ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
ゾロと翠が出会った、武闘大会があったその日、麗羽が治める街の外に、曹操軍は陣を構えていた。
華琳達は麗羽と謁見した、その日の内に出兵した。
そしてその翌日。
「ふう…」
「華琳様!おかえりなさいませ」
華琳が天幕に戻って来ると、留守番をしていた桂花が出迎えた。
「私が留守の間、変りなかった?」
「はい、戦況の方はいかがでしたか?」
「圧倒的よ。もう私が出向く必要はないから、戻って来たわ」
「随分と汗をおかきになっていますね。今、手拭いをお持ちします」
そう言って桂花は天幕を出ようとするが…
「待ちなさい桂花」
華琳に引き留められる。
「華琳様?」
「手拭いなんていらないわ。あなたの舌で舐めとって頂戴」
「⁉か、華琳様…」
顔を赤らめる桂花。
「どうしたの桂花?もしかして…私の身体を舐めるのは…イヤ?」
「そ、そんなことありません!」
何となく察しが付くかもしれないが、この桂花という少女は華琳に対して、恋慕同然の感情を抱いている。
それは桂花だけでなく春蘭、秋蘭など曹操軍の女性はほとんどがそうであった。
そして華琳自身も、彼女達のような美女、美少女と交わることを至福としていた。
「それじゃあ…お願いね」
そう言って椅子に座る華琳。
「は、はい…♡」
そして桂花は華琳の身体を舐め始める。
最初は腕、そして脇、つま先を舐め、さらにはあんなトコロやこんなトコロまでも…。
どこかはご想像にお任せします。
「華琳様!ご報告が………⁉」
…と、そこへ春蘭がやって来た。
春蘭と桂花の華琳に対する気持ちは、曹操軍トップクラスのモノであり、互いにそれを知っていた。
元々、この2人はどこか相容れない所があり、それもあって互いをライバル、というよりも不俱戴天の仇のように考えている。
そして今、華琳と桂花の行為を目撃した春蘭は、思考が驚愕と羨望と嫉妬で支配され、固まってしまった。
桂花の方は、せっかくの幸せな時間にジャマが入った為、もの凄い目つきで春蘭を睨んでいる。
「桂花、続けなさい」
「は、はァい♡」
「…………」
「春蘭」
「は、はい!」
「報告とは?」
「え、えーとですね、敵の首領は討ち取り賊はほぼ壊滅。今は秋蘭の部隊が残党の殲滅に入っております」
「そう、わかったわ。ご苦労様、下がって良いわよ」
「は、はい…」
春蘭は残念そうな顔をして、天幕を出て行った。
桂花はひそかに勝ち誇った様な顔をしていた。
▽
数分後、街の茶店。
「“ゴコ”?」
「ああ、漢王朝に隣接する“
ゾロは翠に、この国と翠の事情について教えて貰っていた。
「あたしの故郷、涼州は北を鮮卑、南を羌に挟まれてるから、あたしの一族は必然的に異民族と戦い続けてきたんだ。
あたしの母ちゃん、
そこから、他の五胡にも馬騰の名が広まって、それがきっかけで、対等な立場で交易ができるようになったんだ。
けど、母ちゃんが亡くなって、また五胡が漢と敵対する可能性が出てきた。
五胡だけじゃない。益州からさらに南西に行った場所には、“
国力が衰えつつある今、そいつらが叛旗を翻すかもしれない。
あたしも母ちゃんの様に、武勇を轟かせて国を守りたい。
だけど、まだそこまでの強さがないから、こうして武者修行の旅に出たって訳さ」
「なるほど…」
「ただ、どこ行くかとかは、あまりよく考えてなかったんだけど…」
「構わねェ。おれもどこに行けばいいのか、全く見当がつかねェしな。行先はお前に任せる」
「そうか、わかった。じゃあそろそろ出発するか。おじさ~ん、お勘定」
▽
「ん?」
ゾロ達が店を出ると、大通りの方で檻車を引いた軍が進んで行くのが見えた。
「おい、何だありゃ?」
ゾロが近くにいた人に訊ねた。
「陳留郡太守の曹操様の軍勢らしいよ」
「曹操⁉」
「誰だそりゃ?」
「先頭にいる金髪のあの人だよ」
「あれが………!」
「なるほど…」
翠は曹操の名を聞くと驚愕し、その姿を見ると歯を強くかみしめ、拳を震わせ始めた。
ゾロの方は華琳と近くにいる春蘭達の姿を見て、並大抵の奴ではないと感じた。
「最近、都の方で頭角を現してきた有力者で、この辺りの賊を退治するために、派遣されてきたんだってよ」
「へェ…」
その時ゾロは、いつの間にか翠がいなくなっている事に全く気づかなかった。
▽
賊退治を終えた華琳達の軍は、報告の為に麗羽の宮殿に向かっていた。
その間、春蘭は不機嫌そうにしていた。
「どうしたの春蘭?まだ拗ねているの?」
「……別に拗ねてなどおりません……」
「ふふ…わかったわ。今夜は桂花ではなく、あなたを閨に招いてあげる。だから機嫌を直しなさい」
「ええ⁉ほ、本当ですか⁉………あ、い、いえ!わ、私は別にそういう…」
「ふふふ…」
「しゅ、秋蘭!なぜ笑う⁉」
「いや、別に」
「曹操ォ!」
「「「⁉」」」
突然、何者かが槍を振りかざして襲い掛かってきた!
「むん!」
すかさず春蘭が剣を抜き迎え撃つ!
「クッ!」
「貴様、何者だ⁉」
「西涼の馬騰が一子、馬超!母の仇、討たせて貰う!」
「!馬騰の…」
翠の名乗りを聞いた瞬間、華琳は僅かに動揺した。
「ぬああああ!」
そして、その隙を逃さず翠は襲い掛かる!
「させるか!」
しかし、翠の前に春蘭が立ち塞がる。
「どけェ!」
翠は春蘭と数回打ち合ったが…
「取り押さえろ!」
「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」
「⁉」
その場には華琳や春蘭だけでなく多数の兵がいた為、多勢に無勢で捕えられてしまった。
「くそォ…」
その様子を、ゾロは人混みの向こうから見ていた。
「………何やってんだあいつは…」
▽
その夜、翠は檻に入れられ、曹操軍の陣にある天幕の中にいた。
「………やっちまったな…」
「―――ったく、何やってんだおめェは」
「⁉ゾロ⁉」
いきなり天幕にゾロが入ってきた。
「お前、どうやってここに⁉見張りの兵とかいたんじゃ…」
「気絶させてきた」
「そ、そうか…」
予想の斜め上を行くゾロの行動に、困惑する翠だった。
「しかし、ご丁寧に鉄の檻に入れられるとは…見事に極悪人扱いされてるな…」
「ああ、悪ィ…。こんな所で曹操に会うなんて思ってなかったから、つい頭に血が上って…」
「…あの女と何かあったのか?」
「……あいつは…曹操はあたしの母ちゃんを…母様を殺したんだ…。それも卑劣極まりないやり方で…」
「親の仇ってわけか…」
「…………」
「……今は頭は冷えたのか?」
「え?」
▽
天幕の一つで華琳、春蘭、秋蘭、桂花が話していると、兵士が1人やって来た。
「失礼します!」
「何事か?」
「妙な男が一人、お目通りを願っております」
「妙な男?」
「はい、その…刀を三本も腰にしておりまして…」
「「「「!」」」」
「いかがいたしましょう?」
「わかったわ、通して頂戴」
「はっ!」
▽
やって来たのは華琳達が予想した通り、昨日の昼間に華琳が気にかけていた男、ゾロだった。
「…お前が曹操か?」
「貴様!無礼だぞ!」
「曹操様と呼ばんか!」
「構わないわ。その通りよ。それで、私に何の用かしら?」
「昼間、お前を襲った女がいただろ?」
「馬超の事?あなた、彼女の仲間なのかしら?」
「まァ何つーか知った顔でな…できれば引き取りてェんだが……無論、あんなマネは二度とさせねェと約束する」
「残念だけど、それは無理よ」
「その通りだ」
「罪を犯した者を罰するのは当然だ」
「そうよ。官軍の将の首を狙ったんだもの、本来なら首を刎ねて当然よ。それを返せだなんて、あんた馬鹿じゃないの?」
「…その罰ってのは、本当はテメェが受けるべきモンなんじゃねェのか?」
「…何が言いたいの?」
「あいつよりテメェの首を刎ねた方が、世の為人の為になるんじゃねェのかって言ってんだ」
「貴様、曹操様を愚弄する気か⁉」
「あいにくおれはソイツとは初対面だ。ソイツの
「貴様…!」
「曹操様をそんな輩と一緒に…!」
「静まりなさい!」
「そ、曹操様…!」
「ですが…!」
「あなた達も今の官軍の有り様は知っているでしょう。この男の言い分はもっともよ」
「「「…………」」」
華琳に言われ、春蘭達は大人しくなった。
「…さて、馬超の件だけど。あなたが今言った通り、私とあなたは初対面。私もあなたの性はよく知らないわ。
あなたの『私の命を狙うようなことはさせない』という言葉を、私が信用できる根拠は何かあるのかしら?」
「約束は守る。二言はねェ」
「何に誓って?」
「おれの剣に誓ってだ」
「…中々面白い事を言うわね。………夏侯惇!」
「はっ!」
「あなた…この男と手合わせしなさい」
「は?」
「あなたの剣にそれほどの価値があるかどうか、見定めさせて貰うわよ」
「望む所だ」
▽
陣内に設けられた広場で、ゾロと春蘭の一騎打ちが行われる事になった。
周囲には篝火が焚かれ、30人程の兵士が円形に2人を囲っている。
その円周の一ヶ所に華琳は鎮座し、隣には秋蘭と桂花が控えている。
ゾロはすでに刀を3本抜き、春蘭も自身の刀“
「三刀流…見ものね」
「………まさか本当に口に咥えて使うなんてね…」
「言っておくが、勝負である以上手加減は無しだぞ!」
「当たり前ェだ…!」
「始め!」
秋蘭の合図と同時に両者は走り出し、正面からぶつかる!
「「………っ!」」
そのまましばらく押し合った後、両者共一度距離をとり再び接近して斬り合う!
「でえェェい!」
「っ!」
真っ直ぐに振り下ろされた春蘭の一撃を、ゾロは両手の刀で跳ね除けると同時に距離を詰め、口の刀で斬りかかる!
「くっ⁈」
春蘭は横に飛び退いて躱し、ゾロの真横から剣を振るう!
その一撃をゾロは刀で受けながら後ろに退がり、勢いをつけて再び斬りかかる!
春蘭もゾロを迎え撃とうと、連続で刀を振り回しながら斬りかかる!
「「おおおおおっ!」」
両者の刀が連続でぶつかり合い、金属音が何重にもなって響き渡る!
「………二人共どう思う?」
華琳はしばらく黙って勝負を見ていたが、やがて小声で秋蘭と桂花に話し掛けた。
「正直言って驚きました。姉者に劣らない程の力、さらに剣を三本とも使いこなす技術もあります」
「春蘭は全力ではありませんが、決して手を抜いている訳ではありません。そしてそれは、あの男も同じかと…」
「…そうね」
いつしか戦っているゾロと春蘭は、翠の事を忘れ勝負に夢中になっていた。
観戦していた華琳達や周囲の兵士も、同じ様に翠の事を忘れ勝負に見入っている。
ゾロと春蘭は再び剣を交えたまま押し合い、力比べに入った。
「……貴様!中々やるな!」
「てめェもな!―――!」
「うおっ⁉」
突然、ゾロが春蘭をいなし―――
「⁉」
華琳の方へ、剣を振りかざしながら走りだした!
「なっ⁉」
「き、貴様⁉」
「華琳様!」
突然の事に秋蘭達も反応が遅れ、ゾロはそのまま華琳に接近し―――
「ギャア!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
華琳の後ろにいた1人の兵士を斬った。
同時に兵士の手から、鞘から抜かれた剣が転がり落る。
何と周囲にいた兵士の1人が、戦いの途中で持ち場を離れ、華琳を殺そうと背後に忍び寄っていたのだった。
ゾロはそれに気づいたが、その時兵士はすでに彼女のほぼ真後ろにいた為、斬撃を飛ばす事もできず、大急ぎで駆け寄り斬ったのだった。
「夏侯淵!この男を取り調べなさい!」
「はっ!」
勝負はそこで中止となった。
▽
しばらくして、華琳と春蘭と桂花、そしてゾロが華琳の天幕で待機していた。
「曹操様!」
秋蘭が戻って来た。
「取り調べの結果、あの男は金で雇われただけの殺し屋でした。
賊退治の乱戦中に、我が軍の死んだ兵士から鎧を奪って変装し、紛れ込んだそうです。
ただ、雇った相手については本当に何も知らない様です」
「そう…ご苦労様」
華琳は秋蘭を労うと、ゾロの方を向く。
「それにしてもあなた、あの戦いの真最中によく気が付いたわね」
「勝負の前から、1人だけ妙に殺気立ってたんでな。気にはなっていた」
「成程…」
「それにしても1日に2度も命を狙われるとは…お前、相当恨まれてんだな」
「出る杭は打たれるもの。良くも悪くも何かをしようとすれば、良く思わない者が現れるのは当然よ。ところで、馬超の事だけど…」
「…………」
「無罪放免としましょう。連れて帰って構わないわよ」
「!」
「曹操様!」
「宜しいのですか?」
「先程の勝負、決着はつかなかったけど、あなたの剣はちゃんと見定めさせて貰ったわ。
あなたの剣からは、とても気高いものを感じた。
『自分の剣に誓って約束を守る』というあなたの言葉、信用しましょう。
私の命を守った功績もあるしね」
「そうか。ありがとう」
「夏侯惇、馬超の所に案内してあげなさい」
「はっ!」
ゾロは春蘭に連れられて、天幕を出て行った。