ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
決戦前日、早朝、洛陽の宮殿、評定の間。
連合軍の全部将、全軍師、海賊“麦わらの一味”のメンバーが集められた。
正面の玉座に空丹と白湯が座り、左右には瑞姫と黄が控え、その前に華琳、桂花、雪蓮、冥琳、傾、楼杏、風鈴、朱儁、麗羽、真直が並び立ち、残りの者達はその前に机を囲う形で立ち並ぶ。
「これより、明日の戦の陣立てを発表する!」
傾が宣言し、桂花、冥琳、楼杏、真直が順に名前を読み上げていく。
「敵正面!兵は各二万五千、六部隊の計十五万!
指揮官は―――前衛中央、何進!前衛右翼、公孫賛!ウソップ!前衛左翼、黄祖!フランキー!後衛中央、袁紹!後衛右翼、董卓!後衛左翼、孟獲!」
「洛陽の守備及び天子様の護衛として、二つの隊、各隊一万、計二万の兵を配置!
指揮は孫尚香!袁術!軍師として張昭!陸遜!魯粛!張勲!陳珪!陳登!部将として典韋!李典!周泰!
なお、張昭、陸遜、陳珪、陳登、典韋、李典には火薬と“こーら”の製造、周泰にはその運輸を併せて命ずる!」
「敵後方伏兵!兵は左右に分かれて布陣し、兵力はそれぞれ五万の計十万!指揮官は、右翼、曹操!ナミ!ロビン!左翼、孫策!チョッパー!ブルック!」
「敵右翼伏兵!将一人につき兵一千の計三万!
布陣は―――右一の陣、呂布!左一の陣、張遼!
右二の陣、華雄!左二の陣、孫乾!
右三の陣、徐晃!左三の陣、于禁!
右四の陣、甘寧!左四の陣、太史慈!
右五の陣、皇甫嵩!左五の陣、盧植!
右六の陣、糜竺!左六の陣、糜芳!
右七の陣、黄忠!左七の陣、厳顔!
右八の陣、魏延!左八の陣、馬岱!
右九の陣、馬休!左九の陣、馬鉄!
右十の陣、馬超!左十の陣、趙雲!
遊撃部隊!右、ゾロ!左、サンジ!副将として、許緒!曹純!
突撃部隊!ルフィ!劉備!関羽!張飛!軍師として諸葛亮!鳳統!両名の護衛として楽進!華佗!」
「伏兵部隊はすぐさま移動し、敵に気取られぬよう所定の場所に伏せろ!以上!各軍行動開始!」
傾の宣言で全員すぐさま評定の間を出て、慌ただしく動き出した。
▽
「桃香、絶対に生きて帰って来るんだぞ」
「うん!パイパイちゃんの方こそ気を付けてね!」
「白蓮だ!」
「璃々、水鏡先生の言う事をよーく聞いてお留守番しているのよ」
「うん。お母さん、お父さん、みんなもきをつけてね」
「おう、心配すんな!」
「水鏡先生、璃々ちゃんの事、よろしくお願いします」
「ええ。朱里、雛里、皆さんも気を付けて」
「香風さん、必ず無事に帰って来て下さいね…」
「栄華様達も」
「柳琳!一緒には戦えないっすけど、頑張るっすよ!」
「ええ!絶対に勝ちましょう!」
「季衣、負けないでね!」
「流琉もね!」
「真桜、しっかりやれよ」
「おう!凪と沙和こそな!」
「勿論なの!」
「シャオ、気を付けてね。雷火、穏、包、私の妹をよろしく頼むわよ」
「「「「はい!」」」」
「梨晏達も十分に気を付けてね」
「わかってるよ。雪蓮達も気を付けてね」
「亞莎、蓮華様を任せたぞ」
「御意!思春殿も、ご武運を!」
「詠ちゃん、みんな、頑張りましょう」
「心配無用だ!我らは簡単に死んだりせん!」
「詠、ねね、ウチらの主を頼むで!」
「勿論よ!」
「恋殿達も気を付けて!」
「絶対に負けない…!恋が…みんなを守る…!」
「それでは陛下、劉協様」
「行って参ります」
「ええ、行ってらっしゃい。楼杏、風鈴、二人とも頑張ってね」
「健闘をお祈りしております!」
「お~い!お前ら~!ちょっと待て~!」
伏兵に向かう者達が挨拶をしていると、フランキーを先頭に麦わらの一味が箱を抱えて来た。
「お前ら、これらいくつか持って行け」
「これって…電伝虫?」
「太平道の奴らが使っていたのを、一度野生に戻しておれが番号を設定しなおしたんだ。情報の共有に使える」
「使い方はこれに書いておいたわ」
「成程。確かにあれば役に立ちそうね」
「こっちの黒い奴は盗聴…他の電伝虫の会話を盗み聞きするのに使う。もしかしたら太平道の連絡が聞こえるかもしれねェ」
「わかったわ。有効に使わせて貰うわね」
そして、伏兵部隊は出陣した。
▽
出陣後、突撃部隊の陣。
その一角。
「いいか野郎共!いよいよ明日は決戦だァ!」
「「「「「「「「「「はい!サンジ殿!」」」」」」」」」」
「明日、おれ達は曹純ちゃんと共に敵陣のど真ん中に突っ込んで行く!」
「「「「「「「「「「はい!サンジ殿!」」」」」」」」」」
「いいか⁉何が何でも曹純ちゃんを守り抜くぞォ!」
「「「「「「「「「「はい!サンジ殿!」」」」」」」」」」
「指一本触れさせるなァ!」
「「「「「「「「「「はい!サンジ殿!」」」」」」」」」」
サンジが虎豹騎を激励している様子を、他のみんなは少し離れた場所から冷めた目で見ていた。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「サンジさん、もうすっかり虎豹騎の隊長として皆さんから認められていますね」
訂正、柳琳だけは微笑ましい目で見ていた。
「…大抵の人ってあの空気について行けなくて、ボクの虎衛軍に移動になるんだけど…」
「もの凄く馴染んでる…」
「似た様なバカ同士なんだろ…」
「ルフィ~!」
「ん?」
季衣、香風、ゾロがそんな事を言っていると、鈴々と愛紗、そして先日華蝶仮面から貰った仮面を着けた桃香が大きな葛籠を持って来た。
葛籠には弁当という札が張られている。
「あ!」
すると突然、翠が蒲公英にゲンコツをくらわした。
「いった!な、何すんのさ⁉」
「何すんのさじゃない!たんぽぽ、お前また葛籠の中なんかに隠れて!この大事な時になにするつもりなんだ⁉」
「お姉ちゃん…蒲公英はそこにいるでしょ…」
「へ?」
鶸に言われ、翠は間の抜けた顔になる。
「じゃあこの中には何が入ってんだよ⁉」
「たんぽぽが知る訳ないじゃん!」
「この中には
鈴々が言う。
「凄く…」
「大事なもの?」
どうやらその場にいる者の中で中身を知っているのは、鈴々の他にゾロやサンジ、桃香、愛紗、朱里、雛里だけらしく、他は首をかしげている。
「それでルフィ、明日の出陣でこの葛籠を背負って金仙丹の所まで運んで欲しいのだ」
「そうか。わかった」
「お願いします。大事なものですので、あまり傷つけない様にお願いします。それから明日、上の方に少し弁当としてお肉を入れておきますので、小腹が空いたらどうぞ食べて下さい」
「ホントか⁉」
▽
一方、洛陽に残っていた者達も行動を始めていた。
「こうしてっと…よーし完璧や!これで移動式厨房、移動式薬剤調合室の完成や!」
「これで戦場でもコーラと火薬を製造できますね」
「真桜、内部に設置してある絡繰りは大丈夫だな?」
「勿論や!作動実験もしたし準備万端やで」
「あの…フランキーさん達…」
「ん?地和に人和、どうしたんだ?」
「その“こーら”と火薬を作るの、私達も手伝えないかしら?」
「こんな状況だし…何もしないっていうのも落ち着かないから…」
「それでしたら調理の方を手伝っていただけますか?火薬を扱うより安全ですし」
「わかったわ」
「けど…大丈夫ですか?戦場に立つ以上、少なからず危険はありますよ?」
「一応ブルックさんに稽古つけて貰ったから、それなりは戦えるわよ」
「曹操様に頼んで、作って貰った剣もあるし」
そう言って二人は、ブルックの仕込み杖を模した細めの剣を見せる。
「それは良いですね。少しでも武の心得がある者が一人でも多ければ、心強いです」
そんな事を言いながら黄がやって来た。
黄は腰に刃がノコギリの様になっている剣を着けている。
「えっと…趙忠さんも戦うつもりなんですか?」
流琉が訊ねる。
「空丹様に被害が及ぶ様な事態になるならば…。その様な事態にならない事を祈っておりますが…」
「ま、黙って殺されたり奴隷にされるくらいなら、
そう言いながら瑞姫も大きな荷物を手にやって来た。
「ふふ…この無数の刃先で斬られれば、さぞかし痛いでしょうね…。空丹様に危害を加える様な輩には、最上級の苦痛を味わわせてやりますわ…。ふふふふ…」
▽
そして夜も更けてきた頃…
「…………」
愛紗は一人、俯きながら陣の中を歩いていた。
(……私は…)
それは太平道の宣戦布告を受けた次の日の夜の事だった。
『愛紗ちゃん…』
『何ですか姉上?』
『単刀直入に訊くけど、愛紗ちゃんはルフィさんの事どう思ってるの?』
『え…⁉ど、どうと言われましても…』
『…………』
『どこか抜けておりますが…戦えば強く頼りになる兄上だと…』
『本当にそれだけ?』
『そ、それ以外に何がありますか?』
『……愛紗ちゃん、さっきの軍議で華佗さんが言っていた管路の予言の最後、覚えている?』
―――――天下に太平戻りし時、蒼天より迎えの箱舟が現れ、御遣いは天へと帰還する
『あの言葉が本当なら…この戦いが終わったら、きっとルフィさん達は…』
『……仕方がないではありませんか。ルフィ達には帰るべき場所があるのですし…』
『だったら尚更、帰る前に…今の内に後悔しない様に…』
『今は太平の世を取り戻す為に戦わねばならぬ時です!他の事を考えるなど―――』
パァン
『⁉』
突然、桃香は愛紗に平手打ちをした。
『愛紗ちゃん!自分を幸せにしようとしない人が、誰かの幸せを作れるわけないでしょう⁉』
『っ!』
『私、前に言ったよね?私はみんなが笑顔で暮らせる世界を作りたいって。だから、愛紗ちゃんにも笑顔でいて欲しい』
『姉上…』
『所詮他人事だから、私はこれ以上何も言わないよ。…けど、お願いだから後悔だけはしないで…』
『…………』
それから何も答えが出ないまま、『まだ一年ある』と考えている間にここまで来てしまった。
(後悔しないようにか…)
自分が何を想っているのか、どうしたいのか整理がつかない。
ただ、不安や苦しみに似た何かが胸の内に渦巻いているのは確かだった。
(あ…)
思い悩んでいると、一本の木に寄り掛かって座り月を見上げているルフィを見つけた。
「…!愛紗」
「ルフィ。……あ、あの…」
ルフィに気付かれ、立ち去るのも変なので何か話そうと口を開く。
「?」
「……と、隣、座っても良いですか?」
「おう、いいぞ」
「…………」
「…………」
取り敢えず座ったものの、愛紗は何を話せばいいのかわからず無言になる。
「……あ、あの…」
「ん?」
「明日の戦なのですが…」
「心配か?」
「えっと…」
「…愛紗」
「は、はいっ⁉」
何を言われるのか気になり、思わず体に力が入る愛紗。
「おれがついてる」
「……え?」
「おれはずっとお前の味方だ」
そう言いながらルフィは愛紗の頭に自分の麦わら帽子をかぶせる。
「お前が困ってたら、おれが必ず助けてやる。だから、心配すんな!」
「ルフィ…」
愛紗はルフィの顔を正面から見つめる。
そこには真っ直ぐに前を見ているルフィの顔があった。
自分達と同じ様に、強い志を抱いた人の顔。
だからこそ、愛紗はこの男を大切な人だと思えた。
「あの…ルフィ…」
「ん?」
「私達は…ずっと一緒ですよね?」
「ああ!」
「たとえ―――隣にいなくても、ずっと一緒ですよね?」
「もちろんだ!」
「はい…!」
自分の想いや気持ちに整理がついたわけではなかった。
けど不思議な事に、その胸の内から不安や苦しみはもうなくなっていた。
「それと…お願いがあるのですが…」
「何だ?」
「この帽子、明日の出陣に被っていっても良いでしょうか?」
「―――愛紗、それはおれの大事な帽子だ」
「……はい…」
「
「はい…!…あの…もう一つお願いが…」
「何だ?」
愛紗はルフィの肩に頭を乗せる。
「暫く…こうしていてもよろしいでしょうか?」
「おう、いいぞ」
「ありがとうございます…」
やがて夜も更けてくるとルフィが眠ってしまったので、寝床まで連れて帰った後、愛紗も自分の寝床に戻り眠った。