ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第28話 “探偵 諸葛亮孔明”

翌朝―――

 

ルフィ達は寺で朝食を食べながら、昨晩のことを話していた。

 

「何⁉アレは人間⁉」

 

「はい。間違いありません」

 

「おのれ謀りおって~!しかし、そうと分かれば、もう怖くないぞ!」

 

「…ということは、やはりそうと分かるまでは怖かったのですね」

 

「あ…」

 

美花に言われ、墓穴を掘ってしまったことに気付く愛紗だった。

 

「そもそもよく考えれば、人の仕業だとわかると思いますよ」

 

「孔明、どういうことなのだ?」

 

「いいですか?通行人を無差別に襲うのではなく、金目の物を持った人だけを襲う。これは明らかに、金目当ての人間の仕業です」

 

「なるほど~!言われてみればその通りだね~!」

 

「孔明ちゃん頭いいね~!」

 

「ただ…」

 

そこで朱里は周りを見渡して、自分達以外に人がいないことを確認すると、顔を近づけて小声で話す。

 

「私は、これはただの賊の仕業ではないと思います」

 

「どういうことですか?」

 

「化物が出たことで、あの関所は開ける時間を短くして、夜中に通る人を減らそうとしています。こうなると賊の獲物は少なくなってしまいますから…」

 

「確かに…それでは、ここに居座る意味がなくなってしまいますね」

 

「はい。ですからおそらく犯人は、通行人から物を奪うのではなく、物流を混乱させることが目的なのかと…」

 

「それで得するのは…」

 

「はい…何かしらの権力者に通じている人物です」

 

「なんと…!」

 

「でも…それなら夜だけじゃなくて、昼も通れなくした方がいいと思うのだ」

 

「あ、そういえばそうだよね~」

 

「何で夜だけなんだろ~?」

 

「考えられる理由としては…犯人は昼間は別のこと、それも多くの人の目に付くことをしているため、夜にしかできないからではないかと…」

 

「ということは…!」

 

「はい、犯人は昼間に人目に付く仕事をしている人物、それもこの集落か近隣の町村の人物である可能性が高いです…!」

 

「「「「「!」」」」」

 

「ですから、まずこの集落に怪しい人がいないか調べます。基本的には私が調べますから、皆さんは一緒に来て、私を護衛してください」

 

「よーし!」

 

「わかったよ」

 

「わかりました」

 

「了解なのだ」

 

「了解です」

 

朱里の言葉に5()()は気合を入れなおして、返事をするが…

 

「あれ?ルフィ殿は…」

 

愛紗がルフィの返事が聞こえないことに気付き、全員が視線を向けると…

 

「ぐー…」

 

「「「「「「だああああっ!」」」」」」

 

いつの間にか眠っていたルフィに、思わず全員ズッコケるのだった。

 

「さっきから、会話に入ってこないと思っていたら…」

 

「どこまで話を聞いていたでしょうか?」

 

「いや、ルフィ殿は隠し事とかが苦手だから、知らない方が動きやすいかもしれないな…」

 

「確かにそうかもしれませんね…」

 

「ま、とりあえず朝食を終わらせ…あれ?」

 

愛紗の言葉に全員が納得し、朝食を再開しようと食卓の上を見ると…

 

「ない⁉全部食べられている!」

 

「お皿に取っていた分もなくなってるよ!」

 

そして全員の視線が1人の男に集中し、同じ結論に至る。

『こいつが全部食ったな』と。

 

「おのれ~!食べ物の恨み~!百倍返しなのだ~!」

 

「雷々も~!」

 

「電々もやるぞ~!」

 

…と、怒りのままに得物を手に取る3人。

 

「り、鈴々止めろ!」

 

「三人とも武器を下ろしてください!」

 

「はわわ~!皆さん屋内で、そんな物騒なもの振り回しちゃ駄目ですよ~!」

 

そんなこんなで朝食は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食後、一行が早速調査に行こうとすると、玄関で掃き掃除をしている普浄にあった。

 

「おや、皆さん。お出かけですか?」

 

「はい。化物の件で少し調べ物を…」

 

「そうですか。いたた…」

 

「どうかしたのですか?」

 

普浄が痛がって右腕をなでる様子を見て、愛紗が心配そうに訊ねる。

 

「いえ。今朝、厠に行くときに転んで、ぶつけてしまいましてね」

 

「そうですか、お大事に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寺を出てしばらく行くと、私服姿の胡班にあった。

 

「胡班殿、おはようございます」

 

「あ、皆さん。おはようございます。ふわあァ…ああ、失礼…」

 

「いえ、お気になさらず」

 

「胡班さん、夜更かしでもしてたんですか?」

 

胡班の眠たそうな様子を見て、朱里が訊ねる。

 

「ええ。今日は非番でしたので、昨夜は遅くまで読み物をしていたんです」

 

「あれ?胡班さん、その足の怪我どうしたの?」

 

胡班の足に擦り傷があることに気付いた、電々が訊ねた。

 

「ああ、さっきそこで転んで、擦りむいてしまったんです」

 

「へー」

 

「おお、胡班。関羽殿達も」

 

…と、そこへ王植がやって来た。

 

「皆さん、昨夜は大変だったようで…ふわあァ…ああ、失礼しました」

 

「お気になさらず。王植殿も夜更かしを?」

 

今度は愛紗が訊ねる。

 

「いえ、私は不眠症で…。そのせいで朝はいつもこうなんです」

 

「その分、不寝番(ねずばん)のときは頼りになりますが」

 

「ははは、確かにな。ああ、(かゆ)い…」

 

「どうかされましたか?」

 

王植が左右の手をかいているのを見て、美花が訊ねた。

 

「あ、いえ。どうも今朝から手が痒くて…」

 

「虫にでも刺されましたか?」

 

「さあ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ルフィ達は孔秀に頼んで、役所の物置を見せてもらっていた。

 

「本当にここにあるものは、自由に使っていいんですか?」

 

「ええ。ここにあるのは、普段はあまり使わない物ばかりのようですし、化物退治の役に立つならどうぞ好きに使ってくださ…へっくし!」

 

「風邪でもひきましたか?」

 

孔秀のくしゃみを見て、美花が訊ねた。

 

「いえ、私は…へっくし!こういう埃っぽい場所が苦手で…へっくし!」

 

「そうだったのですか!では、あとは我々がやりますから、孔秀殿は外へ…」

 

「そうさせていただきます…」

 

「おや、皆さん!そこで何を?」

 

物置の外から声が聞こえ、見てみると韓福と孟坦がいた。

 

「韓福殿、孟坦殿」

 

「関羽殿達が化物退治に使う道具を必要としていたから、物置に案内していたのだ」

 

「しかし孔秀、お前はこういう埃っぽいところは…」

 

「ああ、その通り。だから今出てきたところさ」

 

「あーあ、顔すごいことになってるぞ…」

 

「そういう韓福殿も手が赤いようですが?」

 

韓福の両手を見て、孔秀が訊く。

 

「ああ、昨夜から妙に痒くてな…」

 

「あれ?孟坦さん、その右腕の怪我どうしたの?」

 

孟坦の右腕に布が巻かれ、血がにじんでいることに、雷々が気付いた。

 

「ああ、これか。昨日、鍛錬中に相手の使っていた木刀が割れて、その先端で怪我をしてしまってな」

 

「それは痛そうなのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物置で蓋つきの竹籠を見つけたルフィ達は、それを借りることにした。

 

その途中で卞喜と秦琪にあった。

 

「おや、皆さん」

 

「そんな大きな竹籠をもってどうしたんですか?」

 

「今夜、化物退治の餌を入れるのに使おうと思って、物置から持ってきたんです」

 

「そうでしたか」

 

「あの、お二人とも右腕に布を巻いていますが、どうかしましたか?」

 

愛紗が訊ねる。

 

「ああ。私は今朝、荷物を運んでいた時に、少し痛めてしまいまして。秦琪は今朝から、少し腕がしびれるようで…」

 

「ええ。おまけに私は寝冷えしたらしく、ちょっと寒気がしまして…へっくしょん!」

 

「それは大変だね」

 

「お大事にしてくださいね」

 

「はい」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方―――

 

「孔明殿、これでいいですか?」

 

「はい。ありがとうございます」

 

朱里は美花に頼んで、昼間見つけた竹籠にある細工をしてもらった。

 

「孔明ちゃんに言われた通り、獣皮や絹、反物なんかを用意したよ」

 

「これくらいあれば足りるかな?」

 

「はい、充分です」

 

「それで孔明殿、犯人の目星はつきましたか?」

 

「はい!昨日の仕込みが役に立ちました!」

 

「よし!じゃあ今度こそアイツをブッ飛ばすぞ!」

 

「あ、ちょっと待ってください」

 

ルフィが意気込むと、朱里が一回止める。

 

「ちょっと気になる事があるので、今夜皆さんは私の作戦の通りに動いて下さい。絶対に勝手な行動はしないでくださいね」

 

「ああ、わかった」

 

(ルフィ殿は縛っておいた方がいいか?)

 

密かに、そんなことを考える愛紗だった。

 

「その作戦通りにやれば、化物を退治できるのか?」

 

「はい!十中八九、成功すると思います!」

 

「だったら、孔明を信じるのだ!」

 

「ありがとう鈴々ちゃん!ただ…」

 

「どうされました孔明殿?」

 

「はい…」

 

愛紗に訊かれ、朱里は懐から1本の羽を取り出す。

昨晩、美花のナイフに刺さっていたものだ。

 

「化物の仕組みが…どうやってあの化物を演じていたのかが、どうしてもわからなくて…」

 

朱里はそうは呟き、考え込むのだった

 

 




果たして、犯人は一体誰?


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