ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回もゾロと翠の話です。



第13話 “仇討ち”

ゾロと翠が出会った、武闘大会があったその日、麗羽が治める街の外に、曹操軍は陣を構えていた。

華琳達は麗羽と謁見した、その日の内に出兵した。

 

そしてその翌日。

 

「ふう…」

 

「華琳様!おかえりなさいませ」

 

華琳が天幕に戻って来ると、留守番をしていた桂花が出迎えた。

 

「私が留守の間、変りなかった?」

 

「はい、戦況の方はいかがでしたか?」

 

「圧倒的よ。もう私が出向く必要はないから、戻って来たわ」

 

「随分と汗をおかきになっていますね。今、手拭いをお持ちします」

 

そう言って桂花は天幕を出ようとするが…

 

「待ちなさい桂花」

 

華琳に引き留められる。

 

「華琳様?」

 

「手拭いなんていらないわ。あなたの舌で舐めとって頂戴」

 

「⁉か、華琳様…」

 

顔を赤らめる桂花。

 

「どうしたの桂花?もしかして…私の身体を舐めるのは…イヤ?」

 

「そ、そんなことありません!」

 

何となく察しが付くかもしれないが、この桂花という少女は華琳に対して、恋慕同然の感情を抱いている。

それは桂花だけでなく春蘭、秋蘭など曹操軍の女性はほとんどがそうであった。

そして華琳自身も、彼女達のような美女、美少女と交わることを至福としていた。

 

「それじゃあ…お願いね」

 

そう言って椅子に座る華琳。

 

「は、はい…♡」

 

そして桂花は華琳の身体を舐め始める。

最初は腕、そして脇、つま先を舐め、さらにはあんなトコロやこんなトコロまでも…。

 

どこかはご想像にお任せします。

 

「華琳様!ご報告が………⁉」

 

…と、そこへ春蘭がやって来た。

 

春蘭と桂花の華琳に対する気持ちは、曹操軍トップクラスのモノであり、互いにそれを知っていた。

元々、この2人はどこか相容れない所があり、それもあって互いをライバル、というよりも不俱戴天の仇のように考えている。

 

そして今、華琳と桂花の行為を目撃した春蘭は、思考が驚愕と羨望と嫉妬で支配され、固まってしまった。

桂花の方は、せっかくの幸せな時間にジャマが入った為、もの凄い目つきで春蘭を睨んでいる。

 

「桂花、続けなさい」

 

「は、はァい♡」

 

「…………」

 

「春蘭」

 

「は、はい!」

 

「報告とは?」

 

「え、えーとですね、敵の首領は討ち取り賊はほぼ壊滅。今は秋蘭の部隊が残党の殲滅に入っております」

 

「そう、わかったわ。ご苦労様、下がって良いわよ」

 

「は、はい…」

 

春蘭は残念そうな顔をして、天幕を出て行った。

 

桂花はひそかに勝ち誇った様な顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、街の茶店。

 

「“ゴコ”?」

 

「ああ、漢王朝に隣接する“匈奴(きょうど)”、“鮮卑(せんぴ)”、“(きょう)”、“(てい)”、“(けつ)”っていう五つの異民族の国を総称して“五胡(ごこ)”って呼んでいるんだ」

 

ゾロは翠に、この国と翠の事情について教えて貰っていた。

 

「あたしの故郷、涼州は北を鮮卑、南を羌に挟まれてるから、あたしの一族は必然的に異民族と戦い続けてきたんだ。

あたしの母ちゃん、馬騰(ばとう)は武勇と人徳の両方で、涼州だけでなく鮮卑や羌でも有名で、領民にも慕われていたんだ。

そこから、他の五胡にも馬騰の名が広まって、それがきっかけで、対等な立場で交易ができるようになったんだ。

けど、母ちゃんが亡くなって、また五胡が漢と敵対する可能性が出てきた。

五胡だけじゃない。益州からさらに南西に行った場所には、“南蛮族(なんばんぞく)”と呼ばれる異民族がいるし、幽州の“烏桓族(うがんぞく)”や交州の“山越族(さんえつぞく)”みたいに、国内にも異民族はいる。

国力が衰えつつある今、そいつらが叛旗を翻すかもしれない。

あたしも母ちゃんの様に、武勇を轟かせて国を守りたい。

だけど、まだそこまでの強さがないから、こうして武者修行の旅に出たって訳さ」

 

「なるほど…」

 

「ただ、どこ行くかとかは、あまりよく考えてなかったんだけど…」

 

「構わねェ。おれもどこに行けばいいのか、全く見当がつかねェしな。行先はお前に任せる」

 

「そうか、わかった。じゃあそろそろ出発するか。おじさ~ん、お勘定」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

ゾロ達が店を出ると、大通りの方で檻車を引いた軍が進んで行くのが見えた。

 

「おい、何だありゃ?」

 

ゾロが近くにいた人に訊ねた。

 

「陳留郡太守の曹操様の軍勢らしいよ」

 

「曹操⁉」

 

「誰だそりゃ?」

 

「先頭にいる金髪のあの人だよ」

 

「あれが………!」

 

「なるほど…」

 

翠は曹操の名を聞くと驚愕し、その姿を見ると歯を強くかみしめ、拳を震わせ始めた。

ゾロの方は華琳と近くにいる春蘭達の姿を見て、並大抵の奴ではないと感じた。

 

「最近、都の方で頭角を現してきた有力者で、この辺りの賊を退治するために、派遣されてきたんだってよ」

 

「へェ…」

 

その時ゾロは、いつの間にか翠がいなくなっている事に全く気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

賊退治を終えた華琳達の軍は、報告の為に麗羽の宮殿に向かっていた。

 

その間、春蘭は不機嫌そうにしていた。

 

「どうしたの春蘭?まだ拗ねているの?」

 

「……別に拗ねてなどおりません……」

 

「ふふ…わかったわ。今夜は桂花ではなく、あなたを閨に招いてあげる。だから機嫌を直しなさい」

 

「ええ⁉ほ、本当ですか⁉………あ、い、いえ!わ、私は別にそういう…」

 

「ふふふ…」

 

「しゅ、秋蘭!なぜ笑う⁉」

 

「いや、別に」

 

「曹操ォ!」

 

「「「⁉」」」

 

突然、何者かが槍を振りかざして襲い掛かってきた!

 

「むん!」

 

すかさず春蘭が剣を抜き迎え撃つ!

 

「クッ!」

 

「貴様、何者だ⁉」

 

「西涼の馬騰が一子、馬超!母の仇、討たせて貰う!」

 

「!馬騰の…」

 

翠の名乗りを聞いた瞬間、華琳は僅かに動揺した。

 

「ぬああああ!」

 

そして、その隙を逃さず翠は襲い掛かる!

 

「させるか!」

 

しかし、翠の前に春蘭が立ち塞がる。

 

「どけェ!」

 

翠は春蘭と数回打ち合ったが…

 

「取り押さえろ!」

 

「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」

 

「⁉」

 

その場には華琳や春蘭だけでなく多数の兵がいた為、多勢に無勢で捕えられてしまった。

 

「くそォ…」

 

その様子を、ゾロは人混みの向こうから見ていた。

 

「………何やってんだあいつは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、翠は檻に入れられ、曹操軍の陣にある天幕の中にいた。

 

「………やっちまったな…」

 

「―――ったく、何やってんだおめェは」

 

「⁉ゾロ⁉」

 

いきなり天幕にゾロが入ってきた。

 

「お前、どうやってここに⁉見張りの兵とかいたんじゃ…」

 

「気絶させてきた」

 

「そ、そうか…」

 

予想の斜め上を行くゾロの行動に、困惑する翠だった。

 

「しかし、ご丁寧に鉄の檻に入れられるとは…見事に極悪人扱いされてるな…」

 

「ああ、悪ィ…。こんな所で曹操に会うなんて思ってなかったから、つい頭に血が上って…」

 

「…あの女と何かあったのか?」

 

「……あいつは…曹操はあたしの母ちゃんを…母様を殺したんだ…。それも卑劣極まりないやり方で…」

 

「親の仇ってわけか…」

 

「…………」

 

「……今は頭は冷えたのか?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天幕の一つで華琳、春蘭、秋蘭、桂花が話していると、兵士が1人やって来た。

 

「失礼します!」

 

「何事か?」

 

「妙な男が一人、お目通りを願っております」

 

「妙な男?」

 

「はい、その…刀を三本も腰にしておりまして…」

 

「「「「!」」」」

 

「いかがいたしましょう?」

 

「わかったわ、通して頂戴」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

やって来たのは華琳達が予想した通り、昨日の昼間に華琳が気にかけていた男、ゾロだった。

 

「…お前が曹操か?」

 

「貴様!無礼だぞ!」

 

「曹操様と呼ばんか!」

 

「構わないわ。その通りよ。それで、私に何の用かしら?」

 

「昼間、お前を襲った女がいただろ?」

 

「馬超の事?あなた、彼女の仲間なのかしら?」

 

「まァ何つーか知った顔でな…できれば引き取りてェんだが……無論、あんなマネは二度とさせねェと約束する」

 

「残念だけど、それは無理よ」

 

「その通りだ」

 

「罪を犯した者を罰するのは当然だ」

 

「そうよ。官軍の将の首を狙ったんだもの、本来なら首を刎ねて当然よ。それを返せだなんて、あんた馬鹿じゃないの?」

 

「…その罰ってのは、本当はテメェが受けるべきモンなんじゃねェのか?」

 

「…何が言いたいの?」

 

「あいつよりテメェの首を刎ねた方が、世の為人の為になるんじゃねェのかって言ってんだ」

 

「貴様、曹操様を愚弄する気か⁉」

 

「あいにくおれはソイツとは初対面だ。ソイツの(さが)については何も知らねェ。それに正規の軍ってのに、あまりいい印象もねェんでな」

 

「貴様…!」

 

「曹操様をそんな輩と一緒に…!」

 

「静まりなさい!」

 

「そ、曹操様…!」

 

「ですが…!」

 

「あなた達も今の官軍の有り様は知っているでしょう。この男の言い分はもっともよ」

 

「「「…………」」」

 

華琳に言われ、春蘭達は大人しくなった。

 

「…さて、馬超の件だけど。あなたが今言った通り、私とあなたは初対面。私もあなたの性はよく知らないわ。

あなたの『私の命を狙うようなことはさせない』という言葉を、私が信用できる根拠は何かあるのかしら?」

 

「約束は守る。二言はねェ」

 

「何に誓って?」

 

「おれの剣に誓ってだ」

 

「…中々面白い事を言うわね。………夏侯惇!」

 

「はっ!」

 

「あなた…この男と手合わせしなさい」

 

「は?」

 

「あなたの剣にそれほどの価値があるかどうか、見定めさせて貰うわよ」

 

「望む所だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陣内に設けられた広場で、ゾロと春蘭の一騎打ちが行われる事になった。

 

周囲には篝火が焚かれ、30人程の兵士が円形に2人を囲っている。

その円周の一ヶ所に華琳は鎮座し、隣には秋蘭と桂花が控えている。

 

ゾロはすでに刀を3本抜き、春蘭も自身の刀“七星餓狼(しちせいがろう)”を構える。

 

「三刀流…見ものね」

 

「………まさか本当に口に咥えて使うなんてね…」

 

「言っておくが、勝負である以上手加減は無しだぞ!」

 

「当たり前ェだ…!」

 

「始め!」

 

秋蘭の合図と同時に両者は走り出し、正面からぶつかる!

 

「「………っ!」」

 

そのまましばらく押し合った後、両者共一度距離をとり再び接近して斬り合う!

 

「でえェェい!」

 

「っ!」

 

真っ直ぐに振り下ろされた春蘭の一撃を、ゾロは両手の刀で跳ね除けると同時に距離を詰め、口の刀で斬りかかる!

 

「くっ⁈」

 

春蘭は横に飛び退いて躱し、ゾロの真横から剣を振るう!

その一撃をゾロは刀で受けながら後ろに退がり、勢いをつけて再び斬りかかる!

春蘭もゾロを迎え撃とうと、連続で刀を振り回しながら斬りかかる!

 

「「おおおおおっ!」」

 

両者の刀が連続でぶつかり合い、金属音が何重にもなって響き渡る!

 

「………二人共どう思う?」

 

華琳はしばらく黙って勝負を見ていたが、やがて小声で秋蘭と桂花に話し掛けた。

 

「正直言って驚きました。姉者に劣らない程の力、さらに剣を三本とも使いこなす技術もあります」

 

「春蘭は全力ではありませんが、決して手を抜いている訳ではありません。そしてそれは、あの男も同じかと…」

 

「…そうね」

 

いつしか戦っているゾロと春蘭は、翠の事を忘れ勝負に夢中になっていた。

観戦していた華琳達や周囲の兵士も、同じ様に翠の事を忘れ勝負に見入っている。

 

ゾロと春蘭は再び剣を交えたまま押し合い、力比べに入った。

 

「……貴様!中々やるな!」

 

「てめェもな!―――!」

 

「うおっ⁉」

 

突然、ゾロが春蘭をいなし―――

 

「⁉」

 

華琳の方へ、剣を振りかざしながら走りだした!

 

「なっ⁉」

 

「き、貴様⁉」

 

「華琳様!」

 

突然の事に秋蘭達も反応が遅れ、ゾロはそのまま華琳に接近し―――

 

 

 

 

 

「ギャア!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

華琳の後ろにいた1人の兵士を斬った。

同時に兵士の手から、鞘から抜かれた剣が転がり落る。

 

何と周囲にいた兵士の1人が、戦いの途中で持ち場を離れ、華琳を殺そうと背後に忍び寄っていたのだった。

ゾロはそれに気づいたが、その時兵士はすでに彼女のほぼ真後ろにいた為、斬撃を飛ばす事もできず、大急ぎで駆け寄り斬ったのだった。

 

「夏侯淵!この男を取り調べなさい!」

 

「はっ!」

 

勝負はそこで中止となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、華琳と春蘭と桂花、そしてゾロが華琳の天幕で待機していた。

 

「曹操様!」

 

秋蘭が戻って来た。

 

「取り調べの結果、あの男は金で雇われただけの殺し屋でした。

賊退治の乱戦中に、我が軍の死んだ兵士から鎧を奪って変装し、紛れ込んだそうです。

ただ、雇った相手については本当に何も知らない様です」

 

「そう…ご苦労様」

 

華琳は秋蘭を労うと、ゾロの方を向く。

 

「それにしてもあなた、あの戦いの真最中によく気が付いたわね」

 

「勝負の前から、1人だけ妙に殺気立ってたんでな。気にはなっていた」

 

「成程…」

 

「それにしても1日に2度も命を狙われるとは…お前、相当恨まれてんだな」

 

「出る杭は打たれるもの。良くも悪くも何かをしようとすれば、良く思わない者が現れるのは当然よ。ところで、馬超の事だけど…」

 

「…………」

 

「無罪放免としましょう。連れて帰って構わないわよ」

 

「!」

 

「曹操様!」

 

「宜しいのですか?」

 

「先程の勝負、決着はつかなかったけど、あなたの剣はちゃんと見定めさせて貰ったわ。

あなたの剣からは、とても気高いものを感じた。

『自分の剣に誓って約束を守る』というあなたの言葉、信用しましょう。

私の命を守った功績もあるしね」

 

「そうか。ありがとう」

 

「夏侯惇、馬超の所に案内してあげなさい」

 

「はっ!」

 

ゾロは春蘭に連れられて、天幕を出て行った。

 

 

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