ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

135 / 179
新刊発売記念に投稿します。



第135話 “酒乱”

「呉郡に来るのは久し振りだな…」

 

愛紗達江東丸チームが乗った船は、無事呉郡の港に着いた。

 

「関羽殿!ナミ殿!ロビン殿!」

 

「これは孫権殿」

 

愛紗達3人が船を降りると、蓮華が亞莎、包を連れて出迎えに来た。

 

「お久し振りでございます」

 

「黄巾の乱のとき以来ね」

 

「あの時は本当にお世話になりました」

 

「亞莎さん、元気そうね」

 

「はい。ロビン殿もお変わりなく何よりです」

 

「三人共、長旅でさぞやお疲れでしょう。まずは屋敷の方に…」

 

「ちょっと蓮華姉様~…」

 

「!」

 

蓮華がそう言いかけた時、3人の後ろにいたシャオが不機嫌そうに声をあげた。

 

「シャオ達も帰って来たんですけど~…」

 

「あ、ああ…!ごめんなさいシャオ…!」

 

蓮華は謝るとシャオに歩み寄り…

 

「お疲れ様尚香。周泰からの文によれば隠忍自重(いんにんじちょう)して袁術との交渉を無事やり遂げたとか」

 

「?」

 

「小蓮様、隠忍自重とは耐え忍んで軽率な行動をとらない様にする事ですよ」

 

後ろにいた穏がこっそりと耳打ちする。

 

「わ、わかってるわよそれくらい!」

 

「偉いわよ。よくやったわね」

 

「ま、シャオにかかればアレくらいどうって事ないわよ!」

 

嬉しそうに胸を張って歩くシャオを先頭に、一同は孫家の城へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお!シャオ様!」

 

「もう戻られておりましたか!」

 

「元気そうですね」

 

「祭~!雷火~!粋怜~!」

 

城に着くと、外にいた祭達が気付いて歩み寄って来た。

 

「張昭殿、程普殿、黄蓋殿、お久し振りでございます」

 

「関羽殿、ナミ殿にロビン殿も久し振りじゃな」

 

「ルフィ君達は元気?」

 

「元気過ぎるくらいよ」

 

「袁術の所では、小蓮様達が世話になったそうじゃな」

 

「そんな大した事じゃないわよ」

 

「それにしても驚きました。まさか袁術の城下町で関羽殿達がシャオ達と鉢合わせになるなんて…」

 

雷火達も一緒になり、雑談をしながら城の本殿に向かう。

 

「姉様達も袁術の所での話を詳しく聞きたがっているので是非…」

 

そう言いながら蓮華が本殿への玄関口の扉に手をかけた時…

 

『あー!もううっさいわね!』

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

中から雪蓮の怒鳴り声が聞こえてきた。

 

『何度も言われなくてもわかってるわよ!』

 

『わかっていないから何度も言うのです!』

 

冥琳の怒鳴り声も聞こえてきた。

 

『おい、お前らいい加減に…』

 

『母様は黙ってて!』

 

『大殿は黙ってて下さい!』

 

「…ちょ、ちょっと失礼します…」

 

見かねた蓮華は気まずそうに一人で先に入って行った。

 

『姉様!冥琳も!関羽殿達が来られたというのに何を言い争っているのですか⁉』

 

『だって冥琳があんまりにも物わかりが悪いから…!』

 

『それは雪蓮の方です!』

 

『何ですってェ⁉』

 

『事実を言ったまでです!』

 

『いい加減にしねェか!客人が来てんだぞ!一時休戦しろ!』

 

『その通りですよ!関羽殿達の耳に入ったりしたらみっともないではないですか!』

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

しかし悲しい事に、一連の会話は全員に丸聞こえでシャオはイタズラっぽく笑い、後の全員は苦笑いするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、とりあえずその場にいた一同は謁見の間に通された。

 

「関羽、ナミ、ロビン、よく来たわね。孫家はあなた達を歓迎するわ」

 

「袁術の所では尚香様が世話になったそうですな。感謝しますぞ」

 

…と、雪蓮と冥琳は言う。

 

しかし…

 

「ねえ穏、何で冥琳ってば雪蓮姉様からあんなに距離をとってるの?」

 

「小蓮様、そこは気付かないフリをするのが大人の対応というものですよ…」

 

「ふーん…」

 

シャオの言う通り、炎蓮や蓮華は雪蓮が座る玉座のすぐ隣に立っているのに対し、冥琳はものすごく距離をとって端の方に立っていた。

その上二人共明らかな作り笑いをしており、王宮中に不穏な空気が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、愛紗達3人は蓮華、明命と一緒に城内を歩いていた。

 

「本当に申し訳ありません…。姉様と冥琳がお恥ずかしい所を…」

 

「いえ、お気になさらず。誰にだって虫の居所が悪い時はあるものですから…」

 

「ありがとうございます。それで…明命からの文によれば、皆様は我が家の『江東丸』を求めて来たとの事ですが…」

 

「はい。貴重な物ではあると思うのですが、ほんの少しで良いので分けていただければと…」

 

「いえ、確かに『江東丸』は孫家に代々伝わる秘薬ですが、特に珍重している訳ではないのでお分けするのは構わないのですが…。

恥ずかしながら、どこの蔵にしまってあるのかがわからなくなってしまいまして…。

今、亞莎や包らに探させているので、少々お待ちいただければと…」

 

「何だかごめんね。手間かけさせちゃって…」

 

「いえ。今回のシャオの任務を始め、関羽殿やナミ殿達には何度もお助けいただいておりますから。これくらいの事はさせて下さい」

 

そこまで話した所で一つの部屋の前に着き、蓮華は部屋の戸を開ける。

 

「孫家に滞在中はこの部屋をお使い下さい。あと、何かあれば周泰に」

 

「何から何までありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ゾロ達は泰山の中腹辺りに差し掛かっていた。

 

「この崖を登るのか?」

 

「山頂に行く為にはそれしかないみたいですね」

 

「なーんで朱儁なんかの為にこんな崖を登らないといけないんだよ…」

 

「留守番が嫌だと言ってついて来たのはお主だろ」

 

「ま、少しぐらいは修行になりそうじゃねェか。さっさと登ろうぜ」

 

「…あ、そうだ。ちょっと待て」

 

崖に手をかけるゾロと翠が手荷物をまさぐりながら呼び止める。

 

「何だ?」

 

「泰山に登るなら役立つだろうって朱里が持たせてくれたんだ」

 

そう言って翠は縄を取り出し星に投げ渡す。

 

「……こ…これは…」

 

「?星?」

 

「―――孔明の()()か⁉」

 

「…………」

 

「……あの…星さん?」

 

「どうしたんだ?星?」

 

「いや、何だか言った方がいい気がしてな」

 

「訳わかんねェ事言ってる暇あったらさっさと登るぞ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び孫家。

 

「あーもう!ホントやになっちゃうわ!」

 

「「「…………」」」

 

シャオはご機嫌斜めな様子で雷火、粋怜、祭達と王宮のバルコニーで飲茶していた。

 

「せっかくシャオが初仕事を終えて帰って来たっていうのに、雪蓮姉様と冥琳の喧嘩のせいで誰もろくに褒めてくれないんだもん!

普通だったら…『でかしたぞシャオ!今夜はお前の大好物の鴨肉料理だ!』とか…。

『偉いわねシャオ。ご褒美に新しい服買ってあげるわよ』とか…。

『よくやったわねシャオ。特別にお小遣いあげるわ』とか…。

『流石尚香様、此度の功績として来月からの勉学の時間を半分にしましょう』とか言ってくれそうなものなのに!」

 

…と、順に炎蓮、雪蓮、蓮華、冥琳のマネをするシャオ。

 

「小蓮様、流石に最後のはわしが許しませんぞ」

 

雷火は顔をしかめる。

 

「随分と荒れてるわねシャオ」

 

「ナミ!梨晏に包も」

 

「仕事が一段落したから休憩しようと思って。その途中でナミに会って、シャオの事捜してたから一緒に来たんだ」

 

「右に同じです。ちょっとお邪魔しますよ~」

 

3人は空いていた椅子に座る。

 

「―――にしても見つけたと思ったら、お茶とお菓子で(くだ)を巻いているとわね」

 

「?」

 

ナミの言葉にシャオは首をかしげる。

 

「シャオ様、管を巻くっていうのはお酒を飲んで愚痴をこぼす事をいうのですよ」

 

「わ、わかってるわよそれくらい…」

 

粋怜が耳打ちする。

 

「あのねシャオ、ご褒美が欲しいんだったら任務をする前に約束さなきゃダメよ」

 

「そうなの?」

 

「そうよ。そうすれば今回みたいな事があっても『約束を守らない様な人だ』とか本人と面と向かって言ってやればいいし、最悪周囲に言いふらしてやるだけでも効果的でしょ?」

 

「成程!義を重んじる相手の心につけ込むって訳ね!」

 

「そういう事!」

 

「ナミ殿…あまり小蓮様に変な事を教えないで貰えるかのう?」

 

祭を始め、皆困った様な表情になる。

 

「それはともかく…雪蓮と冥琳の事、流石に何とかした方がいいと思うよ…」

 

梨晏が疲れ切った様子で口を開く。

 

「二人共極力顔を合わせようとしないからさ…。毎日必要以上に使い走りにさるし、二人と一緒にいなきゃいけない時も空気が悪くて正直耐えられないよ…」

 

「梨晏は立場上、雪蓮様達と一緒にいる時間が多いもんね~…。そりゃ苦労するわよ…」

 

粋怜が同情する。

 

「包も…。雪蓮様達の一触即発な雰囲気のせいで、他の文官達が怖がって近づきたくないから何でも代わりに行かされて大変ですよ…」

 

「政務にまで支障が出始めているとなれば、これ以上看過している訳にはいかんのう…」

 

雷火は真剣な表情になる。

 

「私が前にここに来た時は二人共仲が悪い様には見えなかったけど、今までもこういう事ってあったの?」

 

「うーむ…あの二人幼少の頃から度々仲違いする事はあったが、ここまで根が深いのは初めてじゃな…」

 

ナミの質問に祭は顎に手を添えて呟く。

 

「何が原因なのか少し探りを入れてみる?」

 

「それが良さそうね」

 

梨晏の言葉に粋怜を始め皆が頷く。

 

「そういう事なら私も協力するわ」

 

「え⁉いいんですか⁉」

 

ナミが協力を申し出た事に包達が驚く中、シャオはハッとした表情になり…

 

「ナミ…あんたもしかして協力したお礼としてお金を請求するつもりじゃ…」

 

「するか!あんたは私を何だと思っているのよ!」

 

「金の亡者」

 

「―――っ!それはそうだけど…!」

 

「「「「「いや、否定しないんかい!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、雪蓮は大浴場で大喬に背中を流して貰っていた。

 

「こんな感じでしょうか?」

 

「そうそう。また上手くなったんじゃない白李(ぱいりー)?」

 

白李というのは大喬の真名のようである。

 

「雪蓮、白李、邪魔するよ」

 

…と、そこへ梨晏を先頭に雷火、粋怜、祭達が入って来た。

 

「どうしたのよみんな揃って?」

 

「なァに、湯も薪も勿体ないから一斉に入ろうかと思うての」

 

祭はそう言って雷火、粋怜と一緒に湯船に入る。

 

「白李、よかったら私が代ろっか?」

 

「え?」

 

「どういう風の吹き回しよ梨晏?」

 

「いいじゃん。たまにはこういうのも」

 

「それもそうね」

 

梨晏は大喬から手拭いを受け取ると、雪蓮の背中を流し始める。

 

「…しかし、こうして雪蓮様と風呂に入るのは久し振りじゃの」

 

「そうね…雪蓮様が本当に小さかった頃だもんね」

 

「冥琳や大殿、赤子だった蓮華様も一緒じゃったのう」

 

「…………」

 

「ねェ雪蓮、冥琳と何かあったの?」

 

「何よ?藪から棒に?」

 

「最近揉めてる事が多いし、今だって冥琳の名前が出た瞬間表情が変わったじゃん」

 

「…………」

 

「良かったら話聞くくらいの事はするよ。私と雪蓮の仲なんだし…」

 

「…ありがとう梨晏。実はね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、冥琳の執務室。

 

『周瑜さ~ん、いる~?』

 

「その声…ナミ殿ですか?」

 

冥琳が机に向かっていると外から呼び掛けられ、戸を開けると酒瓶と肴が乗ったお盆を持ったナミが立っていた。

 

「お酒飲んでたんだけど一人で飲むのも味気ないからさ。周瑜さんっていける口なんでしょ?良かったら一緒に飲まない?」

 

「確かにいける口ではありますが…。酒でしたら粋怜殿や祭殿…程普殿や黄蓋殿の方が…」

 

「いや~最初その二人を誘ったんだけど、二人共張昭さんに連行されちゃって…」

 

「成程…。わかりました、お付き合いしましょう。せっかくですし、小喬に追加の酒と肴を持ってこさせましょう」

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、小喬が冥琳の部屋にやって来た。

 

「冥琳様~追加の酒と肴を…」

 

そう言って小喬が部屋の戸を開けると…

 

「おっそいわよ紅李(ほぉんりー)!」

 

「⁉」

 

だいぶ出来上がった冥琳が小喬の真名らしき名前を呼び怒鳴る。

 

「兵は神速を貴ぶ!速き事風の如し!常識でしょうが!私が持ってこいって言ったら駿馬(しゅんめ)の速さで…」

 

「ごめん小喬さん!気にしなくていいから!」

 

暴れようとする冥琳をナミは後ろから羽交い絞めにする。

 

「あ、あのーナミ殿…?冥琳様のこの状態は一体…?」

 

「いや~…なんか私に張り合ってすごい勢いで飲んじゃってさ…。あとは私が何とかしておくから小喬さんはもういいわよ。あまり近付かない方がいいと思うし…」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

酒と肴を置いて小喬は去って行った。

 

「…にしても周瑜さん、結構酒癖が悪いのね…」

 

「悪い⁉酒は悪くありません!悪いのは雪蓮です!そう、雪蓮が…!」

 

「…それって孫策さんの事よね?何かあったの?」

 

「うう…あの子ってば…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ナミ、シャオ、雷火、粋怜、祭、梨晏、包はバルコニーに集まり、持ち帰った情報を整理した。

 

「えーとつまり…冥琳のお酒を雪蓮が勝手に飲んじゃった事が原因って訳?」

 

「そうらしいわね…」

 

「全く…たかが酒一つで何故ここまで揉めるのか…?」

 

雷火は顔をしかめる。

 

「私が周瑜さんから聞いた話だと、そのお酒って蜜柑を使ったかなりの名酒らしいんだけど…」

 

「あー…そういえば…」

 

「どうしたのじゃ包?」

 

「少し前に交易品の管理をしていたら、その中に遠方から取り寄せた珍しいお酒がありまして…。

確認してみたら、冥琳様が雪蓮様と何かの記念に飲む為に取り寄せた物だったそうなんですけど…。もしかしてそれが…?」

 

「あー…」

 

「成程…」

 

「そういう事か…」

 

「え?でも元々雪蓮姉様と一緒に飲むつもりだったなら、別にそこまで怒る事ないんじゃないの?」

 

「逆よシャオ」

 

「逆?」

 

「一緒にお祝いする筈だった相手に記念日を台無しにされたから怒ってるのよ」

 

「ふーん…」

 

ナミの説明に、シャオはわかった様なわからない様な顔をするのだった。

 

「…で、原因はわかったけどどうやって解決する?」

 

「とにかく…まずはお二人に頭を冷やして貰わねばな…」

 

一同はそれからしばらく話し合い、やがて全員で大きく頷くとその場を離れた。

 

 




大喬と小喬の真名、オリジナルで考えました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。