ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
「何ですと⁉相手は人間⁉」
「うん。バケモノみたいな強さだったけど、バケモノのふりをしているだけで、アレは間違いなく人間だった」
翌朝、チョッパーは庄屋様とトントンに、昨晩の一部始終を話した。
「それより、本当にごめんな…。結局、食べ物盗られちゃって…」
「いえいえ、チョッパーさんが無事で何よりですよ!」
「あのチョッパーさん」
「何だトントン?」
「その化物…の振りをしていた人がいる場所って、わからないでしょうか?」
▽
その後、チョッパーとトントンは再びお堂を訪れた。
「…間違いないな。足跡に荷車の後、匂いも残っている。アイツはこの先にいる」
犯人の痕跡を見つけた2人は、追跡することにした。
「でもトントン、本当に一緒に来るのか?危ねェぞ?」
「相手が人間なのなら、こんな事をするのにはきっと理由がある筈です。それなら、話し合いで解決できるかもしれませんから」
「そうか…あっ!」
そんなことを言いながら2人がしばらく歩くと、小川の近くにある洞窟の入り口を見つけた。
入り口の前には、焚火の跡の様がある。
「あそこが犯人の住処でしょうか?」
「ああ、たぶん…!」
「どうしました?」
「いや…洞窟の中から声がたくさん聞こえて…」
「声?」
チョッパーに言われて耳を澄ましてみるが、何も聞こえない。
「…………」
「「!」」
トントンが不思議に思っていると背後に何者かが現れた。
2人が振り向くと1人の女が立っていた。
ボーっとしたような顔つきで、赤い髪、頭頂から触角のように2本の毛が伸びており、露出した腰や肩に
手に持った
「この匂い…!お前…昨日、食べ物を持って行った奴だな?」
「…………(コクリ)」
女は頷くと武器を構える。
「トントンは下がってろ!」
「は、はい!」
その様子を見たチョッパーはトントンを避難させ、自分は戦闘時に使用する薬、“ランブルボール”を取り出し飲み込む。
「ランブル!」
「…っ!」
チョッパーが薬を飲むのとほぼ同時に、女は走り出し画戟を振り下ろす!
「“
「⁉」
急いで変身したチョッパーは強化された跳躍力でジャンプし、間一髪で攻撃を躱す。
「ハァッ!」
しかし、女もすぐに同じ高さまで飛び上がる!
「なっ⁉」
「っ!」
「“
振り下ろされた一撃を、チョッパーは人型に変身して体重を重くする事で、落下して躱す!
「“
先に着地したチョッパーは腕力を強化し、攻撃態勢をとる!
「(空中なら避けられないハズ!)“
「ぐっ!」
しかし、女は画戟を両手で持ち攻撃を防ぐ!
「ハァッ!」
そして、着地と同時にチョッパーに突っ込み、画戟で薙ぎ払う!
「“
「⁉」
分厚い毛皮に覆われ毬の様になったチョッパーの身体は、攻撃を受け吹っ飛ばされるが、ダメージはほとんど受けなかった。
「お前…何?」
「本物の…バケモノだよ…!」
両者は距離を取り、しばらく睨み合う。
(コイツ…もしかしたら、おれが戦った
相手の強さに焦り始めるチョッパーだったが、実は女の方も内心焦り始めていた。
(コイツ…強い…!こんなの初めて…!攻撃、くらうとまずい…!)
チョッパーの攻撃を受け止めた時の威力。
一対一の戦いで、ここまで手こずるのは初めてだった事。
さらに相手が変身し、どの様な攻撃をしてくるかわからないことも厄介だった。
「(このまま睨み合っていても、ランブルボールの効果が切れるだけだ!)“
意を決したチョッパーは、獣型に変身し向かって行く!
「“
そのまま角を巨大化させて突っ込む!
「―――ぐっ!」
女は再び画戟で攻撃を受け止める!
「ぐっ…うゥ……!」
「くっ……!」
そのまま押し合い…
「…っ!……ああっ!」
「うおっ!?」
やがて女はチョッパーを力任せに放り投げる!
「うああっ!」
「!“
そのまま次々と繰り出される攻撃を、チョッパー獣人型に変形して何と躱す!
チョッパーが躱した攻撃は後ろの大木に当たり、木を切り倒した。
その時だった。
「ワン!」
「「「⁉︎」」」
近くの茂みから、首に赤い布を巻いたウェルシュコーギーらしき子犬が飛び出してきた。
そして切り倒された大木が、子犬に向かって倒れていく!
「危ない!」
とっさにトントンが子犬をかばい抱きしめる!
「セキト!」
「ヤベェ!」
女が叫んだのと同時に、チョッパーも急いで飛び出し―――
「“
大木を吹き飛ばした。
「トントン大丈夫か⁉」
「う、うん…」
「そっちの子犬は⁉」
「大丈夫だよ」
トントンの腕に抱かれた子犬は楽しそうに尻尾を振り、トントンの顔を舐める。
「あはは、くすぐったい♪」
「…よかった」
チョッパーが安心すると、女の方も武器を下ろす。
「お前ら良い奴…良い奴とは戦わない…」
それの言葉を聞いてチョッパーも、人獣型に戻る。
「あの…あなたお名前は?」
トントンが女に問いかけた。
「“
「呂布さんは、近くの村に時々食べ物を持って来させるように、催促していたんですね?」
「…………(コクリ)」
「どうしてそんな事を?」
「餌のため…」
「餌?」
「もしかして、こいつや
「…………(コクリ)」
呂布が頷き指笛を吹くと、洞窟の中から大小、種類も様々な犬が大量に出てきた。
「すごい数ですね…」
「聞こえてたのは、こいつらの声だったんだな…」
「みんな怪我したり、捨てられたりしていた…。
“
だから放っておけなかった…」
「そうか…」
親に捨てられる。
里親に拾われる。
それはチョッパー自身も経験したことがあった。
その為、チョッパーも呂布の気持ちがとてもよくわかった。
「ちゃんと働いて稼ごうともしたけど…
1人の客が店に入ると、制服に身を包んだ無表情の呂布が立っている。
『…………』
『…えっと、あの…』
『…いらっしゃいませ』
少しの沈黙の後、無表情のまま、感情がこもってない挨拶をした。
▽
『え~っと、おれ
『おれも同じの。炒飯は大盛で』
『担々麺、あと春巻き』
『白飯と
『かしこまりました』
注文を受け、呂布は厨房にオーダーを報告する。
『
『『『『オイッ!』』』』
客のツッコミが炸裂した。
▽
『お待たせしまし…』
つるっ!
ガッシャーン!
▽
『お茶お注ぎしま…』
コケッ!
ドガッシャーン!
…上手く行かなかった…」
「そっか、大変だったんだなお前…」
「悪い事だとは思った…でも、他に方法が思いつかなかった…」
「う~ん、確かに…どうすればいいかな?」
「あの、それでしたら…」
「掛かれェーーーっ!」
「「「「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」」」」」
「「「⁉」」」
トントンが何か言おうとした瞬間、何者かの号令とともに武装した兵士が現れチョッパーを取り囲んだ。
「え⁉えっ⁉」
「
「え、“
号令をかけたと思われる人物、緑の髪で眼鏡をかけた女性が、トントンに駆け寄ってきた。
2人は互いを、真名と思われる名前で呼び合う。
詠と呼ばれた女性は、トントンの問いに答えずにチョッパーを睨みつける。
「あんたね!最近、この辺りの村を襲っている化物ってのは!」
「え、詠ちゃん違うの!その人は…」
「ホント気味が悪い生物ね…!どっから迷い込んだのか知らないけど、ボク達の領土を荒らしたうえ、月まで危険な目に遭わせて、タダじゃおかな…」
「止めなさい‼
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
突然、トントンの怒鳴り声が響き渡った。
それまでの振舞からは、想像もできない声だった為、怒られた詠本人は勿論、チョッパーや呂布、兵士達までも怖気ついている。
「その方は化物から村を守ろうとした英雄であり、私の命の恩人でもあります!無礼なまねは許しません!今すぐ武器を下げさせなさい!これは命令です!」
「は、はい!ぶ、武器を下ろせ!」
「「「「「「「「「「は、はい!」」」」」」」」」」
兵士達が武器を下ろすのを見て、トントンは安心し息をつく。
「トントン…お前、もしかして偉い奴なのか?」
チョッパーが訊ねた。
「この方は、ここ涼州
トントンに代わって詠が答えた。
「ええっ⁉太守⁉」
▽
チョッパーと呂布とその飼い犬達、そして村の庄屋は、トントンこと董卓の宮殿に呼ばれ、謁見の間で待機していた。
「皆さん、お待たせしました」
「わあ…」
壇上に現れた正装に着替えた董卓の姿に、チョッパーは思わず感嘆の声を漏らす。
董卓の左右にはそれぞれ、賈駆と華雄が控えている。
そして董卓は、庄屋に事件の真相を説明した。
「そういう事だったのですか…」
「確かに、呂布さんのした事は許される事ではありません。
しかしそれは傷つき、捨てられた犬達を助ける為にやった事。
門前の岩もすぐに片付けさせますし、できる限りの償いもさせます。
盗られた食料の方は私達で弁償しますので、どうか穏便に済ませていただけないでしょうか?」
「いえ、実は…」
「?」
「以前、私達の村をはじめ、その周辺の村々で増えすぎた猟犬を、大量に山に捨てた事がありまして…。おそらくこの犬達は…」
「成程、身から出た錆だった所もあるという訳か…」
「村人達には、私の方から伝えておきます。既に本人からも謝罪して貰いましたし、私達の方からはもう何も申しません」
「わかりました。ところで賈駆!」
「は、はい!」
董卓に呼びつけられ、賈駆は身体を強張らせる。
「役所では、化物による被害の訴えを取り合わなかったと聞きましたが?」
「え、ええと…」
「董卓様、それはもう済んだことです。それに今回の件は、我々の方にも非があった訳ですし…」
「いいえ、そういう訳にはいきせん。民からの訴えを疎かにして、政を行うなどあってはなりません」
「わかりました。二度とそのような事がないよう、全ての役人に徹底的に言い聞かせておきます!」
「いいでしょう。それから…!」
「は、はい!まだ何か⁉」
「あなた…先程チョッパーさんに武器を向けた事を、まだ詫びていないと思うのですが?」
「!」
董卓に言われ、賈駆は慌ててチョッパーに頭を下げた。
「さ、先ほどはとんだご無礼を致しました…。主の恩人に武器を向けてしまうとは…。誠にに申し訳ありませんでした」
「チョッパーさん、私からも詫びを申し上げます。私の部下が失礼を致しました」
そう言って董卓も頭を下げる。
「いいよ。よくある事だし」
「寛大な心遣い、感謝します。所でチョッパーさん…」
「何だ?」
「庄屋さんから聞いたのですが、チョッパーさんは逸れた仲間を探しているそうですね」
「うん。どこにいるのかは、全然わからないんだけど…」
「それで…もし宜しければお仲間が見つかるまで、私達の所に滞在して頂けないでしょうか?」
「ちょ、月?」
「実はこの所我が領内では、病人や怪我人が絶えなくて、一人でも多くのお医者様を必要としているのです。
チョッパーさんのお仲間の行方は、私達の方でも調べます。
ですから、お仲間が見つかるまでの間で構いませんので、私達の所で医者として働いて頂けないでしょうか?」
「え?医者?この喋る狸が?」
「トナカイだ!」
(化物扱いは良くても、狸扱いは嫌なのか?)
不思議に思う華雄だった。
「どうでしょうか?」
「もちろんいいぞ!村の患者も最後まで面倒診たかったし、行く当てもないから、おれからお願いしたいぐらいだよ。
それに医者として、病人や怪我人がいるのなら治療してやりたいからな!」
「ありがとうございます!―――それから呂布さん」
「?」
「もし宜しければ、私達の所で武官として働いて頂けないでしょうか?犬達の世話も、私達でお手伝いしますので」
「いいの?」
「ちょ、ちょっと月!?何言ってるの⁉」
「詠ちゃん、『このところ警備の人手が足りなくなって、街の治安が悪化してる』って言ってたでしょ。
呂布さんの武術の腕は凄いし、あの犬達を躾ければ街の警備の手助けになると思うの」
「そ、そりゃちゃんと躾ける事ができれば、警備の役には立つでしょうけど…ちゃんと躾けられるの?」
「それなら大丈夫だと思うぞ」
「「?」」
董卓に代わって、チョッパーが答えた。
「こいつらみんな『自分達の面倒を見てくれるなら、一生懸命働く』って言ってるぞ」
「「「「「「「「「「ワン!」」」」」」」」」」
「…チョッパーさん、そういえば先程も『声が聞こえる』と言ってましたが…。もしかして、その子達の言葉がわかるのですか?」
「ああ。おれは元々動物だから、大抵の動物とは話せるんだ」
「そんな事もできるなんて…!チョッパーさんって本当に凄いんですね!」
「う、うるせーな!ホメられたって、嬉しくなんかねーぞ!コノヤローが!」
…と、チョッパーは口ではそう言うが、顔は思いっきりにやけて小踊りまでしている。
「嬉しそうだな…」
「あんた…嘘つくの下手ね…」
「可愛い…」
チョッパーに見惚れる呂布。
「詠ちゃん、チョッパーさんもこう言ってるし、大丈夫でしょ?」
「で、でも…」
「駄目?」
目を潤ませ、上目遣いで懇願する董卓。
「ううっ…」
「詠ちゃん…お願い…」
「…わ、わかったわよ……」
「ありがとう!詠ちゃん大好き!」
そう言って満面の笑顔で、賈駆に抱き着く董卓。
ある意味タチの悪い、卑劣な君主かもしれない。
「い、言っとくけど!こんなお願い聴くのは、今回だけだからね!」
そっぽを向き、顔をやや赤らめてそう言う賈駆。
どうやら彼女は、所謂ツンデレのようである。
がばっ
…と、そこへさらに呂布が抱き着いてきた。
「え⁉ちょ、アンタまで何⁉」
「多分、感謝の気持ちを表してるんだと思うぞ」
チョッパーの言葉に頷く呂布。
「だったら口で言いなさいよ!抱き着くな!懐くな~!」
「では、これから宜しくお願いしますね。チョッパーさん。呂布さん」
「“恋”でいい」
「真名で呼んで良いのですか?」
「一緒に暮らすなら、家族。…だから、良い」
「わかりました。よろしくお願いします。“恋”さん」
「―――とりあえず、離れろォ~~~!」
こうして、チョッパーは“董卓仲穎”こと“月”の下で、“賈駆文和”こと“詠”、“華雄”、“呂布奉先”こと“恋”と共に、働く事になったのだった。
チョッパーVS恋
流石にチョッパーが恋に勝つのは無理でしたが、かなり互角に戦いました。
次回から、少しオリジナルの話に入ります。