ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
愛紗と鈴々がケンカをした次の日―――
「ぐ~…」
「…すう…んん?…朝ですか?」
ルフィと一緒に寝ていた朱里が目を覚ました。
「ふあ~…あれ?」
大きくあくびをした後、朱里は何者かがこちらに歩いて来ることに気付く。
歩いてきたのは…
「…関羽さん?」
「…孔明殿…」
「んんっ~…!」
ルフィも目を覚ます。
「お、愛紗」
「ルフィ殿…えっと…その…」
愛紗は表情を曇らせたまま口ごもる。
そんな愛紗を見てルフィは、笑いながら立ち上がり。
「じゃ、追いかけるか」
「…はい…」
(ルフィさん…最初からこうなると…?)
朱里はそう思うが、真相を確かめる術はなかった。
▽
その日の昼頃、鈴々達は崖道を進んでいた。
「うんしょ…」
「よいしょっと…」
「皆さん、落ちないように気を付けて」
道幅は狭く、荷車がギリギリ通れるほどしかないため、一行は一列になって進んでいた。
先頭を美花が進み、その後ろから雷々が荷車を引き、電々は荷車を押しながら付いて行く。
鈴々は一番後ろを歩いていた。
(ルフィ…愛紗…孔明…)
その表情は暗く、頭の中は3人のことでいっぱいだった。
「ああっ⁉」
「きゃー⁉」
「⁉」
前方から美花と雷々の悲鳴が聞こえ、鈴々が荷車に飛乗って前を見ると、大きな岩がこちらへ転がってくるのが見えた。
荷物が邪魔になって、電々には見えていないようだ。
「鈴々に任せるのだ!」
そう言うと鈴々は荷車を飛び越えて先頭に飛び出し、蛇矛を構え岩を受け止める!
ガキン!
「ふぬぬぬぬぬ~…!」
「張飛さん!私も手伝います!」
美花もそう言って、走り出そうとするが…
「動くな!」
「「「「⁉」」」」
後方から声が聞こえ、振り返ると…
「あなた達は…!」
「昨日はよくもやってくれたな!」
昨日の山賊達が、崖の上から降りてきて、電々に武器を向けていた。
「まさかこの岩はあなた達が…⁉」
「その通りだ。ついでに教えておくと、もう一つ用意してあるぜ」
「…っ!」
賊の言葉に鈴々が岩の向こうを見ると、山賊達が同じくらい大きな岩を、いつでも転がせるようにして待機している。
「ああっ!」
さらに、上を見ていた雷々が声をあげる。
鈴々達が上を見ると、数人の山賊達が下に向かって弓矢を構えていた。
「おとなしく武器を捨てな!」
「あ、ああ…」
「うう…」
「くっ…」
「ううう~…!(ど、どうすればいいのだ?鈴々が動けば、みんな岩に潰されてしまうのだ…。
でも、糜竺と糜芳と孫乾は上から矢で狙われてるから、動けないのだ…)」
絶体絶命の状況で、鈴々は必死に助かる方法を考えようとするが、思いつかない。
さらに、鈴々も岩を支えるのに、限界が近づいていた。
(鈴々も…腕が…もう限界…)
「ちっ!往生際が悪いな!お前ら、大岩をもう一つお見舞いしてやれ!」
「了解!」
頭領らしき男の合図で、前方にいた集団がもう1つの岩を転がす!
(あんなのが来たら…!もう、ダメなのだ!)
そう思い、鈴々は思わず目をつぶる!
その時…
「おおおおおっ!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
雄たけびと共に何者かが現れた!
その者は後方の山賊達や雷々、電々、美花を飛び越え―――
ドゴゴォン!
鈴々が抑えていた岩と、新たに転がってきた岩を砕いた!
「あ…」
「大丈夫か⁉鈴々!」
「ルフィ⁉」
「ギャアー!」
「ぐあー!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
さらに、後方から賊の悲鳴が聞こえ始める!
「ハァーーーッ!」
愛紗が後ろから山賊達に斬りかかったのだ!
愛紗の背後には朱里もいる。
「な、何だコイツ⁉」
「てーい!」
バキッ!
「ぐあっ!」
すかさず、電々も反撃に出る!
「ハァッ!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「うわっ!」
「がっ!」
「うあっ!」
美花も崖の上に待機していた山賊達に、ナイフを投げつけ討ち取る!
そしてもちろん前方では…
「おおおおおっ!」
「おりゃーっ!」
「ていやーっ!」
「「「「「「「「「「ギャアアアアア!」」」」」」」」」」
ルフィ、鈴々、雷々が山賊達を蹴散らしていた。
こうなると山賊達はなすすべもなく、次々とブッ飛ばされたちまち賊は撃退された。
かと思われたが…
「きゃあ!」
「「「「「「⁉」」」」」」
後方から悲鳴が聞こえ、ルフィ達が振り返ると…
「てめェら全員おとなしくしやがれ!」
「はわわ~⁉」
「しまった!孔明殿!」
山賊の1人が朱里を捕まえ、人質にしていた。
「さァ、全員武器を捨てろ!」
またもや不利な状況に追い込まれるルフィ達。
その時だった。
ビュッ
バキッ
「ぐあっ⁉」
「「「「「「⁉」」」」」」
朱里を捕まえていた山賊の頭に、どこからともなく飛んできた石がぶつかった。
賊がひるんだすきに、朱里は逃げ出す。
「今のは一体…?」
「危ないところだったな!」
「「「「「「⁉」」」」」」
崖の上から声が聞こえ、全員が上を見ると一人の人影が見える。
「あの…あなたは?」
朱里がその人物に問いかけると…
「ある時は影の薄い太守の客将…またある時はメンマを求める風来坊…。
しかして、その正体は―――
乱世を正すため、地上に舞い降りた一匹の蝶!美と正義の使者!華蝶仮面!ここに見参!」
…と、黄色い蝶の仮面をつけた、どう見ても星にしか見えない女性は、高らかに名乗りを上げるのだった。
(……な、何をやっているのだアイツは?)
正体に気付いた愛紗は、開いた口がふさがらなくなる。
「誰なんでしょう?関羽さん達の知っている人ですか?」
「あ、いやその…何というか…」
朱里に訊かれ、返答に困る愛紗。
すると…
「全然知らない奴なのだ!」
鈴々がはっきりと言い切った。
「こんな変態仮面が、鈴々達と知り合いなワケないのだ!」
「…………」
変態呼ばわりされ、静かに怒気をまとうせ…ではなく華蝶仮面。
(あ、明らかに怒っているな…。確かにあの仮面は悪趣味だとは思うが…。というより、鈴々の奴、本当に気付いていないのか?)
「何言ってんだ鈴々?」
(おお!ルフィ殿は気付かれましたか!
てっきりルフィ殿も分からないかと思っていましたが、野生の勘か何かで気付かれましたか⁉
何にせよ、ルフィ殿が説明してくだされば…)
「カッコイイじゃねェかあの仮面!お~い!誰か知らねェけど、孔明助けてくれてありがとうな!」
そう言って手を振るルフィ。
「…………♪」
(…やはり気付いていないのか…まァ、アイツの機嫌がよくなっただけ良しとするか…)
「え~?あの仮面はないと思うな~…」
「電々も…」
「美的概念を疑いますね…」
「み、皆さんそんな本当のこと言っちゃだめですよ!いくら残念な人とはいえ、私を助けてくれたんですから!」
「こ、孔明殿…その言い方は…」
「…………」
雷々、電々、美花、朱里にもさんざん言われ、また機嫌が悪くなる華蝶仮面。
「諸君…さらばだ!」
そう言って、華蝶仮面は去って行った。
「一体何者なのだ?」
「まーでも、良い奴だと思うぞおれは」
(二人とも…本当に気付いていないのですか?)
その後は、何の問題もなく、賊は撃退された。
ほとんどの山賊達は崖から落ち、残った者達も命からがら逃げて行ったのだった。
▽
「ここならもう大丈夫でしょう…」
戦いが終わった後、一行は急いで崖路を抜け出し、しばらくして、平野に出たところで、一息入れることにした。
「……愛紗」
そこで、鈴々がポツリと口を開いた。
「…愛紗はどうして、こっちに来たのだ?」
「どうしてって……お前を探すために決まっているだろう…」
互いに目を合わせず、うつむいたまま会話をする2人。
「だから……どうして、鈴々を探しに来たのだ?何で……鈴々を置いて行かなかったのだ?」
「だ、だから……それは…その…」
「兄妹だからに決まってるだろ」
「!」
「っ!」
口ごもる愛紗に代わって、ルフィが答えた。
「おれ達は兄妹で、仲間なんだから、いつも一緒だ!そうだろ⁉」
「……はい」
「……うん。…うっ…」
その途端、鈴々の目に大粒の涙が溢れ出す。
「うわ~ん!」
「ど、どうした鈴々⁉」
「ごめんなさいなのだ~!」
そう言って、大泣きしながら愛紗に抱き着く鈴々。
「鈴々は…愛紗がっ…鈴々の話は…全然聞いてぐれないのにっ…ルフィや…孔明の話ばっかり聞ぐから…悔じぐて…う゛う゛っ…ごめんなさいなのだ~…」
「(鈴々、そんな風に思って…)…いや…私も悪かった。少々大人気なかったし、お前の気持ちも考えず、勝手に怒ったりして悪かった…」
「愛紗…」
「だが鈴々、ルフィ殿達にも謝らねばならんぞ」
「あ!」
愛紗に言われ、鈴々はルフィと朱里に向き合い。
「ルフィ、孔明、ごめんなさいなのだ…」
「いいよ」
「私も気にしてませんから」
2人に許してもらい、鈴々は一気に顔が明るくなる。
「ねえねえ、張飛ちゃん」
「その人達、張飛ちゃんのお友達なの?」
訪ねてきた雷々達に、鈴々は…
「この人達は…鈴々のお兄ちゃんとお姉ちゃんとお友達なのだ!」
とてもうれしそうに、3人を紹介するのだった。
▽
ちなみにその日の夕方、とある川辺にて…
「…理解してくれたのは、ルフィ殿だけか…カッコイイと思うのだが…」
黄色い蝶の仮面を手に取り、そんなことを呟く女性がいたそうな…。
アニメでは、ケンカの原因がうやむやになってましたけど、今作ではしっかりケジメをつけさせました。