ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第170話 “最後の華蝶”

 

太平道の行軍が確認された報告が届き、すぐさま連合軍の主将と軍師が集められ、軍議が開かれた。

 

兵が混乱を抑える為に何人かの将は陣に残った為、集まったのは桃香、愛紗、鈴々、星、翠、朱里、雛里、鶸、桔梗、華琳、桂花、柳琳、栄華、風、稟、炎蓮、雪蓮、蓮華、冥琳、雷火、穏、亞莎、包、空丹、白湯、傾、瑞姫、黄、月、詠、ねね、楼杏、風鈴、麗羽、真直、美羽、七乃、白蓮、燈、喜雨、黄祖、美以、華佗、そしてルフィ達“麦わらの一味”だった。

 

「現在、太平道は西方より郿塢城と共に進軍しており、明後日の辰から巳の刻にかけて我が軍と衝突するかと思われます」

 

早馬と斥候からの報告を桂花が伝える。

 

「敵は郿塢城を中心に前方に三十万、左右後方にそれぞれ二十万ずつ兵を配置し、城内にはさらに十万の兵が待機していると予想されます。

郿塢城の中心には巨大な楼閣があり、その屋上に巨大な黄金の球体を確認したとの事。おそらくこれが七星壇と金仙丹だと思われます。

そしてそこに馬元義らしき人影を確認したとか…」

 

「敵はこちらの三倍以上ですか…」

 

「しかも兵は全員普通の人間ではない…そのうえこちらは攻城戦…!実際に戦えば、三百万を相手にしているのと同然になるでしょうね…!」

 

七乃と華琳を始め、みな厳しい表情になる。

 

「金仙丹を戦場に持ち込む必要があるとはいえ、城ごと攻め込んで来るとはね…」

 

「あの城、相当豪華に作っていたのに…。壊された時の事を考えてないの⁉」

 

「侵入される筈がないという自信の現れなのじゃろう」

 

「現に城壁にも天の国の“たいほう”という兵器が備え付けられていて、攻守ともに万全になっている様だったからな…」

 

「これでは敵本陣だけを突出させるのは難しいぞ…」

 

「風の十面埋進も通じないかもしれませんね…」

 

「あのー…」

 

詠、瑞姫、桔梗、冥琳、白蓮、風が呟くと、それまで考え込んでいた雛里が挙手する。

 

「でしたら、十面埋進の陣を二重にして行うのはどうでしょうか?」

 

「十面埋進を…」

 

「二重に?」

 

 

 

 

 

 

「まず、我々の軍は大きく三つの部隊に分けて行動します。その内二つは、最初の作戦と同じ様に、敵の前方に布陣する隊と敵本隊に攻め込み金仙丹を破壊する突撃部隊です。そして三つ目は敵後方に布陣する伏兵部隊です」

 

雛里は絵地図の上に駒を置いて説明する。

 

「敵前方に布陣する隊は、当初と同じく足止めに徹した後、わざと後退します。それとほぼ同時に後方に待機していた伏兵が奇襲を仕掛けます。…ですが、この伏兵も囮です。

敵が前方の追撃と後方の迎撃を開始し、城の左右の兵力が手薄になった所へ突撃部隊を向かわせます。突撃部隊は右に十、左に十の左右合わせて二十の隊とします。

そして、左右それぞれの五番目と六番目の隊の間に、ルフィさんの仲間を指揮官とした遊撃隊を配置しておくのです。

一番目から五番目までの隊は城門に辿り着くまでの路を作り、その後のルフィさんの仲間のお二人に城門を破って貰います。

城に侵入した後、遊撃隊には城内の制圧を行って貰い、後の六番目から十番目の隊が金仙丹までの路を作るのです」

 

「すごい雛里ちゃん!こんな事思いつくなんて!」

 

「えへへ…」

 

「成程…確かにこれが最善の策かもしれないわね」

 

「それに敵が籠城しているのであれば、城内の制圧も必要不可欠かと」

 

「確かに…もし城内に太平道の幹部がいるのであれば、奴らを足止めしなければ金仙丹の破壊は難しいだろう」

 

「それじゃあ、遊撃隊には特に選りすぐりの兵を使う必要があるわね」

 

「あと…太平道の幹部を城から引きずり出す為にも、囮となる部隊にもおれ達の誰かがいた方が良さそうだな」

 

雪蓮、燈、華佗、風鈴、サンジの言葉にみんな頷く。

 

「だが、天の御遣いだけに任せるつもりは毛頭ねェぞ!」

 

「当然だ!どこに配置されようとも、城内に侵入して暴れ回ってやるぞ!」

 

「例え天の御遣いでなくても、あたし達が相当暴れればアイツらを引きずり出せるだろ!」

 

「于吉や左慈達には敵わずとも、せめて二十八宿将や十二黄道将だけでも我らで討ち取ってみせましょう!」

 

炎蓮、星、翠、愛紗の言葉に鈴々や華琳、蓮華達も力強い笑みを浮かべて頷く。

 

「それじゃあ、改めて布陣と明日の行動について軍議を行う!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。

 

「軍議、長引きましたね…」

 

すっかり夜が更けた頃、ルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルック、桃香、愛紗、鈴々、星、朱里、雛里は宮殿を出て、自分達の陣へ向かっていた。

 

翠は鶸と一緒に涼州軍の陣に向かった。

 

「いよいよ戦いか…。大丈夫かな…」

 

不安そうにする桃香。

 

「心配ないのだ!桃香お姉ちゃんは必ず鈴々が敵の真っただ中に放り込んでやるのだ!」

 

「あ、ありがとう鈴々ちゃん…」

 

桃香を始め、皆鈴々の言葉に苦笑いする。

 

「けど…私が心配なのはその後で…。ルフィさんのおかげで少しは戦えるようになったけど、まだまだ弱いし…」

 

「心配すんな!」

 

「!」

 

「おれ達がいる!だから絶対に大丈夫だ!」

 

「ルフィさん…」

 

「そうですぞ姉上」

 

愛紗が桃香の手を握る。

 

「愛紗ちゃん…」

 

「太平道は確かに強敵です。しかし、我らの力を合わせればできぬ事などありません!」

 

「そうなのだ!鈴々達がついているのだ!」

 

「ああ!」

 

鈴々とルフィもその手を重ねる。

 

「私もいるわよ」

 

「このキャプテン・ウソップ様だってついてるぜ!」

 

「おれだっているぞ!」

 

「おれも~♡」

 

「ヨホホ!私も!」

 

「ドンとおれ達に任せとけ!」

 

「私も」

 

「戦う事はできませんけど、私もいますよ」

 

「私もです」

 

「頼もしい兄妹と仲間、それに天の御遣い様がついてんだ。安心しろ」

 

ナミ、ウソップ、チョッパー、サンジ、ブルック、フランキー、ロビン、朱里、雛里、ゾロもその手を重ねる。

 

「皆さん…」

 

「仲良き事は美しき事かな!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

その時、どこからともなく声が聞こえた。

 

「あ!あれは…!」

 

桃香達が宮殿のてっぺんを見ると…

 

「ある時は吹雪に溶けた風来坊…またある時は落ち担当の締めくくり役…。しかしてその実態は―――乱世に舞い降りた一匹の蝶!美と正義の使者、華蝶仮面!満を持してついに見参!」

 

「きゃ~!華蝶仮面様~!」

 

「あいついつの間に?」

 

「いねェと思ったらあんなトコに…」

 

「今までで一番高いのだ!」

 

「流石に跳ばないか…」

 

「懐かしいわね…メンマ子龍…」

 

「おいナミ…華蝶仮面と一文字もカスってねェぞ…」

 

「あれが…華蝶仮面…?」

 

「実際に見るのは初めてですねー」

 

「あら、ステキな仮面ね」

 

「?皆さんあの人とお知り合いなんですか?」

 

「雛里ちゃんもわからないんだ…」

 

「なかなかスーパーな仮面じゃねェか!」

 

「カッコイイなー!誰だアレ⁉」

 

「強敵との戦いを迎えるそなたへの贈り物だ!受け取れ!」

 

桃香、ルフィ、ゾロ、鈴々、愛紗、ナミ、ウソップ、サンジ、ブルック、ロビン、雛里、朱里、フランキー、チョッパーがそれぞれ反応するのを余所に、華蝶仮面は緑色の蝶の仮面を桃香に投げ渡す。

 

「その仮面を着けて出陣すれば身体の奥底から力と勇気がみなぎり、必ずや悪に打ち勝てるであろう!では、さらばだ!トゥ!」

 

華蝶仮面は跳び去って行った。

 

「…跳んだぞ?」

 

「大丈夫だろうか?」

 

「まァあいつの事だ。死にゃしねェだろ」

 

一応、華蝶仮面の身を案じるルフィと愛紗にゾロはそう答える。

 

「華蝶仮面様~!ありがとうございます~!ねェねェどうかな⁉この仮面似合う⁉」

 

「うんうん♡すっごく似合ってる♡きゃわいいよ桃香ちゅわ~ん♡」

 

「まさか…本気でそれ着けて戦に出る気?」

 

冷めた目で見るナミ。

 

「!」

 

その時、桃香が仮面を着けているのを見て、朱里は()()()を思いついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後、曹操軍のある天幕。

 

『真桜!今ちょっと時間いいか⁉』

 

「?どないしたんやアニキ?こんな時間に?」

 

外からの声に、真桜は入口を開ける。

 

「ちょっと手伝って欲しい事があるんだが…。主に材料調達の面で…」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、張三姉妹の小屋。

 

『夜分遅くに申し訳ありません!天和さんいますか⁉』

 

「その声…ブルックさん?」

 

天和は戸を開ける。

 

「天和さんにお願いしたい事があるのですが…。無論、断っても構いません!」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、郿塢城。

 

城内の宮殿にある大広間で、馬元義と幹部達がお茶を片手に豪華な料理を味わっていた。

 

「洛陽まではもう少し!今日は前々夜祭だ!」

 

太平道幹部、二十八宿将“傅士仁(ふしじん)”。

 

「酒を飲めないのが残念だがな…」

 

太平道幹部、二十八宿将“潘濬(はんしゅん)”。

 

「ここに来て体調を崩し、明後日の戦に支障がでは大変な事になりますからな」

 

太平道幹部、二十八宿将“楊松(ようしょう)”。

 

「今夜と明日の辛抱だ。それ以降は毎日酒池肉林の生活ができるぞ」

 

太平道幹部、二十八宿将“苟安”。

 

「金を盗めば賊だが、国を奪えばたちまち英雄!世の中はちょろいもんだぜ!へーはっはっはっは!」

 

太平道幹部、二十八宿将“張燕”。

 

「天下の全てが手に入るのであれば、商いも盗みも必要ないですな」

 

太平道幹部、二十八宿将“田氏”。

 

「思えば長い計画だったぜ…。だがもうすぐ、全てが叶う!」

 

太平道幹部、二十八宿将“左豊”。

 

「優秀なおれ達がずっとずっと部下扱いされる屈辱の日々…!」

 

太平道幹部、二十八宿将“胡車児”。

 

「本当に世界を支配するべきなのが誰か…思い知らせてやるぜェ!」

 

太平道幹部、二十八宿将“王双(おうそう)”。

 

「まァ…今までずっと掌の上で上手く踊ってくれていた事には、感謝してやってもいいがなァ…」

 

太平道幹部、二十八宿将“韓浩(かんこう)”。

 

「私達としては…太平道と出会えた良縁を感謝していますよ!」

 

太平道幹部、二十八宿将“治無載(ちむたい)”。

 

「長となるべき筈なのに認められなかったおれ達に能力(チカラ)を与え、頂点へと昇る機会をくれた!」

 

太平道幹部、二十八宿将“魁頭(かいとう)”。

 

「あの時太平道と出会えなければ、こうして天下に手が届く事も無かっでしょうしね…!」

 

太平道幹部、二十八宿将“尤突(ゆうとつ)”。

 

「洛陽にいる連合軍さえ潰せば、もう我々に歯向かおうとする者はおるまい。明後日の戦さえ済めばあっという間だ」

 

太平道幹部、二十八宿将“華歆”。

 

「あちしが南蛮を統一し、絶対魔王と恐れられる日ももうすぐだっしゃ!」

 

太平道幹部、二十八宿将“木鹿王”。

 

「おれが匈奴を支配する日ももうすぐよ!」

 

太平道幹部、二十八宿将“呼廚泉(こちゅうせん)”。

 

「袁家の当主の座と代々伝わる白鳥の回しがわたくしのものになる日も、もうすぐですわ!」

 

太平道幹部、二十八宿将“袁胤”。

 

「…あなたもアレが欲しいの?」

 

太平道幹部、二十八宿将“許攸”。

 

「やっぱり袁家の美に関する感覚は理解できないわね…」

 

太平道幹部、二十八宿将“逢紀”。

 

「何にせよ待ち遠しいぜ!早くぶっ潰してやりてェ!」

 

太平道幹部、二十八宿将“彭義”。

 

「そういえば…前に刀剣の御遣いが涼州に来た時は咄嗟に退いたが、あれは正解だったな…」

 

太平道幹部、二十八宿将“楊秋”。

 

「左慈様と互角に戦える様な奴相手じゃ、どう考えたって勝ち目がねェしなァ…」

 

太平道幹部、二十八宿将“侯選”。

 

「おれ達じゃ天の御遣いの首を取るのはまず不可能ってのは残念だな…」

 

太平道幹部、二十八宿将“苗沢(びょうたく)”。

 

「だが、天の御遣い以外にも価値のある首はいくらでもあるだろ?」

 

太平道幹部、二十八宿将“秦慶童(しんけいどう)”。

 

「その通りよ。そんなにがっかりする事ないわよ」

 

太平道幹部、二十八宿将“雲英(うんえい)”。

 

「もっとも…天の御遣い以外の連中だったら、首だけじゃなく生け捕りにする事も余裕だろうがな!」

 

太平道幹部、二十八宿将“何義(かぎ)”。

 

「それにしても…母様も姉様も、他の連合軍の奴らもわざわざ負け戦に挑むだなんてつくづく愚かよね…」

 

太平道幹部、二十八宿将“孫翊”。

 

「私の所の曹操達も同じですわ…」

 

太平道幹部、二十八宿将“曹安民”。

 

「民だの仁義だのくだらない事にかまけている様な輩では仕方があるまい…」

 

太平道幹部、十二黄道将“夏侯恩”。

 

「全く…何故優秀な私達が愚民共の都合などを考えないといけないのかしら…」

 

太平道幹部、十二黄道将“趙範(ちょうはん)”。

 

「愚者の考えは理解できないねェ…」

 

太平道幹部、十二黄道将“李粛”。

 

「ほーんと!弱者なんて私達の玩具なのに!」

 

太平道幹部、十二黄道将“李春香”。

 

「ま、今回の戦で負ければ、奴らもおれ達が正しく優秀である事を理解できるだろう。否が応でもな」

 

太平道幹部、十二黄道将“窄融(さくゆう)”。

 

「もっとも…理解した所で手遅れですがな!」

 

太平道幹部、十二黄道将“阿貴(あき)”。

 

「おれ達の優秀さを認めなかった連中に天誅を下すのよ…!」

 

太平道幹部、十二黄道将“踏頓”。

 

「いや…案外生かしておれ達の下でコキ使うのも面白いかもしれねェぞ…」

 

太平道幹部、十二黄道将“孟達”。

 

「そりゃいい!孫策とかがおれの家来になるなんて最高だ!」

 

太平道幹部、十二黄道将“許貢”。

 

「ならおれは曹操がいいな…。あいつがおれの正体を知ったうえで、おれの部下になるのだとしたら…!」

 

太平道幹部、十二黄道将“張闓”。

 

「いよいよ楽しみになって来たな!とっとと群雄気取りの小娘共をぶっ潰そうぜ!」

 

太平道幹部、十二黄道将“程遠志(ていえんし)”。

 

「少しばかり武の腕や知恵があるからと調子に乗った哀れな者達め…」

 

太平道幹部、十二黄道将“鄧茂(とうも)”。

 

「本当に才のある者がどれ程のものか、思い知る時です…」

 

太平道幹部、七星将“禰衡”。

 

「天下を満喫できるのは、我らの様な本当に類稀なる英雄のみ」

 

太平道幹部、七星将“馬謖”。

 

「どうして今までの世の中は、馬鹿ばかりが上に立っていたのか…」

 

太平道幹部、七星将“黄皓”。

 

「いよいよそんな世の中を作り変える時だ」

 

太平道幹部、七星将“蔡瑁”。

 

「これからは私達が上に立って、下等な人々を正しく管理しないとね」

 

太平道幹部、七星将“張姜子(ちょうきょうし)”。

 

「けど、天の御遣いとかいう奴らも、考え方によっては可哀そうな連中じゃない?」

 

太平道幹部、七星将“夢梅道士”。

 

「確かに…あんな小娘共や愚民共に担ぎ上げられたばかりに、我々に殺されるとは…」

 

太平道幹部、七星将“孔融”。

 

「ですが…彼らへの同情は許しませんよ…!」

 

太平道幹部、二太極“于吉”。

 

「ああ…!奴らだけは必ず首を刎ねる…!」

 

太平道幹部、二太極“左慈”。

 

「今度こそ…雪辱を果たす!そしてそこから更なる私の野望が幕を上げる…!」

 

太平道総大将及び皇帝、“馬元義”。

 

「更なる野望とは?」

 

「本当の意味での天下の統一……そして天の国への侵略だ!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

「これ程の力があるのだ、漢王朝だけで終わるのは勿体ない…!遥か西の地を始め、この世界の全てを征服する!それから天の国へ攻め入り、御遣い共の故郷を滅ぼし、天上天下の全てを我らで支配するのだ!」

 

「おお!」

 

「なんと…!」

 

「素晴らしい野望ね!」

 

「こりゃまたとんでもねェ事を思いついたなァ!」

 

「馬元義様を総大将にして正解だったな!」

 

「いままでこれほどまでに器の大きい方は見た事ありませんなァ…!」

 

「しかし…そうなると洛陽を攻め落とした後も忙しくなりそうですな」

 

「ま、少しくらいは酒と女で遊び、のんびりしても大丈夫だろう」

 

「そういえば馬元義様、張譲が集めておいた宮女達ですが、勿論あなたから好きな者を選んで…」

 

「いえいえ、それは結構です」

 

「?結構とは?」

 

「実は私は既に貴妃や側室とする者達を決めておりましてな…。その事に関して貴殿らに折り入って頼みたい事があるのですが…」

 

「何でしょうか?」

 

「私は是非、連合軍の関羽将軍を貴妃にしたいのです。その他にも張飛将軍や孔明殿などを側室や妾にしたいと思っておりまして…。彼女らを生け捕りにしていただけないでしょうか?」

 

「成程…確かに女としての質は悪くなかったな。良いだろう」

 

「我らの力があれば、あやつらの生け捕りくらいなんて事ない!」

 

「いっそ連合軍の軍師や部将の内、女性は全員生け捕りにしてやりましょうか⁉」

 

「おお!それなら最強の妻妾になりますな!」

 

「あの袁紹や曹操、孫策らが馬元義様の娼婦になるなんて、想像しただけで笑いがこみあげて来るわ!」

 

「なら、ついでに皇帝姉妹や何太后も加えましょうよ!」

 

「だが生け捕りにした後はどうする?素直に服従するとも思えんが…」

 

「最初は人質をとって服従させ、暗示などで少しずつ洗脳していくのが良いでしょう」

 

「成程」

 

「では決まりですな!」

 

その時…

 

「うおっ⁉鼠⁉」

 

「?鼠?」

 

「どっから入りやがったんだ⁉」

 

「叩き潰せ!」

 

「よせ!宴席の中で鼠の死骸は気分が悪くな…」

 

「待て!」

 

騒ぎ出す幹部達を左慈が静める。

 

するとネズミは馬元義、左慈、于吉らの目の前まで走って来た。

 

「…お前、まさか張譲か?肯定するならば三回鳴け」

 

「チー、チー、チー」

 

左慈の問いにネズミは三回鳴いて答える。

 

「やはりそうか…。その姿になってもまだ生きていたとはな」

 

「…で、わざわざ我々の所にまでやって来てどうしたのです?もしや元の姿に戻して欲しいとでも?否定ならば二回、肯定ならば三回鳴いて下さい」

 

「チー、チー、チー」

 

「そんな事を言うのであれば、何か我らと交渉できる様な手土産があるのだろうな?」

 

「チー、チー、チー」

 

「ほう…。誰か、小さめの箱に砂を入れて持ってこさせなさい」

 

 

 

 

 

 

「では張譲殿、取引の材料に何を持って来たのか、砂上に字を書いて教えて下さい」

 

「チチチー!」

 

張譲は一文字ずつ字を書いていく。

 

「『龍の爪』…⁉天の御遣いの伝説に出てくる宝剣の事か!」

 

「そして……『劉備』がそれを手にしていると…?成程、確かに良い情報だ。おい誰か、解毒剤の丸薬があっただろ。持って来い」

 

「チチー!」

 

「ええ、取引は成立です。薬は差し上げますが、元に戻るのはこの城を出てからでお願いしますよ」

 

「あなたの裸を見せられるのはたまったもんじゃないですからな!それに他の者達が侵入者だと勘違いして殺してしまうかもしれませんしねェ?」

 

「チチチー!」

 

張譲は運ばれて来た丸薬を咥えて去って行った。

 

「左慈様、于吉様、馬元義様も、意外とお優しいのですね」

 

「あいつが人間に戻ったとしても別に害はないからな」

 

「もっとも、宮廷での立場を失った宦官が生きていく事ができるとは思えないがな」

 

「確かに…!鼠のままどこかの穀物蔵に潜んでいた方が良かったかもしれませんな!」

 

「「「「「「「「「「はーっはっはっはっはっは!」」」」」」」」」」

 

 

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