ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
「危ない所だったな…。みんな、お腹大丈夫か?」
ルフィ、鈴々、桔梗らと別行動をする事になったサンジ、桃香、朱里、雛里、蒲公英らは、取り敢えず街を歩いてみる事にした。
「あの様子だと、この後もずっと食事や食べ歩きを続けるでしょうし…」
「厳顔さんには悪いけど…見てるだけで気持ち悪くなっちゃうよね…」
「ルフィさん達の食欲って本当に凄いんですね…」
「たんぽぽも食べる方だけど、あれはさすがにね~…」
そんな会話をする桃香達の後ろで…
(ぐふふふふ…)
サンジは思いっ切りにやけていた。
(やった~~~!女の子4人の中におれ一人~~~♡幸せだな~~~♡
ナミさんロビンちゃんも一緒だったら良かったのに~~~♡
いつかは愛紗ちゃんや星ちゃん達、願わくば曹操ちゃんや孫権ちゃん達も、み~んな一緒にハーレムデートしたいな~~~♡
鈴々ちゃんや朱里ちゃんも大きくなったら、きっとすっごい美人さんになるだろうし、あ~~~♡待ち遠し~~~♡)
…と、一人妄想にふけっている間に…
「………あれ?桃香ちゃん?みんな?」
桃香達は消えていた。
▽
「あれ?サンジさんは?」
市場に到着した桃香達は、いつの間にかサンジがいなくなっている事に気がついた。
「どっかで綺麗な女の人見つけて、軟派してるんじゃないの~?」
「あはは…ありそうですね」
「でも、厳顔さんの屋敷に行けば合流できますから、取り敢えず心配はいらないと思います」
「そうだね」
…という訳で、桃香達はサンジを放置して観光を続ける事にした。
「あ…!」
桃香はひよこの路上販売を見つけ、思わず駆け寄った。
「うわ~!可愛い~!ふわふわのピヨピヨだ~!ねェ~見て、この子達すっごく…」
…と、桃香は朱里達を手招きするが…
「……あれ?」
3人はいつの間にか消えていた。
▽
「…………」
その頃、焔耶は紙縒りを結びつけた剣を腰に、河原の草原で寝転がっていた。
「へっへっへ!」
「!」
そこへ十人余りのゴロツキ達がやって来た。
「探したぞ魏延」
「何の用だ?」
「お前に今までの借りを返しに来たんだよ!」
「これまで散々コテンパンにされてきた癖に、懲りない奴らだな…」
焔耶は起き上がり、剣に手を掛けるが…
「あれェ?良いのか?剣を抜いて?」
「っ!」
「お前、厳顔の許可なく剣を抜いたら、破門なんだってな?」
「貴様…!」
そしてゴロツキ共は、丸腰同然の焔耶をいたぶり始めた。
▽
「も~朱里ちゃん達、私を置いていくなんて…。とにかく厳顔さんの家に…」
一人はぐれた桃香は、桔梗の屋敷に向かっていた。
その途中、一つの橋を渡り、何となく橋の下を見てみると…
「…?あっ!」
何人ものゴロツキに囲まれた焔耶が目に入った。
焔耶はだいぶ傷を負っており、膝をついている。
「ちょっとあなた達何してるんですか⁉」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
「劉備殿⁉」
ゴロツキ達と焔耶の方も、桃香に気づいた。
「魏延さん一人にこんなに大勢で、卑怯じゃないですか!」
桃香は焔耶の下に駆けつけ、ゴロツキのリーダー的存在と向き合う。
「卑怯?おれ達はいつもこの人数で戦ってやられてんだ。卑怯者呼ばわりされる筋合いはねェぞ!」
「あなた何を言って…!」
「おいおい、そんな怖い顔するなって」
ゴロツキはそう言って桃香に手を伸ばす。
「!その人に触るな!」
焔耶はとっさに桃香を庇い、反射的に剣に手を掛ける。
「お?剣を抜くのか?破門になるのに?」
「っ!……お前らの目的は私だろ⁉この人に手を出す必要はないだろ⁉」
「魏延さん…」
「おお、そうか!おしお前ら、魏延をいたぶるのは止めだ。こっちの女に手を出そうぜ!」
「なっ⁉この人は関係ないだろ⁉」
「じゃあ何で動揺してんだ?お前、この人に手を出して欲しくないんだろ?だったらこいつに手を出さない訳にはいかねェな!」
「っ!」
「きゃあ⁉」
そうしている間にも、桃香はゴロツキに捕まってしまう。
「劉備殿!」
「今までのお返しだ!お前の目の前で、こいつに手を出しまくってやるぜ!」
「や、やめろ!頼むからやめてくれ…!」
「い、いやっ!放して!」
「へへへ…よーしまずはおれから、その胸を…」
「き、貴様っ…!」
焔耶は剣に手を掛けるが…
「!魏延さん駄目!」
「っ!」
桃香が制止する。
「へへへ…お嬢ちゃん、本当にありがとうよ、感謝してもしきれねェぜ」
「⁉」
不意にゴロツキの一人が桃香に礼を言った。
「お嬢ちゃんが来てくれたおかげで、ただこいつをいたぶるより、もっと辛い目に遭わせられるぜ!」
「っ!」
「弱いクセにのこのこやって来て、とっ捕まって、おれ達の手伝いをしてくれてよ!」
「全くありがたい!ありがたい頭だぜ!」
「そ…そんな…!」
自分が来たことで却って焔耶を追い詰めてしまった。
その紛れもない事実に、桃香は顔面蒼白になり、悲鳴を上げる気力もなくなってしまう。
しかしその時…
「い…」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
「いい加減にしろォーーーっ‼」
焔耶が完全にブチ切れた。
「おいおい、いいのか?剣を抜いたら…」
「黙れェーーーっ‼」
ゴロツキが言い切る前に剣を抜く。
「「「「「「「「「「げっ⁉」」」」」」」」」」
「魏延さん!」
「わ…」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
「私を想ってくれた人を‼侮辱するなァーーーっ‼」
焔耶の頭には破門の事も、屈辱も、「桃香に手を出さないでくれ」という考えもなかった。
自分を想ってくれた人を、その想いを侮辱された事に対する怒り、その人を、その想いを自分が助け、守るという考えで一杯だった。
「「「「「「「「「「ひ、ひいいィィィっ⁉」」」」」」」」」」
焔耶は自分達に何もしてこないと思い込んでいたゴロツキ共は、たちまち真っ青になった。
▽
そして焔耶は瞬く間にゴロツキを全滅させた。
「……魏延さん…」
千切れてしまった紙縒りを見て、桃香は力なく呟く。
「劉備殿………大丈夫ですか?」
「っ!魏延さん…」
桃香は反射的に「ごめんなさい」という言葉が出かけたが、必死にそれを押しとどめ…
「……ありがとう、助けてくれて…」
そう口にした。
▽
その後、桃香と焔耶はそのまま桔梗の屋敷に帰った。
夕方になると、桔梗と一緒にいたルフィと鈴々、桃香を捜していた朱里、雛里、蒲公英、そしてサンジも桔梗の屋敷に戻って来た。
焔耶は自分の剣と、それに付いている千切れた紙縒りを桔梗に見せた。
桃香も、焔耶が剣を抜いたいきさつを説明した。
そして焔耶は一人で桔梗の部屋に呼び出され、ルフィ達は入口付近で中の様子をうかがっている。
「魏延さん…私のせいで…」
「何言ってんだ。悪いって言ったら、桃香ちゃんを一人にしちまったおれ達だってそうだ。それに一番悪いのはそのゴロツキ共だろ」
「でも……やっぱり私、厳顔さんにお願いして…」
桃香は部屋に入ろうとするが…
「ダメだ」
「!ルフィさん⁉」
ルフィが桃香の肩に手を置き、やめさせる。
「これはあいつと厳顔の問題だ。だから…ちゃんとガマンしろ…!」
「っ!……ルフィさん…」
▽
一方、室内。
「劉備殿から事情は聞いた。しかし、禁を破ったことは事実」
「…はい」
「焔耶、貴様を破門とする」
「はい」
「これよりわしと貴様は師弟ではない。わかったな⁉」
「はい」
淡々と言い放たれる桔梗の言葉に、焔耶は黙って返事をする。
「……しかし…不思議なものじゃのう」
「⁉」
桔梗の口調が柔らかになる。
「今まで貴様は何か騒ぎを起こせば、お仕置きを恐れて逃げ回っていた。だが今回は逃げる事なく、神妙にわしの前に控えておる。それは何故だ?」
「……そ、それは…」
言われてみると、焔耶自身にとっても不思議な事だった。
「焔耶よ。それは今回自分がした事が、決して恥ずべき事ではないと、わしの前で胸を張って言えるからではないか?」
「…………」
「たとえどれほどの強さを持っていても、理由もなく振るわれる力は虚しいもの。大切な物を守る為、尊き志の為に振るわれてこそ初めて意味を持つ。
今回の事で、それがわかったであろう?」
「……はい」
「焔耶よ。先程申した通り、わしはもうお主の師匠ではない。もう今までの様に面倒は見てやらん。これからは、己の心は己で律するのだ。良いな?」
「……はい!」
▽
その夜、桃香は一人、屋敷の中庭で考え込んでいた。
―――――お嬢ちゃんが来てくれたおかげで、ただこいつをいたぶるより、もっと辛い目に遭わせられるぜ!
―――――弱いクセにのこのこやって来て、とっ捕まって、おれ達の手伝いをしてくれてよ!
(あの人達が言っていた、あの言葉はやっぱり正しい…)
そして自責の念にかられていた。
(あの人達は、魏延さんを苦しめる事を……魏延さんの笑顔を奪う事を目的にしていた…。
黄巾党の時みたいに、追い詰められたり操られていたりとは違う…本当に誰かを苦しめたいと心から望んでいた人達だった…。
けど私は、あの人達がそんな悪党だなんて思わなかったから、話し合いで解決できると思っていた…。
もしあそこにいたのが私じゃなくて、ルフィさんや愛紗ちゃんだったら……!
朱里ちゃん達だって何らかの知恵で、魏延さんが破門にならない様に解決する事ができたかもしれない…!)
桃香は目に涙を浮かべる。
(力も知恵も何もないクセに…!出て行ったりしたから、魏延さんの足を引っ張って…!)
「お、桃香」
「!」
不意に呼び掛けられ、見るとルフィが立っていた。
「ルフィさん…」
「何やってんだお前?」
「……あの…ルフィさん…お願いがあるんです…!」
「?」
▽
翌朝、朝早くに巴郡を出発する事にしたルフィ達は、城門まで見送りに来てくれた桔梗、焔耶と別れの挨拶をしていた。
「それじゃあ厳顔さん、お世話になりました」
「ここから南方へ向かうには、崖沿いの険しい道を進まねばならん。道中気を付けてな」
「厳顔も、飲み過ぎには気を付けるのだ!」
「張飛、それとルフィこそ、食べ過ぎに気を付けるのだぞ!」
「「「「「「「「ハハハハハ!」」」」」」」」
「…………」
その場が笑いに包まれる中、焔耶は一人俯いている。
「それじゃあ、失礼しますね」
「またな~!」
そして、ルフィ達は出発する。
「…………」
その様子を―――桃香の背中を焔耶は名残惜しそうに見つめている。
「……どうした焔耶?」
「っ!い、いえ…別に何も…」
「……焔耶よ、昨日わしが何と言ったか、もう忘れたのか?己の心は己で律せ」
「……!」
「付いて行きたいならば、付いて行けェ!」
そう言って桔梗は焔耶の背中を強く押す!
「桔梗様…!わ、私は…」
「何をもたもたしとるか⁉急がんと置いて行かれるぞ⁉」
「っ!は、はい!劉備殿ォー!」
焔耶は少々戸惑っていたが、桃香達に元気よく駆け寄って行った。
「おお、そうじゃ焔耶!」
「⁉」
「餞別代りじゃ!持って行けェ!」
そう言うと桔梗は、自分が使っていた金棒“
「へっ⁉うおっ⁉」
焔耶は何とかそれをキャッチする。
「達者でのう!焔耶ァ!」
「はい!桔梗様!今までお世話になりました!」
そして焔耶はルフィ達と共に旅立って行った。
(しかし…真に良き主と、良き武人と共に旅立てたものじゃ…。大きくなれよ…)
桔梗はそんな事を思いながら、昨日までの弟子を見送るのだった。