ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第158話 “天の御遣いの実力”

「“サンダーボルト=テンポ”‼」

 

「「「「「「「「「「ギャアアアァァァ!」」」」」」」」」」

 

「な、何だあの女⁉」

 

「妖術使いか⁉」

 

「どいてろ貴様ら!」

 

「張済(ちょうさい)将軍!」

 

「死ねェ!」

 

「!」

 

張済は一気に距離を詰め、槍でナミの体を貫く!

 

「仕留め……⁉」

 

しかし、次の瞬間ナミの姿が消える。

 

「残念、“蜃気楼(ミラージュ)=テンポ”!“サンダー=チャージ”…!」

 

「⁉」

 

「“風速計(スイングアーム)”‼」

 

「ぐぎゃあァァァ!」

 

「将軍!」

 

 

 

▽

 

 

 

「“必殺向日葵星(ひまわりぼし)”‼」

 

「「「「「「「「「「ぐあァ!」」」」」」」」」」

 

「どうしたァ⁉所詮は寄せ集めの集団か⁉」

 

ヒュン

 

「うおっ⁉」

 

突然飛んできた矢を、ウソップはギリギリで避ける。

 

「避けたか」

 

「!」

 

矢が飛んで来た方を見ると、離れた所に一人の男が弓を手に立っていた。

 

「我が名は胡赤児(こせきじ)!見ての通り弓使いだ!勝負しろ!」

 

「上等だ!」

 

胡赤児は弓に3本の矢をつがえて放ち、少し遅れてウソップもパチンコを撃つ!

 

「“必殺アトラス彗星”‼」

 

ウソップが放った4発の爆弾の内、3つは胡赤児の3本の矢を相殺し…

 

「ぐわァ!」

 

最後の一発は胡赤児の顔面に命中し、見事仕留めた。

 

「(おお!牽制なるかと思って撃ったが、まさか当たるとは!)よ、よし…!狙い通りだ!」

 

「おおー!さすが御遣い様!」

 

「すげー!」

 

 

 

▽

 

 

 

「どけェーっ!」

 

「うわァー⁉」

 

チョッパーは角強化(ホーンポイント)に変形し、敵の中を突き進んでいた。

 

「げっ⁉ちょ、チョッパー殿⁉」

 

「!お前、牛輔(ぎゅうほ)か⁉」

 

すると、かつて月達の下にいた時に見た顔に出会った。

 

「お前…!月の親族と婚姻関係にあるくせに裏切ったのか⁉」

 

「お、おれが欲しいのは権力者との良縁だ!あんな女どうでもいいんだよ!」

 

「お前…許さねェ!」

 

チョッパーは脚力強化(ウォークポイント)に変形し向かって行く!

 

「くたばれ化物!」

 

牛輔は金棒を振り回す!

 

「“毛皮強化(ガードポイント)”‼」

 

防御態勢を取り攻撃を受けるチョッパー。

 

「どうした⁉守ってばかりでは勝てんぞ⁉」

 

「“飛力強化(ジャンピングポイント)”‼」

 

「⁉」

 

牛輔が大きく金棒を振り上げた瞬間、チョッパーは変形し跳躍する!

一瞬の出来事にチョッパーを見失った牛輔は動きが止まり…

 

「“腕力強化(アームポイント)”…“刻蹄(こくてい)”…」

 

「っ⁉」

 

「“桜(ロゼオ)”‼」

 

「ぐごっ⁉」

 

背後に回っていたチョッパーの一撃をくらい倒れた。

 

 

 

▽

 

 

 

「“ツイスト”‼」

 

「ぐほォ⁉」

 

「ヨホホホホホ!」

 

「オラオラオラァ~!もっと手応えのある奴はいねェのかァ⁉」

 

「何だあの連中は⁉」

 

「反乱軍の主力らしいぜ」

 

10人程の部将がロビン、フランキー、ブルックの3人に目を付けた。

 

「てめェら随分暴れてくれたみてェじゃねェか⁉」

 

「何だお前らは?」

 

「おれは元袁紹配下の郭援(かくえん)」

 

「おれは元孫策軍の将嬀覧(きらん)。こいつらも同じ元孫策軍の辺洪(へんこう)、戴員(たいいん)だ」

 

「張楊配下の穆順(ぼくじゅん)」

 

「孔融配下の宗宝(そうほう)」

 

「名のある山賊の孫観(そんかん)。同僚の呉敦(ごとん)、尹礼(いんれい)、昌豨(しょうき)」

 

「どうやら敵の部将のようね」

 

「成程…ちょっとは退屈しのぎになりそうだ。まとめてかかって来いよ」

 

「何を…!」

 

「舐めるなァ!」

 

フランキーの挑発的なセリフに10人の部将達は怒り狂って襲い掛かる!

 

「「「「「「「「「「⁉︎」」」」」」」」」」

 

しかし、体に生えたロビンの腕によって僅かに隙が生じ、そこをフランキーとブルックが襲う!

 

「「「“究極(アルティメット)繚乱(フルール)三重奏(トリオ)”‼」」」

 

「「「「「「「「「「う゛あ゛ァ~~~!」」」」」」」」」」

 

2人の攻撃にやられた所に、更にロビンの関節技が重なった3人の合体技に、成すすべなくやられてしまった。

 

 

 

▽

 

 

 

「何だァ?味方の旗色が悪そうじゃねェか?」

 

「どいつもこいつも簡単にやられやがって…」

 

「何でこんな事になっている?」

 

「どうも天の御遣いとか言われてる奴らがいて、そいつらが相当強いらしい」

 

「天の御遣い?それはまた随分な呼び名だな…」

 

「じゃあどんな腕か見させて貰うか!」

 

「藏覇(ぞうは)様!郝萌(かくぼう)様!李鄒(りしゅう)様に李別(りべつ)様も!」

 

「李楽(りがく)将軍に王忠(おうちゅう)将軍!露昭(ろしょう)将軍も来て下さった!」

 

「黒山賊の孫軽(そんけい)に眭固(すいこ)!匈奴の於夫羅(おふら)殿まで!これは強いぞ!」

 

「敵の主将さえ潰せばそれで終わりだ!」

 

「おうよ!さっさと叩き潰して…」

 

「“艶美魔夜不眠(えんびまよねず)”…」

 

「“三級(トロワジェム)”…」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

「“鬼斬り”‼」

 

「“挽き肉(アッシ)”‼」

 

「「「「「「「「「「ギャアアアァァァ⁉」」」」」」」」」」

 

「「「「「「「「「「え~~~⁉あっさりやられたァ~~~⁉」」」」」」」」」」

 

 

 

▽

 

 

 

「あの藁の帽子の奴を止めろー!」

 

「あいつがきっと反乱軍の総大将だァー!」

 

「へェ!あいつがか!」

 

「あいつの首を取ればきっと今日一番の大手柄だぞ!」

 

「新しい朝廷で大将軍にして貰えるかもな!」

 

「ん⁉あいつ以前曹操の所にいた奴じゃねェか!」

 

「どんなに強くても丸腰の男一人だろ!」

 

「もう疲弊してろくに戦えない筈だ!」

 

「波才(はさい)頭領!」

 

「張曼成(ちょうまんせい)さんに于毒(うどく)の頭ァ!」

 

「郭図(かくと)将軍、淳于瓊(じゅんうけい)将軍!」

 

「氐の千万(せんばん)王!滎陽太守の徐栄様!李暹(りせん)将軍に朱霊(しゅれい)将軍!韓馥配下の潘鳳(はんほう)将軍も!」

 

「「「「「「「「「「その首をよこせェーーー!」」」」」」」」」」

 

10人の部将は一斉にルフィに襲い掛かる!

 

「“ゴムゴムの”ォ~…」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

「“銃乱打(ガトリング)”~〜〜‼」

 

「「「「「「「「「「ギャアァ~~~⁉」」」」」」」」」」

 

「「「「「「「「「「えェ~~~⁉」」」」」」」」」」

 

「将軍!お頭ァ!」

 

「嘘だろ⁉十対一なのに全員一瞬でやられっちまった!」

 

「な、何なんだあの男⁉」

 

「敵いっこねェ!陣を捨てて虎牢関に逃げろォ!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

虎牢関の屋上。

 

「李儒様!味方の旗色が悪ございます!」

 

「見ればわかる!」

 

「申し上げます!またしても敗報です!王匡様、喬瑁様は討死!袁遺様は捕えられ、劉岱、韓馥等は敵に降伏したとの事!おそらく他の者達も…!」

 

「各地の諸侯、五胡や南蛮まで駆り出して三十万を超える兵がおりながらなんて様だ!おい!すぐに連弩を放て!」

 

「よろしいのですか⁉あれでは味方にも当たってしまいますが…」

 

「構わん!とにかく敵を近づけるな!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「敵の主将はほぼ討ち取ったー!このまま虎牢関を落とせー!」

 

連合軍は虎牢関前の敵陣を破り、いよいよ虎牢関に迫りつつあった。

 

その時…

 

「うわァ⁉」

 

「ぎゃっ!」

 

「ぐあっ!」

 

虎牢関から矢が雨の様に飛んで来た!

 

「いかん!一旦下がれ!」

 

「身を隠せ!」

 

連合軍の将兵達は霹靂車や敵陣にあった天幕等の残骸、死体の山などに身を隠す。

 

「“二十輪咲き(ベインテフルール)”‼“金盞花(カンデュラ)”‼」

 

「“ホシ・シールド”‼」

 

ロビンとフランキーは防御態勢をとり、自ら盾になって背後の者達を守る。

 

「何であいつら味方いるのに矢を撃つんだ⁉バカなのか⁉」

 

「相当おれ達にビビってんだろうよ…!クソッ!このままじゃさすがに城門に近づけねェぞ…!」

 

ルフィの隣でもどかしそうにするサンジ。

 

「ウソップ!おれが飛ぶからアレ少し止めてくれ!」

 

「わかった!」

 

ルフィの指示で、ウソップはパチンコを構える。

 

「矢の飛び方から見てあの辺りか…⁉“必殺アゲハ流星”‼」

 

「「「「「ぐあァ⁉」」」」」

 

あえて連弩の本体ではなく、その間を狙う事で爆風により着弾点の両隣にある連弩を妨害する!

 

「よし!」

 

それにより矢が一瞬止まった隙を逃さず、ルフィは近くにある天幕の残骸に掴まり跳び上がる!

 

「“ゴムゴムの”…“ロケット”ォ‼」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「ん?おい、下から何か飛んで…」

 

「ふん!」

 

「「グヘェ⁉」」

 

跳び上がったルフィは、城壁にいた2人の敵兵を蹴り飛ばすと同時に着地する。

 

「これだな矢撃ってるの!全部ぶっ壊してやる!」

 

「敵兵だ!一人城壁に登って来たぞ!」

 

「叩き落せェ!」

 

「邪魔だァ!」

 

「ぐほォ!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「ルフィさん、城壁に着いたみたいですね…!」

 

「麦わらだけに任せる訳にはいかねェ!おれも行くぜ!」

 

そう言ってフランキーは両腕を上に掲げる。

 

「え⁉まさかアニキ空を飛ぶ絡繰りが仕込んであるのか⁉」

 

後ろにいた真桜は期待に目を輝かせる。

 

「“風来(クー・ド)”……“噴射(ブー)”〜〜〜‼︎」

 

「最低の飛び方や~~~!」

 

尻からの爆風で飛ぶフランキーに思わず悲鳴の様な声をあげる真桜。

 

「では私も加勢を!ロビンさん、足場をお願いします!」

 

「任せて。“脚場咲き(ピエルナフルール)”‼」

 

「ヨホホホホホ!」

 

ロビンが作った足場を使い、ブルックも登っていった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「また下から誰か登って来るぞ!」

 

「連弩だ!針鼠にしてやれェ!」

 

城壁にいた敵兵はフランキーとブルックに向けて大量の矢を放つ!

 

「刺さるかそんなモン!」

 

「私も!骨の間をすり抜けるばかりですね!」

 

しかし、二人には全く効かない。

 

「“ストロング・右(ライト)”‼」

 

フランキーはある程度上昇すると右腕を伸ばして城壁に掴まり…

 

「戻れ右腕!」

 

腕を戻す事で城壁を登り切る。

 

「おっしゃー!着いたぜー!」

 

「私も到着です!」

 

「さらに二人!城壁を登られた!」

 

「急いで討ち取れェ!」

 

「悪いが城壁は占領させて貰うぜ!」

 

「ぐほォ⁉」

 

「失礼します!」

 

「ぐあああっ!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「矢が止まったわ!」

 

「ルフィ達が上手くやったみたいね!」

 

「よし!この機を逃すな!我々も一気に城壁を登り、中から門を…!」

 

「いや必要ねェ!お前らは真っ直ぐ門へ迎え!おいコック!」

 

「おうよ!」

 

ゾロは思春の指示を取り消してサンジの足に飛び乗る。

 

「ゾロ殿⁉サンジ殿も一体何を⁉」

 

「“空軍(アルメ・ド・レール)”……“パワーシュート”ォ‼」

 

サンジはゾロを城門の方へ蹴り飛ばす!

 

「サンジ殿⁉」

 

「あれじゃあゾロが城壁に…」

 

星や翠達はその様子を見て慌てふためくが、ゾロは空中で剣を構え…

 

「“三刀流”……“大(だい)・文(もん)・字(じ)”‼」

 

ザン!

 

 

「「「「「「「「「「え~~~⁉城門斬った~~~⁉」」」」」」」」」」

 

 

大の字状に斬られた城門は崩れ落ち、ゾロはそのまま勢いに乗って虎牢関の中に飛び込んだ。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

「おし!門は開いた!行くぞ!」

 

「うん!」

 

「……!も、門が開いたぞー!」

 

「と、突撃だ突撃ー!」

 

あまりに衝撃的な光景に一瞬敵味方問わず呆然としてしまっていたが、サンジ達の声に我に返り、連合軍は虎牢関になだれ込んだ。

 

「…あんな事されたら籠城の意味がないじゃない…」

 

「わ、私はようやく鉄を斬れる様になったというのに…。な、なんと遠い…」

 

「いや、あんな事できる方がおかしいから…。気にする事ないわよ…」

 

「桂花が春姉ェ慰めるなんて珍しいっすねー…」

 

 

 

▽

 

 

 

「孫策様!虎牢関にはまだ十万以上の兵がおります!門が開いたとはいえ油断できませぬぞ!」

 

「わかってるわよ周瑜!さァ!何人でもかかって…!」

 

「「「「「「「「「「こ、降伏しま〜す…」」」」」」」」」」

 

「…は?」

 

「も、もう勘弁して下さい…」

 

「す、済みませんでした~…」

 

「ま、参りました~…」

 

「…完全に心が折れているな…」

 

「まァ…あんなもの見せられたら無理もないわよね…」

 

斬られた城門を見ながら呟く雪蓮だった。

 

 

 

▽

 

 

 

「兵器の破壊から城門の開放まで、ほとんどルフィ殿達だけでやってしまったな…」

 

虎牢関内に入った星が、後ろにある城門や霹靂車の残骸を見ながら呟く。

 

「実際、ルフィ達の活躍で撃退できた敵は三十万以上になるだろうしな…」

 

「あいつら…本当に九十万人分働きやがった…」

 

愛紗と翠もそう呟くのだった。

 

 

 

▽

 

 

 

「急げ!早くずらかるぞ!」

 

城門が破壊されたのを見て、李儒を始めとした虎牢関に残っていた将兵達は急いで脱走を図った。

 

「李儒…!」

 

「っ⁉りょ…呂布⁉」

 

しかし、その前に恋が立ちはだかった。

 

「裏切り者…!」

 

「りょ…呂布といえど敵は一人だ!一斉に掛かれ!」

 

「「「「「「「「「「お、おおーーーっ!」」」」」」」」」」

 

李儒の言葉に何人もの将兵達が一斉に襲い掛かる!

 

「…邪魔」

 

ドン!

 

「⁉」

 

しかし、次の瞬間全員がやられていた。

 

「ひっ…!」

 

「覚悟しろ…!」

 

「ギャアアアァァァ!」

 

 

 

いかに要害といえど、城壁が占領され城門が大きく開けられた状態では意味をなさなかった。

連合軍がなだれ込むと、弱腰になっていた朝廷の軍は逃げ出し、逃げ遅れた者は討ち取られるか降伏し、虎牢関は連合軍の手に落ちた。

 

朝から始まったこの戦は、虎牢関の制圧が終わる頃には完全に日が沈んでいた。

 

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

連合軍が虎牢関で朝廷軍と衝突していた頃、洛陽の王宮。

 

「左慈、于吉、ここにいたか」

 

「これは張譲殿」

 

「そろそろあなたを呼びに行こうかと思っていた所でしたよ」

 

バルコニーの様な場所で左慈と于吉が酒を飲んでいると、張譲がやって来た。

 

「そう言っている所を見ると、そろそろ郿塢城へ向かう様だな?」

 

「ああ。それについさっき我々の手の者から連絡が来たのだが、反乱軍が今虎牢関に攻め込んでおり、落ちるのは時間の問題だそうだ」

 

「何だと⁉」

 

「今この情報を知っているのは、我ら太平道の者以外ではあなただけです。他の十常侍達などが知る頃には、既に反乱軍は虎牢関を破って洛陽に迫っているでしょう」

 

「そうか。ではこんな宮殿、さっさと立ち去るとしよう」

 

「はっはっは!いよいよ古びたこの国が終わる時が来たようですな!」

 

「⁉」

 

不意に聞き覚えのない声が聞こえ、見ると左慈と于吉の後ろで一人の男が酒を飲んでいた。

 

「貴様、何者だ⁉」

 

「ああ、紹介がまだでしたね。この方は馬元義(ばげんぎ)といい、太平道の一味です」

 

「なんだ、お前達の仲間か」

 

「お初にお目に掛ります張譲殿。張譲殿も一杯いかがですか?」

 

「いただこう」

 

張譲は馬元義から杯を受け取り、酒を飲んだ。

 

「しかし、先程郿塢城を見てまいりましたが実に見事な造りですな!」

 

「そう思うか?」

 

「ええ!壁や梁、柱や天井にも芸術や彫刻を施し、金銀珠玉で装飾され、瓦や敷石にも金銀や大理石を惜しみなく使った建築物!

珍しい花や樹木を植え、珍獣を放し飼いにし、池には色鮮やかな鯉が泳ぐ庭園!

集められた黄金、白銀、宝剣、名鏡、犀(さい)の角に象牙に珊瑚!その他財宝!美酒や山海の珍味!選りすぐりの美女!

調度品なども金銀、宝玉、象牙でできており、全てが豪華絢爛!あそこで送る酒池肉林の生活はまさに最高の贅沢でしょうな!」

 

「そうだろうな!」

 

「天の国の兵器があり、兵糧も二十年分は蓄えられておりますから、戦となっても攻守ともに万全!まさに夢のような城です!」

 

「ああ、その通りだ!まァ兵糧や武器、金銀等はまだこの宮殿にも大分残っているのだがな。郿塢城の蔵に入り切らなかったのが残念だ」

 

「いやはや……もうすぐ私(・)が(・)あ(・)の(・)城(・)の(・)主(・)に(・)な(・)れ(・)る(・)のかと思うと嬉しくてたまりませんよ」

 

「……?貴様、何を言って―――ぐっ⁉」

 

馬元義の言葉に疑問を感じた瞬間、張譲は苦しそうに胸を押さえて膝をつく。

 

「『何を』って…真実を言っているだけですよ?私が郿塢城の主になると」

 

「……っ⁉」

 

張譲が顔を上げると、馬元義だけでなく左慈と于吉も怪しげな笑みを浮かべているのが目に入る。

 

「き…貴様ら…!裏切ったのか…⁉」

 

「悪いな張譲殿。実際に天下を獲るのが我ら太平道である以上、お飾りの皇帝は別に誰でも良かったのだが、こちらの馬元義殿が皇帝になりたいと言い出してな。

我々にとってもその方が都合が良いので、お前は用済みとして消す事になった」

 

「天の国から持ち込まれた兵器の中に、人体に組み込む形で使用するものがありましてね。

その兵器を組み込まれた人間は、私や左慈をしのぐ妖術使いになれるのですが、なにせ体をいじられるものですから命の危険が伴う為、誰もそれを使おうとしなかったのですよ。

そんな時に馬元義殿と出会い、この方は自らその兵器の為の人体改造に志願して下さったのですよ」

 

「そして改造は見事成功!私は太平道の頂点に君臨し、私自身が皇帝なりたいと言った所、太平道の幹部の皆さんは全員一致で了承してくれたのですよ!」

 

「な、何だと…⁉」

 

「まァ、貴様にとって霊帝や何進、董卓が暴政を行う為の道具であったのと同じだ」

 

「おかげで怨嗟の声が効率よく集まりましたし、我々の居城も完成しました。感謝しますよ」

 

「ぐ…!き、貴様ら…酒に何を混ぜた…⁉」

 

「お前に飲ませたのは鼠茗湯(ちゅうべっとう)。飲んだ物を鼠(ねずみ)に変える薬湯だ」

 

「その様子だと、すぐに鼠に変わりそうですね」

 

「な…ああァァ…」

 

左慈と于吉がそう言っている間にも、張譲の体はどんどん小さくなり、やがて完全にネズミになってしまった。

 

「まさか宮廷に潜む鼠臣(そしん)が、本当に鼠になってしまうとは!何とも滑稽な話だ!」

 

「そういえば、あなた以前朱儁に猫子丹を飲ませた事がありましたね?流石にそろそろ完全に猫になっているでしょうから、彼女に食べられない様気を付けて下さいね」

 

「チチチー!」

 

ネズミにされた張譲はどこかへ去っていった。

 

「さてと…では私は郿塢城に…」

 

「頼むぞ于吉。おれと馬元義殿は明日、連合軍の奴らに宣戦布告する」

 

「は~…ここまで来て身を隠さなければならないとは…」

 

馬元義は肩を落とす。

 

「今夜だけですよ。明日以降は郿塢城で贅沢を欲しいままにできますよ」

 

「そうですな。―――それにしても……か(・)つ(・)て(・)天(・)子(・)の(・)一(・)族(・)を(・)騙(・)っ(・)た(・)私が、まさか本当に天子になる日が来ようとは…!」

 

「いやはや、もうすぐ『陛下』とお呼びしなければなりませんな」

 

「お前も自分の事を『朕』と呼ぶようにするべきだな」

 

「「「はーっはっはっはっはっは!」」」

 




オマケ

虎牢関占領直後。

「よーし!こんなもんでいいだろ!予定通り洛陽の門を押さえる部隊を出して、残りの兵は休ませろ!」

「あのーそれならちょっといいですか?」

「うわァ⁉ぶ、ブルックさん⁉」

「ど、どうしたんですかその状態は?」

「いや~骨の間に矢が沢山入り込んでしまって…。引っこ抜くの手伝って貰えませんか?」

「あ、はい。いいですよ」

流琉はブルックの体にある矢を抜き始める。

「それにしても凄い状態ですね。一瞬立ち往生しているのかと思っちゃいましたよ」

「立ち往生って何ですか⁉ちゃんと生きてますよ私!……あ、死んでました」
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