ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第133話 “魏延と馬岱”

南蛮へ向かう道中、ルフィ達は一軒の茶店で休憩していた。

 

「…………」

 

「…………」

 

向かい合って座っていた焔耶と蒲公英は睨み合っていた。

原因は両者の間にある大皿に乗せられた一本の串団子である。

 

「…………」

 

「っ!」

 

焔耶が団子に手を伸ばそうとすると、それよりも先に蒲公英が団子を取る。

 

「おい待て!」

 

当然、焔耶は声をあげる。

 

「…何さ?」

 

「それは私の団子だぞ」

 

「?“私の”って名前でも書いてあるの?」

 

「お前は私よりも一本多く食べているだろ?」

 

焔耶の言う通り、蒲公英の前の小皿には4本の串が置かれているのに対し、焔耶の小皿には3本しか乗っていなかった。

 

「だから残っているそれは私のだ」

 

焔耶の主張はごもっともである。

 

「人が食べている団子の数を数えるなんてセッコ~イ」

 

「何だとォ⁉」

 

「またやってんのか…」

 

二人の様子を見て呆れるルフィ。

 

焔耶が加わって以降、この二人は事ある毎にケンカしていた。

 

「はわわ…!魏延さん落ち着いて…!」

 

「あわわ…!馬岱さんも魏延さんに謝って下さい…!」

 

「え~?何でたんぽぽがこんな奴に謝んなきゃなんないのさ~?」

 

「人の団子を盗っておいてその言い草は何だ⁉」

 

「あ、あの~魏延さん…何でしたら私のお団子をあげますから…」

 

そう言って桃香は食べかけの団子を差し出す。

 

「っ⁉りゅ…劉備殿の食べかけを…⁉」

 

食べかけの団子と団子のたれで汚れた口元を見て、焔耶は呆けた顔になる。

 

「………♪」

 

「っ!い、いえっ!わ、私は団子に執着しているのではなく、こいつの態度が…!」

 

しかし、蒲公英のにやけた視線に気づき、すぐさま我に返るのであった。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、茶店の裏口に一人の少女がやって来た。

乱れた髪に獣の皮をそのまま体に巻き付けた格好をしており、南蛮の異民族のようである。

 

「ばあちゃんいるかー?」

 

少女は呼び掛けながら裏口を開けて中に入る。

 

「おや、兀突骨(ごつとつこつ)じゃないか」

 

店主らしき老婆が少女の名を呼ぶ。

 

「今日はどうしたんだい?」

 

「これもってきた」

 

少女は手にした山鳥を渡す。

 

「おや、ありがとう。ちょっと待ってなさい。団子でも持たせてやるから」

 

「いらない。まえに仲間がびょうきのとき、くすりをくれたお礼だから」

 

「そうかい?」

 

「そもそも何であんたがついてくんのさ⁉」

 

「私は劉備殿に付いて来ているだけだ!貴様について来ているのではない!」

 

「?」

 

不意に、店の方から喧騒が聞こえてきた。

 

「おんなじ事じゃん!」

 

「同じではない!」

 

「まァまァ、魏延ちゃんも蒲公英ちゃんも落ち着いて…」

 

「⁉“ぎえん” ⁉」

 

その名前を聞いた兀突骨は咄嗟に店の方を覗く。

 

「お前が帰ればいいだろ⁉」

 

「はァ⁉何でそうなんのさ⁉」

 

「!」

 

言い争っている焔耶の姿を見た瞬間、兀突骨の顔色が変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茶店を後にしたルフィ達は森の中を進んでいた。

 

「ねェ朱里ちゃん、私達今どの辺りにいるの?」

 

「ここはもう益州の南部です。もう数日進めば国境に着くと思います」

 

「水鏡先生の話では、この辺りはもう南蛮族の一部が頻繁に出入りしている地域みたいです。…あ」

 

朱里と雛里が答えた時、森が終わり。大きな川にでた。

対岸との間に縄が張られており、近くの上流には滝がある。

 

「ここから先に行くには、川の中に入って縄にしがみついて進むしかないみたいですね…」

 

…と、朱里。

 

「桃香ちゃん達大丈夫か?何だったらおれがおぶってあげるよ♡」

 

「いえ、いいです。(減量の為にも)自分で歩きたいんで」

 

「私も平気です」

 

「私も自分で歩きたいです」

 

「じゃあたんぽぽをおんぶしてー!」

 

「ふん!それだから貴様は軟弱なんだ」

 

「何だとー⁉」

 

「あわわっ⁉二人共止めて下さい~!」

 

そして鈴々、ルフィ、朱里、雛里、蒲公英、桃香、焔耶、サンジの順に川に入り、縄にしがみつきながら進む。

川は意外と深く、ルフィ達の腰のあたりまである。

 

「それにしても橋くらい架けておいてくれればいいのに…」

 

「たぶん人の出入りが少ないでしょう」

 

「流れに攫われないよう、縄が張っているだけでもありがたく思いましょう」

 

文句を言う蒲公英を朱里と雛里が宥める。

 

そうしている間に先頭の鈴々は渡河を終え、能力者であるルフィと朱里、雛里が岸へ上がるのを助ける。

 

「よいしょ。…ん?」

 

雛里とほぼ同時に岸に上がった蒲公英が振り返ると、あとの3人はまだ川の半分ほどしか渡っていなかった。

 

どうやら先を歩いている桃香のスピードが遅く、後がつっかえている様である。

 

「あの三人まだあんな所にいるの?」

 

「桃香さーん、ゆっくりでいいですから慎重に進んで下さーい」

 

「ありがとう朱里ちゃん」

 

「劉備殿、足元に気を付けて」

 

「大丈夫で…きゃあ⁉」

 

返事をした瞬間桃香の姿が水中に消える。

 

「劉備殿⁉」

 

「桃香ちゃん!」

 

咄嗟に焔耶が助け、何とか桃香は体勢を立て直した。

 

「大丈夫か桃香ちゃん?」

 

「大丈夫です。足が滑っただけですから」

 

「あーよかった…」

 

川岸にいた4人も胸を撫で下ろす。

 

―――と、次の瞬間…

 

「⁉アレッ!」

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

ふと上流の方に目を向けた蒲公英が声をあげ、見ると巨大な丸太が流れて来た!

 

「危ねェ!」

 

「きゃっ⁉」

 

「うわっ⁉」

 

「うおっ⁉」

 

咄嗟にルフィが両腕を伸ばし、急いで3人を引っ張る!

 

「……はァ~…」

 

「…………」

 

「危なかったな…」

 

間一髪で3人は丸太を回避する事ができた。

 

 

 

 

 

 

「大変な目に遭いましたね」

 

その後、桃香達5人は火を焚き、濡れた服を脱いで乾かしていた。

 

ルフィとサンジは少し離れた所で待機している。

 

「も~…下着までずぶ濡れだよ~…」

 

「けど本当にびっくりしたよね~。あんな大きな丸太が流れてくるなんて」

 

「劉備さん…笑い事じゃないですよ…」

 

「そうですよ。もしルフィさんが少しでも遅れていたら、大怪我をしていたかもしれないんですよ」

 

そんな話をしていると…

 

「………っ⁉」

 

突然焔耶が得物を手に立ち上がり、周囲を警戒し始めた。

 

「魏延さん?」

 

「どうしたんですか?」

 

「……いや、誰かに見られている様な気がしてな…」

 

ガサッ

 

「っ!そこかァっ!」

 

微かに物音がし、反射的に焔耶は聞こえた方向に金棒をぶん投げる!

 

「フゲゴッ⁉」

 

次の瞬間、轟音と共に聞き覚えのある悲鳴が響く。

 

「……ねェ、今の声って…」

 

「はい…」

 

5人が悲鳴がした方へ向かうと…

 

「………♡」

 

幸せそうな顔をしたサンジが頭から血を流して倒れていた。

 

「魏延さんが感じたのって…」

 

「たぶんコレですね」

 

桃香達は納得したが…

 

(妙だな?どちらかというと卑猥(ひわい)なものではなく、殺意の様な気がしたのだが…?)

 

焔耶は一人考え込んでいた。

 

「ちっ…」

 

その時、近くの木の上で一人の少女が小さく舌打ちしていた事に、誰も気がつかなかった。

 

因みにその頃ルフィはというと…

 

「やった~~~!コーカサス捕まえた~~~!」

 

昆虫採集に夢中になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕刻、再出発した一同は崖沿いの道を進んでいた。

 

「焚火で服乾かしていたら、すっかり遅くなっちゃったね」

 

「今夜は野宿か~…」

 

「どっかいい場所があるといいんだが…」

 

「なァ、何でサンジの奴ケガしてんだ?」

 

「自業自得です」

 

「因果応報です」

 

「そうなのか?」

 

ルフィの疑問に朱里と雛里が淡々と答えたその時…

 

「「?」」

 

後ろの方を歩いていた桃香と焔耶の前に小石が転がって来た。

 

2人が反射的に崖の上を見てみると…

 

「「⁉」」

 

巨大な岩が転がり落ちて来た!

 

「危ない!」

 

「きゃあ⁉」

 

咄嗟に焔耶が桃香を庇って前方に倒れ込み、2人は岩を避けた。

 

(……どうしてこんな岩が?)

 

そう思いながら焔耶が再び崖の上を見ると、一つの人影が去って行くのが見えた。

 

「………?」

 

「桃香ちゃん!魏延ちゃん!」

 

「大丈夫か⁉」

 

「だいじょ…うっ!」

 

桃香は立ち上がろうとするが足を抑えてうずくまってしまう。

 

「桃香お姉ちゃん!」

 

「どうしたんですか⁉」

 

「ちょっと足首を挫いたみたいで…」

 

「そんな…!私のせいで…」

 

「何言ってるんですか。魏延さんが助けてくれなかったら、脚だけじゃ済まなかったんですよ。だから、責任なんて感じないで下さい」

 

「劉備殿…」

 

「けど、その状態じゃ歩くのは大変だろうし、こっからはおれがおんぶして…♡」

 

「鈴々ちゃん、私の事おぶってくれる?」

 

「任せるのだ!」

 

何となくサンジに背負われるのは嫌だと思ったのか、桃香は鈴々におぶって貰う事にした。

鈴々の蛇矛は蒲公英が運ぶ事になった。

 

「ありがとうね鈴々ちゃん」

 

「兄妹の契りを交わした仲なんだから、水臭い事は言いっこなしなのだ。

それに桃香お姉ちゃんは愛紗と違って、お腹や太股もプニプニだからおぶってる方も気持ちがいいのだ」

 

グサァッ!

 

桃香に見えない何かが突き刺さった。

 

「そ…そうなんだ…」

 

「あ!あそこに煙が!」

 

先頭の蒲公英が少し離れた場所に炊煙が上がっているのを見つけた。

 

「良かった!もしかしたら民家があるのかもしれません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく進むと、一軒の民家があった。

 

「たのもー!たのもーなのだー!」

 

「はいはい。どちらさんで?」

 

鈴々が呼び掛けると、中から一人の老父が出て来た。

 

「旅の者なんですけど、仲間の一人が怪我をしてしまって…ご迷惑でなければ一晩宿をお貸しいただけないでしょうか?」

 

「おお、それは難儀でしたな。何のもてなしもできませんが、雨露ぐらいは凌げるでしょう。泊まっていきなされ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

「これは…」

 

「思っていたより酷いですね…」

 

家に上がらせて貰った後、朱里と雛里は桃香の足を診てみた。

鈴々も隣にいる。

 

その間、一宿のお礼という事でルフィとサンジは狩りに向かい、焔耶と蒲公英は外で薪割をしていた。

 

「あ~も~…何でたんぽぽが薪割なんか~…」

 

切り株の上に薪を置きながら蒲公英は文句を言う。

 

「一晩宿を借りるのだからな。宿代代わりにこれくらいはして当然だ」

 

斧を振り下ろしながら焔耶が言う。

 

「……それにしても、誰かさんがついて来てから災難続きだよね~」

 

「…っ!」

 

蒲公英の言葉に焔耶は手を止める。

 

「貴様…何が言いたい?」

 

「べっつにィ~~~…」

 

「言いたい事があるならハッキリ言ったらどうだ?もし言えないのなら体に問いただしてやるが?」

 

「…やるってんの?」

 

「貴様にその度胸があるならな?」

 

「上等じゃん!今日こそあんたと決着つけてやる!」

 

そして2人は得物を手に向き合う。

 

「…………」

 

(こいつ…やっぱり強い…!翠姉様と同じで気が水の様に澄んでいて隙が無い…!)

 

対峙しながら蒲公英は焔耶の強さを改めて実感し動けなくなる。

 

「どうした?来ないならこちらから行くぞ!」

 

そう言うなり焔耶は金棒を振り回し襲い掛かる!

 

「っ!」

 

蒲公英は咄嗟に横に飛びのいて避けるが、金棒が叩き下ろされた地面に大きく穴が空くのを見て冷や汗をかく。

 

「ハァーーーッ!」

 

「くっ…!」

 

上下左右に振り回される金棒を蒲公英は何とか避け続けるが、どうしても攻撃に移れない。

 

大きく後ろに飛びのいて一度距離をとると、再び睨み合う。

 

すると…

 

「二人共いい加減にするのだァーーーーー!」

 

外の騒ぎが聞こえたのか、鈴々が家の戸を開けてそれはもう大きな怒鳴り声を上げた。

 

「朱里達が桃香お姉ちゃんの足を診ているんだから、うるさくしたら邪魔なのだァ!」

 

「…って、鈴々ちゃんが一番うるさいんですけど…」

 

そう言って苦笑いする朱里であった。

 

「ま~たケンカしてんのかお前ら!」

 

そこへそれぞれ熊と鹿を抱えたルフィとサンジが戻ってきた。

 

「今度は一体何があったんだ?」

 

サンジに言われ、2人は事情を説明した。

 

 

 

 

 

 

「成程ね…」

 

「いい加減にしろよお前ら!」

 

2人から話を聞き、ルフィは怒った様に2人を怒鳴りつけた。

 

「おい魏延!そんな事ぐらいでケンカすんのもうやめろ!蒲公英お前もだ!翠みてェになりてんだったらそんなケンカ二度とすんな!」

 

「はーい…」

 

ルフィの言葉に蒲公英はふてくされた様にから返事をしているだけだったが…

 

「…っ!黙れェ!」

 

「「「⁉」」」

 

焔耶は怒りを露わにして、ルフィに金棒で殴り掛かった。

 

「桔梗様ならともかく、貴様の様な軟弱者に物申されるなど我慢ならん!今ここで叩きのめしてやる!」

 

「ちょ…魏延、その人…!」

 

「ガキは黙ってろ!さァ!勝負しろ!」

 

何かを言おうとした蒲公英を一喝し、焔耶はルフィに対して戦闘態勢をとる。

 

巴郡を出発した後、先を急いでいたルフィ達は移動する事ばかり考えていた為、組手などはほとんどしていなかった。

その為、焔耶はルフィとサンジの強さは全く知らないのである。

 

「おい!やめろよ魏延!こんなケンカ買う理由がねェよ!」

 

「ある!貴様と私の力関係をハッキリさせておく為だ!」

 

「…………」

 

「…おい、ルフィ」

 

「?」

 

「ケガさせたら承知しねェぞ」

 

「わかった」

 

ルフィは観念したのか焔耶と向き合い、サンジもちゃんと勝負しない限り焔耶は納得しないと思ったのか、注意だけはしたが止めようとはしない。

 

「安心しろ!怪我をするのは貴様の方だ!いや、怪我では済まないかもしれんなァ!」

 

そう言うなり焔耶は金棒を振り回してルフィに向かって走る!

 

ドン!

 

(―――え?)

 

しかし次の瞬間、轟音が響くと同時に焔耶の足から地面の感覚が消え、視界に移る景色が上下逆さになっていた。

 

(………え?)

 

そして頭から背中にかけて地面に着く感覚がはしり、焔耶は地面に自分が倒れ込んだのを知る。

 

(………え⁉)

 

焔耶が向かってきた瞬間、ルフィはそれ以上の速さで動き焔耶の金棒を殴り飛ばした。

その衝撃で焔耶の身体は金棒と一緒に吹っ飛ばされて宙を舞い、頭から地面に落ちたのである。

 

「…………」

 

「っ⁉」

 

焔耶が状況を理解できずに倒れていると、ルフィが近くにやって来て焔耶を睨みつけた。

 

「ひっ…!」

 

さっきまでの軟弱な男はとてつもなく恐ろしい相手に見えた。

 

ルフィの事を侮っていたとはいえ、焔耶にとってここまでの大敗は初めてだった。

桔梗からも自分よりも強い相手がいる事は教えられていたが、ここまで実力に差がある相手がいるとは思っていなかった。

 

「おれの勝ちだ。いいな?」

 

「………っ!」

 

普段のフザけた声とは違うドスの効いた声に、焔耶は身体を震わせ涙ぐみながら首を何度も縦に振る。

どうしても言葉は出てこなかった。

 

ルフィはその様子を見ると小屋の中へ入って行った。

 

「大丈夫か魏延ちゃん?」

 

「あ…ああ…」

 

差し出されたサンジの手を握り、焔耶は起き上がった。

普段なら誰かの手を借りて起き上がるなど彼女はしないだろうが、今の彼女はそれ程までに疲弊していた。

 

「……ねェサンジさん」

 

焔耶が立ち上がると蒲公英が口を開いた。

 

「ルフィさんが強いのは知ってるけどさァ…あの人に武人の心得みたいなのを言われるのはたんぽぽもちょっと納得できないんだけど…」

 

「あいつは確かに基本バカだが、戦っていい時といけない時の分別はちゃんとわかってる奴だ」

 

「分別って?」

 

「まァ簡単に言うと『相手への同情しか得られないケンカは辛いだけ』って事だ」

 

「何それ?」

 

「その内わかるよ。いやでもな…」

 

「?」

 

 




今後も南蛮族のセリフはほとんど平仮名にする予定なので、読みにくいと思いますがご了承ください。

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