ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第18話 “罠”

翌日―――

 

一行は夕刻前に張繍がいる宛城(えんじょう)に到着した。

 

「そういえば曹操殿、一つ訊いてもよろしいでしょうか?」

 

行軍中、星が華琳に訊ねた。

 

「何かしら?」

 

「張繍が治めているということは、ここは荊州、南陽(なんよう)郡ということ。曹操殿は確か兗州、陳留郡の太守。あまりにも遠くありませんか?」

 

「張繍本人から頼んだらしいわ。『黒山賊は自分の手に負えないため、精鋭兵が多い曹操軍の力をお借りしたい』ってね」

 

「成程…」

 

「しかし、これだけの兵を連れて陳留からとなると、相当の負担が掛かるのでは…?」

 

「仕方ないわよ。これも将来のためだもの」

 

「将来?」

 

「…あなた達には話してあげましょう」

 

そう言って華琳はルフィ、愛紗、鈴々、星を見渡す。

 

「私は漢王朝を滅ぼす。そして私が王になり、新しい私の国を作るわ」

 

「「「「⁉」」」」

 

「この地もいずれ私の領土となる。だから私はこの地の治安のために、遠征してきたのよ。

それにこうして我が軍の力を見せつけておけば、平定もしやすくなるしね」

 

「「「「…………」」」」

 

大胆不敵なその発言に、ルフィ達は全員黙ってしまった。

 

華琳は話し続ける。

 

「ついでに言っておくわ。―――あなた達全員、我が軍に下りなさい」

 

「「「!」」」

 

「…………」

 

「私ならあなた達の理想を叶えることが…あなた達が望む世の中を作ることができるわ。あなた達ほどの剛の者なら、歓迎するわよ」

 

「愛紗達は知らねェけど、おれは行かねェ」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

即答するルフィに、今度は愛紗達だけでな、く華琳達も驚く。

 

「どうして?」

 

「お前の部下になるのはイヤだ」

 

「…そう」

 

ルフィと華琳は、互いに面白いものを見るような目で、視線を交わす。

 

「まァ、返事は今でなくてもいいわ。関羽、張飛、趙雲、いい返事を期待しているわよ」

 

「「「…………」」」

 

一行は話を切り上げ、城に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~宛城、謁見の間~

 

華琳は張繍と会見していた。

 

「曹操殿、此度の遠征、誠にありがとうございました」

 

「構わないわ」

 

「朝廷には私の方から、上奏(じょうそう)しておきます。私からのお礼の品はすでに曹操殿の陣へ運ぶよう、申しつけております」

 

「そう。それじゃあ、此度の戦で手柄を立てた者が数名いるから、その者達についても上奏してもらえる?」

 

「はい、お任せ下さい。しかし、今日はもう日が暮れますから、細かいことは明日にしましょう」

 

「…できれば急いで済ませたいのだけれど…」

 

「まあまあ、そう言わずに…」

 

張繍は華琳の耳元に寄り…

 

「曹操殿の趣味に合わせたお屋敷もご用意してありますので…」

 

「!…そう…気が利くわね…

 

結局、その日はそれで終わりとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜―――

 

「…これは…悪くないわね」

 

華琳は部下達に、見張りの兵を残して今日はもう休むように伝え、自分は桂花と一緒に張繍が用意した屋敷に案内してもらっていた。

 

入ってみると、室内のつくりはもちろん、家具や調度品は全て華琳の趣味にぴったりで、お香まで用意されていた。

 

奥の部屋には、身体を密着させれば5人は一緒に寝れそうな天蓋付きの寝台があった。

その部屋は全体的にどこか艶かしい雰囲気が漂い、壁が厚く、大声をあげても他の部屋には聞こえないようになっている。

 

「気に入ったわ。今晩はここで過ごすとしましょう」

 

「わかりました。では、酒と食事を用意させます」

 

部屋まで案内した張繍の従者は、そう言って出て行った。

 

(はあ~…♡)

 

華琳の隣で、桂花は顔を赤らめながらうっとりと寝台を見ていた。

 

(今宵はあの寝台で、華琳様と…♡ウフフフフフ…♡)

 

「桂花」

 

「(きたっ!)は、はい!」

 

「関羽を呼んできてもらえるかしら?」

 

「…………」

 

一瞬、桂花は完全に固まった。

 

「関羽のような者と戯れるなんて、滅多にない機会だもの。今夜は彼女と二人で過ごしたいの。呼んできてくれる?」

 

「……は、はい…」

 

桂花は返事をして屋敷を出る。

 

(キィィィィィ~~~~~‼)

 

そして声にならない叫びをあげ、血の涙を流しながら、愛紗を探しに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃―――

 

「うわ~、たくさんあるのだ~!」

 

「張繍殿の方から頼んだとはいえ、ここまでするとはな…」

 

鈴々と星は、曹操軍の陣に荷物が運ばれる様子を見ていた。

その荷物は張繍が遠征のお礼として渡したものであり、武器や食料などの軍需物資はもちろん、金銀や真珠、絹などの高価なものもあった。

 

ちなみに曹操軍は、春蘭などの一部の将兵が城内に宿泊用の部屋を用意してもらっており、愛紗達もそこで寝ることになった。

城外の陣に待機している兵にもご馳走、見張りや職務がある兵以外には酒も振る舞われた。

 

「…はにゃ?」

 

「どうした鈴々?」

 

「何かあの荷物から変な臭いがしたのだ」

 

「変な臭い?」

 

「お~い!鈴り~ん!星~!」

 

「愛紗!」

 

「どうした?」

 

「ルフィ殿を見なかったか?」

 

「見てないのだ」

 

「いなくなってしまったのか?」

 

「ああ。私としたことが、縛っておくのを忘れてしまってな…」

 

「陣の中にはいないようだが、騒ぎ起こす前に捕まえた方が良いだろうな」

 

「ああ。最悪、曹操殿にまで迷惑を掛けてしまう」

 

「よし、三人で探すとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~???~

 

「手筈の方は?」

 

「今のところ、支障はありません」

 

「最後まで気を抜くでないぞ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「曹操様、お食事をお持ちいたしました」

 

「ありがとう」

 

華琳が張繍の用意した屋敷でくつろいでいると、張繍の従者が数人分の酒と肴、食事を持ってきた。

 

「彼らにも何か用意してもらえるかしら?勿論、お酒は駄目だけどね」

 

華琳は、屋敷の外に待機させた自軍の兵士たちを差してそう言う。

 

「畏まりました」

 

従者達は出て行った。

 

「さてと…」

 

従者達がいなくなると、華琳は懐から銀でできた箸を取り出し、それで用意された酒や料理を調べ始めた。

 

「…毒は入っていないようね」

 

銀は人体に毒となる物質に反応し、変色する性質がある。

そのため、華琳は常に銀の箸を持ち歩き、自分が口にするものは必ずそれで調べていた。

 

「さてと…この沢山の酒と食事はどうしようかしら…。

張繍は私が複数の女と戯れると思って、これだけの食事を用意したのでしょうけど、あいにく今日は関羽と二人きりで過ごしたいし…」

 

「美味そうだな~それ」

 

「!」

 

不意に声を掛けられ、華琳が窓の方を見ると、窓から逆さになったルフィが部屋を覗いていた。

 

「あなた…何でそんな所に?」

 

「ヒマだから屋根に登ってた。―――で、美味そうな匂いがしたから、覗いてみた」

 

「そう…。よかったら食べる?」

 

この男は自分と愛紗の濃密なひと時を、少なくとも故意に邪魔することはない。

そう判断したのか、ルフィを屋敷に招き入れる華琳。

 

「いいのか⁉」

 

「ええ。私じゃ食べきれないし、誰か呼ぼうかと思っていたところなの」

 

そう言うと華琳は酒瓶と肴が盛り付けられた皿を1つずつ手に取る。

 

「私は奥の部屋にいるから、ここにあるのは食べていいわよ。

但し、この部屋からは出ないでもらえるかしら?

それと関羽が来たら、奥の部屋に来るように伝えてくれる?」

 

「うん、わかった!お前、ホントいい奴だな~!」

 

「(単純ね…)それじゃあ」

 

そう言って華琳は奥の、例の寝台がある部屋に向かった。

 

「いっただきまーす!」

 

残されたルフィは、ひたすら食事を楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして奥の部屋に入った華琳は、用心のため持ってきた自身の得物である大鎌、“(ぜつ)”を近くの壁に立てかけると、香を焚き、1人で酒をたしなみ始めた。

 

「良い酒ね…ふふ」

 

これから部屋で愛紗と過ごす時間を考えると、自然と笑みがこぼれた。

 

(関羽だけでなく、あの趙雲という者もなかなかいい女だったわね。

張飛も数年すればいい女になるでしょうし、是非手に入れたいわね。

……あのルフィという男は…不思議な男ね)

 

華琳は行軍の時、自分の勧誘をきっぱりと断ったルフィの様子を思い出す。

 

(あの時の彼…只者じゃない雰囲気だったわ。

昨夜の宴やさっきと同一人物とは思えないほどにね…。

そいえば、昨夜彼は春蘭を一撃で仕留めたって…見かけによらず相当の実力者のようね…興味が尽きな……っ!?)

 

突然、華琳は強力な眠気に襲われた。

必死に抗おうとするが、意識はどんどん薄れていく。

 

(な…何故…?…酒にも…料理…にも…毒は…なかった…筈…)

 

意識がもうろうとする中、華琳の目に先ほど自分が焚いたお香が映る。

 

(ま…さか……お香…に…?……っ)

 

華琳の意識はそこで途絶え…

 

「………すう…」

 

深い眠りに落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~ごちそうさま~!」

 

その頃、ルフィは食事を終えていた。

 

「ん?」

 

ふと、どこからか良い匂いがしてくることに気が付く。

 

「いい匂いだな~。まだどっかに美味ェモンあんのかな~?」

 

そう言ってクンクンと強く匂いを嗅ぎ…

 

「ぐ~…」

 

たちまち眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルフィ殿~!」

 

「ルフィ~!」

 

「お~い!」

 

その頃、愛紗、鈴々、星の3人は城内でルフィを探していた。

 

「…この辺りにもいないようだな」

 

「いったいどこに行ったのだ?」

 

「…………?(それにしても…妙に人通りが少ないな?夜とはいえ、これほど大きな街の中心街のような場所で…まるで建物の中にも人がいないような…?)」

 

星がそんなことを考えていた時だった。

 

「でえェェェェェい!」

 

ガキィィィン!

 

「「「⁉」」」

 

突然、誰かの叫び声と金属同士がぶつかるような音が響き、3人は驚く。

 

「な、何なのだ⁉」

 

「あっちの方からだ!」

 

「行ってみよう!」

 

3人が声と音がする方に向かうと…

 

「でりゃァァァァァ!」

 

ギィィィン!

 

城壁付近の裏路地で、羊くらいの大きさの鉄の塊に向かって、剣を振る春蘭の姿があった。

 

「「「…………」」」

 

「ぜェェェェェい!」

 

ゴキィィィン!

 

「あ、アレは…」

 

「愛紗、あのお姉ちゃん何をしているのだ?」

 

「さ、さあ…?」

 

「だあァァァァァっ!」

 

ガキィィィン!

 

「やれやれ…姉者、またやっているのか…」

 

「夏侯淵殿!」

 

秋蘭がやって来た。

 

「お主達…ああ、あの声と音を聴いて来たのか」

 

「は、はい…」

 

「どりゃァァァァァ!」

 

ギィィィン!

 

「あの…夏侯惇殿は一体何を…?」

 

「お主達…鉄を斬ることはできると思うか?」

 

「鉄を?」

 

「それは…刃物で切断するということですか?」

 

「そうだ」

 

「いくら何でもそれは…」

 

「刃物が鉄でできている以上、鉄以上に硬いものを斬るなど不可能でしょう」

 

「私達もそう思っていた。…だが、それをやった男がいるのだ」

 

「え⁉」

 

「本当ですか⁉」

 

「本当だ。私達も斬るところを見たワケではないが、そうとしか思えなくてな。

それでその男と会った日から、姉者は毎日、ああやって鉄を斬る特訓をしているのだ」

 

「どりゃァァァ!」

 

ガァァァン!

 

「なるほどなのだ」

 

「しかしそれは…何か特別な得物を使ったのでは?」

 

「いや、そいつが持っていたのは、鉄でできた普通の刀だけだった」

 

「にわかには信じ難いですな…一体誰が?」

 

「それが…その者が去った後で、名前を聞いてなかったことに気付いてな…。

まァ目立つ格好だったから、また会えばすぐにわかると思うが…」

 

「どんな格好なのだ?」

 

「髪が緑で腹に腹巻をしていた。そして何よりの特徴が、刀を三本も腰にしていたことだ」

 

「確かに、会えばすぐにわかりそうだな」

 

「あんた達ここにいたのね…」

 

「荀彧殿」

 

今度は桂花が姿を現す。

 

「…あの馬鹿、またやってんの?」

 

「ハアァァァァァッ!」

 

ガギィィィン!

 

「そういえば桂花よ、華琳様を見なかったか?」

 

「…っ!か、華琳様なら…」

 

「?」

 

秋蘭が訊ねると、桂花は愛紗を見ながら、苦虫を嚙み潰したような顔をする。

 

(くっ!この女に華琳様が屋敷で待っていることを伝えれば、華琳様はこの女の毒牙に…!

駄目よ!華琳様の一番の愛人として、こんなどこの馬の骨とも分からない奴に、華琳様を汚させるなんて…!

…けど、華琳様の命に背くわけには…!

ああ…!私は一体どうすれば…⁉)

 

「火事だァ!」

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

桂花が勝手に苦悩していると、どこからかそんな声が聞こえた。

春蘭も手を止め、声がした方を向く。

 

「火事?」

 

「台所で火の不始末でもあったのか?」

 

ドーン!

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

大きな爆発音が聞こえ、愛紗達はただ事でないことを察し、表通りの方へ向かう。

すると…

 

「なっ⁉」

 

「これは…⁉」

 

辺り一面が火の海と化していた。

 

「何なのだ⁉」

 

「分からぬが…早く!住民の避難を…!」

 

「…その必要はなさそうだ」

 

愛紗達が慌てる中、近くの民家の中を覗いていた星がそう言い放つ。

 

「どういうことだ星⁉」

 

「周りをよく見てみろ」

 

星に言われ愛紗と鈴々、春蘭たちも周囲を見渡す。

そして、ある違和感に気が付く。

 

「人が…いない?」

 

火は通りのほとんどの建物に広がっているにもかかわらず、消火、避難、慌てふためく人の姿は全く見えず、声も聞こえなかった。

まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()かのように。

 

「さっきそこの民家を見てみたが、住人はおろか生活の痕跡も見当たらなかった。

おそらくこの火事は、張繍の火計だ!」

 

「まさか、この城ごと私達を焼き殺すつもり⁉」

 

「何ィ⁉」

 

「でも、そんなことをしたら、街の人も死んじゃうのだ!」

 

「だからあらかじめ、住民は避難させておいたのだろう。あるいはこの城は、この時のために作らせた偽の宛城なのかもしれん」

 

「おそらくここにいたのは、領民に扮した兵士だったのだろう。どうも人通りが少ないと思っていたが、そういうことだったのか」

 

「!いけない!ということは華琳様も!」

 

「桂花!華琳様に何かあったのか⁉」

 

「華琳様は今、張繍が用意した屋敷にいるわ!これが張繍の罠だとしたら…!」

 

「その屋敷にも罠が…!」

 

「だとしたら、曹操殿が危ない!」

 

「ルフィ殿も…!」

 

「早く助けに行くのだ!」

 

「桂花!その屋敷はどこだ⁉」

 

「こっちよ!」

 

愛紗達は桂花を先頭に、華琳がいる屋敷に向かおうとするが…

 

「ああっ⁉」

 

屋敷に続く道が岩やガレキ、さらには火のついた丸太や柴草の塊で、ふさがれてしまっている。

 

「張繍め!いつの間に⁉」

 

「どうやら、相当念入りに計画を立てていたようだな…!」

 

「いたぞ!かかれェ!」

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

背後から何者かの声が聞こえ、愛紗達が振り向くと、張繍の兵が襲い掛かってきた。

 

「このォ!」

 

すかさず迎撃する愛紗達!

 

「ええい!早く華琳様を助けねばならぬというのに!」

 

「愛紗!鈴々!夏侯惇殿達も聞いて下され!」

 

「「「「「⁉」」」」」

 

戦いながら、星が話しかける。

 

「燃え盛る障害物を超えるよりは、敵兵をなぎ倒して進む方が楽!

おそらくこやつらは、塞がれている道と、そうでない道を把握しているはず!

こやつらを倒しつつ、ルフィ殿と曹操殿を探しましょう!」

 

「成程…!」

 

「確かに…それがいいかもしれないわね…!」

 

「わかったのだ!」

 

「ではそうするか…!」

 

「行くぞォ!」

 

そして6人は敵に向かっていった。

 

 

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