ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
~とある山中~
山道を進む一行がいた。
「「や~まがあるから山なのだ~♪か~わがあっても気にしない~♪」」
仲良く歌いながら、先頭を進むルフィと鈴々。
「こら鈴々、ルフィ殿も…変な歌を大声で歌うな。恥ずかしいだろ…」
その後からついて来る愛紗、さらに後からは星もついて来る。
「何言ってるのだ愛紗。山を歩くときは、クマ避けに歌を歌った方がいいのだ。じっちゃんがそう言っていたのだ」
「そうだぞ、鈴々の言う通りだ。こんな山の中で、いきなり愛紗に出くわしたら、熊がビックリするだろう」
「そうそう、こんな山の中で私に出くわしたら、熊が可哀想……って何でだ⁉」
星のボケにノリツッコミをする愛紗。
すると星ニヤニヤしながら愛紗を見る。
「どうした星?私の顔に何かついているか?」
「いや、公孫瓚殿より、やはりお主の方が面白いと思ってな」
「…………」
「あ~…なんかくまの話してたら、腹減ってきたな~」
先頭を歩いていたルフィがそんなことを言い出す。
「「「え?」」」
「久しぶりにくま鍋食いてェな~。くま~!出てこ~い!」
「やはり熊避けに歌った方が良いな…」
「腹を空かせたルフィ殿に…熊が出くわしたら…」
「クマがかわいそうなのだ…」
ザッ…
「ん?」
突然前方に、武器を手にした男達が現れた。
よく見ると前だけでなく、左右後方の木陰、岩陰、茂みからも何十人という男が現れる。
「…どうやら熊の代わりに、山賊が現れたようだな」
「熊の方が、まだ可愛げがあるかもしれんな」
「でも、クマの方が強そうなのだ」
「まー何でもいいじゃねェか……行くぞ!」
「「「おう!」」」
そして乱闘が始まった。
▽
~その頃―――その山の
1万を超える軍が、そこに陣取っていた。
「…この山でいいのね」
「はい、付近の住民から聞いた話から考えて、この山で間違いないかと」
「荀彧、斥候を…」
「すでに向かわせました」
「そう、さすがね。夏侯惇、夏侯淵!」
「「はっ!」」
「いつでも出陣できるように準備を!」
「「はっ!」」
「申し上げます!」
「何事か?」
「山中で賊を確認!何者かと戦闘中とのこと!」
「わかったわ!直ちに出陣するわよ!」
「「「はっ!」」」
▽
~山中~
「ハァーーーーーッ!」
「ぎゃあ!」
「ぐああっ!」
ルフィ達の戦闘は続いていた。
「何だこいつら!?」
「ひるむな!たかが四人!叩き潰せ!」
山賊達は、ルフィ達の強さに驚きつつも、次々に襲い掛かる。
「コイツら何人いるのだ⁉」
「随分と大規模な賊のようだな!」
ルフィ達の方も、相手の異様な数に驚愕していた。
すでにそれぞれ十人以上倒しているが、敵の数は一向に減る様子がない。
「何人でもかかってこォーい!」
ルフィはそう言って賊の群れに突っ込み、一気に吹き飛ばす!
ドガァァァン
「「「「「「「「「「ギャァァァァァ!」」」」」」」」」」
しかし、いくつかの間の悪さが重なり、問題が起こった。
1つ目はルフィが飛び込んでいった先が、崖だったこと。
2つ目はその崖の先が川、それも結構深く、流れが急だったこと。
3つ目はその崖付近の足場が、ルフィが飛び込んだ丁度そのタイミングで崩れたこと。
バキッ
「あ~~~~~⁉」
ドボ~~~ン
「ルフィ殿ォ~~~⁉」
ルフィは真っ逆さまに川に落ち、そのまま流されていった。
▽
「曹操様!賊を発見しました!これより戦闘を開始します!」
「ええ!好きなだけ暴れなさい!」
「はっ!よォし!突撃ィーーー!」
「「「「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」」」」」
「ふふ、頼もしいわね春蘭は」
「曹操様」
「どうしたの夏侯淵?」
「兵士から報告がありまして、近くの川で上流から男が一人、流されてきたそうです」
「…賊の仲間かしら?」
「今のところは何とも」
「ま、とりあえず介抱してあげなさい」
「はっ!」
▽
「うおりゃあーーーっ!」
ドカッ!
「ガフッ…!」
「くそっ!きりがない…!」
「早くルフィ殿を助けねばならんというのに…」
愛紗達はルフィを助けようにも、大量の賊に囲まれ身動きが取れず、焦り始めていた。
また、ルフィがいなくなったことで戦力が下がり、苦戦し始めていた。
その時…
「うわぁ!」
「ギャー!」
突然、少し離れた場所から賊の悲鳴が聞こえてきた。
「⁉何だ⁉」
「大変だ!官軍が現れた!」
「何だと⁉どこの軍だ⁉」
「曹操軍だ!」
「まずい!ずらか…」
「遅い!」
ズバッ!
「がっ…!」
逃げようとした賊の1人が、官軍の将らしき女に斬られた。
「うわァ!もうここまで来やがった!」
「行けェ!一人も逃がすなァ!」
「「「「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」」」」」
官軍の加勢により、賊はあっという間に退治された。
▽
賊を退治し終えた愛紗達の前に、官軍の指揮官と思われる女性が現れた。
「部下からの報告で聞いたわ。あなた達がここの賊と戦っていたのね」
「は、はい」
「うわ~…このお姉ちゃん、すっごい頭クルクルなのだ~」
「こ、コラ鈴々!」
慌てて鈴々の口を塞ぐ愛紗。
「し、失礼した!この者は髪型を言ったのであって、頭の中身がどうこうという意味では…!」
「愛紗よ。それは逆に失礼ではないか?」
「子供言うことだもの、別に気にしてないわよ」
「は、はあ…」
「子供って…」
「さてと…あなた達から少し話を聞きたいのだけれど、麓にある我が軍の陣まで同行願えるかしら?」
「あの…申し訳ないのですが…」
「どうかしたの?」
「先ほど、戦闘中に仲間が一人、川に落ちてしまいまして…急いで探さねば…」
「…それってひょっとして、
「⁉ご存じなのですか⁉」
「ええ、先ほど我が軍の者が拾って、今は陣にいるはずよ」
▽
一方―――
「ん?」
ルフィが目を覚ますと、そこは天幕の中だった。
「気が付いたか?」
周囲にいた兵士が声をかけてきた。
「誰だお前ら?」
「我々は曹操軍の兵士だ」
「“ソウソウ”?」
「入るぞ。おお、目が覚めたか」
水色の髪の女性が天幕に入ってきた。
「夏侯淵様!」
「誰だ?」
「私は“夏侯淵”。一応聞くが、お主が“ルフィ”だな?」
「ああ。何で知ってんだ?」
「“関羽”と言う女から聞いた」
「愛紗達を知ってんのか?」
「ああ、真名は知らぬがな。その者達が我が主と一緒にお待ちだ。来てくれるか?」
「うん、わかった」
▽
「愛紗~!鈴り~ん!星~!」
「ルフィ~!」
「ルフィ殿!」
「ご無事で何より」
ルフィが天幕に入ると、鈴々はルフィに抱き着き、他の2人も駆け寄ってきた。
「ああ!お前らも無事だったんだな!」
「再会を喜んでいるところ悪いけど、さっそく話を聞かせてもらえるかしら?」
ルフィが秋蘭に案内された天幕には、愛紗達3人のほかに、華琳、春蘭、桂花がいた。
「うわ~…すげェ頭クルクルだなお前」
「る、ルフィ殿!」
「ふふ…親子そろって同じことを言うのね」
「親子?」
「あら?てっきりその張飛って子は、あなたと関羽の子供だと思っていたのだけれど…違うの?」
「ち、違います!私達は義兄妹でして…!」
「そう…それじゃあ、関羽はまだキレイな身体のままなのね?」
「⁉」
華琳の言葉と頬を赤らめた表情に、思わず身震いする愛紗。
「そ、曹操様!そのような話をするために、この者達を呼んだのではないでしょう⁉」
ライバルが増える予感がしたのか、桂花は必死で話題を変えようとする。
「そうだったわね。では、本題に入りましょう」
華琳のその言葉で、全員落ち着きを取り戻し、天幕内に真剣な空気が満ちる。
「まずは自己紹介から、私がこの軍の総大将、“曹操”よ」
(この者が“曹操”…。最近都で頭角を現してきたという…)
華琳の実力を確かめるように、凝視する星。
「こちらにいるのが我が軍の主将、“夏侯惇”、“夏侯淵”。そして筆頭軍師の“荀彧”よ」
「お初にお目にかかります。我が名は“関羽”。こちらが私の義兄の“ルフィ”殿、義妹の“張飛”、旅の同行者の“趙雲”殿です」
「まず状況を整理するけど…あなた達四人はあの山で山賊と戦っていた。
そしてその途中で、そこのルフィという男が川に落ちてしまった。
残りの三人で戦っていたところに、夏侯惇が加勢して賊を征伐した。
同じ頃、流されてきたその男を私達が拾った。
間違いないわね?」
「ああ、そうだ。水色の奴から聞いたよ、助けてくれてありがとう」
「お礼なんていいわ。私達もあなた達のおかげで、いくらか賊討伐が楽になったもの。お互い様よ」
ルフィと華琳は互いに感謝を表す。
「曹操様!別にこやつらの助けがなくとも、賊討伐などできました!」
「何をー!鈴々達だって、お前らの助けなんかなくても、あんな奴らやっつけられたのだ!」
しかし、空気を読まずに売り言葉に買い言葉で、言い争う鈴々と春蘭。
「姉者、止めぬか…」
「こら鈴々…」
互いの姉妹を止める愛紗と秋蘭。
「お互い、脳筋の馬鹿には手を焼いているようね…」
「まったくだな…」
その様子を見て、思わずため息をつく星と桂花だった。
「それで…話を戻すけど、あなた達があの山賊達と戦っていたのは何故?」
華琳がルフィ達に真剣な顔で訊ねる。
「何故と訊かれましても…」
「向こうが襲ってきたから、戦っただけだ」
「つまり、ただ迎撃しただけという訳ね」
少々残念そうな顔をする華琳。
愛紗はその表情が気になり、訊ねてみた。
「あの山賊達がどうかしたのですか?」
「
「聞いたことがある。元々は司隷、
華琳の質問に、星が答えた。
「その通りよ。ただ、その情報は少し古いわね。今、黒山賊の構成人数は十万を超えているわ」
「十万だと⁉」
「いくつもの賊を吸収し、規模を拡大していると聞いていたが、そこまでとは…」
華琳の言葉に愛紗と星は驚く。
「一つの郡や州にも匹敵する兵力を持った奴らは、軍をいくつかの隊に分け、大陸の各地に分散。そして、さらなる勢力の拡大を謀っているらしいわ」
「我々は朝廷からの命を受け、この山に潜んでいる黒山賊の一隊を討伐、さらには黒山賊全体について、情報を得るべく出陣してきたという訳だ」
「黒山賊については正確な情報が少ないし、頭領の張燕については完全に正体不明といっても過言ではないわ。
だから、あなた達が何か情報を持っていれば、と思ったのだけど…」
「そういうことだったのですか…お役に立てず、申し訳ありません」
「構わないわ。ところで、私達はこれからこの辺りを治めている
「え?」
華琳からの思わぬ誘いに、愛紗は思わず声をあげた。
「今回の賊討伐はあなた達にも功績があるわ。そのことはちゃんと報告して、相応の報酬を渡すべきだもの」
「いえ、私達はそんな…」
「他者の手柄を横取りするような下賤なマネはしたくないの。私の名誉のためと思って、来てくれないかしら?」
「……わかりました」
華琳の言葉に、愛紗だけでなく星や鈴々、ルフィも内心敬意を抱いたのだった。
こうして、ルフィ達は華琳達に同行することになった。
▽
~夜―――曹操軍の陣~
昼間の勝利を祝い、宴が開かれた。
「いいらろくれ!(いいだろこれ!)」
その宴席のど真ん中で、ルフィは鼻に割りばしを入れ、ザルを持って踊っていた。
「はっはっは!最高だなその踊り!」
「鈴々もやるのだ~!」
「おう!やれやれ~!」
「…何て品のない…」
「くくっ…まァ、面白くて良いではないか」
「ああ!このような愉快な踊りは初めて見ましたぞ!はっはっは!」
一部の者を除き、踊りは大ウケしていた。
「賑やかでいいわね。…少し夜風に当たってくるわ」
そう言って天幕を出る華琳を見て、愛紗も天幕を出た。
▽
「曹操殿」
「あら関羽」
「ルフィ殿のことといい、同行を許してくれたことといい…ありがとうございました」
「昼間言ったでしょう?別に構わないわよ」
「いえ、私は嬉しいのです。今の世の中に、曹操殿のような方がいて」
「…………」
その言葉から華琳は何となく、愛紗の今の世の中を嘆く気持ちを感じた。
能力ではなく、渡せる賄賂の量で人を評価する世の中を。
それ故に、正当に評価されない人物が大勢いる世の中を。
「確かに、今の世の中では
華琳は少しだけ、優しそうな笑みを浮かべてそう答えた。
「曹操殿…」
「ただ…」
…と、そこで急に華琳は愛紗と距離を詰め、愛紗のあごに手を添える。
その表情は、先ほどの
「どうしてもお礼が言いたいのなら…
「⁉」
愛紗は華琳と距離をとろうとするが、いつの間にか腰に手を回されており、離れることができない。
華琳は愛紗に熱い視線を向け、口説くような口調で語りかける。
「あなたのその髪、なかなか美しいわね…」
「い、いえ…これは人に自慢できるような物では…!」
「きっと下の方も…しっとりツヤツヤなのでしょうね…」
「⁉」
同性同士なので気付きにくいが、この発言立派なセクハラではないだろうか?
「是非…味わってみたいわ…♡」
愛紗は武術の腕は立つが、こういうことには全く慣れていないため、思考回路がショート寸前になり、微動だに出来なかった。
「…あ…いえ……あの…」
ドゴォン!
「「⁉」」
その時、天幕の中から轟音が響き、2人は急いで天幕に戻った。
すると…
「…………」
ピクピク
気絶した春蘭が地面にめり込んでいた。
「……これはどういう状況なのかしら?」
「うむ。話せば長くなりますが、ルフィ殿が宴席に出ていた肉を全部食べてしまいまして…」
「姉者がそれに腹を立てて、襲い掛かったのだ」
「―――で、ルフィが赤いお姉ちゃんを返り討ちにして、こうなったのだ」
「この気絶している馬鹿が襲い掛かった瞬間、一撃沈められてしまい、止める暇もありませんでした」
「……そう」
「…………」
想像以上にくだらない理由だったため、呆れる2人。
「キサマァァァァァ!」
「…復活したか」
「よくもォォォォォ!」
「何言ってんだ、襲ってきたのお前じゃねェか」
「キサマが私の分まで肉を食うからだろうが!」
「静まりなさい‼」
「ひっ⁉華琳様⁉」
「彼らは客人なのよ?無礼なマネは止めなさい!」
「で、ですが華琳様ァ~…!」
「お肉ならまだあったでしょう?もう少し料理してかまわないから止めなさい」
「はァい…」
「ハァ…興が冷めたわ…。関羽、続きはまた今度にしましょう…」
「はい。……へっ⁉続き⁉今度⁉」
「か、華琳様⁉」
「そ、それはどういう意味ですか⁉」
華琳の言葉に愛紗だけでなく、春蘭と桂花も取り乱す。
「関羽、私はあなたを諦めるつもりはないわよ?必ず私のモノにして見せるわ」
そう言うと華琳は天幕を出て行った。
「き、キサマァ~!」
「よ、よくも華琳様を誑かして―――!」
「ご、誤解です!私はそういった趣味は―――曹操殿に対して、そのような気持ちは微塵も―――」
「キサマ、華琳様が魅力的ではないというのかァ‼」
「華琳様の魅力が分からないなんて、万死に値するわ‼」
「えええ⁉」
「まったく…姉者も桂花も華琳様のことになると人が変わるな…」
「夏侯淵殿…気のせいか手にしている杯が、メキメキと音を立てているような…?」
こうして、夜は更けていくのであった。
今回の話は、ルフィ達が華琳達と出会う話でした。
できるだけ早いうちに、面識を持たせたかったんですよね。