ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回、麦わらの一味が新たに1人登場します。




第32話 “暗殺阻止”

とある一軒の茶店で、1人の男が会計を済ましていた。

 

「はいよ、確かに受け取ったぜ」

 

立派なアゴひげを生やした店主が金を受け取る。

 

「あ、そうだ。ちょっと聞きてェんだけど」

 

客である、鼻の長い男が店主に訊ねる。

 

「何だ?」

 

「この辺で、行商が出来そうな場所ってあるか?」

 

「アンタ行商人なのか?そうだな…この道をもう少し行けばけっこう大きい街があるから、そこに行ってみたらどうだ?」

 

「そうか、じゃあ行ってみる。ありがとう」

 

男は店を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…だいぶ路銀が乏しくなってきたな…次の街でも上手くいくといいんだが…)

 

鼻の長い男、ウソップはルフィ達と逸れた後、自分の持ち物と得意の舌先三寸嘘八百で物々交換や売却を行い、日銭を稼いでいた。

 

(…にしてもホントどうなってんだココは?字は読めねェし、通貨は違うし、海軍も全然見ねェし…)

 

そんなことを考えながら歩いて行くと、街の門が見えてきた。

 

(あれが茶店のオヤジが言っていた街かな?結構デカいな…)

 

ウソップが門を通ろうとすると…

 

「止まれ!」

 

「⁉」

 

門番に呼び止められた。

 

「キサマ、随分珍しい恰好をしているが…異国の者か?」

 

「は、はい!そうですが何か…?」

 

「……どう思う?」

 

「怪しいが、あまりにも目立ち過ぎないか?特にあの鼻」

 

「確かに…いくら何でも、あんなに目立つ奴なワケないか」

 

(…………?)

 

内心ビクビクしているウソップをよそに、2人組の門番は何やら相談し…

 

「あー…失礼したな。通っていいぞ」

 

「あ…そ、そうですか…」

 

とりあえず許可を得られたので、ウソップは街に入った。

 

(何だったんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~その夜~

 

「ふ~食った食った!」

 

ウソップは一軒の飲食店で、食事を済ませた。

 

「あらまあ。綺麗に平らげてくれたね」

 

店の女将が1人、急須を持ってやって来た。

 

「お茶のお替りはいかが?」

 

「ああ、もらうよ。ありがとう」

 

「アンタ見慣れない格好してるけど、旅人かい?」

 

「まァ、そんなところだ」

 

お茶を注ぎながら、女将は話しかける。

 

「ひょっとして、アンタも明日の行列を見に来たのかい?」

 

「行列?」

 

「違うのかい?」

 

「何なんだ?その行列って?」

 

「実はね、ここの領主様の娘さんが、近くの町の領主様の三男と結婚するんだよ。

それで明日の昼過ぎに、婿入りしてくる息子さんの行列が、この店の前の大通りを通るのさ。

その行列がとても豪華なうえ、そのお婿さんがかなりの美形らしくてね。

噂を聞いて『それはぜひ見てみたい』って近隣の村からも人が集まって来てるんだよ」

 

「へ~結婚か、そりゃめでたいな!」

 

「ただねェ…」

 

「?」

 

突然、女将の表情と口調が暗くなる。

 

少し辺りを見渡した後、女将は顔を近づけて小声で話し出した。

 

「最近、妙な噂があるんだよ…」

 

「噂?」

 

「領主様の身内だか側近だかに、結婚に反対している者がいるらしいんだよ…。

それでそいつらが婿入りしてくる息子さんを、暗殺しようとしてるらしいんだ…」

 

「そ、そりゃ物騒だな…」

 

「せっかくの晴れ舞台に、いやになっちゃうよ…」

 

「あ!それでこの街に入ろうとした時、門番がおれを呼び止めたのか」

 

「ああ。その噂が流れ始めてから、領主様達も相当警戒してね。明日も十分な警備をつけるらしいよ」

 

「う~む…事前に計画を漏らすような奴らの暗殺が、成功するとは思えないが…。嫌な予感が拭い切れねェな…」

 

「まったくだよ…殺したり、殺されたり…もっと平穏に暮らせる日々が欲しいよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌朝~

 

「ん~いい天気だな~」

 

ウソップは朝早くに、宿泊した宿を出た。

 

(こりゃ結婚にはもってこいの日だな。さてと、おれもどっかで路銀稼ぎを…)

 

そんなことを考え、辺りをキョロキョロ見渡していると…

 

「あーっ!返せーっ!」

 

「⁉」

 

そんな声が聞こえ、見てみると髪飾りを売っている店の店主らしき人物が、空に向かって叫んでいた。

視線の先には、光るものをくわえたカラスが飛んでいる。

 

どうやらカラスに商品を盗られてしまったらしい。

 

(そういうことか!)

 

状況を理解したウソップは、自身の武器である特性パチンコ“カブト”と鉛球を取り出し、狙いを定める。

 

「(当てて殺しちまったら、後味悪ィな…。ここは頭スレスレを狙って、風圧で気絶させる!)必殺“鉛星”!」

 

そして鉛球を放つ!

鉛球は一直線に飛び、狙い通りカラスの頭の近くを通過する!

 

が…

 

「…え?」

 

その時、空に放たれたのは、ウソップの鉛球だけではなかった。

1本の矢が同時に、カラスの頭の近くを通過していったのだ。

 

ウソップの狙い通り、カラスは風圧によって気絶し、地面に落ちてきた。

 

「おっと!」

 

すかさずキャッチしたウソップは、同時に辺りを見渡す。

 

(あ!)

 

すると、近くの宿屋の2階の一室で、1人の女が窓を閉じるのが見えた。

そしてその女の傍らには、弓あった。

 

 

 

 

 

 

「ほらよ」

 

「ありがとうございます」

 

ウソップは、カラスから取り返した髪飾りを店主に返すと、改めて矢を放ったと思われる女がいる宿屋の方を向く。

 

(矢が飛んできた方向から考えても、やっぱりあの女が撃ったよな…。

カラスを狙って狙いがそれたのか、それともおれと同じように風圧で気絶させることを狙ったのか…………!)

 

…と、そこでウソップの頭にある考えが浮かんだ。

 

(き、昨日女将が言っていた…)

 

―――――それで明日の昼過ぎに、その息子さんの行列が、この店の前の大通りを通るのさ

 

例の行列が通る大通りと、女がいる宿屋を交互に見る。

 

大通りと直角に交わるように、一本の通りがある。

そしてその通りは、例の女がいる宿屋の真正面に伸びていた。

しかも、その女がいた部屋は、丁度通りに面している。

 

無論、宿屋から大通りまではかなりの距離がある。

しかし、ウソップは思った。

 

(おれなら…当てられる…!)

 

そして、先ほどの女が自分と同じように、カラスの頭スレスレを狙って撃ち、それを成功させたのだとすれば…

 

(あの女も…同じことが…!)

 

確信があるわけではないが、彼の勘は『間違いない』と言っていた。

 

(よ、よォし…!)

 

その結論に至ったウソップは…

 

 

 

 

 

(おれは何も知らな~い…何も気付いていな~い…知らぬ存ぜぬ~知らぬ存ぜぬ~…)

 

“見て見ぬフリ大作戦”を決行し、街から出て行こうとする。

 

が…

 

(だーっ!ダメだダメだ!ここまで色々気付いて、見て見ぬフリはやっぱりできねェ!)

 

頭を左右に激しく振り、逃げたい気持ちを振り払うと、ウソップは宿屋の方を向く。

 

(ま、まだそうと決まったワケじゃねェんだ!とりあえず話だけ聞いてみよう!)

 

そして、例の女を訪ねてみることにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~宿屋の一室~

 

「私に客?」

 

「はい…どうしましょう?」

 

「…わかりました。連れてきてください」

 

 

 

 

 

 

「…さっき、私が弓を撃ったのを見てたんですか?」

 

「ああ。それで、同じ狙撃を得意とする者として、ぜひ話してみたいと思って」

 

「そうだったんですか」

 

ウソップが訪ねてみると、女は会うことを承諾してくれた。

 

ウソップよりもやや年上で、紫色の腰まで届く長い髪をしており、まさに大人の女性という雰囲気がある女だった。

 

部屋の中には弓が一つと、数本の矢が入った矢筒がある。

 

「おれは“ウソップ”。旅人だ」

 

「私は“黄忠(こうちゅう)”、字を“漢升(かんしょう)”といいます。

何だかさすまたのような物を持っていますが、それがウソップさんの得物ですか?」

 

「ああ。こいつは“パチンコ”っていって、ここに石とかを乗せて、それを…こう飛ばして撃つ武器なんだ。

こいつは、さらにおれが特別な改造を施した物で“カブト”って名前だ」

 

ウソップは実際にカブトを手に取り、狙撃の動作をやって見せる。

 

「そんな武器があるんですか…。あ!失礼しました。今、お茶を入れますね」

 

「あ…いや、いいよ。おれが無理やり押し掛けたのに…」

 

「いえ、遠慮なさらず」

 

「…じゃあ、お言葉に甘えて」

 

黄忠が台所に立つと、ウソップは窓を開けて話し出した。

 

「それにしても今日はいい天気だな~。大通りの方までよく見える」

 

「!」

 

「黄忠さんは知ってるか?今日の昼過ぎにあの大通りを、ここの領主様の娘に婿入りしてくる、息子さんの行列が通るんだってよ」

 

「…噂で聞きましたわ」

 

「けど、そのお婿さんの命を、狙っている連中がいるらしいぜ」

 

「…物騒ですね」

 

「まァ、しっかり警備もされているらしいから、大丈夫だとは思うけどな」

 

「…そうなんですか」

 

「しかしこっからじゃ、大通りを通る人の頭は、豆粒みてェだな」

 

「…遠いですからね」

 

「多分警備の連中も、こんなに離れた所から、動く人間の頭を狙い撃ちするのは、不可能だと思ってるだろうな」

 

「…そうですね」

 

「まァ確かに、それは飛んでいる鳥の頭の近くを、当てないように狙って撃つくらい、難しいだろうな」

 

(……バレてる)

 

そう考えた黄忠は、包丁を手に取り、素早く振り返る!

 

が…

 

ボン!

 

「⁉ゲホゲホ…」

 

小さな破裂音と共に、辺り一面に白い煙が広がり、前が見えなくなる。

 

「ゲホゲホッ……こ、これは⁉」

 

「このパチンコの一番の利点はな…ある程度の大きさの物なら、何でも撃つことができるってことだ…」

 

「!」

 

「だからこんなふうに、弾に色々な細工をすることができるんだよ!」

 

煙幕が晴れ、視界が戻った黄忠の目に映ったのは、パチンコで自分の頭に狙いを定めているウソップの姿だった。

 

「今構えているのは、当たり所によっては一発で致命傷を与える弾だ!脅しじゃねェぞ!」

 

「……っ!」

 

観念した黄忠は、包丁を床に置いた。

 

 

 

 

 

 

その後、ウソップが黄忠から事情を聞くと、とんでもないことが分かった。

 

「ええっ⁉娘さんが誘拐⁉」

 

「はい。数年前に主人を亡くした私は、幼い娘の“璃々(りり)”と近くの村で暮らしていました。

ある日、私が用事で隣の村へ出かけて、家に帰ると璃々の姿がなく、代わりに一通の置手紙があったんです。

手紙には『娘を返してほしければ、我々の言う通りにしろ。変な考えを起こせば、娘の命はない』と書かれていました。

それで、私が手紙に書かれていた、待ち合わせの場所に行くと…

 

 

 

 

 

『…娘は無事なんですか?』

 

『今のところはな。キサマが我々の言う事を聞かなければ、すぐに死んでしまうがな…』

 

仮面をつけて、妙に立派な剣を腰に付けた男が一人いました。

 

『私に何をしろと…?』

 

『仕事一つ頼みたいのだ』

 

 

 

 

 

そして、今日ここの行列で、婿入りしてくる男を殺せと…」

 

「ひでェな…」

 

「どんな理由であれ、何の罪もない人の命を、こんな卑劣なやり方で奪うなんて…許されることではないかもしれません…。

でも、璃々は…私のたった一人の…大切な家族なんです…!

あの子を助けるには…こうするしか…!」

 

「…………」

 

涙を浮かべて訴える黄忠を見て、ウソップは何も言えなくなってしまう。

 

その時…

 

「……ん?」

 

部屋の隅にある棚の上に置かれた、数枚の紙がウソップの目に入った。

紙には、子供が描いたような絵が描かれている。

 

「なァ、これ何なんだ?」

 

「それは昨日、誘拐犯の仲間が持って来た絵です。娘が生きている証拠として、描かせた物のようで…」

 

「ふーん…」

 

何となくその絵を手に持って見てみるウソップ。

 

(花と木それに猫…この髪が長い女の人の絵は、黄忠を描いたのか。

じゃあこっちの髪を結んでいる女の子の絵は、自分を描いたのか?………ん?)

 

ウソップはその内の一枚の絵が気になり、黄忠に訊ねた。

 

「これは誰をかいたんだ?」

 

ウソップ見せた紙には、アゴひげを生やした男が描かれていた。

 

「それはわかりません…」

 

「わからないって…知ってる人じゃないのか?村の近所の人とか…」

 

「いえ、そのような男性は全く記憶になくて…」

 

「う~む…」

 

黄忠の言葉を聞き、ウソップは絵を凝視して考え込む。

 

「あの…その絵がどうかしましたか?」

 

「あんたの娘さんて、まだ幼いんだろ?」

 

「はい…」

 

「そんな小さい子が、ここまでちゃんとした絵を…ましてや、会ったこともない男の顔を描けるもんなのか…?

心なしか、あんたの絵や自画像よりも、上手に描けてる気がするし…」

 

「どういうことです?」

 

「もしかしてその子、監禁されている場所で、この男を見ながら描いたんじゃねェのか?」

 

「え?じゃあまさか、この男が誘拐犯⁉」

 

「いや、さすがに誘拐犯の仲間の顔を描いたものなら、渡したりはしねェだろうから…多分監禁場所の近くにこの男が…。

それにこの絵の男、どっかで見たような………。

あ!思い出した!おれが昨日寄った、茶店の店主だ!」

 

「え⁉」

 

「そういえばあの茶店、向かいに廃屋があったような…まさかそこに…」

 

「娘の居場所に心当たりがあるんですか⁉」

 

「⁉」

 

ウソップの言葉を聞き、黄忠は興奮した様子でウソップの両肩をつかみ、問いかける。

 

「どこですか⁉教えてください!すぐに私が行って娘を…!」

 

「落ち着け!誘拐犯に顔が知られているあんたが行ったら、それこそ娘さんが危ねェだろ!」

 

勢いに押されそうになりつつも、ウソップはなんとか黄忠を制止させる。

 

「そ、そんな…!」

 

「おれが代わりに行ってくるから、あんたはここで待ってろ!」

 

「え…?」

 

「幸いここからあの茶店まで、そんなに距離はねェ!上手くいけば、行列が始まる前に間に合うはずだ!」

 

そう言うなりウソップはパチンコを手に取り、急いで戸口へ向かう。

 

「あ、あの…!」

 

「何だよ⁉」

 

「ど、どうして…?」

 

「?」

 

「今、会ったばかりの…私のために…?」

 

当然のように、自分の代わりに娘を助けに行くと言った、ウソップの言動が信じられないらしく、黄忠は訊ねる。

 

「…おれの…誇りのためだ!」

 

「え?」

 

「あんたみたいな心優しい母親が、娘を人質に取られて、人殺しをさせられそうになってる…。

こんな状況を見て見ぬフリなんてしたら…おれはもう胸を張って生きられねェ!

故郷の友達にも、おれの仲間にも顔向けできねェ!

だからやるんだ!おれ自身のために!」

 

そう言って、ウソップは部屋を飛び出していった。

 

 




今回は黄忠とウソップの話でした。
ウソップ海賊団のことがあるからか、ウソップって子共の面倒見が良さそうなイメージがあるんですよね。

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