ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第16話 “化物vs.化物”

「何ですと⁉相手は人間⁉」

 

「うん。バケモノみたいな強さだったけど、バケモノのふりをしているだけで、アレは間違いなく人間だった」

 

翌朝、チョッパーは庄屋様とトントンに、昨晩の一部始終を話した。

 

「それより、本当にごめんな…。結局、食べ物盗られちゃって…」

 

「いえいえ、チョッパーさんが無事で何よりですよ!」

 

「あのチョッパーさん」

 

「何だトントン?」

 

「その化物…の振りをしていた人がいる場所って、わからないでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、チョッパーとトントンは再びお堂を訪れた。

 

「…間違いないな。足跡に荷車の後、匂いも残っている。アイツはこの先にいる」

 

犯人の痕跡を見つけた2人は、追跡することにした。

 

「でもトントン、本当に一緒に来るのか?危ねェぞ?」

 

「相手が人間なのなら、こんな事をするのにはきっと理由がある筈です。それなら、話し合いで解決できるかもしれませんから」

 

「そうか…あっ!」

 

そんなことを言いながら2人がしばらく歩くと、小川の近くにある洞窟の入り口を見つけた。

入り口の前には、焚火の跡の様がある。

 

「あそこが犯人の住処でしょうか?」

 

「ああ、たぶん…!」

 

「どうしました?」

 

「いや…洞窟の中から声がたくさん聞こえて…」

 

「声?」

 

チョッパーに言われて耳を澄ましてみるが、何も聞こえない。

 

「…………」

 

「「!」」

 

トントンが不思議に思っていると背後に何者かが現れた。

2人が振り向くと1人の女が立っていた。

 

ボーっとしたような顔つきで、赤い髪、頭頂から触角のように2本の毛が伸びており、露出した腰や肩に刺青(いれずみ)のがある。

手に持った方天画戟(ほうてんがげき)の石突には、犬のストラップが付いている。

 

「この匂い…!お前…昨日、食べ物を持って行った奴だな?」

 

「…………(コクリ)」

 

女は頷くと武器を構える。

 

「トントンは下がってろ!」

 

「は、はい!」

 

その様子を見たチョッパーはトントンを避難させ、自分は戦闘時に使用する薬、“ランブルボール”を取り出し飲み込む。

 

「ランブル!」

 

「…っ!」

 

チョッパーが薬を飲むのとほぼ同時に、女は走り出し画戟を振り下ろす!

 

「“飛力強化(ジャンピングポイント)”!」

 

「⁉」

 

急いで変身したチョッパーは強化された跳躍力でジャンプし、間一髪で攻撃を躱す。

 

「ハァッ!」

 

しかし、女もすぐに同じ高さまで飛び上がる!

 

「なっ⁉」

 

「っ!」

 

「“重量強化(ヘビーポイント)”!」

 

振り下ろされた一撃を、チョッパーは人型に変身して体重を重くする事で、落下して躱す!

 

「“腕力強化(アームポイント)”!」

 

先に着地したチョッパーは腕力を強化し、攻撃態勢をとる!

 

「(空中なら避けられないハズ!)“刻蹄(こくてい)”……“(ロゼオ)”‼」

 

「ぐっ!」

 

しかし、女は画戟を両手で持ち攻撃を防ぐ!

 

「ハァッ!」

 

そして、着地と同時にチョッパーに突っ込み、画戟で薙ぎ払う!

 

「“毛皮強化(ガードポイント)”!」

 

「⁉」

 

分厚い毛皮に覆われ毬の様になったチョッパーの身体は、攻撃を受け吹っ飛ばされるが、ダメージはほとんど受けなかった。

 

「お前…何?」

 

「本物の…バケモノだよ…!」

 

両者は距離を取り、しばらく睨み合う。

 

(コイツ…もしかしたら、おれが戦ったCP9(シーピーナイン)と同じくらい強いかもしれねェ…!マズイな…こんな所で暴走するわけにはいかねェし…)

 

相手の強さに焦り始めるチョッパーだったが、実は女の方も内心焦り始めていた。

 

(コイツ…強い…!こんなの初めて…!攻撃、くらうとまずい…!)

 

チョッパーの攻撃を受け止めた時の威力。

一対一の戦いで、ここまで手こずるのは初めてだった事。

さらに相手が変身し、どの様な攻撃をしてくるかわからないことも厄介だった。

 

「(このまま睨み合っていても、ランブルボールの効果が切れるだけだ!)“脚力強化(ウォークポイント)”!」

 

意を決したチョッパーは、獣型に変身し向かって行く!

 

「“角強化(ホーンポイント)”!」

 

そのまま角を巨大化させて突っ込む!

 

「―――ぐっ!」

 

女は再び画戟で攻撃を受け止める!

 

「ぐっ…うゥ……!」

 

「くっ……!」

 

そのまま押し合い…

 

「…っ!……ああっ!」

 

「うおっ!?」

 

やがて女はチョッパーを力任せに放り投げる!

 

「うああっ!」

 

「!“頭脳強化(ブレーンポイント)”!」

 

そのまま次々と繰り出される攻撃を、チョッパー獣人型に変形して何と躱す!

チョッパーが躱した攻撃は後ろの大木に当たり、木を切り倒した。

 

その時だった。

 

「ワン!」

 

「「「⁉︎」」」

 

近くの茂みから、首に赤い布を巻いたウェルシュコーギーらしき子犬が飛び出してきた。

 

そして切り倒された大木が、子犬に向かって倒れていく!

 

「危ない!」

 

とっさにトントンが子犬をかばい抱きしめる!

 

「セキト!」

 

「ヤベェ!」

 

女が叫んだのと同時に、チョッパーも急いで飛び出し―――

 

「“腕力強化(アームポイント)”!“刻蹄(こくてい)”……“十字架(クロス)”‼」

 

大木を吹き飛ばした。

 

「トントン大丈夫か⁉」

 

「う、うん…」

 

「そっちの子犬は⁉」

 

「大丈夫だよ」

 

トントンの腕に抱かれた子犬は楽しそうに尻尾を振り、トントンの顔を舐める。

 

「あはは、くすぐったい♪」

 

「…よかった」

 

チョッパーが安心すると、女の方も武器を下ろす。

 

「お前ら良い奴…良い奴とは戦わない…」

 

それの言葉を聞いてチョッパーも、人獣型に戻る。

 

「あの…あなたお名前は?」

 

トントンが女に問いかけた。

 

「“呂布(りょふ)”…“奉先(ほうせん)”」

 

「呂布さんは、近くの村に時々食べ物を持って来させるように、催促していたんですね?」

 

「…………(コクリ)」

 

「どうしてそんな事を?」

 

「餌のため…」

 

「餌?」

 

「もしかして、こいつや()()()()()()()()()()()のか?」

 

「…………(コクリ)」

 

呂布が頷き指笛を吹くと、洞窟の中から大小、種類も様々な犬が大量に出てきた。

 

「すごい数ですね…」

 

「聞こえてたのは、こいつらの声だったんだな…」

 

「みんな怪我したり、捨てられたりしていた…。

(れん)”も小さい頃、親に捨てられて…丁原(ていげん)様に拾ってもらった…。

だから放っておけなかった…」

 

「そうか…」

 

親に捨てられる。

里親に拾われる。

それはチョッパー自身も経験したことがあった。

その為、チョッパーも呂布の気持ちがとてもよくわかった。

 

「ちゃんと働いて稼ごうともしたけど…

 

 

 

 

 

1人の客が店に入ると、制服に身を包んだ無表情の呂布が立っている。

 

『…………』

 

『…えっと、あの…』

 

『…いらっしゃいませ』

 

少しの沈黙の後、無表情のまま、感情がこもってない挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

『え~っと、おれ炒飯(チャーハン)餃子(ギョウザ)

 

『おれも同じの。炒飯は大盛で』

 

『担々麺、あと春巻き』

 

『白飯と回鍋肉(ホイコーロー)、それから(たまご)(スープ)

 

『かしこまりました』

 

注文を受け、呂布は厨房にオーダーを報告する。

 

拉麺(ラーメン)四つ』

 

『『『『オイッ!』』』』

 

客のツッコミが炸裂した。

 

 

 

 

 

 

『お待たせしまし…』

 

つるっ!

 

ガッシャーン!

 

 

 

 

 

 

『お茶お注ぎしま…』

 

コケッ!

 

ドガッシャーン!

 

 

 

 

 

…上手く行かなかった…」

 

「そっか、大変だったんだなお前…」

 

「悪い事だとは思った…でも、他に方法が思いつかなかった…」

 

「う~ん、確かに…どうすればいいかな?」

 

「あの、それでしたら…」

 

「掛かれェーーーっ!」

 

「「「「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」」」」」

 

「「「⁉」」」

 

トントンが何か言おうとした瞬間、何者かの号令とともに武装した兵士が現れチョッパーを取り囲んだ。

 

「え⁉えっ⁉」

 

(ゆえ)っ!大丈夫⁉」

 

「え、“(えい)”ちゃん⁉どうしてここに⁉」

 

号令をかけたと思われる人物、緑の髪で眼鏡をかけた女性が、トントンに駆け寄ってきた。

2人は互いを、真名と思われる名前で呼び合う。

 

詠と呼ばれた女性は、トントンの問いに答えずにチョッパーを睨みつける。

 

「あんたね!最近、この辺りの村を襲っている化物ってのは!」

 

「え、詠ちゃん違うの!その人は…」

 

「ホント気味が悪い生物ね…!どっから迷い込んだのか知らないけど、ボク達の領土を荒らしたうえ、月まで危険な目に遭わせて、タダじゃおかな…」

 

「止めなさい‼賈文和(かぶんわ)‼」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

突然、トントンの怒鳴り声が響き渡った。

それまでの振舞からは、想像もできない声だった為、怒られた詠本人は勿論、チョッパーや呂布、兵士達までも怖気ついている。

 

「その方は化物から村を守ろうとした英雄であり、私の命の恩人でもあります!無礼なまねは許しません!今すぐ武器を下げさせなさい!これは命令です!」

 

「は、はい!ぶ、武器を下ろせ!」

 

「「「「「「「「「「は、はい!」」」」」」」」」」

 

兵士達が武器を下ろすのを見て、トントンは安心し息をつく。

 

「トントン…お前、もしかして偉い奴なのか?」

 

チョッパーが訊ねた。

 

「この方は、ここ涼州武威(ぶい)郡の太守、“董卓(とうたく)仲穎(ちゅうえい)”様です」

 

トントンに代わって詠が答えた。

 

「ええっ⁉太守⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チョッパーと呂布とその飼い犬達、そして村の庄屋は、トントンこと董卓の宮殿に呼ばれ、謁見の間で待機していた。

 

「皆さん、お待たせしました」

 

「わあ…」

 

壇上に現れた正装に着替えた董卓の姿に、チョッパーは思わず感嘆の声を漏らす。

 

董卓の左右にはそれぞれ、賈駆と華雄が控えている。

 

そして董卓は、庄屋に事件の真相を説明した。

 

「そういう事だったのですか…」

 

「確かに、呂布さんのした事は許される事ではありません。

しかしそれは傷つき、捨てられた犬達を助ける為にやった事。

門前の岩もすぐに片付けさせますし、できる限りの償いもさせます。

盗られた食料の方は私達で弁償しますので、どうか穏便に済ませていただけないでしょうか?」

 

「いえ、実は…」

 

「?」

 

「以前、私達の村をはじめ、その周辺の村々で増えすぎた猟犬を、大量に山に捨てた事がありまして…。おそらくこの犬達は…」

 

「成程、身から出た錆だった所もあるという訳か…」

 

「村人達には、私の方から伝えておきます。既に本人からも謝罪して貰いましたし、私達の方からはもう何も申しません」

 

「わかりました。ところで賈駆!」

 

「は、はい!」

 

董卓に呼びつけられ、賈駆は身体を強張らせる。

 

「役所では、化物による被害の訴えを取り合わなかったと聞きましたが?」

 

「え、ええと…」

 

「董卓様、それはもう済んだことです。それに今回の件は、我々の方にも非があった訳ですし…」

 

「いいえ、そういう訳にはいきせん。民からの訴えを疎かにして、政を行うなどあってはなりません」

 

「わかりました。二度とそのような事がないよう、全ての役人に徹底的に言い聞かせておきます!」

 

「いいでしょう。それから…!」

 

「は、はい!まだ何か⁉」

 

「あなた…先程チョッパーさんに武器を向けた事を、まだ詫びていないと思うのですが?」

 

「!」

 

董卓に言われ、賈駆は慌ててチョッパーに頭を下げた。

 

「さ、先ほどはとんだご無礼を致しました…。主の恩人に武器を向けてしまうとは…。誠にに申し訳ありませんでした」

 

「チョッパーさん、私からも詫びを申し上げます。私の部下が失礼を致しました」

 

そう言って董卓も頭を下げる。

 

「いいよ。よくある事だし」

 

「寛大な心遣い、感謝します。所でチョッパーさん…」

 

「何だ?」

 

「庄屋さんから聞いたのですが、チョッパーさんは逸れた仲間を探しているそうですね」

 

「うん。どこにいるのかは、全然わからないんだけど…」

 

「それで…もし宜しければお仲間が見つかるまで、私達の所に滞在して頂けないでしょうか?」

 

「ちょ、月?」

 

「実はこの所我が領内では、病人や怪我人が絶えなくて、一人でも多くのお医者様を必要としているのです。

チョッパーさんのお仲間の行方は、私達の方でも調べます。

ですから、お仲間が見つかるまでの間で構いませんので、私達の所で医者として働いて頂けないでしょうか?」

 

「え?医者?この喋る狸が?」

 

「トナカイだ!」

 

(化物扱いは良くても、狸扱いは嫌なのか?)

 

不思議に思う華雄だった。

 

「どうでしょうか?」

 

「もちろんいいぞ!村の患者も最後まで面倒診たかったし、行く当てもないから、おれからお願いしたいぐらいだよ。

それに医者として、病人や怪我人がいるのなら治療してやりたいからな!」

 

「ありがとうございます!―――それから呂布さん」

 

「?」

 

「もし宜しければ、私達の所で武官として働いて頂けないでしょうか?犬達の世話も、私達でお手伝いしますので」

 

「いいの?」

 

「ちょ、ちょっと月!?何言ってるの⁉」

 

「詠ちゃん、『このところ警備の人手が足りなくなって、街の治安が悪化してる』って言ってたでしょ。

呂布さんの武術の腕は凄いし、あの犬達を躾ければ街の警備の手助けになると思うの」

 

「そ、そりゃちゃんと躾ける事ができれば、警備の役には立つでしょうけど…ちゃんと躾けられるの?」

 

「それなら大丈夫だと思うぞ」

 

「「?」」

 

董卓に代わって、チョッパーが答えた。

 

「こいつらみんな『自分達の面倒を見てくれるなら、一生懸命働く』って言ってるぞ」

 

「「「「「「「「「「ワン!」」」」」」」」」」

 

「…チョッパーさん、そういえば先程も『声が聞こえる』と言ってましたが…。もしかして、その子達の言葉がわかるのですか?」

 

「ああ。おれは元々動物だから、大抵の動物とは話せるんだ」

 

「そんな事もできるなんて…!チョッパーさんって本当に凄いんですね!」

 

「う、うるせーな!ホメられたって、嬉しくなんかねーぞ!コノヤローが!」

 

…と、チョッパーは口ではそう言うが、顔は思いっきりにやけて小踊りまでしている。

 

「嬉しそうだな…」

 

「あんた…嘘つくの下手ね…」

 

「可愛い…」

 

チョッパーに見惚れる呂布。

 

「詠ちゃん、チョッパーさんもこう言ってるし、大丈夫でしょ?」

 

「で、でも…」

 

「駄目?」

 

目を潤ませ、上目遣いで懇願する董卓。

 

「ううっ…」

 

「詠ちゃん…お願い…」

 

「…わ、わかったわよ……」

 

「ありがとう!詠ちゃん大好き!」

 

そう言って満面の笑顔で、賈駆に抱き着く董卓。

 

ある意味タチの悪い、卑劣な君主かもしれない。

 

「い、言っとくけど!こんなお願い聴くのは、今回だけだからね!」

 

そっぽを向き、顔をやや赤らめてそう言う賈駆。

 

どうやら彼女は、所謂ツンデレのようである。

 

がばっ

 

…と、そこへさらに呂布が抱き着いてきた。

 

「え⁉ちょ、アンタまで何⁉」

 

「多分、感謝の気持ちを表してるんだと思うぞ」

 

チョッパーの言葉に頷く呂布。

 

「だったら口で言いなさいよ!抱き着くな!懐くな~!」

 

「では、これから宜しくお願いしますね。チョッパーさん。呂布さん」

 

「“恋”でいい」

 

「真名で呼んで良いのですか?」

 

「一緒に暮らすなら、家族。…だから、良い」

 

「わかりました。よろしくお願いします。“恋”さん」

 

「―――とりあえず、離れろォ~~~!」

 

こうして、チョッパーは“董卓仲穎”こと“月”の下で、“賈駆文和”こと“詠”、“華雄”、“呂布奉先”こと“恋”と共に、働く事になったのだった。

 

 




チョッパーVS恋
流石にチョッパーが恋に勝つのは無理でしたが、かなり互角に戦いました。

次回から、少しオリジナルの話に入ります。



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