ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第140話 “遥かなる頂”

南蛮と益州南部の反乱を収めた後、ルフィ達は孟獲のいる銀坑洞へ向けて旅を続けていた。

 

「あ゛~~づ~~い゛~~…」

 

「蒲公英ちゃん大丈夫?」

 

「涼州育ちの蒲公英ちゃんにはこの暑さは辛いでしょうね」

 

「こういう時は無理して歩かない方がいいだろうし、休憩するか」

 

サンジの言葉に皆はその場に腰を下ろす。

 

「漢の内部を旅していた時よりずっと疲れるよ…」

 

疲れ切った様子で蒲公英が言う。

 

「この暑さに加え、道らしい道がなく険しいからな…。同じ距離を歩いたとしても倍近く疲弊するだろう…」

 

焔耶が説明する。

 

「私達が旅に出てからもうだいぶ経つけど、愛紗ちゃんやゾロさん達はもう目的の物を手に入れてるのかな?」

 

空を見上げながら、桃香はそんな事を呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ゾロ達はというと…

 

「あった!華佗に教えて貰ったのと全く同じやつだ!間違いない!」

 

華佗から貰った図絵つきのメモ書きと手にした草を見比べながらチョッパーは言う。

 

「じゃあこれで『持久草』は手に入ったな」

 

「よし!後は帰るだけだな!」

 

「いや~少々危ない時もありましたが、全員無事な状態で任務を終えられそうですね」

 

ブルックのその言葉に、ゾロ達3人は思わず先日天に召されそうになっていた星を見る。

 

「全くだ。危うい所だったが皆のおかげで助かった。感謝してもしきれぬ。改めて礼を言うぞ」

 

そう言うと星は頭を下げる。

 

「まァ気にすんな。お互い様だ」

 

「そうか…。所で、一つ気になっているのだが…」

 

「何だ?」

 

「心なしか私の顔が少々腫れている様な気がするのだが…?」

 

「しもやけだ。寒い所じゃよくあるだろ?」

 

「うむ…そうか…?」

 

「それはさておき…早いとこ下山しましょう」

 

「そうだな。また天気が悪くなってきたりしたら大変だし」

 

「うむ…出来れば遠回りせず近い道を行きたい所だが…」

 

「大丈夫だ!あたしに考えがある!」

 

翠が自信ありげに胸を叩く。

 

「考え?」

 

「ゾロ、どっちに行くのが近いと思う?」

 

「あっちだな」

 

「よし、じゃあその反対の方向に行こう」

 

「おお!成程!」

 

「それは良い考えだな!」

 

「頭いいんだなー翠ー!」

 

「テメェら…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ゾロ達は順調に山を下りて行った。

 

「な⁉あたしの言う通りにして正解だっただろ⁉」

 

「うむ、この分なら日が沈む頃には麓まで下りられるかもしれん」

 

「…喜んでいるところを悪いですが、そう上手くはいかないかもしれません。ほら、アレ…」

 

「「「「?」」」」

 

ブルックが指した方を見てみると、少し遠い所で山道を塞ぐ様に軍旗が並んでいるのが見えた。

 

「あの旗の色……陳留の…曹操軍の旗か?」

 

「字を見るに…夏侯惇殿の旗の様だな」

 

「すげー、よく気づいたなブルック」

 

「目はいい方ですから。目はないんですけどー!ヨホホホホ!」

 

「…にしても、あんな所で何やってんだあいつら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泰山の中腹辺りに築かれた曹操の軍の陣、その天幕の中で春蘭、季衣、風が軍議をしていた。

 

「―――では、昨夜の夜襲も失敗したのか?」

 

「はい…」

 

夏侯恩(かこうおん)は?」

 

「矢がかすっただけで大した傷ではない様ですー」

 

「そうか…」

 

風の返答を聞いた後、春蘭は数秒目を閉じ…

 

「ええーい!まどろっこしい!もう全軍の真正面からの攻撃で一気に片付けてやるぞ!」

 

「だからそんな事をしても勝てませんってば…」

 

「風達の兵力が三千なのに対し向こうは七千。しかも敵は砦に立てこもっている状態ですからねー。真正面から戦って勝つには、もっと兵力がないとー」

 

「ならば華琳様に頼んで、もっと兵を…」

 

「それができないからボク達だけで来てるんじゃないですか…」

 

『いくら兵が沢山いても、武器や食料がねェとなー』

 

「うぐぐぐぐ…」

 

「申し上げます!」

 

宝譿の言葉に春蘭が唸っていると兵士が一人入って来た。

 

「どうした?」

 

「夏侯惇将軍方のお知り合いという方が訪ねて来られたのですが、いかがいたしましょう?」

 

「私達の知り合い?」

 

 

 

 

 

 

「おお!師匠達でしたか!」

 

春蘭達がお目通りを許可すると、少ししてゾロ達が入って来た。

 

「兄ちゃん!翠さん達も久し振り!」

 

「おう、久しぶりだな」

 

「黄巾の乱以来ですね」

 

「元気だったか~?」

 

「あたしはそっちの子とは初対面だな。あたしは馬超、字は孟起だ」

 

「程昱と申しますー。それでそちらの方は…」

 

…と、風、春蘭、季衣は星を見る。

 

「「「………?」」」

 

しばらく無言で凝視した後、星の持つ槍に目を向け…

 

「ああ、星ちゃんでしたかー」

 

「ああ、趙雲殿か」

 

「あ、趙雲さんだったんだ」

 

「何だ今の間は?」

 

 

 

 

 

 

「なるほどーそういう事でしたかー」

 

ゾロ達は春蘭達に自分達が泰山にいた理由と下山の為に通行の許可を貰いたい事を話した。

 

「通して貰えるか?」

 

「まァ星ちゃん達の事は信頼しておりますので、風達は許可をしても構わないのですが…」

 

「他に何か問題があるのか?」

 

「その為には風達がここにいる理由を説明する必要があるのですがー…」

 

そう言いながら風は春蘭の顔を見る。

 

「まァ話しても構わないだろう」

 

「わかりましたー。数日前、黄巾党の残党がこの辺りを荒らし始めたのです。それを知った朝廷が華琳様にこれを討伐する様命令したのです」

 

『黄巾党本隊の討伐で党員達を兵に加えた事を知ってるから、それを当てにしてんだろうなー』

 

「だが、朝廷の奴らは他にもいくつもの残党の討伐を命令してきてな。流石に人手不足になり我々三人だけで来たのだ」

 

「けどボク達が来たらあいつらこの山にある砦に立て籠もって、全然戦おうとしないんだ」

 

「―――で、取り敢えず山道を塞ぐ形で陣を立てて、逃がさない様にしているという訳なんですよー」

 

「成程、あたし達が通ろうとすればそいつらが襲って来るかもしれないって事か」

 

「その通りですー」

 

「私達が頂上にいる間にそんな事になっていたとは…」

 

「訊くが賊の兵力はどれくらいなのだ?」

 

「およそ七千ってとこですねー」

 

「ふーむ…曹操軍が控えている以上全軍で襲って来る事はないと思うが、それ程の数がいるとなると少々厄介だな…」

 

星を始め、翠、チョッパー、ブルックも頭を抱える。

 

「?何を考え込む必要があんだ?」

 

その様子を見てゾロが不思議そうにする。

 

「何かいい方法があるのか?」

 

「方法もなにも、普通に賊全員ぶった斬って帰りゃいいだけの話じゃねェか」

 

「「「「イヤ、ちょっと…」」」」

 

ゾロの考えにチョッパー達は突っ込む。

 

「……あのーもしよろしければ星ちゃん達も賊討伐に協力していただけないでしょうか?」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

風の提案にゾロ以外が目を丸くする。

 

「実を言うと風達の方も討伐が行き詰っていて困っていたのですよー。星ちゃん達が協力してくれるなら助かりますし、双方に利があると思うのですがいかがでしょうか?」

 

「うーむ…師匠達が手伝ってくれるのであれば当然助かるが…」

 

「あたし達としても目の前の賊を放置するのは気が引けるし、戦うのなら兵力が多いと助かるし…」

 

春蘭と翠が言い、他の者達も反対はしない。

 

「では、協力して賊討伐をするという事で良いですか?」

 

「ああ。それでいいぞ」

 

「それでは、よろしく頼みます」

 

 

 

 

 

 

「では、早速軍議を始めましょうかー」

 

風が卓上に絵地図を広げ、ゾロ達7人が覗き込む。

 

「まず、賊が立て籠もっている砦はここにあります」

 

「我々が通ろうとしている山道とそこまで離れていないな。それにこの位置からなら山道の様子が良くわかる」

 

「あたし達が下山する様子が丸見えなら、山を降りた所を確実に待ち伏せされるだろうな…」

 

星と翠は考え込む。

 

「しかし…よくよく考えると私達が山を登る時、砦なんてありましたか?」

 

「砦って言っても、岩をいくつも積み上げて壁にしただけで、ちゃんとした建築物じゃないから気がつかなかったんだと思う。入り口もただの穴だし。

きっとあいつらはずっと前からあの砦の事を知っていて、兄ちゃん達が登った後に逃げ込んだんだと思う」

 

ブルックの疑問に季衣が答える。

 

「ですが地形を利用して作られている為、攻め落とすのは容易ではないですよー。正面は急な上り坂になっていて後ろは断崖絶壁ですからねー」

 

「賊の兵力は七千程と言っていたが、こちらの兵力はどれくらいなのだ?」

 

星が訊ねる。

 

「三千ぐらいですねー」

 

「あまりにも少ないな」

 

「先ほども言いましたが、あちこちの賊の討伐を同時に命じられましたからねー。頭数はともかく武器や食料がどうしても用意できなくて…」

 

「今まではどうやって戦っていたんだ?」

 

今度はチョッパーが訊ねる。

 

「囮の兵を使っておびき寄せたり、奇襲を仕掛けたりしてたんですけど…どういう訳か全て読まれておりまして…」

 

「読まれていた?」

 

「はい…。どうも作戦が漏れているとしか思えない程に裏をかかれているのです…。ですから少し道を塞いで様子を見ようかと…」

 

「そうだったのか…。しかし、だとすれば尚更妙案が必要だな。相手が思いつきもしない様な…」

 

「この…後ろの崖を登る事はできないのでしょうか?」

 

ブルックが提案する。

 

「風も考えてみたのですが、ほぼ垂直でかなり高い崖でしたからねー…。縄や梯子を掛ける事ができれば可能かもしれませんが、その為に登るのが難しくて…」

 

「……あのーその崖、ちょっと見に行っても構わないでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着きましたよー。ここからなら崖と砦の様子がよく見えますー」

 

ブルックと風は崖と砦が見える場所に偵察に来た。

 

「……やはり崖側には、ちゃんとした壁がない様ですね…」

 

崖の上にある砦の様子を見ながらブルックが言う。

 

「はいー。風達も少し調べてみましたが、こちら側の壁は木で造られた張りぼて同然の壁でしてねー。あれ程の絶壁がありますからねー、安心しているのでしょう」

 

『どうだー?あの崖登れそうかー?』

 

「私単独なら、問題はなさそうですね…!ヨホホホホ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人が陣に戻ると、すぐに軍議は再開された。

 

「では、明日の作戦を説明しますねー。まず、季衣ちゃんと星ちゃんと剣士のお兄さんは囮として、千五百の兵を率いて正面から砦に攻め込んで下さい。

春蘭様と風とチョッパーちゃんと骨のお兄さんと馬超さんは、千の兵を率いて崖の方から攻め込みます。

最初に骨のお兄さんが登って縄梯子を掛けるので、春蘭様と馬超さんはそれを使って攻め込んで下さい。風とチョッパーちゃんは殿(しんがり)を務めます。

残りの兵には陣を守って貰いましょう」

 

「風よ、作戦は理解した。だが、曹操軍の兵士達は見ず知らずの我々と共闘する事に納得してくれるのか?

黄巾の乱の時も、一般の兵卒達とはあまり行動を共にしていなかった為、それが気掛かりでな…」

 

「それについては風に考えがありますので大丈夫だと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、春蘭から明日の作戦について大まかに説明する為、兵達が集められた。

 

兵達の前には春蘭、季衣、風、そしてゾロ、星、人型になったチョッパー、ブルック、翠が並んでいる。

 

「明日の戦は急遽この五人が指揮官として加わる事になった!」

 

春蘭の言葉に兵達はざわつき、疑惑の目でゾロ達5人を見る。

 

「まず、部隊を三つに分ける!一つは陽動として敵の砦に真正面から攻撃を仕掛ける千五百の部隊!指揮は許緒と師匠、それから趙雲殿の三名だ!」

 

次の瞬間、兵士達の動揺が大きくなる。

 

「あの男…夏侯惇将軍の師匠なのか…⁉」

 

「…って、事は相当強いのか…⁉」

 

「じゃあ、後の四人も…」

 

(成程…夏侯惇殿の師と言えば兵士達も一目置くか…)

 

風の考えに、星は密かに感心するのだった。

 

「次に敵の砦の裏側から崖を登り奇襲を仕掛ける部隊が千!指揮は私と程昱、そしてこちらにいる馬超殿とチョッパー殿とブルック殿だ!

残りの兵は陣を守る為に待機!攻撃は明日の明朝!よって今夜、闇夜に紛れて移動する!すぐさま準備にかかれ!」

 

「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈んだ頃、出陣の準備を終えた兵達は仮眠をとっていた。

 

「……ふあ~…」

 

そんな中、用意して貰った天幕で休んでいた翠が目を覚ました。

 

「……厠行って来るかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーすっきりしたー。……ん?」

 

用を足した翠が天幕に戻ろうと歩いていると、何かをしている人影が見えた。

 

「あれって…」

 

翠は人影に近づいて行った。

 

「夏侯惇?」

 

「む?馬超か」

 

翠が春蘭に声を掛けると春蘭も翠に気がついた。

 

「お前、それ…」

 

翠が春蘭の手元を見ると短刀と小さな鉄の塊が握られていた。

 

「見ての通り鉄を斬る為の鍛錬だ。本当は大声で気合を入れて思いっ切り剣を振りかざしたいのだが、『夜はうるさいからやめろ』と華琳様に言われてな…」

 

「お前もソレやってるのか…」

 

「…という事はお前も?」

 

「ああ。もっともあたしの場合は槍で貫く特訓だけどな」

 

「そうなのか。それで、できたのか?」

 

「いや、全然だ…」

 

「そうか…。お前は師匠に助言は貰ったのか?」

 

「訊いてみたけど『鉄を斬れる様になるには何も斬らない事ができるようになる事だ』ってしか教えてくれなくてな…」

 

「お前もそうか…。私もそう言われたのだが、さっぱり意味がわからなくてな…」

 

「あたしもだよ…」

 

「ま、お互い頑張ろう」

 

「ああ」

 

この夜、翠と春蘭は意気投合し、少し仲良くなったのであった。

 




季衣の麦わらの一味の呼び方

ルフィ:帽子の兄ちゃん、ゾロ:ゾロの兄ちゃん、ナミ:ナミさん、ウソップ:鼻の兄ちゃん、サンジ:料理の兄ちゃん、チョッパー:チョッパー、ロビン:ロビン、フランキー:裸の兄ちゃん、ブルック:骨の兄ちゃん
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