ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第139話 “華蝶退場”

ある日の夕刻、益州軍のある陣。

 

『高定様』

 

「何だ?」

 

高定が自分の天幕で一人思案していると、外から呼び掛けられた。

 

『劉璋様の使いという者が来られたのですが、いかがいたしましょう?』

 

「わかった。通せ」

 

高定が許可すると一人の女性が入って来た。

 

「貴様はたしか厳顔の所の…」

 

「孫乾です」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

その夜、南蛮軍のある陣。

 

『火事だァーーーっ!』

 

「⁉」

 

天幕にある寝台で眠っていた金環三結は外からの大声で目を覚ました。

 

慌てて外に飛び出すと、陣のあちこちに放火されているのがわかった。

 

「早く火を消せ!」

 

「ぐああっ⁉」

 

「⁉」

 

悲鳴が聞こえ、見てみると一人の男が松明を手に立っていた。

その背後には幾人もの兵が倒れている。

 

「これはきさまのしわざか⁉」

 

「ああ、そうだ。ある人の命令でやったんだ。言っとくが南蛮族ではないぜ」

 

そう言うと男は走り出す。

 

「まて!」

 

男は陣の柵を軽々と飛び越え、暗闇の中へ逃げ出した。

 

「おのれ…!」

 

金環三結が柵越しに見ると、男が持っていた松明の光が暗闇の中を進んでいくのが見えた。

その先には大きな灯りが見える。

 

「半分は火をけせ!半分は私といっしょにあの男をおうぞ!あの大きな灯りをめざせ!」

 

そう言うと自身も武装し、出陣の準備をする。

 

(おのれ、こんなこと聞いてないぞ…!うらぎりおったな!)

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

同じ頃、益州軍の陣の内、2つの陣が同じ様に夜襲を受けていた。

 

朱褒の陣では、1人の少女が松明を持った別の少女を庇いながら暴れていた。

 

「貴様ら何者だ⁉南蛮兵か⁉」

 

「鈴々達は南蛮族じゃないのだ!けど、高定の家来でもないのだ!」

 

「鈴々!朱里!」

 

「うわァ⁉」

 

そこへさらに陣の奥から馬に乗った少女が一人現れた!

 

「馬一頭くすねてきたよ!」

 

「丁度良い頃合いです!鈴々ちゃんも乗って!」

 

「了解なのだ!」

 

3人は馬に飛び乗って去って行った。

 

「おのれ!追いかけるぞ!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

一方、雍闓の陣では一人の少女を背負った男が松明を片手に暴れていた。

 

「ルフィさん、そろそろ劉備さん達の所に!」

 

「わかった!」

 

そう言うなり2人は陣の外へ飛び出す。

 

「待て!貴様ら何者だ⁉南蛮族が⁉」

 

「違う!あとコーテイの家来でもねー!」

 

「おのれ…!という事はやはり…!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

一方、桃香、焔耶、雷々、電々は両軍のほぼ中間に建てられた巨大な篝火の下で待機していた。

 

「雷々達何もすることないね~…」

 

「仕方がないだろ。我々は益州の人間として顔が割れている可能性があるのだから、奇襲に加わる訳にはいくまい」

 

「孔明ちゃんと鳳統ちゃんの作戦、上手く行くかな?」

 

「相手は奇襲で混乱しているから冷静な判断はたぶんできないって言ってたけど…」

 

「あ!見て!」

 

桃香がそう言った時、電々が何かを見つけた。

示した方向を見ると無数の灯がこちらに向かって来るのが見えた。

 

周りを見渡すと、同様に向かって来る灯の群れが他にもある。

 

「ルフィさん達の持っている灯がこっちに来るの見て、追いかけてきたんだね」

 

「ここまでは作戦通りだな…」

 

「そろそろ、火を消す準備しないとね…」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「む?」

 

灯りに向かって進んでいた雍闓の軍は、近くで別の軍が動いているのに気がついた。

 

「朱褒!」

 

「む、雍闓!よくも裏切ってくれたな!」

 

「何⁉裏切ったのは貴様ではないか!」

 

「しらばっくれるな!者ども掛かれェ!」

 

「迎え撃てェ!」

 

こうして雍闓軍と朱褒軍は闇夜の中で激突した。

雍闓と朱褒は必然的に一騎打ちを始める。

 

「我々を嵌めおって!こうなれば貴様の首を献上して出世してくれるわ!」

 

「黙れ!貴様こそ今更になって保身に奔りおって!それとも買収されたか⁉」

 

「きさまらァーーー!」

 

「「⁉」」

 

2人が互いを罵りながら武器を交えていると第三者の声が聞こえた。

 

見ると南蛮の金環三結が軍を率いて立っていた。

 

「よくも我々をだましたな!反乱を利用してりょうどをふやそうなどぬかしおって!」

 

「金環三結⁉」

 

「何故貴様がここに⁉」

 

「もんどうむよう!者共かかれェーーー!」

 

「「「「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」」」」」

 

こうして雍闓軍と朱褒軍の戦いにさらに金環三結の軍が突っ込み、三つ巴の大混戦となった。

雍闓と朱褒の一騎打ちには金環三結も加わり、一対一対一の戦いとなった。

 

「ええい!朱褒!これも貴様の差し金か!」

 

「黙れ!貴様こそ戯言を吹き込んでこいつを動かしたのだろうが!」

 

「しらじらしい!きさまら二人がうらぎったのだろう!そうでなければさっきの夜しゅうは一体なんだ⁉計画にはなかったはずだろ!」

 

その時…

 

「ふん!」

 

「がっ!」

 

「ぐおっ!」

 

「ぐっ!」

 

何者かの真横に薙ぎ払う一撃を受け、3人はまとめて地面に倒れ込んだ。

 

「な…何だ今のは⁉何者だ⁉」

 

「おれだ!」

 

見ると藁で編んだ帽子を被った男―――ルフィが腕を組んで3人を見下ろしていた。

 

「ここまでだぜ、お三方」

 

別の方向から声が聞こえ、見るとサンジが立っていた。

 

そこで我に返った雍闓達3人が周りを見渡してみると、各軍の兵士達は全員倒れており、代わりに得物を構えた鈴々、焔耶、蒲公英、雷々、電々、美花が立っていた。

 

ルフィ達は松明の光で各軍を誘導した後、桃香達と合流し、朱里と雛里が各軍が激突すると予測した場所の近くで待機していた。

そして各軍が激突し、兵達がだいぶ疲弊した頃を見計らって大混戦の中に突入し、喧嘩両成敗の形で戦を止めたのである。

 

「こ…これはどういう事だ⁉」

 

「それはこちらの台詞だ」

 

「「「⁉」」」

 

そんな言葉と共に、一人の人物が暗闇の中から姿を現した。

 

「こ、高定⁉」

 

「雍闓、朱褒、何故貴様らはここにいる?さっきの会話の内容は一体どういう事だ?」

 

「い、いえ…あれはその…何でも…」

 

「南蛮軍の間者らしき人物から届いた手紙…」

 

「⁉」

 

「例の件に当てはまる計画はないんでしたよね?」

 

「き、貴様!何故それを―――あっ!」

 

美花の言葉に動揺した雍闓は、思わず口を滑らせてしまう。

 

「あとこんなのもあるんだよな。そこの朱褒とかいう奴が南蛮の奴に宛てた文が…」

 

「っ⁉」

 

そう言って懐から何かを取り出そうとするサンジに、朱褒は顔を強張らせる。

 

「あったあった。えーと…これは阿会喃宛か…」

 

「はっ!墓穴を掘りおったな!私は阿会喃に文は書いてないわ!」

 

「ウソつくんじゃねェ!ハッキリと書いてあんだぞ!」

 

「はったりだ!阿会喃は計画に加担しとらんからやり取りをする必要などないのだからな!書く訳がない!」

 

「成程、阿会喃は無関係。そしてそれを知っていたお前は加担していたんだな」

 

「っ!」

 

朱褒は嵌められた事に気づき青ざめる。

 

「それでは…今回の反乱の真相を話して貰おうか…」

 

高定がそう言うと、彼女の舞台の兵達がどこからともなく現れ、雍闓、朱褒、金環三結とそれぞれの兵達を彼女の陣へと連行した。

 

無論、ルフィ達も同行する事になった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「つまり、この反乱は雍闓、朱褒、金環三結の企みだったのだな…」

 

その後、ルフィ達11人は高定の天幕に招かれた。

 

「雍闓と朱褒は益州の南部に南蛮が攻めてくる、金環三結は周辺の部族に益州軍が攻めてくると嘘の噂を流す。

そして互いに周辺の者を扇動して兵を起こさせる。

その後は睨み合いを続けながら、隙を見て味方の主将―――今回の場合は私と董荼那、阿会喃を亡き者にする。

雍闓と朱褒は私の領土を、金環三結は董荼那と阿会喃の領土を手に入れ力を増す。

そうやって力をつけつつ、最終的には協力して成都へ攻め込むという計画だった訳か…」

 

反乱の真相を知り、高定は大きなため息をついた。

 

「今まで双方の軍が受けていた夜襲は、味方である筈の雍闓、朱褒軍、金環三結軍の兵による工作だった様です」

 

「敵が攻め込む動きを全く見せていないのに攻撃されているなんて、おかしいと思ったんです」

 

…と、朱里と雛里。

 

「糜竺殿、糜芳殿、孫乾殿、魏延殿、そして劉備殿、ルフィ殿、サンジ殿、張飛殿、孔明殿、鳳統殿、馬岱殿、此度の件にご助力頂き、心からお礼を申し上げる。ありがとう」

 

「頭を上げて下さい高定さん!私達は私達で理由があって行動したんですから!」

 

「我々も。同じ劉璋様の配下として行動しただけです」

 

「うむ、そうか…」

 

「それで…この反乱はこれからどうなるんですか?」

 

「ああ。取り敢えず雍闓と朱褒を拘束して成都へ向かい、そこで裁きを受けさせる。こんな事をした以上、打ち首はほぼ確定だろうがな。

問題は金環三結の処遇と残りの南蛮軍……董荼那と阿会喃の軍だな…」

 

その言葉に高定だけでなくその場にいた全員が考え込む。

 

「和睦が成立するのが望ましいが、向こうは我々から何度も攻撃されたと思っている。真相を伝えたとしても、昨日まで敵対していた者の言葉に耳を貸してくれるかどうか…」

 

高定がそう言ったその時…

 

「あのー…ちょっといいですか?」

 

桃香が手を挙げた。

 

 

 

▽

 

 

 

一同は捕虜となった南蛮兵を閉じ込めている仮の牢屋にやって来た。

 

「ねェ焔耶、上手く行くと思う?」

 

「まァ…やってみる価値はあると思うが…」

 

蒲公英と焔耶は不安そうに話す。

 

「あ、いた!あの人!」

 

桃香が牢屋の中の南蛮族を指して声をあげた。

 

「あの人も!…あ、あの人もそうです!」

 

 

 

▽

 

 

 

そして桃香指名した何人かの南蛮兵が集められ、桃香と話をする事になった。

 

「あの…皆さん…」

 

「あんた…あの時の…」

 

「万安渓にいたおじょうちゃん…」

 

そう、桃香は万安隠者の家で出会った南蛮兵達を捜していたのだ。

 

「その…取り敢えず皆さん、生きている様で良かったです…」

 

「まあな…」

 

「おじょうちゃんも元気そうだな」

 

「はい」

 

「それで…どうしたんだよ。おれたちを集めて…」

 

「……あのですね…」

 

そして桃香は今回の反乱の真相を話した。

 

 

 

▽

 

 

 

「……という事だったんです」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

「あの…信じ難い事だとは思うので、信じて貰えなくても構いません。ただ、私達はこれ以上戦う意味がないので、せめて和睦を結びたいんです!協力して貰えませんか⁉」

 

「……わかったよ。信じる」

 

「え?」

 

「あんたの言う通り信じがたいし信じたくねェけど、あんたがうそつくとも思えないしな…」

 

「それに、助けてもらった借りもあるからな。おれたちから董荼那様と阿会喃様の家来たちを通して、わぼくをむすぶように言ってみるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

翌日、捕虜になっていた南蛮兵達は全員解放される事になった。

その際、サンジからの強い要望により全員にちゃんとした食事がふるまわれた事もあって、南蛮兵達は皆多少なりとも恩を感じつつ、帰って行った。

 

その後、董荼那と阿会喃は和睦に応じた。

 

金環三結はその場で打首にし、その領土は2人が二分する事になった。

 

そして、高定の軍と一緒に雷々達も成都に向かう事になり、別れの挨拶をする。

 

「それじゃあ張飛ちゃん達、元気でね~!」

 

「糜竺達も元気でなのだ~!」

 

「商売頑張って下さいね~!」

 

「今度はもっと落ち着いて、色々お話ししたいです」

 

「今度はお店に来てね!」

 

「何か面白れェモンあったら買うよ!」

 

「ぜひ食材とか食器とか、見させて貰うよ」

 

「お店で会う日、楽しみにしてますね~!」

 

「関羽さんにもよろしく言っておいて下さい」

 

「巴郡に帰ったら、桔梗様にもよろしく言っておいてくれ!」

 

「またね~!」

 

「劉備玄徳殿。そしてその仲間達よ」

 

すると、高定が声を掛けてきた。

 

「今回はお主達に助けられた。このお礼はいつか必ず。では、さらばだ」

 

そう言うと高定と益州軍、雷々達は去って行った。

 

「……よし!じゃあおれ達も行くか!」

 

「うん!遅れを取り戻さないと!」

 

そして、ルフィ達も南蛮のさらに奥へと進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

その頃、泰山の頂上付近。

 

「『うう…寒い…』

 

『凍え死にそうです…。私もう死んでますけど…』

 

『おれ寒さは平気だけど…腹減ってきた…』

 

『くそっ…いくら鍛えても寒さと空腹には勝てねェか…!いい加減何とかしねェと…!このままじゃ…』

 

『案ずるな!皆の者!』

 

『⁉お前は…!』

 

『ある時は行く先を案ずる旅芸人達に餞別を送る支援者…またある時は人助けの為に過酷な山頂へと向かう風来坊…。

しかしてその実態は―――美と正義の使者華蝶仮面!ここに参上!

さァ!差し入れのメンマ丼だ、皆で食べろ!』

 

『美味い!体があったまるぜ…!』

 

『ふわふわの玉子に包まれたメンマの歯ごたえがサイコーだー!』

 

『メンマ…最高です!』

 

『ありがとう華蝶仮面様!』

 

『そうか…美味いか…。これからはメンマに命を救われた事を忘れずに―――

 

 

 

―――常ニ感謝ノ心ヲ持ッテ…」

 

「おい!星!しっかりしろ!」

 

「メンマ丼なんてないぞ!幻だ!」

 

「ちょっとマズいですよコレ!確実に死にかけている人の目ですよ!」

 

「かなり危険だぞこの状態!本当に生死の境をさまよっている感じだ!」

 

「体験者と医者が言うと説得力が違うな…」

 

「コレデモウ思イ残ス事ハ…」

 

「あー!寝るなー!寝たら死ぬぞー!」

 

「チョッパー!どうすりゃいい⁉」

 

「とにかく眠らせるな!叩くなりつねるなりして意識を保たせるんだー!」

 

「了解しましたー!」

 

 




まだしばらくオリエピソードは続きます。
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