ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
愛紗達が張繍の火計に気付いた頃―――
「………はっ!―――これは⁉」
香に仕込まれた眠り薬によって、眠っていた華琳が目を覚ますと、すでに屋敷全体に火が広がっていた。
部屋の中を見渡すが、持ち込んだはずの絶が見当たらない。
「―――おのれ、張繍!」
仕方なく華琳は丸腰のまま、屋敷を脱出する。
「なっ⁉」
玄関から飛び出した華琳の目に映ったのは、見張りとして待機させた自軍の兵士の亡骸と、20人ほどの張繍の兵士だった。
「曹操が出てきたぞ!」
「あいつの首をとれば、今日一番の手柄だぞ!」
「やっちまえ!」
「「「「「「「「「「オォッ!」」」」」」」」」」
「くっ!」
▽
~再び、屋敷の中~
「ぐ~……ん~…何だァ…暑ィな~」
屋敷の中で眠っていたルフィも目を覚ました。
「ん?」
…と、同時に一面の火の海が目に飛び込んできた。
「何じゃコリャ~~~⁉」
▽
その頃―――
「でりゃァァァ!」
「ぐああっ!」
「せやァァァ!」
「ギャア」
愛紗達は、次から次へと湧いて来る張繍軍の兵士達と戦いつつ、華琳がいる屋敷へと向かっていた。
「桂花!屋敷にはまだ着かないのか⁉」
「まだまだ掛かるわよ!ただでさえ遠回りになるうえ、敵が邪魔してくるんだから!」
「!おい!あれを見ろ!」
「あれは⁉」
「我が軍の兵士達だ!」
「苦戦しているようだな…」
「見捨てるわけにはいかん!助けるぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
▽
「うわあ!」
「行けェ!曹操軍を追い込めェ!全滅させろォ!」
「させるかァ!」
ズバッ!
「ギャア!」
「夏侯惇将軍!夏侯淵将軍!荀彧様も!」
「お前達、状況はどうなっている⁉」
「はい…!
どうやら、張繍からの献上品の中に硫黄や煙硝、油が仕込まれていたようです!
それに火を点けられ、陣は瞬く間に全焼し、多くの兵が火傷を負いました!
さらに奇襲を受け、兵の大半がやられてしまいました!」
「成程、鈴々が言っていた変な臭いとはそのことか…!」
「お前達、この者達が連れていた、藁で編んだ帽子を被った男のことは、何か知らないか?」
「それでしたら…火事が起こる前に、曹操様が招かれた屋敷に入って行ったとか…」
「本当か⁉」
「はい!ですから、おそらく曹操様と一緒に屋敷にいるかと…」
「な…」
その言葉を聞いた瞬間、桂花は震えだし…
「荀彧殿?」
「なんですってェ~~~⁉」
先ほどの爆発音や、春蘭が鉄に斬りこんでいた時の音よりも、断然大きい絶叫を響かせた。
「え、えーと…?」
「おい桂花、どうしたのだ?」
「どうしたもこうしたもないわよ!あの屋敷は、華琳様が私達と愛し合うための造りになっていたのよ!」
「は?…愛し合う?」
「そんな所に、華琳様が男と二人だけでいたら…華琳様が汚されてしまうわ!」
「何だとォ⁉」
その言葉を聞き、春蘭も絶叫する。
「あの…お二人とも…?」
「いやあァァァァァ!」
「華琳様のお身体があァァァァァ!」
「「「「…………」」」」
「がり゛ん゛ざま゛ァァァァァ!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
ゴゴン!
ドサドサ…
鈴々の正拳が炸裂した。
「うるさかったから気絶させたのだ」
「うむ、良い判断だな」
「よくやったぞ鈴々」
「すまぬな、手間を掛けさせて…」
「さてと…とりあえずルフィ殿と曹操殿が一緒にいるなら、しばらくは大丈夫だと思うが…」
「そうだな。華琳様の武芸の腕は、私や姉者にも劣らん。あの男も、相当の実力者なのだろう?」
「ああ。ルフィ殿は我々の中で一番の実力者だ」
「ふむ、なら一度体勢を立て直して、それから二人を探すとしよう」
「しかし、立て直すといってもどうやって…」
「出陣の際、華琳様は非常時の集合場所を、あらかじめ決めていたのだ。
張繍軍の奇襲で散り散りなった我が軍の兵は、皆そこへ向かっている。
おそらく華琳様も、そこへ向かおうとする筈」
「成程、ではまずそこへ向かうとしよう。気絶しているこの二人も、そこで介抱した方が良いだろうしな」
「ああ」
「そうだな」
「わかったのだ」
▽
~華琳side~
「ハァーーーッ!」
ズバッ!
「ぐあっ!」
華琳は敵から剣を奪い取り、応戦していた。
(体が…思うように動かない…!)
しかし、まだ眠り薬の効き目が残っており、実力を発揮できていなかった。
そのうえ、手にしている武器が使い慣れた物と大きく違うため、苦戦していた。
ヒュン!
ドスッ!
「うっ…!」
その時、後方から飛んできた矢が肩に刺さり、一瞬動きが完全に止まってしまう。
「隙あり!」
すかさず、1人の敵兵が槍を構えて突っ込んで来る!
「―――ったァ!」
ザン!
「がっ…」
華琳も負けずに迎撃し、返り討ちにするが…
(しまっ…!)
薬の後遺症と痛みでひるんでしまったうえ、武器のリーチは相手の方が上だったため、華琳の方も腹に傷を負い、膝をついてしまう。
(ここまで…なの…⁉)
いまだに10人以上いる敵兵を睨みながら、華琳がそう思った。
その時だった。
「熱ィ!」
ガシャーン!
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
屋敷の窓を突き破って、何者かが飛び出してきた。
「何だ⁉屋敷の中に、まだ誰かいたのか⁉」
「討ちとれェ!」
張繍の兵士達は剣を振りかざし、向かっていくが…
「どけェ!」
ドゴォォン!
「「「「「「「「「「ギャアアア⁉」」」」」」」」」」
飛び出してきた男、ルフィは一瞬でそいつらを吹っ飛ばした。
「あなた…」
「あ!お前!」
華琳はその男がルフィであることに気付き、声をかける。
ルフィの方も華琳に気付き、駆け寄る。
「お前、ケガしてんのか⁉大丈夫か⁉」
「…命に別状はないわ」
「そうか。ところで、どうなってんだコレ?」
屋敷だけでなく、街全体が燃えている様子を見て、ルフィは訊ねる。
「張繍が私を殺そうとして、火を点けたようね…。おそらく私の部下や、関羽たちも危ないわ…」
「やべェじゃねェか!おい、急いで逃げるぞ!」
危険な状況であることを理解したルフィは華琳を急かすが…
「逃げる…?」
華琳はその場から動こうとせず、ルフィを睨むような目で見る。
「馬鹿なこと言わないで頂戴!私が逃げるなんて、あってはならないわ!」
「⁉」
「私が敵に背を向ける⁉敗北する⁉冗談じゃないわ!
そんなことをして無様に生きるくらいなら、誇り高く死んだほうがマシよ!
そうよ、ただ炎に焼かれて死んだり、そこいらの雑兵に討たれるくらいなら、いっそ自分で…」
ドゴォン!
「⁉」
そこまで言ったところで、華琳はルフィに殴り飛ばされた。
「…………」
「……⁉」
ルフィは明らかに怒った様子で、華琳に近づき胸倉をつかむ。
「フザけんなァ‼」
「⁉」
「お前―――王になるんじゃなかったのかよ⁉
王になるために戦って―――あいつらを戦わせてきたんだろ⁉
お前が生きていれば、何度だって戦える‼まだ王になれる‼
それなのにお前が、今ここで死ぬなんて―――死のうとするなんて、最低じゃねェか‼」
「…………」
「フー…フー…」
しばらくして呼吸を整えると、ルフィは手を放す。
放された華琳は呆然として、そのままその場に座り込む。
「…………最…低?」
「いたぞ!曹操だ!」
その時、新手の敵兵が現れた。
今度は何十人もの人数がいる。
するとルフィは華琳を庇うように―――否、華琳に自分の背中を見せつけるかのように、敵兵達の前に立ちはだかる。
「おい見ろ!曹操の守りはたった一人だ!」
「やっちまえ!」
そう叫び、先頭にいた2人が斬りかかる。
ドゴゴン!
「⁉」
しかし、ルフィは一瞬で2人を叩き伏せる。
「な、何だコイツ⁉」
「曹操軍にこんな奴がいるなんて聞いてねェぞ⁉」
「何者だ⁉」
「―――おれは……海賊王になる男だ‼」
「…!」
ルフィのその言葉に、華琳はわずかに目を見開く。
「…は?」
「「「「「「「「「「はははははははっ!」」」」」」」」」」
それに対し、張繍軍の兵士達は、ルフィの言葉に笑い出す。
「は?賊の分際で王?何言ってんだコイツ?」
「曹操軍の隠れた名将かと思ったが、ただの馬鹿みたいだな!」
「一斉に掛かれ!」
「賊は賊らしく成敗されろ!」
「「「「「「「「「「おおーーーっ!」」」」」」」」」」
一斉に襲い掛かってくる張繍軍の兵士。
ドガガガガァン!
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
しかしルフィはひるむことなく、迎え撃つ。
「おれは……死なねェ!―――こんな所で死んでたまるかァーーーっ!」
そのまま、敵の大群に向かっていくルフィ。
「…………」
華琳は呆然として、その姿を見ていた。
その時…
(何やってんだアイツらは?そんなどこの馬の骨か分からない奴、相手にしないで曹操の首をとった方が良いに決まってるだろ!)
敵兵の1人が、ひそかに華琳の背後に回っていた。
(今の曹操は隙だらけだ!死ねェ曹操!)
そして槍を振るい、華琳に襲い掛かる!
「…っ!」
ドシュッ!
「がっ⁉」
しかし華琳は振り向きざまに切り裂く。
そして相手の槍を奪い、立ち上がる。
「我が名は曹孟徳!いずれこの大陸に覇を唱える者!この首は―――お前らにくれてやるほど安いものではない!
ハァーーーッ!」
勢いよく石突で地面をつき、そう叫ぶと華琳は槍を振りかざし、敵をなぎ倒しながら突き進む!
ズバッ!ドスッ!ビシッ!
「「「ギャアアア!」」」
ルフィに追いつくと、2人は背中を合わせて並び立つ。
「お前、戦えるか⁉」
「ええ!さっきはどうかしていたわ!」
「よし!じゃあ一緒に逃げるぞ!」
「……“華琳”よ」
「ん?」
「私の真名。背中を預けて戦うんだもの、それくらいの信頼は当然でしょ?」
「そうか。おれは真名はねェから、“ルフィ”でいい!」
「そう。じゃあ…行くわよ“ルフィ”!」
「おう!行くぞ“華琳”!」
そして、2人の“王を目指す者”の共闘が始まったのだった!
まずは生きること!それが大事!