ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第159話 “疑惑と確信”

虎牢関を制圧した翌朝、連合軍の本隊は洛陽に向かった。

 

僅かに洛陽に残っていた兵士達は、虎牢関の兵が敗れた知らせを聞いた途端全員戦意を喪失し、連合軍が到着するなり城門を開けて降伏した。

 

先に向かわせていた連合軍の手勢が洛陽の城門を全て押さえていた為、洛陽からの脱走者は誰もおらず、宮廷にいた者達は全員捕虜となった。

 

こうして、洛陽及びそこにある宮廷は連合軍の手に落ちた。

 

そしてその日の夕刻、宮廷にある評定の間に義勇軍の桃香、愛紗、鈴々、星、朱里、雛里、西涼軍の翠、鶸、蒼、益州軍の桔梗、曹操軍の華琳、桂花、柳琳、栄華、風、稟、孫策軍の雪蓮、蓮華、冥琳、雷火、穏、亞莎、包、董卓軍の月、詠、ねね、袁紹軍の麗羽、猪々子、斗詩、真直、袁術軍の美羽、七乃、北平軍の白蓮、徐州軍の燈、喜雨、荊州軍の黄祖、官軍の朱儁、ルフィ達“麦わらの一味”が集まり軍議を行う事になった。

 

「まず、捕虜となった者達の処罰についてですが、十常侍を始めとした悪政に加担していた佞臣達は全員打首という事でよろしいですわね?」

 

「…………」

 

打首という言葉を聞き、桃香は僅かに表情を曇らせる。

 

「劉備、辛いかもしれないけど、これは今後同じ様な事をする奴が現れない様、見せしめの意味もあるの」

 

「大丈夫です曹操さん、わかってますから…。黄巾の乱の時とは違う、あの人達は絶対に許しちゃいけない人達ですから…」

 

「ルフィ達もそれでいい?」

 

「お前らの国の事だ。お前らが決めるべきだ」

 

「では、全員異議なしという事で即刻首を刎ねます。虎牢関で捕虜とした敵将や悪政に加担せずとも黙認していた者達も、厳重に処罰しましょう」

 

ルフィの言葉を聞き、麗羽が宣言する。

 

「けど、これで悪い人達がいなくなってめでたしめでたしなのだ!」

 

「何言ってるの…。乱れた政治の見直しや民への奉仕、やらなきゃいけない事はまだまだ沢山あるわよ」

 

お気楽そうにする鈴々に雪蓮が半ば呆れ気味に言う。

 

「それに…少々厄介な問題がいくつかありますしね…」

 

真直が顎に手を添えて言う。

 

「問題とは?」

 

「まず董卓殿の事です…。洛陽の民の多くは、未だに悪政の元凶を董卓殿だと思い込んでおりまして、その首がない事には納得できない様なのです…」

 

「確かに…昨日までずっと憎んでいた諸悪の根源が、突然『実は濡れ衣だった』なんて言われても理解できないわよね…」

 

蓮華を始め、皆頭を悩ませる。

 

「ですが、董卓さんの件については既に処罰が決定しております。一度決まった事を簡単に変える様では示しがつきませんわ」

 

…と、麗羽。

 

「しかし…この民の不満を放置していては、わしらの信頼にも関わるぞ?」

 

…と、桔梗。

 

「……一つ、よろしいでしょうか?」

 

「言ってみなさい郭嘉」

 

「偽の首を用意するのはいかかでしょう?誰か悪政に加担しており、あまり民に顔が知られていない者を董卓殿という事にして首を晒せば…」

 

「残念だけど、それは無理だと思う…」

 

詠が遮る。

 

「張譲の奴…ボク達が洛陽に来た直後に、董卓様を馬車に乗せて街中に見せて回っていたから、月の顔はほとんどの住民に知られていると思う…」

 

「今思えば、ねね達が来た事で悪政が始まったという事を、より印象付ける為だったのでしょうね…」

 

「そうですか…」

 

詠とねねの言葉に皆が肩を落としたその時…

 

「……待てよ…!董卓の首があればいいんだよな?」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

何か思いついたのか、ウソップが声をあげた。

 

 

 

 

 

 

「お待たせー!」

 

その後ウソップは部屋を出て、しばらくすると何かの包みを両手に抱えて持って来た。

 

ウソップが卓上にそれを乗せ、包みを広げると…

 

「それって…!」

 

「成程!」

 

中から出て来たのは、先日作った絡繰り董卓人形の頭だった。

ケチャップ星で血糊を着け、死人に見える様に色も塗り直されている。

 

「見ての通り暴君董卓は首を刎ねられた。これで問題はないだろ?」

 

「確かに…この首を晒せば誤魔化せそうね」

 

「やるなーウソップ!」

 

「当然よ!人を騙すのはおれの得意分野だぜ!」

 

「では董卓殿の件はこれで良いとして…。二つ目ですが十常侍の張譲と趙忠、そして何太后に逃げられてしまった様なのです…。それも霊帝陛下を連れ去られた状態で…」

 

「よりによって一番の悪党に逃げられるとはね…」

 

桂花は顔をしかめる。

 

「張譲達が天子様を利用してどこかの勢力に取り入ると厄介ね…。すぐに人相書を手配しましょう」

 

華琳の言葉に全員頷く。

 

「はい。それで三つ目…これは問題というより腑に落ちない点なのですが、虎牢関に布陣していた筈の将兵や軍師の一部が行方不明になっているそうです。それも捕虜の話しによれば、戦が始まる前に…」

 

「確かに気にはなっていたわ…。旗印や配下の宗宝の姿はあったのに孔融の姿がなかったし、張繡の腹心である胡車児もいなかったわ」

 

「私も蔡瑁本人がいないのに、その一族の者達だけいるのが少々気になってはいた…」

 

「李粛の姿もなかったのです…」

 

「わしもじゃ…。李厳らの姿があったから、てっきり彭義らもおるかと思ったのじゃが…」

 

華琳、黄祖、ねね、桔梗が言う。

 

「単純に負け戦の予感がしたから逃げたんじゃないのか?」

 

…と、猪々子。

 

「そうだといいんですけど~…」

 

「けど、これについてはこれ以上考えてもわからないかとー」

 

穏と風の言葉に、一同はこの話は一旦やめる事にするのだった。

 

「それからもう一つ…これも問題とは少し違うのですが、張譲が作らせていた郿塢城が跡形もなく消えていたそうなのです」

 

「城が消えた⁉」

 

真直の言葉に皆驚く。

 

「それは本当なの⁉」

 

「洛陽の周辺の様子は我々も常に斥候を放って探っておりましたが、確かについ先日まで郿塢城が確認できた地点が、今朝突然何もなくなっていたそうです」

 

雪蓮の言葉に冥琳が報告する。

 

「城が消えるだなんて、そんな事が…」

 

白蓮が口を開いた時だった。

 

「申し上げます!」

 

思春が部屋に入って来た。

 

「何事?」

 

「何進将軍が訪ねてまいりました!それも霊帝陛下と劉協様!十常侍の趙忠及び何太后!中郎将の皇甫嵩殿と盧植殿も一緒です!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「ルフィ~!」

 

「久し振り~!」

 

「白湯!空丹!元気だったか~⁉」

 

空丹、白湯、傾、瑞姫、黄、楼杏、風鈴は評定の間に通され、部屋に入って来るなり空丹と白湯はルフィに抱き着いた。

 

(ルフィ〜…!あんにゃろ~…!あんなカワイコさん達に抱き着かれやがって~…!)

 

(く、空丹様に抱き着かれるなんて…!わ、私でもされた事がないのに…!)

 

サンジと黄はルフィを恨めしそうに見る。

 

「それにしても…どうして何進将軍が天子様達と一緒に?それに何太后様はともかく十常侍の趙忠まで…」

 

喜雨が訊ねる。

 

「うむ、話せば長くなるのだが…。私が主上様から密詔を受け取った事は、ここにいる全員知っているという事で良いな?」

 

「ええ。それで董卓軍を張譲から引き離す為に袁紹に文を送ったって…」

 

「ああ。実はそれとほぼ同時に、私は劉協様を誅殺する様に命令を受けていたんだ。賈駆よ、あれは張譲の命令だろ?」

 

「え、ええ…そうよ…。それで…海難事故に見せかけて殺す為に、劉協様を邪馬台国へ向かわせるよう勅命を出せって…」

 

「そうだ。それで護衛として皇甫嵩と盧植を同行させ、劉協様を洛陽から立たせたのだ。

そうすれば劉協様を張譲から遠ざける事ができるし、二人が着いていれば張譲が他に刺客を放っても大丈夫だろうと踏んでな。

さらに二人が離れる事で、洛陽の戦力を大幅に下げる狙いもあったのだ」

 

「中々の策略ですね…!」

 

包が驚いた様に言う。

 

「…で、お主達が汜水関を攻めている間に、私は商人に扮して洛陽に入り込み、門衛に賄賂を渡して宮中に囚われていた瑞姫、趙忠と連絡を取っていたのだ」

 

「ちょっと待て!何太后殿と趙忠は張譲達の仲間ではなかったのか⁉」

 

雷火が驚き訊ねる。

 

「張譲の奴、表舞台から姿を消した後、私にずっと淫らな行為を求めてきて、それを断ったら毎日郿塢城の工事を手伝わせて奴隷みたいに扱い始めたの!

しんどかったけど触られるのも嫌だし、何とか逃げ出そうと考えていたのよ。

それで張譲からある程度信頼されていて、空丹様を愛でる事にしか興味のない趙忠と手を組んだの」

 

「はい。張譲は空丹様の誅殺さえ考えておりましたから、私も完全に張譲とは袂を分かっておりました。

そして汜水関が抜かれた事で動揺していた張譲に『反董卓連合とは無関係の緊急の案件がある』と伝えた所、案の定私に印綬を渡しましたので、私が何進将軍を宮中に入れました」

 

「なるほどー印綬を持っているのであれば、趙忠殿の言葉は張譲の言葉と同じ。趙忠殿の独断で何でも決定できますねー」

 

風が納得したように言う。

 

「そして宮中に入った後、天子様達を連れて前々から聞いていた抜け穴の古井戸を使い脱出したのだ。途中、張譲の手の者に気付かれてしまったが、罠を作動させて事なきを得た」

 

「罠とは?」

 

「あの抜け穴は途中に石造りの扉があって、どちら側からも押して開ける様に作られているのだが、宮中に向かって押し開けると、抜け穴全体が崩れて侵入者を生き埋めにする仕掛けになっているのだ」

 

「じゃあ、私達が宮殿に潜入していた時に抜け穴から脱出したのって、あんた達だったのね!」

 

「それで私達が出ようとした時に穴が埋まっていたと…」

 

「ロビン殿の言う通り、反対側から開けて正解でしたね…」

 

ナミ達が気付く。

 

「そして、皇甫嵩と盧植の軍と合流してここに来たと…」

 

「その通りだ。…で、張譲の奴はどうなった?」

 

「それが…」

 

 

 

 

 

 

「逃げられた⁉それに郿塢城が消えただと⁉」

 

「はい…。信じられないとは思いますが…」

 

「張譲が逃げ出すだけならともかく、城が消えるなんて…。どうやったらそんな事が起こるのよ⁉」

 

「それを考えようとしていた所に、あんた達がやって来たのよ!」

 

話しを聞いて強めの口調で言い寄る傾と瑞姫に、詠が同じ強めの口調で言い返す。

 

「何太后殿は郿塢城の工事現場に出入りしていた事があるのですよね?何か建設中に気になった事はありませんでしたか?」

 

柳琳が訊ねる。

 

「気になった事って…。とにかく豪華に作られていた事と他には……そういえば変な形に切り出された岩や石をやたら沢山運んで、それを妙な形に組み上げていたわね…」

 

「変な形?」

 

「ええ。詳しく知りたいなら、手伝いをやらされていた時に貰った設計図が何枚か私の部屋にある筈だから、持って来ましょうか?」

 

 

 

 

 

 

「これよ」

 

数分後、瑞姫は布に描かれた設計図を数枚持って来て卓上に並べた。

 

「ちょっと見せてくれ」

 

フランキーがそれを手に取り見てみる。

 

「……成程、城が消えたカラクリがわかったぞ」

 

「本当⁉」

 

「ああ。なんか書く物を持って来てくれるか?」

 

 

 

 

 

 

少しして、巨大な布と筆、硯、墨が用意され、フランキーは絵図を描きながら説明を始めた。

 

「この設計図によると、まず郿塢城は城壁や楼閣などに至るまで、全ての建築物が巨大な台座の上に作られている。

台座は四方が緩やかな斜面になっていて、人や馬車の出入りには支障がない様になっている。そしてこの台座の下にキャタピラが仕込まれてたんだ」

 

「きゃたぴら?」

 

「キャタピラっつうのは車輪をいくつも縦に連続で並べた物を、小さい板を何枚もつなげて帯状にした物でくるんだ物だ。

中の車輪が回転すると板の方も回転し、それ自体が車輪代わりになって動き出す。

普通の車輪より地面に接する面積が大きいから安定し、多少のぬかるみや砂利道も問題なく走行できるんだ」

 

「まさか、それで城を移動させたというのですか⁉しかし、城の中庭には草木が植えられ、池なども造られていた筈…!」

 

「郿塢城の下にある台座は、建物がある部分以外は盆の様に大きく凹んでいる。そこに土を大量に入れたんだ。あと、所々土を多めに盛って段や岡を造ってある」

 

「成程…」

 

「じゃあ、張譲達はそれで郿塢城ごと逃げ出したのですね…」

 

「おそらくな。ただ、わからねェのが…」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

「奴らが何でキャタピラなんて技術を知っていたのか?そしてそれを動かす為の燃料に何を使っているのかという事だが…」

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

フランキーのその言葉に、義勇軍と曹操軍と麦わらの一味、そして孫策軍の内、黄巾党本体の討伐に出向いていた者達の何人かが同じ事を考える。

 

「あなた達!宮廷内か郿塢城の建設現場で白装束を着た者達を見なかった⁉」

 

華琳は立ち上がり、身を乗り出して訊ねる。

 

「そ、そういえば郿塢城で石を運んでいた時に見た様な気が…」

 

「ボク達も…確か董卓様が張譲に捕まった時、張譲の護衛をしていた二人がそんな恰好をしていたけど…」

 

「!やっぱり…!」

 

「失礼します」

 

流琉が部屋に入って来た。

 

「何事か⁉」

 

「華佗殿がお目通りを願っております」

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

瑞姫と詠の言葉、そして華佗が訪ねて来たという知らせを聞き、華琳や蓮華、桃香達は今自分達が出した答えが間違っていない事を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、洛陽の西門の外。

城壁のすぐ近くに張三姉妹の移動小屋が停まっていた。

 

「え~⁉今日の宴会の公演、延期になっちゃったの~⁉」

 

「せっかくの大舞台張り切っていたのに~⁉」

 

「どういう事陳琳さん?何かったの?」

 

天和と地和が大声を上げ、人和は話をしに来た陳琳に訊ねる。

 

「なんでもまだ解決していない案件が多過ぎて、宴どころじゃないらしく…。下手したらもっと大事になるかもしれないって曹操様が…」

 

「もっと大事に?」

 

「あれ?」

 

「どうしたの姉さん?」

 

「あれ?何だろう?」

 

「「「?」」」

 

3人が天和の指した方を見ると、何百人もの人影らしきものがこちらへ向かって来るのが見えた。

 

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