ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回のタイトル、ワンピース31巻のタイトルに似すぎてますけど、これがピッタリだと思ったんですよね。



第134話 “ここにいるぞ!”

その夜。

 

「温泉ですか?」

 

「ああ。ここから少し登った所に小さな隠し湯があってな」

 

夕食後、家主である老父が思い出した様に話し始めた。

 

「傷や打ち身によく効くから、お連れさんの足にも良いんじゃないかと思ってな」

 

「そうですね…確かに湯治は効果的かもしれませんが…」

 

桃香の足の傷を見ながら朱里は考え込む。

 

「大丈夫~♡桃香ちゃんはおれが抱っこしてあげるよ~♡」

 

「鈴々ちゃん、申し訳ないけどまたお願いしていい?」

 

「任せるのだ!」

 

桃香の言葉に鈴々は胸を叩く。

 

「よーし!それじゃあさっそく温泉に行こう!」

 

…と、桃香は勢いよく立ち上がり…

 

「痛たたた…!」

 

すぐにうずくまる様子を見て、皆思わず吹き出してしまった。

 

「…………」

 

しかし、焔耶だけは笑わずに一人何か考え込んでいた。

 

「それから、隠し湯の傍には湯治客の為の山小屋があるから、今夜はそこで寝泊まりするといいだろ」

 

「何から何までありがとうございます」

 

「隠し湯はみんなのものだから、遠慮する事ないさ。道は一本道だから迷う事はないだろうし、お前さん達だけで行っても大丈夫だろ」

 

「そうか。なら致命的な方向オンチでもない限り大丈夫だろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくし!」

 

「ゾロ殿、大丈夫か?」

 

「ああ。おおかた間抜けマユゲが悪口言ってんだろ」

 

「しかし、泰山を登り始めてからだんだん肌寒くなって来ましたね。私肌ありませんけど」

 

「頂上に近づいている証拠だな。あたしは涼州出身だから寒さには慣れている方だけど、頂上は本当に極寒らしいぜ」

 

「おれはそれぐらいの方が丁度良いかもな」

 

「ま、何にせよさっさと終わらせて帰るに越した事はねェ。先を急ごうぜ」

 

「…って、言いながら何で山を降りようとするんだよ⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香達一行は隠し湯に着いた。

 

「は~…気持ちいいのだ~…」

 

「こんな山の中で温泉に入れるなんて、脚も挫いてみるもんだね~」

 

「桃香さん…」

 

苦笑いする朱里。

 

「でも、確かに月明かりの下で入るお風呂もいいですね」

 

雛里の言葉に桃香達は頷く。

 

「…………」

 

そんな中、蒲公英は一人浮かない顔をしていた。

 

「蒲公英ちゃん?」

 

「どうかしたんですか?何か気になる事でも?」

 

「いや、その…どうして魏延の奴が一緒に来なかったのか気になってさ」

 

蒲公英の言う通り、焔耶は温泉に来なかった。

 

「確かに…どうしてだろうね?」

 

「来る途中で急に『温泉に行かない』って言いだしましたよね」

 

「何か理由があるんでしょうか?」

 

「きっとお尻に痣があって、それを見られるのが嫌なのだ!だから昼間サンジに裸を見られた時も嫌がっていたのだ!」

 

「もう、鈴々ちゃんったら」

 

「それ聞いたら魏延さん怒りますよ」

 

「それに昼間のアレは…」

 

雛里がそう言いかけた所で桃香、朱里、雛里は口を閉じ、キョロキョロと辺りを見渡す。

すると近くの岩陰に人影らしきものが見えた。

 

「鈴々ちゃん、ちょっとお願い聞いて貰えますか?」

 

朱里に言われて鈴々は温泉を飛び出した。

そしてすぐにサンジをひっ捕らえ戻って来た。

 

その後の光景はまさに処刑だった。

 

命じられた鈴々と蒲公英だけでなく、桃香、朱里、雛里までもが自らの(こぶし)で殴ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、サンジへの折檻を終えた桃香達は客用の山小屋へ入って行った。

 

「お、戻ってきたか!」

 

中に入ると部屋の真ん中にルフィと…

 

「あれ?お爺さんどうしてここに?」

 

先程の家主の老父が座っていた。

 

「魏延に言われて来たんだってよ」

 

「ああ。あんたらが出て行った後しばらくしてから戻って来て、『火の後始末もおぼつかないドジっ子ばかりだから様子を見てやってくれ』って言われてな。

山火事でも起こされたら大変だから様子を見に来たんだが…」

 

「おかしいのだ!みんなは確かにドジっ子だけど、火の後始末くらいはできるのだ」

 

「鈴々ちゃん…自分の事棚に上げてませんか?」

 

「魏延さん、昼間火を焚いた時に私達がそれくらいできる事を知っている筈なのに…」

 

「どうしてそんな事言ったのかな?」

 

(!まさかあいつ…!)

 

「⁉蒲公英ちゃん⁉」

 

途端に蒲公英は得物を手に取り、血相を変えて小屋を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃焔耶は、老父の家の中で一人何かを待っていた。

 

「……来たか」

 

何者かの気配を感じ、焔耶は小屋の外に出る。

 

「いつまでも隠れてないで姿を現したらどうだ?」

 

焔耶が呼び掛けると一人の少女―――兀突骨が姿を現す。

 

その後に続き、同じ様な格好をした異民族が十人程武器を手に現れる。

 

「やはり貴様だったかゴツコツトツ」

 

「ゴツコツトツじゃない!兀突骨だ!」

 

「隠れてコソコソ命を狙うとは卑怯なんじゃないか?ゴツコツトツ?」

 

「兀突骨だ!」

 

「何の恨みがあって私を狙った?」

 

「きまってるだろ!姉ちゃんのかたきだ!」

 

「成程…それで陰から私を殺そうとした挙句、一人は敵わないと考えて仲間を集めて闇討ちか…。

立派なやり口に、貴様の姉も草派の陰からさぞかし喜んでいるだろうな」

 

「うるさい!ふぎだと思うならお前も仲間をよべばいいだろ!…って、言ってもどうせむりだろうな」

 

「っ!」

 

兀突骨の言葉に焔耶は僅かに顔をしかめ、異民族達は小さく笑いだす。

 

「お前みたいなきらわれ者といっしょにたたかってくれるかわり者なんて、いるわけないよな?」

 

「…っ!」

 

その言葉に焔耶はさらに顔をしかめる。

 

「あたし知ってんだぞ。お前生まれてこのかた、真名をあずけ合ったのはししょうの厳顔だけで、その厳顔からもこないだはもんされたんだってな」

 

「………っ!」

 

焔耶は口惜しむも何も言い返せない。

ずっと孤立無援でり、唯一家族といえる存在された桔梗から破門されたのも全て事実。

桃香の事は自分が一方的に慕っているだけで、真名を預け合う様な中にはなっていない。

 

「どうだ魏延!お前にはきゅうちにかけつけてくれる仲間がいるか⁉せなかをあずけてたたかえるともがいるか⁉そんな仲間がいるのか⁉」

 

「ここにいるぞォーーー!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

突然響いた謎の声に、兀突骨とその仲間達、そして焔耶も驚いて声がした方を見る。

 

「貴様…」

 

すると近くの岩の上に、月明かりを背に立つ人影が見えた。

 

その人物は飛び降りると焔耶の隣に立つ。

 

「馬岱…!何故…⁉」

 

「質問するのはこっちの方だ!魏延、あんたが一人でここに残ったのはこうなる事がわかっていたからだろ⁉」

 

「っ!…ち、違う!これは…!」

 

「こうなる事がわかってたから、たんぽぽ達を巻き込まない為に下手な嘘までついて一人で残ったんだろ⁉」

 

「…………」

 

「あんたがそういう風に思っていたのなら、あんたはもうたんぽぽの仲間だ!そして…たんぽぽは絶対に仲間を見捨てたりしない!」

 

「っ!」

 

「おいお前!トツゴツトツとか言ったな⁉」

 

「兀突骨だ!」

 

「どっちだっていい!魏延の命を狙おうとするのなら、西涼にその人在りといわれた“錦馬超”が従妹、馬岱が相手になるぞ!」

 

(馬岱…)

 

「っ!ひ、一人ふえたくらいでなんだ!みんな!やっちまえ!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおっ!」」」」」」」」」」

 

叫びながら兀突骨率いる南蛮族達は2人に襲い掛かって来た!

 

「だらァァァーーーっ!」

 

「「「「「うわァァァーーーっ⁉」」」」」

 

焔耶は自慢の怪力で敵を一気に吹き飛ばす!

 

「てりゃーーー!」

 

「たァ!」

 

「ぐあっ⁉」

 

「おらァ!」

 

「とりゃっ!」

 

「がっ…!」

 

蒲公英も翠や焔耶には及ばないものの、常人と比べれば十分強者に分類される程の実力を持っていた為、巧みに槍を振るい一人一人確実に仕留めていく。

 

気がつけば2人は乱戦の中で、自然と背中合わせに立つようになっていた。

背後はしっかりと守られており、正直に前から掛かれば確実にやられる。

 

隙のない2人の連携と実力の前に、南蛮族達は少しずつ怖気づいていく。

 

「な、何なんだよこいつら⁉」

 

「話がちがうぞ!おそろしく強いじゃねェか!」

 

「命がいくつあっても足りねェや!」

 

そう言って次々と逃げ始めた。

 

「⁉おいまてよ!かってににげるな!どんぐりやっただろ⁉きのこや山鳥も!」

 

どうやら他の南蛮族達は食べ物で雇っただけで、そこまでの仲間ではなかった様だ。

 

「ドツコツコツ」

 

「兀突骨だ!」

 

「お仲間はみんな逃げちゃったけど、まだやる気なの?」

 

「あたりまえだ!」

 

蒲公英の言葉に兀突骨は言い返す。

 

「そいつは…魏延はあたしの姉ちゃんをころしたんだ!」

 

「⁉」

 

「だからぜったいにかたきをとるんだ!」

 

「…魏延、本当なの?あいつの姉ちゃんを殺したって?」

 

兀突骨の言葉に驚いた蒲公英は思わず訊ねた。

 

「……あれは一年程前、益州で四年に一度の武闘大会が開かれた時の事だった…。

 

 

 

 

 

大会は益州だけでなく、南蛮族からも出場者がいた。

その中にこいつの姉がいた。

 

私は決勝でそいつと戦った。

 

あれは本当に厳しい戦いだった。

少しでも気を抜けば、私がやられていた。

 

それゆえに力加減ができず、最後の一撃で想像以上の深手を負わせてしまったんだ…。

 

 

 

 

 

その時の怪我が原因でこいつの姉は病気になり、亡くなった事は風の噂で聞いた…」

 

「ああそうだ!」

 

兀突骨はそう言うと焔耶に剣先を向けさらに…

 

「お前!しあいのとき、何かひきょうな手でも使ったんだろ!ずるしたけど、りょうしゅの弟子だからってみのがしてもらったんだろ!

でなきゃ姉ちゃんが負けるはずない!」

 

そう罵りだした。

 

「そんな…」

 

「そんな事はない!」

 

「「⁉」」

 

焔耶が言い返そうとする前に、蒲公英がそう言い放った。

 

「な、なんでだよ⁉しあいのことを知らなかったお前に何でそんなことがわかるんだよ⁉」

 

「わかるよ!こいつの戦う様子を見れば!」

 

「「⁉」」

 

「心に嘘や偽りがあれば、必ず気の濁りになって現れる!でも、こいつの気はいつだって澄んでいた!

確かにこいつは口が悪いし、性格も曲がっててすっごく付き合いにくい奴だけど、こいつの強さと武術に対する真剣さは本物だ!

そんな卑怯な事する筈ないし、そんな事しなくても強い!」

 

「馬岱…」

 

「…っ!で、でもそいつが姉ちゃんのかたきであることにはかわりないぞ!」

 

「………っ!」

 

「……ああ、その通りだ」

 

「魏延?」

 

今度は焔耶が口を開いた。

 

「だが、今のお前は姉の足元にも及ばん。そんな実力では私を倒すのは不可能だ」

 

「っ!」

 

「だから強くなれ兀突骨。もっともっと修行を重ね、強くなって正々堂々と私の首を取りに来い」

 

焔耶はそう言い、真っ直ぐな眼差しを兀突骨に向けた。

 

「………っ!」

 

「…………」

 

「……つ、強くなる…!強くなって、かならず姉ちゃんのかたきをとってやるからな!」

 

そう言い捨てると、兀突骨は去って行った。

 

「……あんな事言って良かったの?あいつ修行して、またあんたの命を狙ってくるよ?」

 

「その時はまた叩きのめしてやればいいだけだ。それに…」

 

「?」

 

「何かに打ち込む事で、その悲しみや復讐心を忘れる事ができればそれがいいだろ?

―――かつて私が、姉を失った悲しみを武術に打ち込んで紛らわした様にな…」

 

「!」

 

「…所で馬岱、ずっと気なってたんだが、どうしてお前は裸足なんだ?」

 

「え?」

 

焔耶の言う通り、蒲公英は靴を履いていなかった。

先程の戦闘中もずっと裸足である。

 

「いや~…慌てて飛び出してきたから靴履くの忘れちゃって…」

 

「…そうか。そんなに急いで来てくれたのか…

 

焔耶の呟きは、蒲公英には聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

その後、2人は背中合わせに座り込み、夕刻にサンジが言っていた事を思い出していた。

 

―――――まァ簡単に言うと『相手への同情しか得られないケンカは辛いだけ』って事だ

 

(あの時は大会という名目があったが、もしアレが私が普段やっている様なただの喧嘩だったら…)

 

(サンジさんが言ってたのって、こういう事だったんだ…)

 

自分の大切な人が下らない理由で殺される。

自分が誰かの大切な人を下らない理由で殺してしまう。

 

姉を殺された兀突骨の姿を見た2人には、その様な考えが重くのしかかった。

 

自分も同じ様に姉を失った焔耶は勿論、実の姉妹の様に慕っていた鶸や蒼が殺されかけた事がある蒲公英も、兀突骨の事を他人事とは思えなかった。

 

無論、戦乱の世で武器を手にして生きる事を決めた以上、親しい者が死ぬ事は覚悟しなければならない事ではあった。

 

しかし、遊び半分や暇潰し同然のケンカで死んでしまうのはあまりにも酷だった。

 

他者を殺す為に戦う事の重さを、2人は今更の様に思い知らされた。

 

「馬岱、その…今まで悪かった」

 

「たんぽぽの方こそごめん…」

 

「それから…少し話があるんだが…」

 

「奇遇だね。たんぽぽも話があるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、一行は老父にお礼を言って出発した。

 

桃香は自分の足で元気よく歩いている。

 

「しかし、劉備殿の捻挫が一晩で治ってしまうとは…。薬草とは凄い物だな」

 

「温泉の傍にサロンパ草が生えていて助かりましたね」

 

「きっと、隠し湯の効能もあって治りが早くなったんだと思います」

 

()()の口や性格を治す薬草もあればいいのにね~」

 

「⁉()()()!それはどういう意味だ!」

 

「そのまんまの意味?」

 

「何だとォ⁉」

 

「はわわっ⁉喧嘩は止めて下さい!」

 

「あれ?」

 

「どうしたのだ桃香お姉ちゃん?」

 

「蒲公英ちゃんと魏延さん、いつの間に真名を交換したんだろう?」

 

「あれ?そういえば…」

 

桃香の言葉に、他の5人も足を止めて2人を見る。

 

「どうして急に?」

 

「まァ、仲がいいならいいじゃねェか!」

 

「ふふっ…そうですね」

 

「蒲公英…どうやら貴様とは一度きっちり決着(ケリ)をつける必要がありそうだな!」

 

「それはこっちの台詞だよ焔耶!」

 

相変わらず口論を続ける2人。

 

しかしそれは昨日までの『犬猿の仲』の様子ではなく、『ケンカするほど仲がいい』という様に見えた。

 

 

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