ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
ルフィ達が水鏡の庵を出てから数日後、所々に竹が生い茂っている道を歩いていた。
「「だ~んご食べたら美味かった~♪く~まを狩ったら鹿だった~♪」」
少し前に立ち寄った茶店で購入したみたらし団子を一人2本ずつ持ち、食べながら歩いている。
すでに完食したルフィと鈴々は、大声で歌いながら先頭を歩く。
「ね~もうだいぶ歩いたと思うんだけど、たんぽぽ達今どの辺にいるの?」
「水鏡先生の地図によると、そろそろ益州の
雛里が答える。
「そういえば朱里ちゃん、さっきお店で知らないおじさんと何を話していたの?」
桃香が訊ねる。
「あの人、都の方から来た行商人さんだったので、洛陽の様子を聞いていたんです」
「そうだったんだ。それで、なんて言ってたの?」
「はい。やっぱり洛陽には近付かなくて正解でした」
朱里は真剣な顔で言う。
「あの人の話では、今や朝廷は完全に董卓が支配しており、とんでもない悪政を敷いているんだとか…」
「とんでもない悪政って、どんなのなのだ?」
「朝廷の重臣や天子様の意向を無視して自分勝手な政治を行い、少しでも逆らう人は片っ端から牢に入れるそうです。
そのうえ、大規模な土木工事をいくつも始めて、その為に重い税を掛け、昼夜問わず大勢の人を無理やり働かせている為、民の間では怨嗟の声が満ちている。
…って、言っていたんですけど」
そこで朱里は顎に手を当てて考え込む。
「その話…なんだかおかしいのだ…」
「そうだよね…董卓さんって、そんな悪い事する人じゃないよね…」
鈴々と桃香も考え込む。
「?皆さん、トウタクさんをご存じなんですか?」
「あー…そういやトウタクっていえばチョッパーが世話になってたっていう…」
「たんぽぽも涼州にいた時、何回か会った事あるけど…すっごく良い人だったよ」
「じゃあ、おれ達が知ってる董卓とは違う奴なんじゃねェか?」
「そうですね…同姓同名の別人というのも考えられなくはないですが、涼州で太守を務めていたトウタクとなると…」
ルフィの言葉に頭をひねる朱里。
「優しい人に見せかけるってのは、本当の極悪人なら良くやる事だ。みんなそいつを信用しすぎなんじゃねェか?」
「因みに董卓さんって凄い美少女で、仲間の人達も美女ばかりでしたよ」
「悪い奴な訳がねェ、きっと何かの間違いだ」
桃香の言葉にあっさりと意見を変えるサンジ。
「……朱里ちゃん、サンジさんって凄く単純なんだね」
「うん、その通りだよ雛里ちゃん」
2人がサンジに冷めた視線を向けたその時…
「うわっ⁉」
「きゃあ⁉」
「「「「「「⁉」」」」」
近くの竹林の中から誰かが飛び出してきて、蒲公英にぶつかった。
「うう…」
飛び出してきたのは黒に近い藍色の短髪をして、白のメッシュが入ったボーイッシュな雰囲気の女性である。
身長は桃香よりも高い。
(うおっ⁉今までとは違うタイプの美女!)
平常運転のサンジ。
「いたた……あ~~~っ!」
起き上がった蒲公英は、地面に自分の団子が落ちているのを見て叫び声をあげる。
「……っ!」
「あ!」
しかし、ぶつかってきた相手は立ち上がると、何も言わずに林の中に走り去る。
「あんにゃろォ!ブッ飛ばしてやる!待てェーーー!」
蒲公英はそう言うなり槍を振りかざして追いかけて行った。
「蒲公英ちゃん!」
「おい、待て!」
当然、ルフィ達も慌てて追いかけた。
▽
「待てっつってんだろーーー!」
林の中の少し開けた所で蒲公英は女性に追いつき、槍を振り回して飛び掛かった!
「っ!」
相手の方も腰の剣を抜き、振り返りざまに受け止める。
「何のつもりだ⁉」
「団子の恨み!晴らさせて貰うぞ!てりゃーっ!」
蒲公英は槍を振り回し、次々と刺突を繰り出す。
「ふん!」
しかし、相手は涼しい顔をして全て捌く。
「ガキの癖に少しはやるようだな!」
「何だとォ!」
余裕を見せる相手に対し、蒲公英はだいぶ息が上がっている。
「もう少し遊んでやっても良いが、今はその時間が惜しい!
そう言うと相手は剣を構え、攻勢に出る!
「わっ⁉うっ!うわわっ!」
蒲公英は必死に防ぐが…
「きゃあ⁉」
相手の腕力に押され、受けきれずに尻もちをついてしまう。
「貰ったァ!」
「っ!」
とどめの一撃が振り下ろされ様としたその時…
「フン!」
「⁉」
「鈴々!」
「加勢するのだ!」
追いついた鈴々が蛇矛で剣を受け止めた。
「くっ!」
新手の出現に相手は後退し距離をとる。
「何だってんだ⁉今日はどこかでチビの大安売りでもしてるのか⁉」
「蒲公英の弔い合戦なのだ!鈴々が相手なのだ!」
「いや…たんぽぽまだ生きてるんだけど…」
「うおりゃーーーっ!」
蒲公英の小声のツッコミを無視し、鈴々は蛇矛を振り回し相手に斬りかかる。
「ぐっ⁉」
鈴々は桁違いの腕力を始め、実力はかなり高かったが、外見は蒲公英より幼く、弱そうに見えた。
その為、油断していた相手は表情を険しくし、追い詰められていった。
(な、何なんだこいつ⁉チビの癖に一撃一撃が重い!)
「おーい!鈴々!蒲公英!」
そこへルフィ達も追いついて来た。
「……っ」
相手は思わずルフィ達の方を見る。
「⁉」
するとどういう訳か、頬を赤くし桃香の姿を瞬き一つせずに見つめだした。
「…………」
「っ!隙ありなのだァ!」
「しまっ…!」
すかさず鈴々は蛇矛を振るい、剣を弾き飛ばす。
「覚悟するのだァ!」
そしてとどめを刺そうとした、その時…
「そこまで!」
「「「「「「「「⁉」」」」」」」」
何者かの声と共に重々しい金属音が響き、鈴々は思わず手を止め、ルフィ達も声のした方を見る。
そこには桃香よりも年上で、銀色の髪に「酔」と書かれた赤い肩当をした女性が、巨大な金棒を持って立っていた。
「何なのだお前⁉お前もこいつの仲間なのか⁉」
(うおーっ!またまたキレイなお姉様!)
「き、“
鈴々と対峙していた女性が声をあげる。
「ようやく見つけたぞ“
▽
その後、一同は銀髪の女性に連れられ、少し行った所にあった茶店に入った。
卓上には、その女性がおごってくれた、みたらし、あんこ、三色等の様々な串団子が山積になっており、ルフィ、鈴々、蒲公英は片っ端から口に放り込んでいる。
「誠に申し訳なかった!」
銀髪の女性は卓上に両手をつき、頭を下げる。
「…………」
「貴様も頭を下げぬか!」
「ぶっ⁉」
ボーイッシュな女性の方がそっぽを向いていると、銀髪の女性はその頭を掴み、机に叩きつけて、強引に下げさせた。
「「「「「「「…………」」」」」」」
その様子にルフィ達は若干引いてしまう。
「わしの名は“
「太守様だったんですか⁉」
銀髪の女性、厳顔こと桔梗の正体に桃香達は驚く。
「…でこやつは“
そう言いながら桔梗は、起き上がった魏延こと焔耶の頭を小突く。
「幼い頃より手元に置いて、武術を仕込んでおったのじゃが…。
長ずるに従い、少しばかり腕に覚えがある事を鼻にかけて、今では毎日の様に喧嘩三昧。困った暴れ者でのう…」
桔梗が説明している間にも、焔耶は何度か桃香を横目で見ては頬を赤くしている。
「今朝も街中で
説明を続けていると、今度は蒲公英と目が合い、そのまま睨み合いに入る。
「全く…そのうえ逃げる途中で、またしても他人様に迷惑を掛けるとは…」
桔梗はまたもや焔耶の頭を小突く。
「あの…その事でしたら、もう気にしていませんから…」
…と、朱里。
「そうそう、お団子も弁償して貰ったし…。蒲公英ちゃんもそれでいいよな?」
「え~…ん~まァ…」
サンジの言葉に、蒲公英は若干不満そうにしつつも頷く。
因みに団子はすでに完食されており、ルフィが4、鈴々が3、蒲公英が2、残りの4人が合わせて1の割合で食べた。
「いや!団子を弁償するぐらいでは気が済まぬ!お主ら、わしの顔を立てると思って、どうかもてなしをさせてくれ!」
桔梗が必死に懇願するので、ルフィ達は厄介になる事にしたのだった。
▽
「お帰りなさいませ、厳顔様」
「うむ。わしが留守の間、変わりなかったか?」
「はい」
そうして一行は巴郡の宮殿ではなく、桔梗の自宅である屋敷に向かった。
立派な門構えの大きな屋敷であり、使用人や見張りの兵がいる事からも、桔梗の位の高さが窺える。
「へェ…」
「厳顔さん、本当に太守様だったんだね…」
サンジと桃香は驚く。
「けど全然そんな風には見えないよね…」
「はわわっ⁉蒲公英ちゃん!」
「あわわっ⁉そんな事言ったら失礼ですよ!」
「!」
2人の言葉に蒲公英は思わず自分の口を塞ぐ。
「厳顔って太守なのに、全然そうは見えないからびっくりしたのだ」
「ああ、全然偉そうじゃねェもんな」
「「「「「⁉」」」」」
思った事が、必ずと言って良い程言葉に出る2人の発言に、サンジ達は冷や汗をかく。
「おお、そうかそうか!まァ、わしは偉そうにするのはあまり好きではないからの、見えなくても不思議ではないわ」
(((((ほっ…)))))
桔梗の大柄な性格に胸を撫で下ろす5人だった。
…と、その間に焔耶が一人、静かにその場を離れようとしていた。
「おい焔耶」
「!」
しかし、桔梗は見逃さない。
「こっそりとどこへ行くつもりじゃ?」
「え…えっと、ちょっと用を足しに…」
「なら、その前にちょいとお仕置きを受けて貰うかの?」
(ひィっ!)
焔耶は真っ青になった。
▽
そして、桔梗は焔耶を連れて屋敷の一室にやって来た。
そこは石造りの暗い地下室で、壁には様々な拷問道具が掛けられている。
何となく付いて来てしまったルフィ達は、部屋の中を見渡している。
焔耶はその真ん中で、両腕両足を大きく開いた状態で拘束され、さらに所々交差させた縄を、身体に食い込むように巻きつけられている。
(こ…これは…⁉)
(はわわ…⁉)
(あわわ…⁉)
何を想像したのか、縛られた焔耶の姿を見て、サンジは興奮し、朱里と雛里は顔を赤くしている。
「さてと…今回は何を使おうかの~?」
桔梗はそう言いながら壁の拷問器具を眺める。
「あ、あの…厳顔さん…あまり手荒な事は…」
桃香が心配そうに言う。
「いやいやそういう訳には……良し、今回はこれにするか」
そう言って桔梗が手に取ったのは…
「「「「「「?」」」」」」」
痛々しい凶器ではなく、綿の付いた耳かき棒だった。
「ひっ!」
しかし焔耶は涙目になり、小さく悲鳴を上げる。
「き…桔梗様、それは…」
「焔耶よ、覚悟はできておるだろうな?」
「う、うわわ…」
焔耶は必死にもがくが、拘束はびくともしない。
「ふふふ…」
桔梗は怪しげな笑みを浮かべると、綿で焔耶のへその辺りを撫でる。
「うっ…あっ…」
「くくく…」
「ふァっ…き…桔梗様……あっ…や、やめっ…!」
「ほれ、ここはどうじゃ?それともここが良いか?」
焔耶は顔を赤くして悶えだし、桔梗はやや楽しそうに胸や脇など、焔耶の身体のあちこちを撫で始める。
その様子を見て…
「ね~蒲公英にもやらせて~!」
「なっ⁉こ、こらっ!」
「よし、やってみろ」
蒲公英は桔梗から耳かきを受け取ると、さっきの仕返しと言わんばかりに身体をくすぐりだす。
「ほらほら~ここら辺とかどう~?」
「やっ…やめっ…ふあっ…!ああっ…!」
「お主、中々良い筋しておるのォ…」
「え、えっと…これって…」
桃香は顔を真っ赤にする。
「ぶーーーっ!」
サンジは何かが限界を超えたのか、勢い良く鼻血を吹いて倒れる。
「な、何するのだ朱里⁉何も見えないのだー!」
「見ては駄目です!これ以上は鈴々ちゃんの健全な教育によろしくありませーん!」
朱里は必死で鈴々の両目を塞ぎ…
「おい!何すんだ雛里!」
「見ないで下さい!ルフィさんは余計な事は知らないで、今のままでいて下さいー!」
その隣では雛里がルフィの頭によじ登り、必死に両目を塞いでいた。
「あァーーーーーっ‼」
大混乱の中、焔耶の大きな声が屋敷中に響き渡った。