ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
その後、華佗の治療によって桃香の容態はすぐに回復した。
サンジとその捜索班もゾロ以外全員戻り、誤解も解けた。
星は初対面だったロビン、蒲公英と互いに自己紹介を済ませ、皆が互いに真名を預けている様子を見ると、自分とも真名を交換したのであった。
そして今は全員で応接間に移動し、華佗とその連れの女性にお茶を出している。
「それにしても、華佗さんの針治療って本当に良く効くんですね」
「そうなのだ!華佗のおじちゃんは天下一の名医なのだ!」
「だめだよ。びみょーなとしごろのひとに、おじちゃんとかおばさんっていっちゃ」
璃々の言葉に、華佗は苦笑いするのだった。
「でも針治療で何でも治せるなんてすげーな~。おれなんて針麻酔くらいしかできねェよ…」
「いや、針麻酔ができるだけでも大したものだ。それにチョッパー殿は病を正確に把握し、的確な治療を施せる。それだけでも十分名医だ」
「め…名医だなんて…!そんな事言われても嬉しくねェぞコンニャローが!」
(感情を隠すのは苦手なのか…)
「可愛い…」
「愛紗よ。どうかしたのか?」
「ごほん!な、何でもないぞ!」
「しかし…蓋を開けてみりゃ食あたりだったとは…」
「ま、これで誤解も解けたし、おれが手当たり次第に女性に手を出す様な軟派野郎ではないってわかって貰えたな」
「いや、今回は違ったってだけで、それは別の話だから」
ハッキリと言うナミであった。
「姉上、本当にもう大丈夫なのですか?」
「うん。チクッ!ピキューン!ハッ!ってなったら治ってて、さっきまであんなに痛かったのが嘘みたい!」
「鈴々と同じ様な言い方だな…義理でも姉妹だと結構似るもんなんだな…」
「全くだな……ってゾロ殿⁉」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
いつの間にか帰って来ていたゾロに、桃花村の面々は驚愕する。
「おまっ……どうやって帰ってきたんだよ⁉
「お前らが逸れた後、気が付いたら戻って来てたんだよ。コックを見つけるまでは帰らねェつもりだったんだが…」
「帰らないように考えて歩いていたから帰ってきたんですね…」
朱里のその言葉に全員が納得した。
「…で、桃香は元気になってるし、何で華佗がいるのかとか、隣にいるそいつは誰なのかとか、気になる事はあるが事態は解決したって事でいいんだな?」
「あ…ああ、その通りだ。そういえば華佗殿はどうしてここに?」
ゾロの言葉に、愛紗達は改めて華佗達に向き直る。
「先程、愛紗達に頼み事があると申していたが、それはそちらの吾人と関係があるのか?」
「そういえば誰なんだそいつ?」
「ああ…」
「…………」
その女性はフードを脱ぐ。
すると…
「朱儁殿⁉」
「朱儁⁉」
「この人が⁉」
その人物の素顔に愛紗が真っ先に反応し、その名前を聞いてナミと朱里も声をあげる。
「誰だ?」
「ホラ!桃香さんのニセモノが義勇軍を仕切っていた時に、官軍からの要請で遠征した事があったでしょ⁉その時の官軍の将よ!」
「ルフィも軍議の席で顔を見た筈ですぞ!」
「あー!そういえばいたな!―――けど、そんな耳してたか?」
「?耳?」
ルフィの言葉に、愛紗達は改めて朱儁の顔を見る。
すると、本来目の横にある筈の耳がなく、代わりに頭の上に猫耳が生えていた。
「ひ…人の趣味をどうこう言うつもりはないが…朱儁殿のお年で頭にその様な物を着けるのはさすがに……!」
「せ…星、笑っては失礼だろう…!」
「そう言う愛紗さんだって…!」
(可愛い…)
…と、星、愛紗、朱里、ナミ、ウソップ、桃香、翠、紫苑は吹き出し、ロビン、サンジ、チョッパー、ブルック、鈴々、蒲公英、璃々は見惚れる様に猫耳を見る。
ルフィ、ゾロ、フランキーは無反応である。
「笑うな!妾も好きでこの様なものを
朱儁は机を叩きながらそう怒鳴る。
「生やすって…?」
「ソレ被り物じゃねェのか?」
「全ては…張譲の罠だったのじゃ…!」
「張譲って…確か宮殿を支配している悪党の事だよな?」
「はい。十常侍の頭目的存在の人です」
「そうじゃ。何進と十常侍共の仲が険悪になってきた頃から、あやつら宦官と妾達武官は政敵として対立する様になってきた…。
ある日、陛下から妾や何進を始めとした武官全員に急なお召があり、宮中に参内すると…あやつは皆の前で妾を無実の罪に陥れ、怪しげな薬を無理矢理飲ませたのじゃ!
すると頭からこの様なおぞましいものが生えてきたのじゃ…!」
「たんぽぽはそういうの可愛いと思うけど」
「そーそー♡お似合いですし魅力的ですよ~♡」
「ふざけるでない!妾は強欲で卑劣な宦官共の次に猫が大っ嫌いなのじゃぞ!
それに…これでは南方に住むと言われる蛮族も同然…。
こんな格好ではもはや人前にも出られぬ、死ぬよりも辛い屈辱じゃ~…」
そう言うなり朱儁は泣き崩れてしまう。
「成程…さっきはお似合いだなんて言って悪かった…。おれだって妖怪みてェな緑の頭にされちまったら人前に出られねェぜ…」
「同感だな。おれも珍獣みてェなヘンテコ眉毛の姿を人前に晒すぐらいなら、死んだ方がマシだな…」
「妖怪頭ァ‼てめェの体原型も留めねェくらい蹴り潰してやらァ‼」
「上等だ珍獣マユゲェ‼骨の髄まで微塵切りにしてやらァ‼」
「話を続けさせろ‼」
「まァ…そういう訳で、朱儁殿が人目を避けて山中を彷徨っている所に出くわしてな…。
おれが医者だとわかると泣きつかれ、診てみた所、朱儁殿は“
「ニャンコタン?」
(可愛い名前…)
可愛い猫を想像してしまうロビンであった。
「この薬は服用した者を猫に変えてしまう効果があるんだ」
「憎む相手を本人が嫌いな物に変えようだなんて…」
「タチの悪ィヤローだな」
「しかもそれを他の部将達の前でやるとはな…」
「十中八九、見せしめでしょうね…」
朱里とフランキー、翠やロビンを始め、皆顔をしかめる。
「全くだぜ。もしおれがみんなの前で苔みてェな頭にされちまったら、おれは間違いなく死を選ぶぜ…」
「確かに…蚊取り線香型の眉毛にされた状態で生きるだなんて、正気の沙汰じゃねェ…」
「「上等だてめェ‼表に出ろ‼」」
「話の腰を折るな‼」
「え…えーとそれでだな…朱儁殿を元に戻す―――もとい猫になるのを防ぐ為には、解毒剤を作る必要があってな。それには三つの材料が必要なんだ。
一つ目は泰山の頂上の極寒な環境の中に生え、一度花を咲かせると枯れる事がないという“
二つ目は江東の孫家に代々伝わる秘薬“
三つ目は南蛮の奥地にのみ生息していると云われている“
本来ならば自分で集める所なのだが、おれは太平道の討伐に向け、まだ旅を続けなければならない身でな…。
聞けばそなたらは、朱儁殿とはまんざら知らぬ仲でもないとの事。
ここは一つ、人助けと思って材料を集め、薬を作っては貰えないだろうか?」
「おう、いいぞ。なァみんな⁉」
「ええ、お引き受けしましょう!」
ルフィは即答し、愛紗達も了承する。
「おお!」
「引き受けてくれるのか⁉」
「いつぞやは鈴々を、今日は姉上を助けて下さった華佗殿の頼みとあらば、断る訳にはいきませぬ」
「あの…本当にごめんね迷惑かけて…。それと心配してくれてありがとう、みんな」
「しかし腐っているの物を食べてしまう程、桃香殿がメンマ好きだったとはな…。だが今度勝手に食べた時は容赦せんぞ!」
「あ…はい…」
そう言って睨む星に皆苦笑いするのだった。
「しかし…江東や泰山はともかく、南蛮となるとさすがに遠いな…」
「そういやさっきも、南にいる蛮族がどうとか言ってたけど…“ナンバン”って何なんだ?」
愛紗の呟きにウソップが訊ねる。
「南蛮というのは漢王朝の最南西にある益州から、さらに南に行った所にある異国の地です。
南蛮族と総称される複数の異民族達が暮らしていて、農耕よりも狩猟を中心とした生活をしていて、建築物よりも洞窟に暮らす者の方が多いと聞きます」
「文化が全く違う国ってワケか…」
紫苑の説明にサンジが呟く。
「…で、そこの人達はああいう格好をしているの?」
ナミが朱儁の猫耳を見ながら言う。
「そうじゃ…動植物の皮を剥ぎ、そのまま身に纏っておる。故に皆揃ってこの様な格好をしている部族もいると聞く…」
(猫耳だらけの国…!)
思わず想像してしまうロビンだった。
「ああ…正直、北東の地にいる関羽殿達に頼むのはおれも少々抵抗があったのだ…。
辿り着くだけでも相当な日数を要するうえ、南蛮の地はまず入らない方が良い場所だからな…」
「何⁉
華佗の言葉に反応するルフィ。
「あ、ああ…未開の地である故、道のりも険しく、南蛮の住民は凶暴な者が多いと聞く。その上あらゆる病や毒虫などの巣窟でな…凄く危険な旅になると思うが…」
「そっか~…
((((((((((絶対に行く気だ…))))))))))
桃花村組の全員が確信するのだった。
「あ…!そういえば南蛮象の臍の胡麻なら、水鏡先生が薬の材料として、少しだけですが持っています!」
「本当か朱里⁉」
「はい!ですから私が水鏡先生の所へ行って、分けて貰ってきます!」
「そうか!それは助かる!」
「それじゃあ、南蛮象の臍の胡麻は朱里ちゃんにお願いしましょう!」
「けど、朱里一人だと心配だから、鈴々が一緒に付いて行ってあげるのだ!」
「それじゃあ私も一緒に行く!」
「おれもー!」
桃香とルフィも立候補する。
「朱里!鈴々達が付いているんだから、どーんと大
「……なァあの面子で旅をさせるくらいなら、むしろ朱里一人で行かせた方が安心ではないか?」
「……確かに…」
「まァ…ルフィが行く以上、私達の中からも誰か一人同行するから大丈夫でしょ…」
星の言葉に、愛紗とナミは同意する。
「それじゃあ、孫家には私が行こうかしら?」
…と、ロビン。
「私も行くわ。孫家って聞いたら、なんかシャオの顔見たくなってきたし」
「では、私も同行しましょう」
ナミと愛紗も立候補する。
「ちょっと待つのだ!愛紗は鈴々達と一緒に行くのだ!」
「いや…ナミ殿とロビン殿の他にも、この世界の地理に詳しい者が誰か一緒に行かねばいかんだろう。なら、孫家の者達と親しい私が行くのが最適だ。
それとも、お前がこっちに来るか?」
「む~…!」
愛紗の挑発する様な言い方に、鈴々は頬を膨らませる。
「あの…鈴々ちゃん、私達の事は心配しなくていいですから…」
「愛紗ちゃんと一緒がいいのなら…」
「別に平気なのだ!鈴々はもう子供じゃないんだから、愛紗がいなくても立派にやってみせるのだ!」
「わかったわかった…。あとは泰山だが…星、お前が行ってくれるか?」
「うむ、任せてくれ」
「あたしも一緒に行くぜ!もう留守番は御免だからな!」
「そこ、おれも付き合うぜ。極寒の環境ってのはいい特訓になりそうだ」
「来るのはいいけど、逸れるなよ…」
「ヨホホ~でしたら私も~」
「おれも一緒に行くよ!雪国育ちだから、寒い所ならきっと役に立てるぞ!」
…と、翠、ゾロ、ブルック、チョッパーが次々と立候補する。
「たんぽぽも!」
「お前は駄目だ!」
「え~⁉何で~⁉」
「当たり前だ!お前はまだ修行中なんだ!村に残って大人しくしてろ!」
「そんなァ~⁉」
「文句があるなら西涼に帰ってもいいんだぞ⁉」
「ちぇ~っ…!」
「私達と一緒に留守番しましょ」
「璃々も!いっしょ~!」
「おれとフランキーも村での大工作業がまだ残ってるから、留守番するしかねェな」
「となると…ルフィのお目付け役はおれが行くか…」
…とサンジ。
「どうやら話はまとまった様だな」
「よろしく頼むぞよ」
「おれは先を急ぐのですぐにここを発つが、解毒剤の作り方はこの紙に書いておいた。
調合自体は難しくないので、孔明殿やチョッパー殿なら、容易に作れるだろう」
「わかりました。朱儁殿も解毒剤ができるまで、この屋敷に匿っておきましょう」
▽
そして、華佗が出発して数分後、先日貰った剣を背にした桃香や人が入りそうな程大きなつづらを背負った鈴々を始め、ルフィ達と見送りに来たウソップ達は村の門前に集まった。
「皆の者、済まぬな…妾の為に…」
「朱儁殿、お礼なんぞ言わなくてもいいですよ」
愛紗は謙遜するが…
「……ぷぷっ…!」
猫耳が目に入り、どうしても堪え切れずに吹き出してしまう。
「そこは笑う所ではなかろう!」
((あの耳触りたい…))
ロビンと璃々はそんな事を思う。
「そうよ。お礼は言葉じゃなくて
「「やめろ!」」
「やれやれ、ようやく帰って来られたと思ったのに、またすぐに出発とはな…」
「くだらねェ事考えて、さっさと戻って来ねェからだろうが…」
星の言葉にゾロは呆れる。
「おや?そういえば蒲公英さんの姿が見えないようですが?」
「連れて行って貰えないから拗ねてるんだろ?全く…いつまで経っても子供なんだから…」
「やれやれなのだ…」
「とにかくだ!おめェら星ちゃん達の事、しっかり守れよ!」
「おう!任せとけ!」
サンジの言葉に気合を入れ直すチョッパー。
「ししし!冒険するのひっさしぶりだなー!」
(ルフィさん…南蛮まで行く必要がないの、わかってるんでしょうか?)
不安になる朱里。
「それじゃあ、行こうか!」
桃香の言葉で、一同は歩き出す。
「みんな~!元気でね~!」
「身体に気をつけて~!」
璃々、紫苑、ウソップ、フランキー、朱儁に見送られ、ナミ、ロビン、愛紗、は孫家に、ゾロ、チョッパー、ブルック、星、翠は泰山に、ルフィ、サンジ、桃香、鈴々、朱里は水鏡の庵へと、それぞれ向かって行った。
そしてこの旅が、ルフィ達のこの世界での最後の旅となり、最後の戦いへと繋がっていくのだった。