るのは、ただ身体を壊すだけである。

 

 

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