ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第124話 “伏龍鳳雛”

 

朱儁が飲まされた猫子丹の解毒剤を作る為、ルフィ達は3手に分かれて旅に出る事になった。

 

一組目は江東丸を求め、江東の孫家に向かうナミ、ロビン、愛紗。

 

二組目は持久草を求めて兗州の泰山に向かうゾロ、チョッパー、ブルック、星、翠。

 

「一人旅もいいが、連れがいる旅というのもいいものだな」

 

「…………」

 

「どうした翠?」

 

「具合悪いのか?」

 

「あ、いや…ちょっとたんぽぽの事が気になって…」

 

「?蒲公英の花がどうかしたのか?」

 

「馬岱の事だろ」

 

「ああ!」

 

真名を知ったばかりの星は、とっさに出てこなかった様である。

 

「蒲公英さんがどうかしましたか?」

 

「あいつがちゃんと村で大人しくしているか気になって…あたしがいないのをいい事に悪戯ばっかしてんじゃないかってさ…」

 

「ふふ…」

 

気掛かりな様子の翠を見て、星は小さく笑う。

 

「な、何だよ⁉何か可笑しいのか⁉」

 

「いや…どこか子供っぽいお前が、一人前に姉さんぶった口をしているのが微笑ましくてな…」

 

「どういう意味だよそれ?つーかそう言う自分はどうなんだよ?」

 

「私か?決まっているだろう?」

 

…と、星は4人の前に出て…

 

「私は頭のてっぺんから足の先まで!立派な大人だ!」

 

「「「「…………」」」」

 

ポーズを決め自信満々に言う星を見て、4人は固まるのであった。

 

「まァ翠さん、そこまで心配する必要はないかもしれませんし、案外村で留守番させる必要もなかったかもしれませんよ?」

 

…と、ブルック。

 

「子供というのは不思議なものでしてね…もう大人だと思っていると思っていたより子供で、まだ子供だと思っていると思っていたより大人だったりするんですよ」

 

「おお…!何かおれ感動した…!ブルックすげーな…!」

 

「皆さんの中で一番の年長者ですから」

 

「そういえばブルック殿はおいくつなのだ?」

 

「えーっと…享年38歳で、死んでから…五十…」

 

「ええっ⁉じゃあアンタ九十近いのかよ⁉」

 

「ええ、長生きでしょう?……あ、いえ、死んでました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして三組目、南蛮象の臍の胡麻を調達するルフィ、サンジ、桃香、鈴々、朱里。

 

「…………」

 

「だからおめェはちゃんと話を聞いておけよ!」

 

南蛮象の臍の胡麻は水鏡が持っている為、荊州に行くだけだと道中で知ったルフィは明らかにしょげていた。

 

「……ねェ鈴々ちゃん。さっきから気になっていたんだけど、その荷物何が入っているの?」

 

そう言って桃香が示したのは、鈴々が背負っているとても大きなつづらである。

横には布でくるまれた棒状の物が括りつけられている。

 

「わからないのだ」

 

「え?わかんないんですか?」

 

「鈴々が旅の準備をして部屋を出たら、戸口に置いてあったのだ。でも“弁当”って貼紙がしてあったから、きっと何か美味しい物が入っているに違いないのだ」

 

「へ~肉もあるかな~?」

 

「美味しい物か~いいな~」

 

「いっぱい入っているみたいだから、みんなにも分けてあげるのだ」

 

「いいのか~⁉」

 

「やった~!鈴々ちゃん太っ腹~!」

 

「にゃはは~!でも、桃香お姉ちゃん程太くはないのだ」

 

グサァッ!

 

桃香に見えない何かが突き刺さった。

 

「り…鈴々ちゃん…それってどういう意味…?」

 

「別に深い意味はないのだ。見たまんまの意味なのだ」

 

「み…見たまんま…?」

 

おそらく鈴々は『そのまんまの意味』と言いたかったのだろうが、その言い間違いは今の桃香には辛過ぎた。

 

「なァ朱里ちゃん…あれってもしかして…」

 

「やっぱり…サンジさんもそう思います?」

 

「「「?」」」

 

気がつくと、サンジと朱里が足を止め、何やら考え込んでいた。

 

「え~と…鈴々ちゃん、そのつづらを置いてこっち来てくれるか?ルフィと桃香ちゃんも…」

 

「「「?」」」

 

 

 

 

 

 

「?」

 

『え~っ⁉つづらの中に住む妖怪⁉』

 

「⁉」

 

『はい!以前古い書物を読んだ時に、つづらに隠れて荷物に紛れ、それを開けた人を食べる妖怪の話が載っていました!』

 

『たぶんこのつづらはその妖怪の仕業だな』

 

『それじゃあどうすればいいのだ⁉』

 

『このままつづらごとブっ飛ばせばいいんじゃねェか⁉』

 

「っ⁉」

 

『いえ、それよりもつづらに火をつけて一緒に燃やしてしまった方がいいと思います!』

 

『そうだな。急いで薪を…』

 

「ちょ、ちょっと待ったァーーーっ!」

 

外の会話の内容に、つづらの中にいた人物―――蒲公英は慌てて外に飛び出した。

 

「でっ⁉」

 

飛び出した拍子に転んで地面に倒れ込む蒲公英。

 

「……やっぱり蒲公英ちゃんの仕業だったんですね」

 

「⁉」

 

その目の前には両手を腰に当てて立つ朱里を始めとしたルフィ達がおり、自分を見下ろしていた。

 

「だ、騙したな⁉」

 

「それはこっちの台詞です!……でも私としては、あんな子供騙しの方法に騙される方がどうかしていると思いますけど…」

 

「全くなのだ…」

 

「いや…鈴々ちゃんの事だからな?」

 

苦笑いするサンジ。

 

「まー来ちまったもんはしょうがねェし、このまま一緒に水鏡のとこ行こうぜ」

 

「何言ってるんですか⁉蒲公英ちゃんは翠さんに村で留守番している様に言われてたんですよ⁉

その言い付けを破って勝手について来るなんて駄目に決まってます!今すぐ村に帰しましょう!」

 

「え~⁉留守番なんてつまんないよ~!たんぽぽも一緒に連れってよ~!ちゃんと大人しくしてるからさ~!」

 

「駄目です!」

 

「朱里の言う通りなのだ!子供は大人しく村で留守番しているのだ!」

 

「何さ子供って!鈴々の方がよっぽど……!」

 

…と、そこで蒲公英の目が怪しく光る。

 

「ねェ~張飛~…張飛からも頼んでよ~…」

 

…と、蒲公英は鈴々の傍に行き耳打ちする。

 

「?」

 

「あたし見てたんだよ~…張飛が子豚と追いかけっこして、朱里の硯割っちゃったの~…」

 

「っ⁉」

 

「朱里…あの硯大切にしてたから、きっとすっごく怒るだろうな~…」

 

「………っ!」

 

途端に鈴々は青ざめ、汗だくになりガタガタと震えだす。

 

「ほらほら~…」

 

「……しゅ、朱里…旅に出るのもいい修行になるし、連れって行ってあげてもいいと思うのだ…」

 

「鈴々ちゃん⁉急に何を言い出すんです⁉」

 

「べ…別に脅されてる訳ではないのだけれど、ここは蒲公英の言う通りにしてやった方がいいと思うのだ…」

 

「……?鈴々ちゃんどうしたんですか?何だか様子が変ですよ?」

 

「べ、別にそんな事ないのだ…!変でも…鈴々が変なのはいつもの事だから…普通なのだ…」

 

「………?」

 

「「「?」」」

 

朱里は鈴々を不信感丸出しの目で見、他の3人も不思議そうに見る。

鈴々の方は汗だくのまま作り笑いを続けている。

 

「……ねェ朱里ちゃん、今から村に帰らせたら山の中で日が暮れちゃうし、蒲公英ちゃんも連れて行ってあげた方がいいんじゃないかな?」

 

「桃香さん…それは…まァ…」

 

桃香の言葉に、朱里は空を見上げながら少々考え…

 

「……わかりました…。蒲公英ちゃんも連れて行きましょう…」

 

「やったー!」

 

「ただし!物見遊山の旅じゃないんですから、遊び半分でいちゃ駄目ですよ!いいですね⁉」

 

「はーい!」

 

かくして、勝手について来た蒲公英が加わり、6人で水鏡の庵を目指すのだった。

 

「あ、霧が出てくたね…」

 

「この辺りに来るといっつも霧が出てくるのだ」

 

「まだまだ濃くなりそうですから、気を付けて下さいね」

 

「まったく()()がないよね。な~んちゃって!ぷぷっ!ヤダ私ったら面白い!」

 

「うん!すっごく面白いね♡桃香ちゃんサイコー♡」

 

「サンジさん…」

 

「あんまり面白くないのだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、水鏡の庵。

 

「『氏、曰く…』」

 

日がだいぶ傾いてきた頃、雛里は今日習った一文を復唱しながら、庵の門で掃き掃除をしていた。

 

「…なりちゃーん…」

 

「?」

 

遠くから聞き覚えのある声が聞こえ、顔を上げると…

 

「雛里ちゃーん!」

 

「朱里ちゃん!」

 

走ってくる姉弟子に気付き雛里も駆け寄る。

 

「朱里ちゃん!」

 

「雛里ちゃん!」

 

「久し振り!」

 

「元気にしてた?」

 

二人は手を取り合って再会を喜ぶ。

 

少し遅れてルフィ達も到着した。

 

「あの子は誰?」

 

「あの子は鳳統ちゃん。水鏡先生のお弟子さんで、朱里ちゃんの妹弟子にあたるの」

 

面識のない蒲公英に桃香が説明する。

 

「送って貰った本、すっごい勉強になったよ!」

 

「本当⁉じゃあ今度はもっと凄いの送るね!」

 

「うん!楽しみにしてるね!」

 

『すごい本』とは、一体どの様な本なのか…?

 

「久しぶりだな雛里!」

 

「ルフィさん!」

 

ルフィに気がついた雛里は、今度はルフィに駆け寄り兄に甘える妹の様に腰に抱き着く。

 

「元気だったか?」

 

「はい!えへへ…!」

 

雛里はルフィに頭を撫でて貰い、嬉しそうにする。

 

「あら!朱里!」

 

「水鏡先生!」

 

屋敷の奥から水鏡もやって来て、朱里は水鏡に抱き着く。

 

「先せーい!」

 

「お帰り朱里!」

 

実の母子の様に2人は再会を喜ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同は挨拶と蒲公英の紹介を済ませると、屋敷の奥に案内され、ここに来た理由を説明した。

 

「そういう理由(わけ)なんです。貴重な物だとは思いますが、少しで良いので南蛮象の臍の胡麻を分けていただけないでしょうか?」

 

「構わないわよ。あれは元々、人を助ける為の薬の材料として持っていた物、人助けに使われるなら本望よ。

それに朱里がお世話になっている皆さんの頼みですもの、断る事なんてできないもの」

 

「ありがとうございます先生!」

 

「これで、南蛮象の臍の胡麻は手に入ったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一同は、薬の材料をしまってある部屋に移動したのだが…

 

「…おかしいわね?」

 

臍の胡麻は見つからなかった。

 

「確かにここにしまっておいた筈なのだけれど…。貴重な物だから他の物と間違えない様に“㊙”って書いた赤い包みに入れておいたのだけれど…」

 

「!」

 

「私の思い違いかしら?」

 

「あ…あの…」

 

「雛里?」

 

「えっと…その…」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

雛里は何かを言おうとするが、中々言葉が出てこない。

それも普段の人見知りとはどこか様子が違う。

 

「雛里ちゃん?」

 

「どうした?」

 

「っ!な…何でもないです!」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、しばらく捜してみたが結局臍の胡麻は見つからず、明かりが勿体無い事もあったので捜索は打ち切る事にして、夕食をとっていた。

 

「ごめんなさいね朱里。すぐに見つかると思ったんだけど…」

 

「気にしないで下さい、急に押し掛けた私達が悪いんですし…」

 

「ねー南蛮象の臍の胡麻って、どっか他の場所では手に入らないの?」

 

「洛陽の市とかどうですか?あそこは国中から珍しい物が集まるって聞きますし…」

 

「そうですね……幸運の幸運の幸運の、そのまた幸運の星の下に生まれた人くらいなら、手に入れられるかもしれないですね…」

 

蒲公英と桃香の言葉に朱里はそう答える。

 

「それってどのくらいなの?」

 

「砂漠の砂の中から、目当ての一粒を見つけ出すくらいですかね…?」

 

「ええ~っ⁉そんなに難しいの~⁉」

 

「まず手に入る事はなさそうだな…」

 

朱里の例えに桃香は悲鳴をあげ、サンジも顔を引きつらせる。

 

「それに…今は洛陽にはあまり近付かない方がいいと思うわ…」

 

「水鏡先生?」

 

「都で何かあったんですか?」

 

水鏡は顔を険しくし、静かに語り始めた。

 

「中郎将の朱儁が宦官の張譲に追い落とされた事は、皆さんも本人から聞いているからご存じですね?」

 

「ああ…」

 

「その後、張譲は朱儁の代わりとして、涼州武威郡の太守である董卓を宮中に招き入れたの」

 

「どうしてわざわざ涼州なんて離れた所にいる董卓さんを?」

 

「今年の春の暮れに董卓軍は鮮卑との戦で敗北したらしくて、早急に軍を立て直す必要があったの。

宮中からの援助があれば、それは可能になる。

対して張譲の方も、朱儁に代わって手駒となる将兵が欲しかった。

双方の利害が一致した事で、董卓は宮中入りしたのだけれど…何がきっかけだったのか、最近は対立して都はかなり混乱しているらしいわ…」

 

「……それ…何か腑に落ちねェな…?」

 

「そうですね…」

 

話を聞き、サンジと朱里は首をかしげる。

 

「どうしたんですか?」

 

「朱儁さんが宮中を追い出されて、張譲はその穴を埋める手駒を必要としていた。

丁度そんな時に、董卓さんが大敗して援助を必要としていた。

時期が良すぎると思いませんか?」

 

「それに朱儁ちゃんが都を追い出されてから、その董卓が大敗した情報が伝わる。

そこから宮殿に招き入れる話が涼州まで届いて、さらに董卓が了承して宮中入りしたにしては、掛かった時間が短い気がする…。

鮮卑との戦は関係なしに、最初から董卓を招き入れようとしてたんじゃねェか?」

 

「私も…少々違和感があるのですけどね…」

 

「まァ都の事はともかく、南蛮象の臍の胡麻は南蛮以外では手に入りそうにないんだね」

 

蒲公英が話を戻す。

 

「そういえば、南蛮象ってどういう動物なの?」

 

「そうですね…南蛮象と言うからには『南蛮に住む象』なんでしょうけど…。

そもそも象という動物自体、大変珍しくてハッキリとした姿形がわからないですからね…。

聞いた話では、身体の一部が太くて長くて、ビラビラしている部分もあるとか…」

 

「ふ…太くて長くて…」

 

「ビラビラしている…」

 

朱里の説明を聞き、何を想像したのか桃香と蒲公英は顔を赤らめる。

 

「ん?お前ら象見た事ねェのか?」

 

「ルフィさん、象を見た事あるの⁉」

 

「ああ!昔じいちゃんに投げ込まれたジャングルで………思い出したくねェ…」

 

珍しく冷や汗を流すルフィを見て、一同は何があったのか非常に気になるのであった。

 

「おれも一応姿形は知ってるぜ。絵に描いてあげようか?」

 

すぐに水鏡が紙と筆を用意し、サンジは象の絵を描く。

 

「鼻がこう太くて長くて…耳がビラビラしてるんだ。あと牙があって…」

 

「鼻が太くて長くて…」

 

「耳がビラビラしてるんだ…」

 

「…で、一般的な象と比べた人間の大きさがこれくらいだな」

 

完成した象の絵の隣に棒人間を描く。

 

「ええっ⁉こんなに大きいの⁉」

 

「熊とかよりも大きいね」

 

「けど、これだけ大きい動物なら、南蛮に着いたらきっとすぐに見つけられるのだ!」

 

「それは…どうかしらね?」

 

「水鏡先生?」

 

「実は南蛮象という動物は、本当は南蛮よりもずっと西の方に暮らしている動物だという説があるの。

商売道具として南蛮に持ち込まれていたものを、漢から来た旅人が見て、南蛮に住んでいる動物だと勘違いして名付けたのだと…」

 

「じゃあ、南蛮に行っても南蛮象は見つからないかもしれないんですか?」

 

「その可能性もあるわね…。噂では、南蛮大王の“孟獲(もうかく)”という方が南蛮象を飼っているらしいけど…それも本当かどうか…?」

 

「そうなんだ…」

 

「とにかく、明日もう一度探してみます。私の勘違いで、どこか別の場所にしまったかもしれないですし…」

 

そうして、皆は夕食に戻るのだった。

 

 





ルフィって図鑑とかも読んだりしないでしょうから、動物とか虫とか絶対に本物を見て覚えたんでしょうね…。

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