ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
ずっと間違えて書いていたと思うと、本当に恥ずかしいです…。
大食い大会の翌日―――
「よっと!」
翠は泊めてもらった家の前で、薪割をしていた。
「すいません。手伝っていただいて」
少年の姉が声をかけてきた。
「いいんだよ。世話になりっぱなしより、何かやらせてもらった方が、こっちも気分がいいし。
何より身体を動かした方が、飯も美味いからな」
「まあ」
「姉ちゃん、ただいま!」
そこへ山に行っていた、少年と許緒が帰ってきた。
少年の背負った竹籠は、キノコや山菜でいっぱいになっている。
「まあ凄い!こんなに沢山採れたの⁉」
「この人凄いんだよ!初めて入った山なのに、茸や山菜を次々見つけて!」
「山で食料を確保するのは、大食い修行者にとって基本中の基本だからね!」
「そ、そうなのか…?」
得意げに胸を張る許緒に、苦笑いする翠だった。
「あれ?そういえばゾロは一緒じゃないのか?」
「え?あの兄ちゃん、馬超さんと一緒じゃないの?」
「あのお兄さんでしたら、散歩に行くと言って出ていきましたが…」
「ま、まさか一人で行ったのか⁉」
姉の言葉を聞き、慌てふためく翠。
「え、ええ」
「なんてこった…」
「あのう…そこまで気にすることはないのでは?」
「この辺は、そこまで道が複雑なワケじゃないし…」
「あの兄ちゃんも子供じゃないんだし、大丈夫じゃない?」
ガックリと肩を落とす翠の様子を、不思議そうに見る3人。
「いや駄目だ…あいつは本物の方向音痴なんだ…。
今までだって…目の前に橋が見えて『橋を渡るぞ』って言って、返事をしたはずなのに素通りしたり…。
宿で厠に行くと言って部屋を出たら、何故か城門の外に出たり…。
少し茶店で休んで出発しようとしたら、来た道を引き返そうとしたり…。
道なりに進めるはずが、目を離した途端、林の中に逸れて行ったり…」
「え…?」
「う、嘘…」
「じょ、冗談ですよね…?」
「あたしだって冗談だって言いたいよ…。けど…全部本当なんだ…」
「「「…………」」」
ゾロのノンフィクション迷子伝を聞き、3人は黙ってしまった。
「おう!てめェらァ!」
「「「「⁉」」」」
その時、外から怒鳴り声が聞こえ、4人が外の様子を見ると、昨日の借金取りがいた。
「お前ら!」
翠と許緒が表に出て、姉弟は戸口から様子を見る。
「やっぱりお前らもここにいたか!」
「何だ?またぶちのめされに来たのか?言っとくけど、今度は容赦しないぞ!」
「おっと、今日の相手はおれ達じゃねェぜ?先生!お願いしやす!」
そう言うと借金取りたちの後ろから、1人の女が現れた。
翠と同じぐらいの年齢で、紫の髪を刺のついた輪で後ろにまとめ、袴をはき、胸にさらしを巻いて羽織を羽織っている。
その女は手にした酒瓶から、少し酒を飲むと翠達の前に出る。
「…何や?めっちゃ強い三人が相手や言うから来たのに、一人おらんし一人はガキやないか」
「ガキって何だ!ガキって⁉」
「ふん!まァ、ええわ!おい、これまだ残っとるから預かっとき」
そう言うと女は、酒瓶を借金取りの1人に預け、“
「ウチの名は“
アンタらに恨みはないけど、これも仕事や。ちょっと痛い目に遭うてもらうで」
「へっ!言うじゃねェか!」
「痛い目をみるのはそっちだ!」
「そうやな。それぐらいの意気やないと、おもろうないわ!
一匹ずつ相手にすんのは面倒や!二人同時にかかって来ィ!」
「うおりゃァーーー!」
張遼がそう言うと同時に、許緒は鉄球をぶん投げる!
「うお⁉」
ドゴォン!
それを後ろに跳んで躱す張遼。
「ちょ、んなモンどっから…」
「だあァーーーっ!」
許緒は間髪入れずに、二撃目を放つ!
「ツッコミぐらい入れさせろやァ!」
張遼はそう叫び、偃月刀で鉄球をはじく!
ガァン!
「ハァーーーッ!」
すかさず翠が斬りかかる!
「てりゃァーーーっ!」
キン!ガキン!ガキキン!キン!
そのまま2人は数回打ち合う!
(コイツ…強い!)
「でりゃァーーーっ!」
「!」
そこへ許緒が鉄球を投げつけると、張遼は馬超をいなし、またもや後ろに跳び躱す!
ドゴォン!
「へェ…アンタら二人とも中々ええ腕しとるやないか!(酒代目当てに引き受けたけど、思ったより楽しめそうやわ…!)」
「コイツ…二対一なのに…」
「戦いを楽しんでやがる…!」
「ほな…いくでェ!」
そう叫び、張遼は翠達に斬りかかる!
サッ
キィン!
「⁉」
突然、何者かが翠達の前に現れ、張遼の攻撃を剣で受け止めた。
「ゾロ⁉」
「兄ちゃん⁉」
「ほう…アンタが三人目か…!」
「人が少し散歩に行ってる間に…随分と楽しそうなことになってるじゃねェか!」
ギィィン!
「⁉」
そう言いながら、ゾロは張遼を偃月刀ごと刀で押し返す!
(…ウチが押し負けた…?)
「翠!許緒!悪いがコイツはおれがもらう。少しは楽しめそうだ」
「へェ…言うやないか」
そう言って、ゾロと張遼は改めて武器を構えるが…
「きゃー!」
「「「「⁉」」」」
突如悲鳴が聞こえ、ゾロ達が振り向くと…
「おっと、勝負はそこまでだぜ!」
借金取り達が姉弟を人質にし、家の前に立っていた。
「くっ…卑怯な…!」
「ちょと待ちや!これからおもろうなりそうな時に水差すなや!」
「悪いな先生。こっちも商売なんでね」
「チッ!」
張遼も文句を言うが、借金取り達は聞こうとしない。
「おめェら全員武器を捨てな。さもなくば、このガキがどうなっても知らねェぞ」
そう言って1人が少年ののどに刃物を突き立てる。
「ど、どうするの?」
「どうするって…」
翠も許緒もどうすることもできなくなるが…
「“一刀流”…」
そんな中、ゾロだけが静かに刀を構え…
「“三十六
ドン!
「「「「「「「「⁉」」」」」」」」
一瞬で刀を振るい斬撃を飛ばす!
斬撃は近くにあった杉の木を切り倒し、木の幹は姉弟と借金取りのすぐ後ろに倒れた。
ドスゥゥゥン!
「うわあああ⁉」
「きゃあああ⁉」
「「「ぎゃーーー⁉」」」
衝撃で5人とも倒れこみ、姉弟は借金取り達の手から離れ、さらに親玉の懐から一枚の紙が落ちた。
「今だ!」
「!そうか!」
すかさずゾロと翠が駆け出し、姉弟を助けだした。
「大丈夫だったか?」
「うん」
「悪ィな。手荒なことしちまって」
「いいえ、おかげで助かりました」
「ね、ねえ兄ちゃん今の何⁉どうやったの⁉」
許緒が驚いた様子で訊いてくる。
「斬ったんだよ。鎌風を起こして、斬撃を飛ばしてな」
「そんなことできるの⁉」
「理屈上は可能だけど…実際にやるには、相当の筋力と技術が必要だぞ…!」
ゾロの答えに、翠も驚く。
「い、いてて…」
「ちくしょう…!」
…と、そんなことをしている間に、借金取り達も起き上がった。
そこへ張遼が近づき、親玉の懐から落ちた紙を拾う。
「何やこの紙切れは?」
「あ!それはこいつらの借金の証文!」
「ほ~そうか…」
そう言うと張遼は、その証文をビリビリに破いてしまった。
「ああ~⁉何すんですか先生⁉」
「人質獲るようなド汚いマネして、ウチの楽しみを台無しにした罰や!二度とあの姉弟に近づくなや!」
「「「ひィーーーっ!」」」
借金取り達は張遼が預けていた酒瓶を投げ捨て、逃げてしまった。
「あ~あ…全部零れちまっとるわ…。勿体ない…」
張遼は落ちた酒瓶を拾うと、中身を見て肩を落とし、そのまま立ち去ろうとする。
「おい、勝負はどうすんだ?」
「興が冷めた。止めや止め」
ゾロが呼び止めるが、張遼は振り返らずに返事をし、立ち去ろうとする。
「なるほど…どおりで軽いワケだ…」
その様子を見てゾロもそんなことを呟き、刀を収める。
「…ちょい待ち」
ふと、張遼が歩くのを止める。
「あ?」
「“軽い”ってのは何のことや?」
「てめェの武術が軽いって言ったんだよ」
「……ウチが舐められとるちゅうのは、ようわかったわ」
そう言うと張遼は戻ってきて、再び偃月刀を構える。
「気が変わったで…キッチリ
「…上等だ」
そう言うとゾロは3本の刀を腰から外し…
「おい、ちょっとこれ持ってろ」
「へ?」
翠に預ける。
そして、ゾロは素手のまま張遼と対峙する。
「いつでもいいぜ」
「…おい、それは一体何のつもりや?舐めるのも大概にせェや!」
「別に舐めてるわけじゃねェよ。ただ、てめェと
「はっ!要は負けたときの言い訳ちゅうことか!」
そう言うと張遼は駆け出し、偃月刀をゾロめがけて振り下ろす!
しかし…
「バァカ…逆だよ」
ドン!
「なっ…⁉」
「
ゾロは白刃取りでその一撃を受け止めた。
(な…何や⁉ウチの偃月刀が…ピクリとも動かへん…⁉それにコイツの…この迫力は何や⁉)
「オラァ!」
「うおォ⁉」
そしてゾロは偃月刀ごと、張遼を投げ飛ばす!
「く…な、何やっちゅうんねん⁉」
そう叫び張遼はめちゃくちゃに偃月刀を振るい、ゾロに斬りかかる!
対してゾロも全ての攻撃を素手で捌く!
ゾロの手や腕には次々と傷がつき、血が流れるが、ゾロは微塵も気にせず受け続ける。
「う、嘘…?」
「に、兄ちゃんすげェ…」
「「…………」」
翠や許緒、姉弟も2人の勝負を、固唾をのんで見守っている。
「おいっ!お前っ!」
偃月刀を振りかざしながら、張遼が話しかける。
「何だっ⁉」
ゾロも攻撃を捌きながら応える。
「軽いっ―――ちゅうのはっ―――どういう意味や⁉
アンタとウチでっ―――何がちゃうっちゅうねん⁉」
「じゃあ聞くがっ―――お前は何のためにっ―――戦ってる⁉」
「んなモンっ―――決まっとるやろっ!
強い奴と戦ってっ―――ウチが一番やってっ―――証明するためやっ!」
「本気でっ―――そう思ってんのか⁉」
「⁉」
「てめェはっ―――その野望のためにっ―――命を懸けてんのか⁉」
「!」
「おれもっ―――世界一の大剣豪をっ―――目指す者だ!
実力を証明することっ―――を悪いとはっ―――言わねェ!
だがさっきっ―――てめェの攻撃を受けたときっ―――お前が背負ってるものをっ―――何も感じなかった!
威力だけはあったがっ―――覚悟もっ―――必死さもっ―――何もなかった!
負けることもっ―――逃げることもっ―――許されねェっ―――そんな覚悟でっ―――てめェは戦ってんのか⁉」
「……っ!」
張遼はゾロの問いに答えず、一度距離をとり、構える。
その様子をみて、張遼が必殺の一撃を放つことを察したゾロも、一撃のための構えをとる。
「“
「“無刀流”…“
「“
「“巻き”‼」
ドゴォォン!
ドサッ…
「…………」
張遼はゾロの放った一撃で吹き飛ばされ、背中から地面に倒れた。
「おれは約束をしている」
―――――おれ、あいつのぶんも強くなるから‼天国までおれの名前が届くように、世界一強い大剣豪になるからさ‼
―――――おれはもう‼二度と敗けねェから‼
「おれの武術は、おれ1人のもんじゃねェ。
だからおれは、おれの勝手な都合で負けることも、逃げることも許されねェんだよ」
「……成程…ウチの完敗や」
張遼は寝そべったまま、呟く。
「アンタの言う通りや。
一番を目指しとったのは…取り敢えず目指していただけで、命かけてまで目指す気は…たぶんなかったわ…。
心のどっかで武術を商売道具とか、見世物みたいに考とったんかな…?
何も背負うてへん。そりゃあ軽いに決まっとるわ。
あ~…何やろなァ…負けたっちゅうのに、今までの勝負で一番気分がええわ」
そこまで言うと、張遼は起き上がった。
その顔はとても晴れ晴れとしていた。
「―――ったく、見ててヒヤヒヤしたぞ」
「兄ちゃんってホントに強いんだね~!それにカッコよかった!」
「あの…手は大丈夫ですか?」
「早く手当した方が良いよ。おれ傷薬持ってくる」
翠達もゾロのところへ集まり、少年が家に戻ろうとしたとき…
「おいてめェら!」
「「「「「「?」」」」」」
何者かの声が聞こえ、一同が振り向くと…
「さっきはよくもやってくれたな!てめェら四人ともぶっ潰してやらァ!」
さっきの借金取り達が、50人ほどの用心棒を連れ戻ってきた。
「四人って、ウチも入っとるんか?」
「…みたいだな」
「証文、破いちゃったからね…」
「おい、お前ら。家の中に入ってろ。手当は後でいい」
「は、はい」
ゾロに言われ、姉弟は家の中に隠れる。
「ほい。今度は刀使うよな?」
「ああ」
「ボクもちょっと暴れたりなかったところだし…張遼さんはどうするの?」
「金で雇われただけとはいえ、一応身内みたいなもんやしな。
身内の不祥事は身内で片付けなァあかんやろ。
なにより、ウチも標的に入っとるみたいやしな…」
「旦那。金の方は大丈夫なんでしょうな?」
「おうよ。アイツら叩き潰してくれりゃァ、欲しいだけくれてやる!」
「了解!やっちまえてめェら!」
「「「「「「「「「「おおーーーっ!」」」」」」」」」」
「止めときゃいいのに」
「さてと…」
「それじゃあ…」
「やったるかァ!」
そして、4人は瞬く間に用心棒たちを片付けたあげく、借金取り達の店に殴り込み、捏造された証文をすべて処分し、店を(経済的な意味だけでなく、物理的にも)潰したのであった。
▽
翌日―――
悪徳金融企業退治に一日費やしたゾロ達は、姉弟の家に張遼も加えてもう一泊したのだった。
「なんか、ウチまで世話になって悪かったな…」
「いえ。色々と本当にありがとうございました」
「また、遊びに来てよ。兄ちゃん達ならいつでも歓迎するから」
「おう、達者でな」
「元気でな」
「じゃあね~!」
「ほんじゃあな~!」
▽
~村の入り口~
「あたし達はこれから
「ボクは南下して、益州に行こうと思うんだ」
「ウチはとりあえず、都の方へ行こうと思うとる」
「じゃあ、ここでお別れか」
「あ、せや。ちょっと頼みがあるんやけど…」
「何だ?」
「アンタら…ウチと真名を交換してくれへんか?」
「え?どうしたんだよ急に?」
「いや…昨日そいつに負けて、何か目が覚めたような気がしてな。
それで…今度は遊び半分やない、負けられへん理由を持って、立派なモン背負うて、戦う武人になろうと思う。
アンタらが真名を預けて、恥ずかしくない武人になる!…そんな決意表明みたいなモンとして、交換したいんやけど…」
「そうか」
「そういうことならいいぜ!」
「ボクも!ついでに兄ちゃんたちにも真名を預けるよ!」
「ほんまか⁉
ほな早速ウチから…ウチの名は“張遼”、字は“文遠”、真名は“
この真名、アンタらに預けるで!」
「ボクは“許緒”、字は“仲康”、真名は“
改めてよろしくね!」
「あたしは“馬超”、字は“孟起”、真名は“翠”ってんだ!この真名、二人に預ける!」
「“ロロノア・ゾロ”だ。異国の出身で真名はねェ」
「そうか。じゃあ今度会う時は、立派なモンを背負った、気高い武人になっとるから!
ほんじゃあ、“ゾロ”~!“翠”~!“季衣”~!またな~!」
「“ゾロ”の兄ちゃ~ん!“翠”さ~ん!“霞”さ~ん!縁があったらまたどこかでね~」
「“季衣”~!“霞”~!元気でな~!」
「“季衣”!“霞”!達者でな~!」
そして4人はそれぞれの道へと進んだ。
▽
しばらくして―――
「…………」
「ん?どうした翠?」
どことなく元気がなさそうな翠に、ゾロが声をかけた。
「あ、いや…その…」
「?」
「あたしは…霞と互角だったんだ。
それで…ゾロがあいつの武術を“軽い”って言って…だから『あたしの武術も同じ程度なのかな?』って…」
「あれはあくまでも武術にかける覚悟や信念の話だ。実力とは関係ねェ。
遊び半分で強い奴もいりゃあ、真剣にやっていても弱ェ奴だっている」
「…そうなのか?」
「それに、おれの経験から言わせてもらえば…」
―――――こんな…わけもわからねェうちに…‼みんなを殺されてたまるかよ……‼
―――――止めるわよ………‼こんな無意味な暴動…‼
「強いだけで何も背負ってねェ奴より、弱くてもデケェもん背負ってる奴の方が、敵に回すとおっかねェぞ」
「…………」
▽
~その頃―――涼州、隴西郡、牢獄~
「…“
「…今は信じるしかないよ」
▽
~涼州、隴西郡、とある山中~
「…待ってて“