ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
「よいっしょ…!これで…水は…足りますか…⁉」
「ああ、十分だよ。本当にありがとうなおじょうちゃん」
「そうですか…良かったァ…」
大きな水瓶を運んで何往復もした桃香は疲労困憊になり、その場に仰向けに倒れ込んでしまった。
「…なァおじょうちゃん」
「?」
家にいた南蛮族の何人かが桃香に近づき、その内の一人が声を掛けてきた。
「あの水…本当にあそこの水なんだな」
「はい、勿論です」
「何であそこまでひっしになってくれたんだ?」
「え?だって、あの人が怪我している人が沢山いて、その薬を作る為に水が必要だって言ってたから…」
「そのかっこう、あんた漢の人間だろ?」
「そうですけど…」
「おれたちは南蛮族だぞ」
「?だから何なんですか?」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「?」
桃香と南蛮族達は不思議そうな顔で互いを見る。
「……いや、何でもない」
「はじめてだよ。あんたみたいな人…」
「?」
南蛮族達が立ち去ろうと背を向けた、その時だった。
「邪魔するぞ!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
乱暴に家の戸を開け、目つきの鋭い女性が一人入って来た。
女は武装しており、体中から血を流している。
「こいつ…!益州軍のしょうだ!」
「くっ…!南蛮兵がいたか…!」
南蛮族達は身構え、女性の方も腰の剣を抜く。
「やるぞみんな!いっせいにかかれば一人くらい…!」
「上等だ!一人でも多く道連れに…!」
「ま、待って下さい!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
剣を交えようとする両者の間に桃香が入った。
「っ!けっきょくあんたも漢のにんげんか!」
「とにかく!待って下さい!」
怒鳴る南蛮族にそう言うと、桃香は女性に向き直る。
「その剣を収めて下さい」
「貴様何のつもりだ!そいつらは南蛮族だぞ!今の状況を知らない訳ではあるまい⁉」
「…………」
女性がなおも剣を向けると、桃香は女性に歩み寄り―――剣先を握った。
「⁉」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
「剣を収めて下さい」
桃香の手から血が流れだすが、桃香は構わずに女性を真っ直ぐに見据えてそう語りかける。
「剣を収めて下さい」
「……わかった…」
返事を聞いて桃香が剣から手を放すと、女性は剣を鞘に収めた。
「ひどいけがですな…」
「!万安様」
「お爺さん!」
そこへ家主である老父がやって来た。
「とりあえず、手当てをしましょう」
「……外にいる私の部下達を先にして貰えるか?」
「わかりました。おじょうちゃん、もうしわけないけどまた水をくんできてくれるかい?」
「はい!」
▽
再び、ルフィ達一行。
「桃香の奴見つかんねェな~」
「それにしても暑いね~…。たんぽぽ喉乾いて来た…」
「あ!あそこに泉があるのだ!」
「ホントだ!やったー!」
「待て!この辺りの水は迂闊に飲まない方が良い!」
「焔耶さんの言う通りです。この辺りの泉は猛毒を含んでいる事が多く、それを一口でも飲めばたちまち死んでしまいます」
泉に向かって走り出そうとした鈴々と蒲公英を、焔耶と美花が止める。
「え~⁉じゃあ水はどうするの~⁉」
「水鏡先生の資料によれば、
「地図で確認した所、ここからそう遠くないみたいです。そこに向かいましょう」
朱里と雛里の言葉に一同は万安渓を目指すのだった。
▽
だいぶ日が傾いてきた頃、水汲みを終えた桃香は家の中で手当の手伝いをしていた。
「すまないな…」
「いえ、気にしないで下さい」
桃香は止血された手で益州軍の将である女性の腕に包帯を巻く。
「お主は何者だ?益州軍の者ではない様だが…」
「私はただの旅人です。用があってこの先の銀坑洞に向かう途中だったんです」
「そうだったのか。名は何という?」
「名前は“劉備”、字は“玄徳”です」
「“劉”⁉お主は皇帝の血縁者なのか⁉」
「はい。今はただの庶人ですけど」
「そうか…」
「あの…どうかしましたか?」
「いや、もしお主の様な…」
『たのも~!たのも~なのだ~!』
その時、家屋の門を叩きながら誰かが呼び掛ける声がした。
「あの声!」
▽
「ルフィさん!鈴々ちゃん!みんな!」
「桃香!」
「桃香お姉ちゃん!」
桃香が戸を開けると、ルフィ達が立っていた
「桃香ちゅわ~ん♡」
「みんな~!会いたかったよ~!」
「ふげっ⁉」
さり気なく抱き着こうとするサンジを躱し、桃香は仲間との再会を喜ぶ。
「今日はずいぶんとお客さんが多い日ですな」
家の奥から老父が出てきた。
「えっと…あなたは?」
「はじめまして。私はここに住んでいる
▽
その後、ルフィ達も一緒に中に入り、今までの事を互いに話した。
「そんな事が…」
「うん。だから今ここには益州軍の人達と南蛮軍の人達がいるんだ」
「ま、何にせよまずは桃香ちゃんが無事で何よりだぜ」
「その通りですな。それにこう言っては何ですが、このおじょうさんがはぐれてくれたおかげで我々も助かりました。
もう日がくれますし、今夜はここでねとまりして下され」
「ありがとうございます」
「そういう事だったら、今夜の料理はおれが作るよ。材料はそこら辺の獣を仕留めてくるから気にしないでくれ」
「それはそれは、ありがとうございます」
そんな話がされている横で、美花が朱里に耳打ちしていた。
「孔明さん、益州軍と南蛮軍の双方がいるこの状況は情報を探る好機です。しかし、私達三人は益州の部将達には顔が割れている可能性がありますので…」
「任せて下さい。益州軍の方は私達で探りを入れてみます」
▽
翌朝、桃香達は万安の家を出ようとしていた。
「万安さん、お世話になりました」
「なァに、お礼を言うのはこっちの方だよ。ここから先へすすむのであれば、へびやさそり、水にも気をつけて下され」
「わかりました」
「おじょうちゃん」
南蛮兵達が声を掛けてきた。
「…ありがとうな。うれしかったよ、漢にあんたみたいな人間がいてくれて」
「そう思って貰えると私も嬉しいです」
「万安殿、そして劉玄徳よ」
今度は益州軍の部将が話し掛けてきた。
雷々、電々、美花、焔耶は顔を見られない様、すかさずルフィ達の後ろに身を隠す。
「今回我々の命が助かったのは貴殿らのおかげだ。改めて礼を言う」
「え?万安さん達はともかく私は少し手伝っただけで…」
「いや、お前がいなかったら私達はこの者達と剣を交えて死んでいた。私達を助けてくれたのはお前でもある」
「ありがとうございます」
「“劉”の姓を持つ者に、まだお前の様な者がいたとはな…」
「あの…皆さんはこれから戦場に向かうんですか?」
「ああ。いくさが終わったわけじゃないからな。けがもなおったし休むのはおわりだ」
「我々も同じだ」
「そうですか…。あの…こんな事を言うのは変かもしれないですけど、気を付けて下さい」
「ありがとうな」
「うむ、ありがとう」
南蛮兵と益州軍はそれぞれ引き上げて行った。
「それじゃあ、私達も行きますね」
「ああ、気をつけてな」
桃香達も万安渓を後にするのだった。
▽
出発からしばらくして、サンジが口を開いた。
「それで朱里ちゃん、孫乾ちゃん。夕べ何か聞き出していたみたいだけど、何かいい情報はあったかい?」
「はい、ある程度の事は聞き出せました」
「昨夜軽く情報を整理したのですが、中々興味深い情報がありました。場所を変えて話し合いましょう」
▽
南蛮軍、金環三結の陣。
そこで3人の長達が軍議をしていた。
「金環三結様!董荼那様!阿会喃様!ゆくえふめいになっていた兵たちが戻ってきました!」
「本当か⁉」
▽
「我が兵たちよ、よくぞぶじに戻ってきた!」
「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」
「傷がいえる間もなくてすまないが、いつ益州軍がおそってくるかわからん!すぐに戦のじゅんびをしてくれ!」
「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」
「では董荼那、阿会喃よ。明日からまたともに戦おうぞ!」
「おう!」
「うむ!」
3人の長はそれぞれの陣に戻り、帰って来た兵士達もそれぞれの主に付いて行った。
▽
益州軍のある陣。
「
「何⁉本当か⁉」
▽
「高定様、ご無事で何よりです!」
「うむ、心配をかけたな」
「その怪我ではしばらくは安静にしていた方が良いでしょう。雍闓様と朱褒様には私から伝えておきます」
「そうして貰えると助かる」
「…所で、何か良い事でもありましたか?」
「そう見えるか?」
「はい。どことなく明るい表情をしておりますので…」
「久し振りに強い眼をした者に出会えてな…」
▽
万安渓を後にしたルフィ達は車座になって話をしていた。
「え⁉両軍とももう何度も夜襲を受けている⁉」
「それおかしいよ!」
朱里と美花の話を聞いて雷々と電々は大きな声をあげた。
「何がおかしいのだ?」
「先日私達が言った通り、両軍は兵を起こしましたが互いに攻め入る様な動きを見せた事は一度もありません」
「それなのに両軍の将兵は奇襲を受けていると言っています…」
「それも夜襲のみ…」
「それってつまり…どういう事?」
美花、朱里、雛里の言葉に桃香達は3人の顔を覗き込む。
「一つの可能性が考えられますが…」
「確信はないですし、誰が黒幕なのかは不明ですしね…」
「少し探りを入れる必要がありますね」
▽
その日の夜、南蛮軍のある陣。
「ん?」
兵の一人が不審な人影を見つけた。
「お前!何者だ⁉」
兵は槍を構えて人影に詰め寄る。
「え⁉ちょ、ちょっと待て!話が違うじゃ……ああっ!旗が違うじゃねェか⁉くそっ!」
「あ!まて!」
槍を向けられた相手は慌てた様子で何か言うと逃げて行った。
「何だったんだ一体?…ん?」
兵が地面を見ると一枚の布が落ちていた。
布には何か字が書いてある。
▽
「『もうすぐ約束の首をとどける』だと?」
南蛮兵は先程の布を自分の主である金環三結に届けていた。
「……そいつは我々の陣を他のだれかの陣とまちがえていたのだな?」
「はい」
「わかった。お前はもう下がっていろ」
「はっ!」
兵は天幕を出て行った。
「……私にあてたものなら説明がつくが、まちがえて私にとどけただと…?」
「主よ、もしやあやつら我々をはめたのでは?」
「ふーむ…。そのかのうせいもあるな…」
その時、天幕の外で何者かが盗み聞きをしていた事に誰も気がつかなかった。
▽
翌朝、益州軍のある陣。
「ん?」
見張りをしていた兵の一人が不審な人影に気がついた。
「おいお前!何者だ⁉そこで何をしている⁉」
「あ、いや…!たんぽ…じゃなくて私は通りすがりの者で南蛮とは何の関係もないから!」
人影はそう言いながら逃げる様に去って行った。
「何だったんだ?…む?」
兵が地面を見ると、字が書かれた布が落ちていた。
▽
「『例の件については、準備は滞りなく進んでおります。日程は後日改めて』だと?」
兵は拾った布を主である雍闓に見せた。
「将軍、どう思われます?」
「少なくとも我々が打ち合わせている事には“例の件”に当てはまるものはない…。朱褒…あるいは高定が何かしらの密約を結んでいるのか…?」
▽
同日の昼間、ある南蛮軍の陣
「なあ、おれたちはいつまでこんなにらみ合いを続けているんだ?」
「さあな?」
「ここ数日はまったく何もうごきがないし、はり合いがないぜ…」
「でも…今はちょっと戦うことにていこうがあるから、ありがたいけど…」
「この間のあの子のことか?」
「気もちはわかるけど、それとこれとは話がべつだ」
「そうだ。やつらがせめてきたせいで仲間が何人も死んだんだ。だから董荼那様はこうやって兵をおこしたんだ」
「ああ、わかってるよ…」
▽
同日、夕刻。
「朱褒様、南蛮軍の偵察に向かっていた間者が戻りました」
「おうそうか。敵の様子は?」
「それが、幾人かの兵士達が漢の者に好感を持っている様な話をしており、益州軍が敵か味方かわからぬ雰囲気だったそうです」
「うむ…」
「将軍、南蛮軍が益州軍を敵と捉え切れていないのだとするとやはり雍闓が…」
「いや、高定が我々の裏をかいている可能性もある。今度は雍闓と高定の陣を探れ」
「はっ!」
▽
同日夜。
「阿会喃様、少し陣内の空気がわるくなっております」
「どうしたのだ?」
「いくさをいやがり早くかえりたいと言う者、早くたたかわせろといきどおる者、両者ともふえてきております」
「そうか…。しかし、金環三結も董荼那も近ごろはだまりこんで何も言わない。我々だけでかってにたたかうわけにもな…」
「それはしょうちしております。…それにしても近ごろのお二方のたいどはどうもおかしいような気がしますな…」
「お前もそう思うか?」
▽
翌日の朝、高定の陣。
「何⁉雍闓の斥候が我が陣を探っていた⁉」
「はい」
「それは確かなのか⁉」
「はい。不審な人影を見まして後をつけた所、雍闓の陣に入って行きました…」
「何故だ?何故雍闓が我々の陣を探る必要がある…?」
▽
その日の夜。
「どうだった朱里ちゃん?」
「はい!サンジさんや蒲公英ちゃんが届けた偽の手紙を見た後の反応や行動を美花さんに探って貰った所、私達が思った通りのものでした」
「この反乱の真相も黒幕もわかりましたから、後はどうやってそれを明るみにするだけです」
自信に満ちた顔で朱里と雛里が言う。
「…で、その方法は?」
「あのですね…」