ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
星と逸れたルフィ、愛紗、鈴々が朱里を仲間に加えてから、数日後―――
「そういえば、前に霧の中で逸れてしまったお仲間の…」
「趙雲だ」
「その趙雲さんとは、結局逸れたままですけど大丈夫でしょうか?」
「なァに、あやつも子供ではない。きっとどこかの空の下で、元気にやっているさ」
「あと、ルフィさんも逸れてしまった、天の国の仲間を探しているって…」
「ああ。だがルフィ殿が言うには、皆頼りになる奴らだから、そんなに心配しなくても大丈夫だそうだ」
「…信頼しているんですね」
「その通りだ」
「あ」
愛紗と朱里がそんなことを話していると、先頭を歩いていたルフィが声をあげた。
見るとまたしても道が2本に分かれていた。
「分かれ道ですね」
「なあ、どっちに行く?」
「鈴々に任せるのだ!」
そう言うと鈴々はまた、分岐点の真ん中に蛇矛を突き立て、手を合わせる。
「むむむむむ~…」
カタン
蛇矛は右に倒れた。
「こっちなのだ!」
「よし、ではこっちの道を行くとしよう」
そう言って、愛紗は左の道へ行こうとする。
「何でなのだ⁉」
「当たり前だ!この前、お前の占いの通りに行ったら、霧にまかれ、足を滑らせて怪我をし、星とも離れ離れになったのだぞ!」
「で、でも…占いではこっちって…」
気まずそうにしながらも、鈴々は反論する。
「だ~か~ら~!その占いがアテにならんというのだ!」
愛紗の方も、わざわざ逆撫でするような言い方で反論する。
「むぎ~~~!」
「ぬ~~~!」
「はわわ~…」
案の定鈴々は頭にきて、2人は完全に険悪なムードになってしまう。
「でもよー愛紗、鈴々の占いの通りに行かなかったら、孔明に会えなかったぞ」
「それに、鈴々ちゃんの占いがアテにならないなら、占いの通りに行っても、必ず悪いことが起こるワケではないでしょうし…」
「む…ま、まァ確かに…」
ルフィと朱里に反論されて、愛紗が折れかける。
しかし…
「余計なことは言わなくていいのだ!」
「「「⁉」」」
何故か鈴々がさらに不機嫌になってしまった。
「これは鈴々と愛紗の問題なのだ!二人は関係ないんだから黙ってるのだ!」
「え…」
「…………」
「コラ鈴々!何てことを言うのだ!二人はお前を庇って…」
「それが余計なことなのだ!」
そう言うと鈴々は蛇矛を拾う。
「とにかく鈴々は占い通りこっちに行くのだ!」
「っ!勝手にしろ!」
「勝手にするのだ!」
そして鈴々は、右の道を進んで行った。
「鈴々ちゃん!…良いんですか、一人で行かせて?」
「構わんさ。どうせすぐに淋しくなって『やっぱりみんなと一緒の方が良いから、一緒に行くのだ~!』とか言って、追いかけてくるに決まってる。
さ、お二人とも、我らも行きましょう」
そう言って、愛紗も左の道を進み始めるが…
「行かねェ」
「「え?」」
そう言うとルフィはその場で横になる。
「ここで寝てる」
「―――っ!か、勝手して下され!」
「え…?えええ~~~⁉」
鈴々は右、愛紗は左に進み、ルフィはそのまま眠り、残された朱里は完全にパニックになってしまった。
▽
(愛紗ってば、ルフィと孔明ばっかり…)
1人になった鈴々がしばらく歩いていくと…
…キン!…ガキン!
「…?」
前方から太刀音が聞こえてきた。
「何なのだ?」
気になった鈴々は駆け足で先に進む。
すると…
「何すんのさ~⁉」
「ていて~い!」
「ハッ!」
3人ほどの女が、数十人の集団と戦っているのが見えた。
女達の方は、一台の荷車を守るように戦っている。
「ちくしょう…こいつら案外手ごわいぞ!」
「ひるむんじゃねェ!数はこっちの方が上なんだ!かかれ!」
「ハァ…ハァ…しつこいなあ…」
「無駄な抵抗すんじゃねェよ!別に殺しはしねぇぜ!」
「おめェら三人とも中々上玉だからな!とっ捕まえてイイコトしてやるぜ!」
「そんなの絶対にイヤダもんね!」
どうやら数が多い方は山賊のようだ。
「オラァ!観念しやがれ!」
「観念するのはそっちなのだー!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
その叫び声と共に、鈴々が賊に突撃する。
「うおりゃァーーー!」
ドカーーーン!
「「「「「「「「「「ギャーーーーーッ⁉」」」」」」」」」」
鈴々の桁違いの強さに加え、背後から不意を突かれて襲われたため、一気に大量の賊が吹き飛ばされた。
「な、なんだこのガキ⁉」
「こいつらの比じゃねェぞ⁉」
「に、逃げろーーーっ!」
山賊達は慌てて逃げだした。
「すご~い!君強いんだね~!」
「
賊が撤退した後、襲われていた3人のうち2人が声をかけてきた。
2人とも年齢は鈴々と同じくらいで、白を基調とした服を着て、オレンジ色の髪をしている。
片方は髪が短くつり目で、もう片方は髪が長く丸い目をしている。
「危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
もう1人の女もお礼を言う。
メイドのような恰好をしており、ピンクと紫の中間のような髪の色をしている。
年齢は愛紗と同じくらいだ。
「紹介が遅れました。私は“
メイド服の女性が自己紹介をする。
「私は“
「私は“
「鈴々の名前に似ていて、良い名前なのだ!」
「えへへ~」
「そうでしょ~」
「あの皆さん、こういう時は真名ではなく、ちゃんと姓と名と字で…」
「あ、いけな~い!」
「そうだった!」
孫乾に言われ、2人は改めて自己紹介をする。
「雷々は“
髪の短い方が言う。
「電々は“
髪の長い方が言った。
「鈴々は“張飛”、字は“翼徳”なのだ」
▽
鈴々はとりあえず、3人と一緒に行くことにした。
「雷々達はね~徐州の豪商の一族なんだ。
でも、ご先祖様から受け継いだ財産に頼らないで、自分達の力でご先祖様みたいに、どかーんって大きなことやりたくて、家を出て旅をしているの」
「この荷車の荷物は徐州を出たときに、電々達が持っていたお金で買った物や、それと交換して手に入れた物、道中自分達で採ったものなんだよ。
これを売ったり、物々交換したりして生計を立てて、いつか自分達のお店を作ろうと思ってるの」
「私は徐州刺史の
糜家は陶謙様をはじめ、徐州の多くの太守や県令に援助をしている財産家なので、お礼として、せめてものお力添えをしようとしたのです」
「なるほどなのだ」
「“
「電々達も美花ちゃんに稽古つけてもらっているから、少しは強いんだけどね…」
どうやら美花というのは、孫乾の真名のようだ。
「ねえ、張飛ちゃんはどうして旅をしているの?」
「えっ⁉そ、それは…」
電々に訊かれ、鈴々の脳裏に愛紗、ルフィと初めて出会った日のことが浮かぶ。
―――――世の中を変えるため…世の中を変える方法を探すために、ルフィどのは逸れてしまった仲間を探すために旅をしている
「り、鈴々は…」
「あの…言いたくないなら、無理して言わなくてもいいよ?」
「うん…なんだかごめんね…」
「べ、別に二人が謝ることなんてないのだ…!」
「?」
「…そういえば、糜竺と糜芳はよく似ているけど、姉妹なのか?」
「うん、雷々がお姉ちゃんだけど…」
「そんなに似てないよね?」
「鈴々から見たら、二人ともそっくりで、あまり見分けがつかないのだ」
「「え~?こんなに違うのに~?」」
(徐州でも結構間違われていましたけどね…)
ひそかにそう思う美花だった。
「…あ、あの…」
「何?張飛ちゃん?」
「糜竺と糜芳は…ケンカしたことって…あるのか?」
「「え?」」
鈴々の質問に、2人は少し考えていたが…
「何回かはあるよね」
「うん。数えていないけど、けっこうあると思う」
「そ、そういう時って、どうやって仲直りしているのだ?」
「「う~ん…」」
2人はまたしばらく考えていたが…
「やっぱり『ごめんなさい』って謝ってるよね?」
「うん。どっちからってワケではないけど…いつもだいたい二人同時に謝ってるよね?」
「…そうなのか?」
「うん。だってそれまでずっと一緒にいたんだもん」
「それからもずっと一緒にいたいもんね~」
「…ずっと…一緒にいたい…」
―――――鈴々達は兄妹だから、ずっと一緒なのだ!
2人の答えを聞き、考え込んでしまう鈴々だった。
▽
その夜―――
「さ、できましたよ」
美花が携帯用の調理道具で、夕食を用意した。
「わ~い!美花ちゃんありがと~!」
「張飛ちゃんも食べよ~!」
雷々と電々は鈴々に呼びかけるが…
「…………」
鈴々は体育座りのまま、うつむいて動かない。
「張飛ちゃん?」
「食べないの?」
「!た、食べるのだ!」
2人が下から顔をのぞきこみながら呼びかけると、鈴々はようやく反応して、食事に手を付ける。
しかし…
「…………」
表情は沈んだままで、いつものような食欲もなく、結局ほとんど残してしまった。
(ルフィ…愛紗…孔明…)
▽
~同じ頃―――ルフィside~
「あむあむ…」
ルフィは分かれ道のところで、焚火を起こし、獲ってきた鹿の肉を食べていた。
「あのう…ルフィさん…」
「ん?」
隣に座っていた朱里がルフィに話しかけてきた。
あの後、結局朱里はルフィと一緒にそこに残ったのだった。
「本当にこのままでいいんですか?」
「何が?」
「関羽さんと鈴々ちゃんのことです!二手に分かれるか、せめてどっちかだけでも追いかけた方が…」
「いいんだよコレで」
「でも…」
「おれはこのまま待つ」
「“待つ”?」
「じゃ、おやすみ~」
そう言ってルフィは眠ってしまった。
「…………?」
▽
~同じ頃―――愛紗side~
「…………」
日が暮れて愛紗は焚火を起こしたものの、夕食も摂らずに横になっていた。
(ルフィ殿…孔明殿…鈴々……)
愛紗はしばらく横になったまま、何やら考え込んでいたが…
「…………」
やがて起き上がり、焚火を消すと歩き始めた。
…と、いうワケで、愛紗と鈴々のケンカ回、雷々、電々、美花の初登場回でした。
私はいまだに、雷々と電々、どっちがどっちだか分からなくなります…。