ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第163話 “天の国から来たもの”

太平道の襲撃を受けた翌日、桃香達が最初に行ったのは城中にいる電伝虫の捕獲だった。

 

「ううっ…何で私が虫取りなんかしないといけないのよ…」

 

虫が苦手なのか、桂花は顔をしかめながら書庫を探っている。

 

「人員を総動員する様に言われたんですもの…。仕方ありませんわ…」

 

隣にいる栄華も嫌そうにしている。

 

「荀彧さん、曹洪さんも口より手を動かしてね…」

 

その隣では喜雨がテキパキと作業をしている。

 

「陳登さんはどうして平気なんですの?」

 

「畑仕事をしていれば毎日目にするから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮廷内の廊下。

 

「粋怜よ、これは普通の蝸牛か?電伝虫か?」

 

「取り敢えず捕まえておいたら?」

 

「そうだな」

 

「あの~黄蓋さ~ん、程普さんでもいいんですけど…」

 

近くの部屋から張勲が顔を出して声を掛けてきた。

 

「何じゃ?」

 

「ちょっと戸棚の裏に逃げ込んじゃったのが一匹いるんで、戸棚を動かして貰えないですか?」

 

「おう、任せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

庭園。

 

「あ!ここにもいたわ!黄、虫籠持って来て!」

 

「はい、ただいま」

 

空丹の草むらを探る様子を近くで真直と傾が見ている。

 

「よろしいのですか?天子様にまでこんな事やらせて?」

 

「自分でやりたいと言い出したのだ。無理に止める訳にもいくまい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして小一時間程作業を続け、一同は評定の間に集まった。

 

「これだけやれば十分かしらね?」

 

「どうやら張譲は、各々の個室と執務室、評定や軍議用の部屋に一匹ずつ。後は宮廷の外に配置していた様ですね…」

 

「常に自分の息がかかった者がいる部屋には、配置していなかった様ですねー」

 

稟と風が言う。

 

「張譲の部屋を調べてみたら、一抱えくらいある奴がいたのです…」

 

「あと、隠し部屋らしき場所が何か所か見つかったので調べてみたら、大小様々なものが沢山いました…」

 

「牛みたいな大きさの奴までいて、ホントびっくりしたよねー…」

 

ねね、亞莎、梨晏が報告する。

 

「とにかく、これでようやく軍議を始められそうね…」

 

華琳はそう言って集った面々を見渡す。

 

その日の軍議には、今まで出席していた主将や軍師だけでなく、各軍の主力である部将、空丹、白湯、傾、瑞姫、黄、楼杏、風鈴、そして張三姉妹まで参加する事になった。

 

張三姉妹については賛否両論あったが、華琳が彼女達にも太平道について知る権利があると言い、出席が許可された。

 

「ルフィ達は昨日の怪我は大丈夫なの?」

 

「腹一杯食って休んだから、もう大丈夫だよ」

 

心配そうに訊ねる白湯にルフィは笑って答える。

 

「それでは軍議を始めます。ロビンさん、昨夜太平妖術の読解を試みたそうですが、何かわかりまして?」

 

麗羽が訊ねる。

 

「ええ。まだ全てを解読できた訳ではないし、これは簡略化された物だったから詳細はわからない点もあるけど、太平道の正体は概ね理解できたわ」

 

そしてロビンは説明を始める。

 

「ここにいる全員すでに知っていると思うけど、太平道が使う妖術は全て私達の世界に起因しているわ」

 

「昨日の軍議でも少し聞いたけど、天の国に伝わる武術・知識・技術、火薬を用いた武具などの道具、そして特殊な貝殻と食べると特殊な能力を得られる果実でしたね」

 

「あと…例の電伝虫とかいう蝸牛もそうですよね?」

 

風鈴と包が確認する。

 

「ええ。調べた所、どうやらそれが持ち込まれたのは今よりずっと昔……昨日話に出ていた秦の始皇帝らが覇権をめぐって争っていた時代。

そして始皇帝に仕えていた徐福という妖術使いが『太平道』の原型となる組織を作った。同時にその組織は、華佗さんの所属する『五斗米道(ゴット・ヴェイドー)』の原型でもあった」

 

「⁉どういう事⁉」

 

「順を追って説明するわ。まず、その徐福という妖術使いは、元々は私達の世界―――天の国の人間だった。彼は天の国の優秀な学者で、Dr(ドクター).ベガパンクの助手を務めていた」

 

「ベガパンク⁉」

 

「誰なんだそれ?」

 

「天の国の学者よ。天の国には漢王朝みたいな国家がいくつも存在して、その内170以上の国を統括する巨大な政治組織が存在するの。

その組織は『世界政府』っていう名前で、その直下にある正規の軍隊を『海軍』っていうんだけど、ベガパンクは『世界政府』の支援の元研究を行っていて、『海軍』の技術の発達は必ずと言っていい程、彼の功績らしいわ!」

 

「それほど大規模な政権が支援するなんて…!相当優秀な学者の様ですわね…!」

 

ナミの説明に栄華らは驚く。

 

Dr(ドクター).ベガパンク…!)

 

その名前を聞き、ゾロはある事を思いだす。

 

―――――おれは“パシフィスタ”と呼ばれる

 

―――――開発者は政府の天才科学者Dr(ドクター).ベガパンク

 

(そうか…!桃香のニセ者の攻撃…!どっかで見た気がしていたが…!)

 

「そう。そして徐福が彼の助手をしていた頃、ベガパンクはタイムマシンの研究をしていたらしいわ」

 

「たいむましん?」

 

「過去や未来に自由自在に移動できる乗り物の事だ。つっても、天の国でも『そんなモンがあればスゲー』くらいの認識で、実物は勿論、作ろうとする奴もまずいねェがな」

 

フランキーが説明する。

 

「けど…何で政府がタイムマシンの研究を?」

 

ウソップが訊ねる。

 

「過去に戻って政府に都合の悪い事件の発生や、その主犯となる人物が生まれるのを未然に防ぐ。未来に行ってこれから起こる事件を知り、その対策を講じる。考えられるのはこんな所ね。

―――そして、徐福達は研究の末、理論上時空移動が可能な装置―――とても精密に作られた絡繰りを完成させた。それは鏡の様な外観をしていたらしいわ」

 

「それって…!」

 

「おれ達があの時海で拾った鏡…!」

 

「じゃあおれ達は、過去か未来に来ていたのか⁉」

 

「この世界の海に出てみないと、それは何とも言えないわ。徐福の記述でも、あくまでも『理論上は可能な筈』というだけ。

単純に場所を移動するだけかもしれないし、時間も場所も全く異なる世界に行く可能性もあった。最悪、消滅してしまうだけという可能性もあった。

だから実際に装置作動させて実験するのは、まだまだ先の予定だった。

 

―――けど、ある日研究員の一人が誤って装置を作動させてしまった。

その結果、装置が保管されていた施設が、そこにあった物と徐福を始めとしたその場に居合わせた人達ごと、この世界に飛ばされてしまった。

研究員は勿論、人体実験用に収容されていた囚人や奴隷、警備役の海兵、政府の役人、研究用の設備や資材、資料に武器、そして“悪魔の実”も…。

 

そしてこの世界に飛ばされた徐福は、後に始皇帝となる人物と出会い、天の国の知識や技術を使って彼に協力した。

同じ様に飛ばされた他の人々も、当時の有力者や後に名を上げる人物に取り入り、この世界の住民として暮らした」

 

「だから戦国時代を境に、文化水準が急速に向上しておったのか…!」

 

…と、雷火。

 

「その後、徐福の協力もあって、始皇帝は大陸の制覇に成功した。当然、大陸の各地に散っていた天の国から来た他の人達も、彼の配下に収まった。

けど徐福はそれを危惧し、自分達がもたらしたチカラを隠蔽し、自分達も表舞台から姿を消す事を考えた。

 

ただ、すでに庶人の生活にまで深く浸透しているもの多かったし、完全に隠すのはまず不可能だった。

情報が漏れた際に、その危険さや対抗手段などが後世に伝わらなくなるのも問題だと考えた。

 

そこで、兵器的なチカラや“悪魔の実”は全て自分達が回収し、豪族や貴族の墓に遺品として埋葬。

とりわけ危険な物は徐福が大陸のどこかに封印し、自身が信頼できる者にのみ、その存在を伝えた。

知識や技術を回収する事は不可能だったけど、その起源や伝道師となるものの存在に関する情報は全て抹消した。

機械や道具についても、その製造方法や使用方法、用途が後世に伝わらない様工作したらしいわ」

 

「成程…確かに由緒ある家柄の古い蔵とかには、詳細不明の奇妙な物が多く保管されているわ」

 

…と、桂花。

 

「あのー…ちょっといいですか?」

 

鶸が口を開く。

 

「徐福達は“悪魔の実”の力も使って始皇帝達に貢献したんですよね?だったらその人達が使った悪魔の実はもうなくなっている筈じゃあ…」

 

「“悪魔の実”はそれを食べた物―――“能力者”が死ぬと、同じ能力を宿した実が世界のどこかに再生する様になっているの。自分達が能力を与えた者達が死んだ後、この世界で再生した実を回収したのよ」

 

「そうなんですか…」

 

「そうしてそれらを回収した後、徐福本人を含む天の国出身の人物や、その能力(チカラ)を授かった者達を連れて山中深くに隠れ、表舞台から姿を消した。

―――けど、秦の成立から10年程経過した頃、事件が起きた」

 

「秦の成立から十年という事は~ちょうど項羽や劉邦が頭角を現してきた頃ですね~」

 

…と、穏。

 

「その頃には徐福と一緒に隠居をした者達も世代交代し、その子供が主となっていたのだけど…。その者達が天の国の力を悪用し、大陸の制覇を目論んだの」

 

「そんな事が⁉」

 

「幸いにも、大陸を支配しようとする過激派に対抗しようとする者達は僅かにいた。その人達はさっき陸遜さんが言っていた項羽と劉邦を始め、多くの者達の協力を得て激戦の末に過激派を討伐したらしいわ。

そして戦いの後、二度とこの様な事が起こらないよう、残った天の国の力を所持する者達を二つの組織に分け、どちらかの独走を阻止させる為に存在させた」

 

「それが“太平道”と“五斗米道(ゴット・ヴェイドー)”…!」

 

「華佗殿は知らなかったのか?」

 

「“五斗米道(ゴット・ヴェイドー)”の教徒に教えられるのは、主に身体の鍛錬と医学や薬学などについての知識だけだからな…。道具や歴史について学ぶ事ができるのは、もっと中枢に近い人物だけだ。

それにおれは漢中の外での行動を主としていたから、あまり“五斗米道(ゴット・ヴェイドー)”自体の事については知らされていなかったんだ」

 

「けどよロビン。こっちの世界に来た奴らの中に政府の役人や海兵がいたのなら、そいつらが武器や武術を伝えたんだと理解できる。

他の知識や道具とかも研究員が教えて、電伝虫もその施設にいたのがこっちで繁殖したとしたら納得できる。

でも(ダイアル)は?アレはおれ達の世界でも簡単には手に入んねェモンだぞ?」

 

ウソップが訊ねる。

 

「どうやらその施設では、(ダイアル)の元になる貝類を人工的に繁殖させる研究をしてらしいわ。その生態や飼育技術は確立していたみたいだから、それで量産したのよ」

 

「“太平道”が何故天の国の力を使えるのかはこれでハッキリしたな。それでロビン殿、“金仙丹”や“兵馬妖”…奴らの妖術の理屈やその対抗手段は分かったのか?」

 

冥琳が訊ねる。

 

「あまり細かく話すと時間が掛かり過ぎるから、今日は『金仙丹』と『兵馬妖』、『それ以外』に分けて大まかに説明させて貰うわ。詳細は必要に応じて、その都度解説させて頂戴。

 

まず『金仙丹と兵馬妖以外のもの』。これはさっきウソップが言った通り、この世界に来た海兵や役人が武術や武器の作り方を教えた。

“悪魔の実”や“(ダイアル)”、馬元義の身体に組み込まれていた兵器は、研究施設で試作品として作られた物が保管されていたらしいわ」

 

「それを使ったって訳か…」

 

「于吉が私達に渡した道具もそうなの?」

 

人和が訊ねる。

 

「ええ。研究施設はかなり広かったらしいから、声を拡散させる道具は必要だったでしょうし、暗示の技術も研究対象だったらしいわ」

 

「では“兵馬妖”は何なんですか?」

 

今度は亞莎が訊ねる。

 

「あれは研究の副産物を利用して作ったものと言うべきかしらね」

 

「どういう事です?」

 

「昨日、馬元義の身体の一部が兵器として改造されていたでしょう?そして左慈が言っていた通り、人体に兵器を組み込む研究は天の国で行われていた。

ベガパンクはその研究の第一歩として、2つの研究を行っていたの」

 

「二つの研究?」

 

「一つは人工的に“悪魔の実”…特に動物(ゾオン)系の実を作る研究」

 

「“ぞおん”?」

 

「“悪魔の実”の種類の事よ。食べると動物に変身できる様になる実の事をいうの」

 

「しかし“悪魔の実”を作ろうとするなんて…!とんでもねェ事を考えやがるな…!」

 

サンジを始め、麦わらの一味は驚く。

 

「そう。そしてもう一つは“悪魔の実”を物に食べさせる研究」

 

「物に食べさせる⁉」

 

「そんな事が可能なの⁉」

 

今度は斗詩や蓮華が驚く。

 

「できるらしいんだ。おれも前に“イヌイヌの実”を食べた銃を見た事があって、本当に銃が犬みたいになって動いていた……ってまさか⁉」

 

説明しながらウソップはハッとする。

 

「ええ。ベガパンクは動物系(ゾオン)の悪魔の実を物に食べさせる事で、生物と道具の融合について研究していた。

そして人工的に“ヒトヒトの実”を作り、それを道具に食べさせる事で人体と道具の融合について研究した」

 

「“ヒトヒトの実”って、確かチョッパーが食べた人間の能力を得られる果実…!」

 

「その通り。その研究を応用し、人工の“ヒトヒトの実”を土で作った人形に食べさせたのが“兵馬妖”。

当時すでに物に悪魔の実を食べさせる技術は確立していたし、その為に必要な道具もこの世界に飛ばされていたらしいわ。

これから考えるに、おそらく“木獣”も木で動物を模った物に、人工の悪魔の実を食べさせて作ったのでしょうね」

 

「そういう事だったのね…」

 

「……あれ?でもおかしくない?」

 

梨晏が呟く。

 

「ウソップの話だと、武器に“イヌイヌの実”っていうのを食べさせたら、本当の犬みたいになって動き出したんだよね?

だったら土の人形じゃなくて、武器に食べさせた方が早いんじゃない?」

 

「それは人工の“悪魔の実”が不完全だったからできなかったのよ」

 

「不完全というと?」

 

「記述によれば、この人工の悪魔の実には3つの欠点があったらしいわ。

1つ目は物に食べさせた場合、完全な生物にならなかった。だからある程度生物の形をした物に食べさせる必要があった。

2つ目は人間が食べた場合、変身を制御できず、強制的に動物に変身して人間に戻れなくなってしまった。変身するまでにかかる時間には個人差があったみたいだけどね」

 

「ではまさか、張譲が妾に飲ませた猫になる薬は…!」

 

「ええ。人工の“ネコネコの実”を原材料に作ったのでしょう。そして3つ目の欠点は……悪魔の実を製造する為の材料について」

 

「材料?」

 

「記述によると…人工の悪魔の実は研究で開発した特殊な木を育てて、そこから収穫するらしいのだけれど…。その木を育てる為に()()()()が肥料として大量に必要になるらしいわ…」

 

「あるもの?」

 

「その木は動物に変身する能力(チカラ)を秘めた悪魔の実を作る。その為には能力として宿す動物の身体の情報が一定量必要なの…」

 

「!まさか…!」

 

「ええ。“ネコネコの実”を作る為にはネコ、“イヌイヌの実”を作る為にはイヌ……そして“ヒトヒトの実”を作る為には人間を肥料として与える必要がある…!

それも生きている人間か、死後間もない人間を…!

つまり多くの“兵馬妖”を作るという事は、それに比例して多くの人間が殺されるという事だったのよ…!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

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