ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回、革命シリーズのキャラが登場します。




第25話 “仲違い”

星と逸れたルフィ、愛紗、鈴々が朱里を仲間に加えてから、数日後―――

 

「そういえば、前に霧の中で逸れてしまったお仲間の…」

 

「趙雲だ」

 

「その趙雲さんとは、結局逸れたままですけど大丈夫でしょうか?」

 

「なァに、あやつも子供ではない。きっとどこかの空の下で、元気にやっているさ」

 

「あと、ルフィさんも逸れてしまった、天の国の仲間を探しているって…」

 

「ああ。だがルフィ殿が言うには、皆頼りになる奴らだから、そんなに心配しなくても大丈夫だそうだ」

 

「…信頼しているんですね」

 

「その通りだ」

 

「あ」

 

愛紗と朱里がそんなことを話していると、先頭を歩いていたルフィが声をあげた。

 

見るとまたしても道が2本に分かれていた。

 

「分かれ道ですね」

 

「なあ、どっちに行く?」

 

「鈴々に任せるのだ!」

 

そう言うと鈴々はまた、分岐点の真ん中に蛇矛を突き立て、手を合わせる。

 

「むむむむむ~…」

 

カタン

 

蛇矛は右に倒れた。

 

「こっちなのだ!」

 

「よし、ではこっちの道を行くとしよう」

 

そう言って、愛紗は左の道へ行こうとする。

 

「何でなのだ⁉」

 

「当たり前だ!この前、お前の占いの通りに行ったら、霧にまかれ、足を滑らせて怪我をし、星とも離れ離れになったのだぞ!」

 

「で、でも…占いではこっちって…」

 

気まずそうにしながらも、鈴々は反論する。

 

「だ~か~ら~!その占いがアテにならんというのだ!」

 

愛紗の方も、わざわざ逆撫でするような言い方で反論する。

 

「むぎ~~~!」

 

「ぬ~~~!」

 

「はわわ~…」

 

案の定鈴々は頭にきて、2人は完全に険悪なムードになってしまう。

 

「でもよー愛紗、鈴々の占いの通りに行かなかったら、孔明に会えなかったぞ」

 

「それに、鈴々ちゃんの占いがアテにならないなら、占いの通りに行っても、必ず悪いことが起こるワケではないでしょうし…」

 

「む…ま、まァ確かに…」

 

ルフィと朱里に反論されて、愛紗が折れかける。

 

しかし…

 

「余計なことは言わなくていいのだ!」

 

「「「⁉」」」

 

何故か鈴々がさらに不機嫌になってしまった。

 

「これは鈴々と愛紗の問題なのだ!二人は関係ないんだから黙ってるのだ!」

 

「え…」

 

「…………」

 

「コラ鈴々!何てことを言うのだ!二人はお前を庇って…」

 

「それが余計なことなのだ!」

 

そう言うと鈴々は蛇矛を拾う。

 

「とにかく鈴々は占い通りこっちに行くのだ!」

 

「っ!勝手にしろ!」

 

「勝手にするのだ!」

 

そして鈴々は、右の道を進んで行った。

 

「鈴々ちゃん!…良いんですか、一人で行かせて?」

 

「構わんさ。どうせすぐに淋しくなって『やっぱりみんなと一緒の方が良いから、一緒に行くのだ~!』とか言って、追いかけてくるに決まってる。

さ、お二人とも、我らも行きましょう」

 

そう言って、愛紗も左の道を進み始めるが…

 

「行かねェ」

 

「「え?」」

 

そう言うとルフィはその場で横になる。

 

「ここで寝てる」

 

「―――っ!か、勝手して下され!」

 

「え…?えええ~~~⁉」

 

鈴々は右、愛紗は左に進み、ルフィはそのまま眠り、残された朱里は完全にパニックになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(愛紗ってば、ルフィと孔明ばっかり…)

 

1人になった鈴々がしばらく歩いていくと…

 

…キン!…ガキン!

 

「…?」

 

前方から太刀音が聞こえてきた。

 

「何なのだ?」

 

気になった鈴々は駆け足で先に進む。

 

すると…

 

「何すんのさ~⁉」

 

「ていて~い!」

 

「ハッ!」

 

3人ほどの女が、数十人の集団と戦っているのが見えた。

女達の方は、一台の荷車を守るように戦っている。

 

「ちくしょう…こいつら案外手ごわいぞ!」

 

「ひるむんじゃねェ!数はこっちの方が上なんだ!かかれ!」

 

「ハァ…ハァ…しつこいなあ…」

 

「無駄な抵抗すんじゃねェよ!別に殺しはしねぇぜ!」

 

「おめェら三人とも中々上玉だからな!とっ捕まえてイイコトしてやるぜ!」

 

「そんなの絶対にイヤダもんね!」

 

どうやら数が多い方は山賊のようだ。

 

「オラァ!観念しやがれ!」

 

「観念するのはそっちなのだー!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

その叫び声と共に、鈴々が賊に突撃する。

 

「うおりゃァーーー!」

 

ドカーーーン!

 

「「「「「「「「「「ギャーーーーーッ⁉」」」」」」」」」」

 

鈴々の桁違いの強さに加え、背後から不意を突かれて襲われたため、一気に大量の賊が吹き飛ばされた。

 

「な、なんだこのガキ⁉」

 

「こいつらの比じゃねェぞ⁉」

 

「に、逃げろーーーっ!」

 

山賊達は慌てて逃げだした。

 

「すご~い!君強いんだね~!」

 

電々(でんでん)達と同じくらいなのにすごいね~!」

 

賊が撤退した後、襲われていた3人のうち2人が声をかけてきた。

 

2人とも年齢は鈴々と同じくらいで、白を基調とした服を着て、オレンジ色の髪をしている。

片方は髪が短くつり目で、もう片方は髪が長く丸い目をしている。

 

「危ないところを助けていただき、ありがとうございました」

 

もう1人の女もお礼を言う。

 

メイドのような恰好をしており、ピンクと紫の中間のような髪の色をしている。

年齢は愛紗と同じくらいだ。

 

「紹介が遅れました。私は“孫乾(そんけん)”、字を“公祐(こうゆう)”といいます」

 

メイド服の女性が自己紹介をする。

 

「私は“雷々(らいらい)”だよ~」

 

「私は“電々(でんでん)”~」

 

「鈴々の名前に似ていて、良い名前なのだ!」

 

「えへへ~」

 

「そうでしょ~」

 

「あの皆さん、こういう時は真名ではなく、ちゃんと姓と名と字で…」

 

「あ、いけな~い!」

 

「そうだった!」

 

孫乾に言われ、2人は改めて自己紹介をする。

 

「雷々は“糜竺(びじく)”、字は“子仲(しちゅう)”だよ」

 

髪の短い方が言う。

 

「電々は“糜芳(びほう)”、字は“子芳(しほう)”っていうんだ~」

 

髪の長い方が言った。

 

「鈴々は“張飛”、字は“翼徳”なのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴々はとりあえず、3人と一緒に行くことにした。

 

「雷々達はね~徐州の豪商の一族なんだ。

でも、ご先祖様から受け継いだ財産に頼らないで、自分達の力でご先祖様みたいに、どかーんって大きなことやりたくて、家を出て旅をしているの」

 

「この荷車の荷物は徐州を出たときに、電々達が持っていたお金で買った物や、それと交換して手に入れた物、道中自分達で採ったものなんだよ。

これを売ったり、物々交換したりして生計を立てて、いつか自分達のお店を作ろうと思ってるの」

 

「私は徐州刺史の陶謙(とうけん)様にお仕えしていた者だったのですが、お二人が旅に出るにあたって、従者としてついていくように言われたのです。

糜家は陶謙様をはじめ、徐州の多くの太守や県令に援助をしている財産家なので、お礼として、せめてものお力添えをしようとしたのです」

 

「なるほどなのだ」

 

「“美花(みーふぁ)”ちゃん戦っても強いし、炊事も洗濯もできるから、雷々達もすごく助かってるんだ~」

 

「電々達も美花ちゃんに稽古つけてもらっているから、少しは強いんだけどね…」

 

どうやら美花というのは、孫乾の真名のようだ。

 

「ねえ、張飛ちゃんはどうして旅をしているの?」

 

「えっ⁉そ、それは…」

 

電々に訊かれ、鈴々の脳裏に愛紗、ルフィと初めて出会った日のことが浮かぶ。

 

―――――世の中を変えるため…世の中を変える方法を探すために、ルフィどのは逸れてしまった仲間を探すために旅をしている

 

「り、鈴々は…」

 

「あの…言いたくないなら、無理して言わなくてもいいよ?」

 

「うん…なんだかごめんね…」

 

「べ、別に二人が謝ることなんてないのだ…!」

 

「?」

 

「…そういえば、糜竺と糜芳はよく似ているけど、姉妹なのか?」

 

「うん、雷々がお姉ちゃんだけど…」

 

「そんなに似てないよね?」

 

「鈴々から見たら、二人ともそっくりで、あまり見分けがつかないのだ」

 

「「え~?こんなに違うのに~?」」

 

(徐州でも結構間違われていましたけどね…)

 

ひそかにそう思う美花だった。

 

「…あ、あの…」

 

「何?張飛ちゃん?」

 

「糜竺と糜芳は…ケンカしたことって…あるのか?」

 

「「え?」」

 

鈴々の質問に、2人は少し考えていたが…

 

「何回かはあるよね」

 

「うん。数えていないけど、けっこうあると思う」

 

「そ、そういう時って、どうやって仲直りしているのだ?」

 

「「う~ん…」」

 

2人はまたしばらく考えていたが…

 

「やっぱり『ごめんなさい』って謝ってるよね?」

 

「うん。どっちからってワケではないけど…いつもだいたい二人同時に謝ってるよね?」

 

「…そうなのか?」

 

「うん。だってそれまでずっと一緒にいたんだもん」

 

「それからもずっと一緒にいたいもんね~」

 

「…ずっと…一緒にいたい…」

 

―――――鈴々達は兄妹だから、ずっと一緒なのだ!

 

2人の答えを聞き、考え込んでしまう鈴々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜―――

 

「さ、できましたよ」

 

美花が携帯用の調理道具で、夕食を用意した。

 

「わ~い!美花ちゃんありがと~!」

 

「張飛ちゃんも食べよ~!」

 

雷々と電々は鈴々に呼びかけるが…

 

「…………」

 

鈴々は体育座りのまま、うつむいて動かない。

 

「張飛ちゃん?」

 

「食べないの?」

 

「!た、食べるのだ!」

 

2人が下から顔をのぞきこみながら呼びかけると、鈴々はようやく反応して、食事に手を付ける。

 

しかし…

 

「…………」

 

表情は沈んだままで、いつものような食欲もなく、結局ほとんど残してしまった。

 

(ルフィ…愛紗…孔明…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同じ頃―――ルフィside~

 

「あむあむ…」

 

ルフィは分かれ道のところで、焚火を起こし、獲ってきた鹿の肉を食べていた。

 

「あのう…ルフィさん…」

 

「ん?」

 

隣に座っていた朱里がルフィに話しかけてきた。

 

あの後、結局朱里はルフィと一緒にそこに残ったのだった。

 

「本当にこのままでいいんですか?」

 

「何が?」

 

「関羽さんと鈴々ちゃんのことです!二手に分かれるか、せめてどっちかだけでも追いかけた方が…」

 

「いいんだよコレで」

 

「でも…」

 

「おれはこのまま待つ」

 

「“待つ”?」

 

「じゃ、おやすみ~」

 

そう言ってルフィは眠ってしまった。

 

「…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同じ頃―――愛紗side~

 

「…………」

 

日が暮れて愛紗は焚火を起こしたものの、夕食も摂らずに横になっていた。

 

(ルフィ殿…孔明殿…鈴々……)

 

愛紗はしばらく横になったまま、何やら考え込んでいたが…

 

「…………」

 

やがて起き上がり、焚火を消すと歩き始めた。

 

 

 

 




…と、いうワケで、愛紗と鈴々のケンカ回、雷々、電々、美花の初登場回でした。
私はいまだに、雷々と電々、どっちがどっちだか分からなくなります…。


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