ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第127話 “盗人”

 

そして、いよいよ舞台の日を迎えた。

 

「もっと!もっと強く締め付けなさい!」

 

麗羽達4人は更衣室で衣装に着替えている真っ最中で、麗羽は猪々子に手伝って貰い胸にさらしを巻いていた。

 

「今から舞台であの貧乳小娘の役を演じるのですから、断崖絶壁になる様に締め付けるのよ!」

 

「はい~!」

 

「…ねェ真直ちゃん、私達こんな事していていいのかな?」

 

「一応伝令を走らせて、許攸(きょゆう)達に準備しておく様に言ったけど…」

 

「二人して何の話をしているんだ?」

 

「ほら、この間朝廷から北方の賊を制圧する様に伝令が来ていたでしょ」

 

「あー…そういやあったなそんなの…」

 

「ふん!別に放っておけばいいんですわよあんなの!

朝廷の命令だなんて言って、実際は董卓が命令しているだけですもの!真面目に取り合う必要なんてありませんわ!」

 

「董卓って誰だっけ?」

 

「涼州の武威郡で太守を務めていた人だよ」

 

「あー…辺境の領主だから麗羽様嫌っているのかー…」

 

「そういう事よ…。最初聞いた時、肉屋、宦官の次はド田舎領主って麗羽様本当に不機嫌だったんだから…」

 

「張譲達宦官を朝廷から追い出した所までは良かったんだけど、自分で相国を名乗って政権を独占しちゃったから…って文ちゃん、麗羽様息してないよ⁉」

 

「やべっ⁉強く締め過ぎたか⁉」

 

「麗羽様ー!しっかりー!逝かないで下さーい!」

 

その頃麗羽は、この世のものとは思えない程綺麗な川と花畑で、幼い頃に亡くなったお婆様と再会していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、別の更衣室でナミやシャオ達も準備していた。

 

すでに出演する者達は衣装に着替え、衣服や持ち物は小物入れにしまっている。

 

「皆さ~ん!用意できましたか~?」

 

「しくじったりしたら承知せんぞ!」

 

七乃と美羽が入って来た。

 

2人もすでに衣装に着替えている。

 

「ええ、出来ているわ」

 

「道具の準備も万端よ」

 

「少々衣装がきついですが~何とか入りました~」

 

「「「…………」」」

 

穏の言葉を聞き、シャオ、明命、美羽は残りの5人……の、身体の一部を凝視、もとい睨みつける。

 

「袁術…何だかシャオ、今ならあんたと仲良くなれそうな気がするんだけど…」

 

「奇遇じゃな、妾もそんな気がするのじゃ…」

 

「お二人共、私もその仲間に入れてくれませんか?」

 

共通の敵を持つ事で、かつての敵同士が結びつく事もあるらしい。

 

「あのー…張勲殿?」

 

台本を眺めていた愛紗が口を開く。

 

「今になって言うのも何ですが…この台本、張三姉妹の事を少し悪く書き過ぎではないですか?

元々あの三人には、太平道に利用されていた事もありますし、何より三人共反省して曹操殿の下で慈善活動に務めている訳ですし…」

 

「それならご心配なく。このお芝居に出てくる張三姉妹は、言葉にやたら『チョー』を使うから“チョー三姉妹”と呼ばれているだけで、あの三人とは全くの別人ですから~。その証拠にほら~…」

 

…と、七乃は台本の一ヶ所を示す。

 

「ここに『この物語は空想のもので、実際の人物や事件とは一切関係ありません』って小さく書かれているでしょう?」

 

七乃の言う通り、本当に小さく書かれていた。

 

(これって絶対、本人達にバレた時の言い訳の為に書いたわね…)

 

密かに確信するナミであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで舞台が始まった。

客席には老若男女問わず大勢の人が集まっている。

 

「『乱世に乗じて人々を苦しめる悪党共め!この黒髪の山賊狩りが成敗してくれる!』」

 

「きれ~!」

 

「かっこいい~!」

 

観客も盛り上がっている。

 

「『なに~あいつ⁉チョーむかつくんですけどー!』」

 

「『チョーやっつけちゃいましょ~』」

 

「わ…『わかったチョー!』」

 

張三姉妹もとい“チョー三姉妹”の張角役のシャオ、張梁役の穏、張宝役の愛紗は“黒髪の山賊狩り”役の明命に斬りかかる。

しかし、“黒髪の山賊狩り”は“チョー三姉妹”を退ける。

 

(な…なんかやりづらいな…)

 

本当は自分が黒髪の山賊狩りである事もあり、複雑な心境の愛紗であった。

 

「『なんかチョー劣勢だしー』」

 

「『こうなったら~チョー妖術でやっつけちゃいましょ~』」

 

「ま…『任せるチョー!』」

 

呪文を唱えると舞台の奥から絡繰りの化物が現れる。

 

「『おのれ化物!』」

 

“黒髪の山賊狩り”は斬りかかるが…

 

「“サイクロン=テンポ”‼」

 

口の中に待機していたナミが風を起こし、紙吹雪が舞う。

 

「『うわ~~~⁉』」

 

それに吹き飛ばされる形で“黒髪の山賊狩り”は退場した。

 

続いて“チョー三姉妹”を倒すべく“曹操”役の麗羽と本人が演じる“袁術”が、官軍を率いて登場する。

 

「『賊共よ!この卑しい宦官の娘で名門でも何でもない貧乳小娘の曹操が来たからには、年貢の納め時でしてよ!』」

 

もはやどうツッコミを入れればいいのかがわからない…。

 

「『“夏侯惇”、“夏侯淵”!やっておしまい!』」

 

“夏侯惇”役の猪々子と“夏侯淵”役の斗詩が前に出る。

 

「『こいつらチョーウザイんですけどー』」

 

「『数が多いとチョー面倒かも~』」

 

「『なら、妖術の歌でやっつけるチョー!』」

 

“チョー三姉妹”は歌いだす。

 

「“クラウディ=テンポ”‼」

 

同時にナミが雲を作り、天井の灯りを遮って暗転させる。

 

「“電気泡(サンダーボール)”‼」

 

さらに雲に電気を帯びさせる。

雲が小さい為、落雷は落ちないが小さい雷鳴や稲光が起こる。

 

「本物の雷だ!」

 

「すげーっ!」

 

「『ぐあああああっ⁉』」

 

「『きゃあああああっ⁉』」

 

「『な、何なんですのこれは⁉』」

 

「『“荀彧”曰く、これは妖しき力がある呪歌かと!』」

 

“荀彧”役の真直が言う。

 

「『“曹操”様、これでは勝ち目がありません!』」

 

「『逃げますわよー!』」

 

“曹操”、“夏侯惇”、“夏侯淵”、“荀彧”は逃げ出し、“チョー三姉妹”と“袁術”だけが舞台に残る。

 

「逃げちゃった」

 

「かっこ悪ーい」

 

「『“曹操”なんてチョー大した事ないしー!』」

 

「『ああ…“曹操”達が逃げ出してしまったのじゃ…。妾だけで勝てるのか?』」

 

舞台の端で震える“袁術”。

 

「『諦めてはなりませんよ』」

 

すると背景の一部が開き、“天の御遣い”役のロビンが登場する。

まばゆい光に包まれ、仏の様に無数の腕を生やしている。

 

「『私は“天の御遣い”。あなたに聖なる歌を授けましょう』」

 

「天の御遣い様⁉」

 

「すごーい!」

 

「『さァ!この歌の力で、悪しき妖術を破るのです!』」

 

「『うむ!悪しき賊共め!聖なる力を持った妾の歌でお仕置きじゃ!』」

 

そして今度は“袁術”が歌いだす。

 

「“サイクロン=テンポ”‼」

 

同時にナミが天井付近の雲を吹き飛ばし、舞台が再び光に照らされる。

 

「『うわあああああ⁉』」

 

「『きゃあああああ⁉』」

 

「『ぐわあああああ⁉』」

 

“袁術”の歌の前に“チョー三姉妹”は敗れ、物語は完結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~…疲れた~…」

 

舞台は大団円を迎え、役目を終えたシャオ達6人は着替えようと更衣室に向かっていた。

 

「何よあの猿芝居!…でも、これでやっと袁術に書付を…」

 

そう言いながらシャオが部屋の戸を開けると…

 

「えっ⁉」

 

荒らされた部屋の中が目に飛び込んで来た。

 

衣装かけが倒れ、調度品は床に散乱し、戸棚や小物入れは開け放たれている。

 

「これは…」

 

「楽屋荒らしか⁉」

 

ロビンと愛紗がそう言った直後…

 

「ああっ⁉」

 

「尚香殿⁉」

 

「どうされましたか⁉」

 

「シャオの小物入れが!」

 

小物入れが空いた状態で投げ捨てられているのを見て、シャオは慌てて中身を確認する。

 

「……ない…!書付がない!」

 

「「「「「ええっ⁉」」」」」

 

「どうしよう穏⁉」

 

「小蓮様、落ち着いて下さい!」

 

「で…でも…書付が…!」

 

「しっ!大きな声を出さないで下さい…。いいですか?私達が書付を失くされたという事が袁家の誰かの耳に入れば一大事。

舞台の後に書付を見るという約束はしたものの、あの袁術殿の事ですからこちらから強く要望しなければ、これ幸いと進んで書付を確認しようとはしない筈。

そうやって約束を引き延ばしている内に、何か手を打ちましょう」

 

「わ、わかったわ…」

 

しかし、時すでに遅く…

 

(へ~…書付、失くしちゃったんですね~…♪)

 

菓子と茶を届けに、入り口付近までに来ていた七乃に聞かれてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

その後、とりあえず一同は部屋の片づけをしていた。

 

「…………」

 

片付けの間も、シャオはずっと落ち込んでいた。

 

「シャオの初仕事…絶対成功させたかったのに…」

 

「尚香殿…」

 

「尚香ちゃん…」

 

その様子を見て、愛紗とロビンも何か声を掛けようとするが…

 

「……ねェシャオ」

 

それよりも先にナミが声を掛けた。

 

「盗られたのって書付だけなの?」

 

「え?…うん、他は無事だったけど…」

 

「ふ~ん…」

 

ナミは何か考えながら、少し離れた場所で片付けている穏と明命を一瞥した後…

 

「ま、元気出しなさいよ。案外杞憂で済むかもしれないわよ」

 

そう言って笑いかけた。

 

「「「?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、シャオ達は美羽に呼び出され謁見の間にいた。

ナミ、ロビン、愛紗も一緒である。

 

「皆の者、昨日はご苦労であったの!そなたらのおかげで舞台は大成功じゃ!…では、約束通り書付を見てやるとしよう」

 

「っ!」

 

「どうしたのじゃ?早く書付をみせろ」

 

「それは…その…」

 

「ん~?どうしたのじゃ?まさか失くしたというのではなかろうな?」

 

美羽がそう言った時…

 

「はい~。勿論失くしたりはしていませんよ~」

 

穏がそう言って書付を取り出した。

 

「「「?」」」

 

「書付はこれです~。どうぞご確認下さい~」

 

「「「⁉」」」

 

 

 

 

 

 

「ど、どうじゃ七乃⁉まさか偽物ではあるまいの⁉」

 

「い、いえ…これは正真正銘本物の書付です…!」

 

「では~領土の件、我々の言い分をお認め下さるという事で~よろしいですね~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、謁見を終えた6人は宮殿の一室で、舞台のお礼という事で貰ったお茶とお菓子をいただいていた。

 

「え⁉書付を盗んだのは穏と明命って、一体どういう事よ⁉ちゃんと説明しなさい!」

 

真相を聞かされ、シャオは怒り半分、驚愕半分に叫んだ。

 

「袁術殿は確かに『舞台を手伝えば書付を確認する』と行って下さいましたが~所詮は口約束ですからあまり信用できません~。

ですが~こちらが書付を失くした事にすれば~それを逆手にとって書付を見ようとすると思ったんです~」

 

「成程!口約束とはいえ、約束を守らない様な人物などと言われれば、袁術殿は評判を落とす事になる」

 

「はい~。ですが~私達が書付を紛失したとなれば~それはこちらの落ち度~。

その状態で謁見すれば~評判を落とす事なく~不利な条件を呑む必要がなくなります~」

 

「そう考えて会ってみれば、陸遜殿の罠だったという訳か」

 

「それで、私が自分の出番が終わった後、楽屋荒らしを装って書付を隠したんです」

 

「書付が盗まれた事を袁術殿の耳に入れる方法も考えていましたが~必要なかったみたいです~」

 

「見事な策ですな」

 

…と、愛紗が感心している横で…

 

「…ナミ、あなたもしかして気がついていたの?」

 

「「「「えっ⁉」」」」

 

そう呟いたロビンの言葉に、4人は驚く。

 

「まァ、十中八九陸遜さん達のお芝居なんじゃないかって気はしていたわね」

 

「ええ~⁉どうしてわかったんですか~⁉」

 

「あれだけ部屋が荒らされていたのに盗まれたのは書付だけだった。つまり犯人は最初から書付だけが目的だった訳でしょ?

でもだとしたら真っ先に私達の手荷物を調べる筈じゃない。実際シャオは身に着けていた小物入れに入れてた訳だしね。

私達の持ち物が目当てなのに、荷物を調べるより先に部屋を荒らした。

私達の持ち物を調べた後、部屋を荒らしたのに何も盗らずに逃げた。どっちにしろおかしいじゃない。

だから部屋を荒らしたのは『泥棒が入ったと思わせる為の演出なんじゃないか』って思ったのよ。

それで誰がやったのかって話だけど…袁術ちゃん達は『真っ先に疑われるのにそんな事するかな?』って思ったの。

今陸遜さんが言った様に、口約束だし有耶無耶にすればそれで済む訳だしね。

…で、陸遜さん達が袁術ちゃん達に『これは好都合。さっそく確認しよう』って思わせる為に一芝居うったんじゃないかって思ったのよ。

周泰さんなら、すぐに出番が終わったから時間は十分あったでしょうしね」

 

「な…成程…」

 

「お見事です…」

 

「ま、私は本物の泥棒だしね。…って、どうしたのシャオ?」

 

ナミの言葉に見てみると、シャオが見るからに不機嫌そうな顔になっていた。

 

「事情はわかったけど、穏、それにナミもどうしてシャオに黙ってたのよ⁉」

 

「それは~敵をだますには味方から~というやつです~。…それに小蓮様すぐに顔に出ますし~…」

 

「言えてる。ウチにいる誰かさんと同じ感じがするわ」

 

「むきーーーっ!二人揃ってシャオの事馬鹿にしてーーーっ!」

 

穏とナミの言葉にますます腹を立てたシャオは、そう叫ぶと立ち上がり…

 

「陸遜!シャオの事騙した罰としてその無駄に大きい胸を半分よこしなさい!」

 

そう言って穏の胸に掴みかかった。

 

「ひゃあああっ⁉だ、駄目です小蓮様~!そんなに引っ張らないで下さ~い!伸びちゃいます~!」

 

「しょ、尚香殿!落ち着いて…!」

 

「うるさい!うるさい!おっぱい勝ち組は黙ってなさい!」

 

「そうです関羽殿!止めないで下さい!」

 

「しゅ、周泰殿まで⁉」

 

「私だって…私だって本当はものすごく憎いんです!」

 

「「「…………」」」

 

シャオと明命の剣幕に、ナミ、ロビン、愛紗は何も出来なくなってしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、勤めを果たしたシャオ、穏、明命はナミ、ロビン、愛紗達と一緒に、江東に向かう船に乗った。

 

「うーちゃん、穏様のお手紙、冥琳様に届けてね。頼んだよ」

 

「クルッポー!」

 

明命は足に手紙を結いつけた伝書鳩を空へとはなった。

 

一同は長江を下り、江東を目指すのであった。

 

 

 

 

 

オマケ

 

その日の夜、ゾロ、チョッパー、ブルック、星、翠らはある飲食店でラーメンを食べていた。

 

「「「「「いただきまーす!」」」」」

 

「そろそろ泰山に差し掛かるだろうからな。まともな食事をいつまで食べられるかわからないし、今の内にしっかり食っておかないと…」

 

「むぐむぐむぐ…」

 

翠がそう言っている間にも、星は一人メンマを全て平らげる。

 

「誰も盗ったりしねェから、そんなに慌てて食うなって…」

 

「何を言う、諺にも“メンマ急げ”というではないか」

 

ゾロの言葉にそう返す星。

 

「へーそうなのか」

 

…と、チョッパーを始め、全員納得した様子でラーメンに手を付ける。

 

「あ…いや、今のは“善は急げ”という諺をもじった駄洒落でな…。ほら、“善は急げ”と“メンマ急げ”、似ているだろ?

…って駄洒落の説明をさせるな!恥ずかしいだろ!」

 

「…何急に切れてるんだよ?」

 

 

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