ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
ルフィ達が桔梗、焔耶と出会った日の夜。
「ふー…」
そして今、桃香は一人、用意して貰った風呂に入っている。
(旅に出てからずっと歩いていたから、ちょっと引き締まってきたかな?)
自分の足を見てそんな事を考えていると…
「劉備殿」
「?魏延さん?」
浴室の外から焔耶が呼び掛けてきた。
「湯加減はいかがですか?」
「丁度良いですよ」
「それは良かった。では、お背中をお流しします」
「え?」
そう言うと焔耶は浴室に入って来た。
「ぎ、魏延さん⁉」
「?何か?」
「そ、その血は⁉」
焔耶の身体についている血を見て、桃香が叫ぶ。
「ああ、心配いりません。ただの返り血ですから」
「返り血?」
「はい。先程そこで不埒な輩を一人、駆除したので」
「そ、そう…」
不埒な輩というのが誰を指しているのか、桃香は何となく察しがついた。
そして、焔耶は半ば強引に桃香の背中を流し始めた。
「あ、あの…本当にお気持ちだけで結構ですから…」
「い、いえ…ご迷惑を掛けた償いとして、これくらい当然です…」
そう言う焔耶の顔が赤く染まっていたのは、決して浴室の熱気のせいだけではないだろう。
「だ…だったら私よりも蒲公英ちゃんに…」
「い、いかがですか?」
「あ…はい、き…気持ち良いです」
「そ、そうですか!気持ち良いですか!」
焔耶は手にますます力を入れる。
「あ、あの…背中はもうそれくらいで良いですから…」
「そ、そうですか。わかりました」
(ほっ…)
「では、今度は前の方を洗わせて頂きます!」
「え⁉」
そして焔耶は桃香の胸に手を伸ばす。
「ひゃっ⁉ちょ、ちょっと魏延さん⁉」
「す、隅から隅まで!隈なく洗わせて頂きます!」
焔耶の指や手にはますます力はいり、どんどんいやらしい動きになってくる。
顔もさらに赤くなり、息も荒くなっていく。
そして…
「らっ…らめえェェーーーっ!」
桃香の悲鳴が響き渡ったのだった。
同性同士でも、やはりセクハラはセクハラである。
▽
その後、桔梗の書斎で朱里、雛里、桔梗が話していた。
「して、劉備殿の容態は?」
「ちょっとのぼせただけみたいです」
「しばらく安静にしていれば大丈夫だと思います」
「サンジ殿の方は?」
「あの人は無駄に頑丈ですから気にしなくて良いです」
「それに、サンジさんの方は完全に自業自得ですから」
「そうか。しかしサンジ殿はともかく、劉備殿の方は済まなかったな。もてなすつもりがさらに迷惑を掛けてしまって…」
「けど魏延さん、あんな行動に出るなんて…」
「もしかして劉備さんの事が?」
「うーむ…お主らが考えているのとはちと違うだろうが、おそらく劉備殿に一目惚れしたのであろうな…」
「「?“違う”?」」
「実は焔耶には昔、年の離れた姉が一人おってのう…。あやつが幼い時に病で亡くなったのじゃが、それが劉備殿によく似ておるのじゃ…」
「え?」
「そうだったんですか…」
「生き写し……と言うのは少々大袈裟じゃが、顔や背格好、乳の張り具合、ちょっとゆるそうな所…本当によく似ておってのう…。
焔耶の奴、その姉を余程慕っておったらしく、今でも姉に似た女性を見るとぽうっとなってカーッとなって、訳がわからなくなるらしいのじゃ…」
「「…………」」
家族と生き別れになり、水鏡に母親の面影を重ねていた二人には、何となく焔耶の気持ちが理解できた。
「そういえば魏延さんは?」
朱里が訊ねる。
「焔耶の奴は取り敢えず一発殴って縛り、逆さ吊りにしておいた。これからじっくりお仕置きしてやるつもりじゃ!」
「じっくり…」
「お仕置き…」
昼間の事を思い出し、二人は顔を赤くするのだった。
▽
翌日。
「なんだとォ⁉もう一遍言ってみろ!」
桔梗の屋敷に蒲公英の怒鳴り声が響いた。
「ああ、何度でも言ってやるぞ!」
「おい!何やってんだ⁉」
ルフィ、桃香、鈴々、朱里、雛里が声の場所に駆けつけると、中庭で蒲公英と焔耶が武器を構えて対峙していた。
「どうしたんですか二人共⁉」
朱里が訊ねる。
「こいつが、蒲公英の武術は小便臭い子供の遊びだって!」
「事実を言ったまでだ!」
「何だとォ⁉」
「二人共喧嘩は止めるのだ!」
「つるペタのチビは黙っていろ!」
「お前、何て事言うのだ!朱里と鳳統に謝るのだ!」
「あの…鈴々ちゃん?」
「それってどういう…?」
若干、目つきを鋭くする2人だった。
「みんな!邪魔しないで!こいつ一遍ブッ飛ばしてやんないと、気が済まないんだ!」
「なら一生気が済む事はないだろうな!」
「言わせておけば…!」
「グダグダ言ってないでさっさと…」
「いい加減にせぬか!」
「「「「「「「!」」」」」」」
怒鳴り声がして、見ると近くの渡り廊下に桔梗が立っていた。
「焔耶、わしの部屋まで来い…」
「あの…厳顔さん、その前にちょっと良いですか?」
桃香が訊ねる。
「何じゃ?」
「厳顔さんが手に持ってる
そう言って桃香は、幸せそうな顔で満身創痍になっているサンジを指さす。
「わしが着替えておったら、淫らな気配を感じての…」
「「「「「「…………」」」」」」
ルフィ以外、全員あきれ果ててしまった。
▽
その後、サンジも加えて全員で桔梗の部屋に行くと、桔梗は机に向かい紙と硯を用意した。
「焔耶よ、剣をよこせ」
「はい…」
焔耶は腰の剣を机に置く。
「焔耶よ。わしは事ある毎に、貴様につまらぬ喧嘩はするなと言い聞かせてきた」
そう言いながら桔梗は紙に「厳顔」、「魏延」と書く。
「己の持つ力の使い方をもっとよく考えろとな。だが、貴様はその言葉には耳を貸さず、力をひけらかす為に剣を振るってきた」
紙を細長くまとめる。
「良いか?今貴様が見た通り、この
焔耶の剣の柄と鞘に紙縒りを結びつける。
「わしに許可なく剣を抜けば、この紙縒りは切れる。その時はわしと貴様の師弟関係も切れ、破門とする!良いな!」
「…………」
なんだかんだで長く一緒にいた相手との縁が切れる。
焔耶はその事にしばらく黙って拳を震わせていた。
▽
「何?魏延に喧嘩禁止令?」
桔梗が治める街にある、いかにも不良の溜り場のような場所で質の悪そうな連中が密談していた。
「ああ。厳顔の屋敷で働いている奴が話してたんだが、今度厳顔に許可なく剣を抜いたら破門だってよ」
「そりゃ良い事聞いたぜ。おい、すぐに数を集めろ。魏延に今までの借りをまとめて返すぞ!」
▽
その頃、ルフィ、サンジ、桃香、鈴々、朱里、雛里は桔梗に案内されて街を歩いていた。
「太守様、果物いかがですか?今日はお安いですよ?」
「また今度な」
「おや?太守様が
「ご、ゴホン!」
露骨にごまかそうとする桔梗を見て、桃香達は苦笑いする。
桔梗は何度も住民に声を掛けられ、慕われているのが良くわかった。
「それにしても、太守様が自ら街を案内してくれるとは…なんか申し訳ないな…」
…と、サンジ。
「なァに、この街の事ならわしが一番よく知っておるからの。まず一番のおすすめは…ここじゃ!」
…と言って桔梗が示したのは酒場。
「―――っ!で、ではなくてこっちじゃ!」
さすがに昼間からはまずいと感じたのか、慌ててその向かいにある武器屋を指しなおす。
▽
「うおーっ!このヨロイ、カッキィーーーッ!」
「色んな武器があるのだ!」
「これ翠姉様のに似てる!」
一行は店に入り、ルフィ、鈴々、蒲公英は楽しそうに物色する。
「ああ、そういえ厳顔様の武器の修理、終わってますよ」
「おお、それは丁度良かった」
そう言うと店主は、店の奥から巨大なリボルバー式の拳銃と太刀が合体した様な武器を持って来る。
「おお!すっげー武器だな!」
「“
旅の行商人に売り渡して、そやつらが巴郡に来た時にわしが買い取ったのじゃ。
…で、少し前に扱いを間違えて壊れてしもうてのう…修理を頼んで、その間は昔使っていたあの金棒を代わりにしとったんじゃ」
「へー…これ李典さんが作ったんだ…」
「何じゃ?お主らそやつと認識があるのか?」
「はい。曹操さん達とは、何度かお会いした事があるんです」
「そうじゃったのか」
▽
武器屋を出た後、一行は競技場のような場所に来た。
「次はここじゃ!」
「立派な馬が沢山いるのだ!」
「今からあの馬達を競争させるのじゃ!」
合図の銅鑼と共に、スタート地点に並んだ馬達は一斉に走り出す。
「よーし!行けーっ!」
「みんな頑張るのだー!」
ルフィと鈴々は楽しそうにし、他のみんなも面白そうにレースを見る。
中でも…
「よーし行け行けェーーー!よいよし!そのまま!そのまま!良いぞ!良いぞ!」
桔梗は受付の辺りで買った何かを手に、立ち上がって、一番大はしゃぎしている。
「あの…ここって…」
「ああ…たぶんそういう場所だな…」
「やっぱりそうですよね…」
朱里、サンジ、雛里は何となくここがどういう場所なのかを察したが、何も言わない事にした。
「行け行け行け行け行けェーーー!」
▽
レース終了後。
「とほほ…あと少しという所で落馬するとは…」
「あー楽しかった!」
「面白かったのだ!」
「翠ちゃん馬好きだろうから、見たらきっと楽しんでたらだろうなー」
(喜び過ぎて漏らしちゃうかも…)
そんな事を考え、にやける蒲公英。
「パイパイちゃんだったら、自分も白馬に乗って出場するとか言いそう」
(桃香さん…また間違えてますよ…)
苦笑いする朱里。
「それにしても、お勧めの最初が武器で、次が馬だなんて、厳顔は武人の鑑なのだ!」
「お⁉張飛殿は武人の心がわかっておる様じゃな!」
「勿論なのだ!」
「武人の鑑というよりは…」
「趣味がおっさん臭いだけなんじゃ…」
「実際には…一番はお酒で、二番目は賭博だったもんね…」
朱里、蒲公英、桃香が呟く。
「なんか…ゾロとかナミと息が合いそうだなあいつ」
「何言ってんだルフィ⁉あんなマリモよりおれの方が、ナミさんや厳顔ちゃんと息ぴったりに決まってんだろ⁉」
「サンジさん…何に張り合っているんですか?」
サンジの人格に困惑する雛里であった。
「よし!ではそろそろ昼食にするか!」
「メシだーーーっ!」
「やったーなのだー!」
▽
そして、一行は桔梗のお勧めのラーメン屋にやって来た。
「野菜増し増し
そして出て来たのは…
「へいお待ち!」
「「「「⁉」」」」
麺やスープが全く見えなくなる程の、キャベツ、玉ねぎ等の野菜、すりおろしニンニクの塊、脂ことチャーシューが10切れ以上盛られた大盛りラーメンだった。
「う~ん!これじゃこれ!」
「うんめェ~!」
「美味しいのだ~!」
桔梗、ルフィ、鈴々は速攻でがっつき、サンジも戸惑う事なく食べ始める。
(絶対…絶対に太る…!これ全部食べたら絶対に太っちゃう~~~!)
対して、桃香、朱里、雛里、蒲公英は戦慄し、中々箸をつけられない。
「おい!どういう事だ⁉」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
その時、店の一角で怒鳴り声が聞こえ、ルフィ達だけでなく他の客も視線を向ける。
「ど、どうしましたお客さん⁉」
「この拉麵、虫が入ってるぞ!こんなもんを客に食わす気か⁉」
「え、ええっ⁉あっしが今運んだ時は何も…」
「うっせェ!それが客に対する態度か⁉ちゃんと謝罪する為の態度ってもんを…」
「おい…」
…と、そこへサンジが首を突っ込んだ。
「別にんなの虫除けて食えばいいだけの話じゃねェか…!」
「あ⁉何だテメェ⁉」
「あーあ…サンジの奴すっげー怒るぞ」
「大体よォ、虫なんてそこら辺にいくらでも飛んでるだろ⁉入っても別におかしくねェだろ⁉」
「うっせェ!こっちは客だぞ!金払ってやってんだぞ!」
「“払って
「この野郎!痛ェ目に……ぐっ⁉」
「痛ェ目に遭うのは……テメェの方だ!」
「ぶへェっ⁉」
そのままサンジはクレーマーの頬に足を叩きつけ、店の外に蹴り飛ばした。
「……悪かったな、手荒らな事して」
「いえ、おかげで助かりました」
「このラーメン、貰って良いか?金は払うから」
「は、はい…構いませんが…?」
サンジはどんぶりを受け取ると店の外に出て…
「おらっ!食えっ!お前がわざとダメにしたラーメンだ!」
「ぐべっ⁉」
店の外でのびていたクレーマーの口に無理矢理流し込んだ。
「これ作る為になァ!店の料理人や肉、野菜、穀物を作る農家!色んな奴らが手間かけてんだぞ!わかったかクソ野郎が⁉」
「わ゛、わ゛がりま゛じだっ!ず、ずびばぜっ…!」
「「「「…………」」」」
その様子を見て桃香達は…
「食べようか」
「そうですね」
「冷めたり伸びたりしたら美味しくないですし…」
「お店の人に悪いもんね…」
食事に手を付け始めるのだった。
(今のあやつの蹴り…見事じゃのう…)
その横で、桔梗はサンジを凝視していた。
(そしておそらくこやつも…)
桔梗は、長年部将として勤めてきた事で磨かれてきた直感から、ルフィも相当の実力者ではないかと予想していた。
▽
しばらくして、ルフィの手伝いもあって桃香達4人も無事完食したので、一行は店を出た。
「あ~食った食った!」
「美味かった~!」
「美味しかったのだ~!」
そして今、満足そうに歩く桔梗、ルフィ、鈴々が歩き、その後ろを桃香達4人が腹を抑えながら歩く。
サンジはその間に入り、桃香達に気を遣いながら歩いていた。
「よーし!この調子でもう一件行くかァ!」
「「「「⁉」」」」
桔梗の口から出たまさかの一言に桃香達4人はぎょっとする。
「やったー!」
「賛成なのだー!」
「次の拉麵屋はこってりした汁が天下一品の……うん?」
…と、ここで桔梗が桃香達の乗り気じゃない雰囲気に気づく。
「どうした?」
「げ、厳顔さん…私達もう拉麵は…」
…と、桃香。
「おいおい、つまらん遠慮は無しにしようぞ」
「いや、そうじゃなくて…お腹一杯だから、残しちゃったら悪いし…」
桃香達の胃袋の状況を察したサンジがフォローする。
「そうなのか?お主らは小食じゃのう…」
((((いや、そっちの胃袋が異常だから…))))
桃香達4人はそう思った。
「あのー…私達の事は気にしなくて良いですから、ルフィさんと鈴々ちゃんと三人で行って下さい」
「む、そうか…?では、そうするとしよう」
((((ほっ…))))
朱里の提案を桔梗は受け入れるのを見て、4人は内心安堵するのだった。
「もし迷ったときは“厳顔の屋敷”と言えば、この街の者なら誰でも知っておるからの。問題なく辿り着けるからの」
「それでも辿り着けねェ奴っているけどな…」
「いるよな」
「いるよね」
「いるのだ」
「いますね…」
「いるねェ…」
「「?」」
ルフィ達のやり取りに、雛里と桔梗は頭に疑問符を浮かべるのだった。
▽
その頃、某所。
「へっくし!ふえーっくし!」
「どうしたゾロ?」
「カゼでもひいたのか?」
「いや、大方コックの奴が悪口言ってんだろ」
ゾロ達、持久草チームは一軒の茶店で休憩していた。
「星さん、今私達はどこら辺にいるのでしょうか?」
「そうだな…そろそろ泰山の麓付近だな。もうすぐ本格的に山登りになるだろう」
「いよいよか…!おし!さっさと行くぞ!」
そう言ってゾロは立ち上がり、店を出て歩き出す。
「「「「…って、そっちは今来た道!」」」」