ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第130話 “破門”

「危ない所だったな…。みんな、お腹大丈夫か?」

 

ルフィ、鈴々、桔梗らと別行動をする事になったサンジ、桃香、朱里、雛里、蒲公英らは、取り敢えず街を歩いてみる事にした。

 

「あの様子だと、この後もずっと食事や食べ歩きを続けるでしょうし…」

 

「厳顔さんには悪いけど…見てるだけで気持ち悪くなっちゃうよね…」

 

「ルフィさん達の食欲って本当に凄いんですね…」

 

「たんぽぽも食べる方だけど、あれはさすがにね~…」

 

そんな会話をする桃香達の後ろで…

 

(ぐふふふふ…)

 

サンジは思いっ切りにやけていた。

 

(やった~~~!女の子4人の中におれ一人~~~♡幸せだな~~~♡

ナミさんロビンちゃんも一緒だったら良かったのに~~~♡

いつかは愛紗ちゃんや星ちゃん達、願わくば曹操ちゃんや孫権ちゃん達も、み~んな一緒にハーレムデートしたいな~~~♡

鈴々ちゃんや朱里ちゃんも大きくなったら、きっとすっごい美人さんになるだろうし、あ~~~♡待ち遠し~~~♡)

 

…と、一人妄想にふけっている間に…

 

「………あれ?桃香ちゃん?みんな?」

 

桃香達は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?サンジさんは?」

 

市場に到着した桃香達は、いつの間にかサンジがいなくなっている事に気がついた。

 

「どっかで綺麗な女の人見つけて、軟派してるんじゃないの~?」

 

「あはは…ありそうですね」

 

「でも、厳顔さんの屋敷に行けば合流できますから、取り敢えず心配はいらないと思います」

 

「そうだね」

 

…という訳で、桃香達はサンジを放置して観光を続ける事にした。

 

「あ…!」

 

桃香はひよこの路上販売を見つけ、思わず駆け寄った。

 

「うわ~!可愛い~!ふわふわのピヨピヨだ~!ねェ~見て、この子達すっごく…」

 

…と、桃香は朱里達を手招きするが…

 

「……あれ?」

 

3人はいつの間にか消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

その頃、焔耶は紙縒りを結びつけた剣を腰に、河原の草原で寝転がっていた。

 

「へっへっへ!」

 

「!」

 

そこへ十人余りのゴロツキ達がやって来た。

 

「探したぞ魏延」

 

「何の用だ?」

 

「お前に今までの借りを返しに来たんだよ!」

 

「これまで散々コテンパンにされてきた癖に、懲りない奴らだな…」

 

焔耶は起き上がり、剣に手を掛けるが…

 

「あれェ?良いのか?剣を抜いて?」

 

「っ!」

 

「お前、厳顔の許可なく剣を抜いたら、破門なんだってな?」

 

「貴様…!」

 

そしてゴロツキ共は、丸腰同然の焔耶をいたぶり始めた。

 

 

 

 

 

 

「も~朱里ちゃん達、私を置いていくなんて…。とにかく厳顔さんの家に…」

 

一人はぐれた桃香は、桔梗の屋敷に向かっていた。

その途中、一つの橋を渡り、何となく橋の下を見てみると…

 

「…?あっ!」

 

何人ものゴロツキに囲まれた焔耶が目に入った。

 

焔耶はだいぶ傷を負っており、膝をついている。

 

「ちょっとあなた達何してるんですか⁉」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

「劉備殿⁉」

 

ゴロツキ達と焔耶の方も、桃香に気づいた。

 

「魏延さん一人にこんなに大勢で、卑怯じゃないですか!」

 

桃香は焔耶の下に駆けつけ、ゴロツキのリーダー的存在と向き合う。

 

「卑怯?おれ達はいつもこの人数で戦ってやられてんだ。卑怯者呼ばわりされる筋合いはねェぞ!」

 

「あなた何を言って…!」

 

「おいおい、そんな怖い顔するなって」

 

ゴロツキはそう言って桃香に手を伸ばす。

 

「!その人に触るな!」

 

焔耶はとっさに桃香を庇い、反射的に剣に手を掛ける。

 

「お?剣を抜くのか?破門になるのに?」

 

「っ!……お前らの目的は私だろ⁉この人に手を出す必要はないだろ⁉」

 

「魏延さん…」

 

「おお、そうか!おしお前ら、魏延をいたぶるのは止めだ。こっちの女に手を出そうぜ!」

 

「なっ⁉この人は関係ないだろ⁉」

 

「じゃあ何で動揺してんだ?お前、この人に手を出して欲しくないんだろ?だったらこいつに手を出さない訳にはいかねェな!」

 

「っ!」

 

「きゃあ⁉」

 

そうしている間にも、桃香はゴロツキに捕まってしまう。

 

「劉備殿!」

 

「今までのお返しだ!お前の目の前で、こいつに手を出しまくってやるぜ!」

 

「や、やめろ!頼むからやめてくれ…!」

 

「い、いやっ!放して!」

 

「へへへ…よーしまずはおれから、その胸を…」

 

「き、貴様っ…!」

 

焔耶は剣に手を掛けるが…

 

「!魏延さん駄目!」

 

「っ!」

 

桃香が制止する。

 

「へへへ…お嬢ちゃん、本当にありがとうよ、感謝してもしきれねェぜ」

 

「⁉」

 

不意にゴロツキの一人が桃香に礼を言った。

 

「お嬢ちゃんが来てくれたおかげで、ただこいつをいたぶるより、もっと辛い目に遭わせられるぜ!」

 

「っ!」

 

「弱いクセにのこのこやって来て、とっ捕まって、おれ達の手伝いをしてくれてよ!」

 

「全くありがたい!ありがたい頭だぜ!」

 

「そ…そんな…!」

 

自分が来たことで却って焔耶を追い詰めてしまった。

その紛れもない事実に、桃香は顔面蒼白になり、悲鳴を上げる気力もなくなってしまう。

 

しかしその時…

 

「い…」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

「いい加減にしろォーーーっ‼」

 

焔耶が完全にブチ切れた。

 

「おいおい、いいのか?剣を抜いたら…」

 

「黙れェーーーっ‼」

 

ゴロツキが言い切る前に剣を抜く。

 

「「「「「「「「「「げっ⁉」」」」」」」」」」

 

「魏延さん!」

 

「わ…」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

「私を想ってくれた人を‼侮辱するなァーーーっ‼」

 

焔耶の頭には破門の事も、屈辱も、「桃香に手を出さないでくれ」という考えもなかった。

自分を想ってくれた人を、その想いを侮辱された事に対する怒り、その人を、その想いを自分が助け、守るという考えで一杯だった。

 

「「「「「「「「「「ひ、ひいいィィィっ⁉」」」」」」」」」」

 

焔耶は自分達に何もしてこないと思い込んでいたゴロツキ共は、たちまち真っ青になった。

 

 

 

 

 

 

そして焔耶は瞬く間にゴロツキを全滅させた。

 

「……魏延さん…」

 

千切れてしまった紙縒りを見て、桃香は力なく呟く。

 

「劉備殿………大丈夫ですか?」

 

「っ!魏延さん…」

 

桃香は反射的に「ごめんなさい」という言葉が出かけたが、必死にそれを押しとどめ…

 

「……ありがとう、助けてくれて…」

 

そう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、桃香と焔耶はそのまま桔梗の屋敷に帰った。

 

夕方になると、桔梗と一緒にいたルフィと鈴々、桃香を捜していた朱里、雛里、蒲公英、そしてサンジも桔梗の屋敷に戻って来た。

 

焔耶は自分の剣と、それに付いている千切れた紙縒りを桔梗に見せた。

桃香も、焔耶が剣を抜いたいきさつを説明した。

 

そして焔耶は一人で桔梗の部屋に呼び出され、ルフィ達は入口付近で中の様子をうかがっている。

 

「魏延さん…私のせいで…」

 

「何言ってんだ。悪いって言ったら、桃香ちゃんを一人にしちまったおれ達だってそうだ。それに一番悪いのはそのゴロツキ共だろ」

 

「でも……やっぱり私、厳顔さんにお願いして…」

 

桃香は部屋に入ろうとするが…

 

「ダメだ」

 

「!ルフィさん⁉」

 

ルフィが桃香の肩に手を置き、やめさせる。

 

「これはあいつと厳顔の問題だ。だから…ちゃんとガマンしろ…!」

 

「っ!……ルフィさん…」

 

 

 

 

 

 

一方、室内。

 

「劉備殿から事情は聞いた。しかし、禁を破ったことは事実」

 

「…はい」

 

「焔耶、貴様を破門とする」

 

「はい」

 

「これよりわしと貴様は師弟ではない。わかったな⁉」

 

「はい」

 

淡々と言い放たれる桔梗の言葉に、焔耶は黙って返事をする。

 

「……しかし…不思議なものじゃのう」

 

「⁉」

 

桔梗の口調が柔らかになる。

 

「今まで貴様は何か騒ぎを起こせば、お仕置きを恐れて逃げ回っていた。だが今回は逃げる事なく、神妙にわしの前に控えておる。それは何故だ?」

 

「……そ、それは…」

 

言われてみると、焔耶自身にとっても不思議な事だった。

 

「焔耶よ。それは今回自分がした事が、決して恥ずべき事ではないと、わしの前で胸を張って言えるからではないか?」

 

「…………」

 

「たとえどれほどの強さを持っていても、理由もなく振るわれる力は虚しいもの。大切な物を守る為、尊き志の為に振るわれてこそ初めて意味を持つ。

今回の事で、それがわかったであろう?」

 

「……はい」

 

「焔耶よ。先程申した通り、わしはもうお主の師匠ではない。もう今までの様に面倒は見てやらん。これからは、己の心は己で律するのだ。良いな?」

 

「……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、桃香は一人、屋敷の中庭で考え込んでいた。

 

―――――お嬢ちゃんが来てくれたおかげで、ただこいつをいたぶるより、もっと辛い目に遭わせられるぜ!

 

―――――弱いクセにのこのこやって来て、とっ捕まって、おれ達の手伝いをしてくれてよ!

 

(あの人達が言っていた、あの言葉はやっぱり正しい…)

 

そして自責の念にかられていた。

 

(あの人達は、魏延さんを苦しめる事を……魏延さんの笑顔を奪う事を目的にしていた…。

黄巾党の時みたいに、追い詰められたり操られていたりとは違う…本当に誰かを苦しめたいと心から望んでいた人達だった…。

けど私は、あの人達がそんな悪党だなんて思わなかったから、話し合いで解決できると思っていた…。

もしあそこにいたのが私じゃなくて、ルフィさんや愛紗ちゃんだったら……!

朱里ちゃん達だって何らかの知恵で、魏延さんが破門にならない様に解決する事ができたかもしれない…!)

 

桃香は目に涙を浮かべる。

 

(力も知恵も何もないクセに…!出て行ったりしたから、魏延さんの足を引っ張って…!)

 

「お、桃香」

 

「!」

 

不意に呼び掛けられ、見るとルフィが立っていた。

 

「ルフィさん…」

 

「何やってんだお前?」

 

「……あの…ルフィさん…お願いがあるんです…!」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、朝早くに巴郡を出発する事にしたルフィ達は、城門まで見送りに来てくれた桔梗、焔耶と別れの挨拶をしていた。

 

「それじゃあ厳顔さん、お世話になりました」

 

「ここから南方へ向かうには、崖沿いの険しい道を進まねばならん。道中気を付けてな」

 

「厳顔も、飲み過ぎには気を付けるのだ!」

 

「張飛、それとルフィこそ、食べ過ぎに気を付けるのだぞ!」

 

「「「「「「「「ハハハハハ!」」」」」」」」

 

「…………」

 

その場が笑いに包まれる中、焔耶は一人俯いている。

 

「それじゃあ、失礼しますね」

 

「またな~!」

 

そして、ルフィ達は出発する。

 

「…………」

 

その様子を―――桃香の背中を焔耶は名残惜しそうに見つめている。

 

「……どうした焔耶?」

 

「っ!い、いえ…別に何も…」

 

「……焔耶よ、昨日わしが何と言ったか、もう忘れたのか?己の心は己で律せ」

 

「……!」

 

「付いて行きたいならば、付いて行けェ!」

 

そう言って桔梗は焔耶の背中を強く押す!

 

「桔梗様…!わ、私は…」

 

「何をもたもたしとるか⁉急がんと置いて行かれるぞ⁉」

 

「っ!は、はい!劉備殿ォー!」

 

焔耶は少々戸惑っていたが、桃香達に元気よく駆け寄って行った。

 

「おお、そうじゃ焔耶!」

 

「⁉」

 

「餞別代りじゃ!持って行けェ!」

 

そう言うと桔梗は、自分が使っていた金棒“鈍砕骨(どんさいこつ)”を放り投げる。

 

「へっ⁉うおっ⁉」

 

焔耶は何とかそれをキャッチする。

 

「達者でのう!焔耶ァ!」

 

「はい!桔梗様!今までお世話になりました!」

 

そして焔耶はルフィ達と共に旅立って行った。

 

(しかし…真に良き主と、良き武人と共に旅立てたものじゃ…。大きくなれよ…)

 

桔梗はそんな事を思いながら、昨日までの弟子を見送るのだった。

 

 





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