ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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ウソップを書くときは、カッコよさと面白さの両方を大事にしたいと思っていますが、上手く書けてると良いな…。




第33話 “救出作戦”

「………誇りのため…」

 

ウソップが出て行ったあと、黄忠はしばらく呆然としていたが…

 

「入るぞ」

 

「!」

 

1人の男が部屋に入ってくると同時に、我に返る。

 

「……何の用ですか?」

 

「頭から、首尾を見届けて来いって言われてな」

 

「…そうですか」

 

どうやら、誘拐犯の仲間のようである。

 

(危なかった…。もし私が飛び出して行ったら、この男に…)

 

黄忠は、娘のことをウソップに託し、自分はただひたすら待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~???~

 

数人の男が話をしていた。

 

「何も異常は無いか?」

 

「全く。なさ過ぎて退屈なぐらいだ」

 

「コトが上手くいったら、コイツはどうすんだ?」

 

男の1人が、部屋の隅でうずくまっている、幼い少女を指してそう言う。

 

「『とにかくトンズラすることを優先しろ。ガキはどうでもいい』だってさ」

 

「頭は今頃何をやってんのかね~?」

 

「な~んか上手いことを考えたから、それの準備をしてるそうだが…」

 

 

 

 

 

 

(…ビンゴだ!)

 

その男達のやりとりを、ウソップが壁に張り付き、壁の穴から覗き見ていた。

 

彼の予想通り、昨日彼が立ち寄った茶店の向かいにある廃屋、その2階に短い紫色の髪を、左右で2つ縛りにした少女が監禁されていた。

 

(あの絵の女の子に髪型が似てるし、髪の色が黄忠と同じだ。あの子が娘の璃々ちゃんだな…!

にしても、“オクトパクツ”があってよかったぜ…。

まさかあいつらも2階の壁に張り付いて、覗いている奴がいるとは思うまい…!)

 

そう、ウソップは彼の発明品である、“オクトパクツ”という吸盤付きの靴を使い、壁に張り付いていたのだった。

 

(しかし、どうしたもんか?相手は1階に5人、2階に3人。

行列が始まるまで時間がねェ…かといって失敗すれば、あの子が………ん⁉)

 

悩んでいたウソップの目に、反対側の壁にある1つの窓が映った。

人1人が出入りするには、十分な大きさがある。

 

そして、誘拐された少女は、窓の近くにいた。

 

(…よし!これで行くしかねェ!覚悟を決めろ男ウソップ!)

 

ウソップはそう自分に言い聞かせると、弾を一つ取り出し…

 

(必殺“煙星”!)

 

部屋の中に投げ込む!

 

ボン!

 

「⁉ゲホゲホっ!」

 

「な、何だァ⁉」

 

(今だ!)

 

誘拐犯たちが混乱しているすきに、ウソップは部屋に飛び込み…

 

「こっちだ!」

 

「え?」

 

少女を連れ出し…

 

「トウッ!」

 

窓から飛び出す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゲゴッ⁉」

 

ゴシャァ!

 

そして見事に、頭から着地した。

 

それでも、少女にはケガをさせずに守り切った。

 

「……お兄ちゃんだいじょうぶ?」

 

「……あ…ああ…ダイ…ジョーブだ…」

 

どう見ても大丈夫ではない様子でウソップは答える。

 

「どうした⁉何があった⁉」

 

「おい!ガキがいねェぞ!」

 

(!気付かれた!)

 

廃屋の中からそんな声が聞こえ、ウソップは急いで立ち上がる。

 

「見ろ!アイツだ!」

 

「あいつがガキを連れ出しやがった!」

 

「急げ!」

 

誘拐犯達もウソップに気付き、追いかけようとする!

 

「捕えろーーーっ!」

 

「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」」

 

勢いよく廃屋の入り口から飛び出してくる誘拐犯達!

 

(もう来やがった!……だが、入り口はすでに―――まきびし地獄だ!)

 

「「「「「「「「痛だだだだだーーーっ!」」」」」」」」

 

飛び出してきた誘拐犯達は、思いっきりまきびしを踏ん付けてしまい、その場で足を抱え跳びあがっていた。

 

「今だ!くらえ必殺“火の鳥星”!」

 

そして鳥の形をした炎の弾を打ち出すウソップ!

 

「ぎゃーっ!」

 

「な、何だ今の⁉」

 

「よ、妖術か⁉」

 

「化物だ!」

 

「絶対そうだ!アイツの顔、どう見ても人間のモノじゃねェ!」

 

「うるせーーーっ!」

 

思わずツッコむウソップ。

 

しかし、その顔のこともあってか、誘拐犯達は大慌てで逃げて行った。

 

「ふー…なんにせよ救出は成功…」

 

深呼吸を一つするとウソップは立ち上がる。

 

「君が璃々ちゃんだな?」

 

「う、うん」

 

「急いで帰ろう。お母さんが待ってるぞ」

 

「…お母さんが!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~宿屋~

 

「そろそろだな」

 

「…はい」

 

男に言われて、黄忠は弓を用意する。

 

(ウソップさん…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(頼む!間に合ってくれ!)

 

璃々を抱きかかえ、村へ急ぐウソップ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「構えろ」

 

「…はい」

 

狙いを定める黄忠。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走りながら、ウソップは考えていた。

 

(マズイな…!もし行列がまだだとしても、見物人はもうかなり集まってるだろうし…!

宿屋まで行ってたら間に合わなねェぞ、どうする?……そうだ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

婿らしき、傘のついた馬車に乗った人物が、宿屋の窓から見えた。

 

「来たな。頼むぞ」

 

「は、はい…」

 

矢を(つが)え、弦を引く黄忠。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウソップが街に着いた頃には、彼の予想通り、見物人による人混みが出来ていた。

警備の人間もおり、大通りを横切ろうとすれば、不審者として取り押さえられてしまうだろう。

 

(あそこから狙ってるなら…あの辺りからなら…!)

 

街に着いたウソップは、行列が通る大通りと平行に走り出す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!何をやっている!」

 

黄忠は、できるだけ矢を撃たず、待っていたが…

 

(これ以上は…もう無理…)

 

あきらめて、再び狙いを定めようとしたその時…

 

「!」

 

 

 

 

 

鼻の長い青年に抱きかかえられ、こちらに手を振る自分の娘の姿が、目に映った。

 

(あ…ああ…!)

 

「おい!どうし…」

 

「っ!」

 

バキィッ!

 

「がっ⁉」

 

黄忠に振り返りざまに殴り飛ばされ、誘拐犯の一味の男は気を失った。

 

その後、結婚式は無事に終わった。

 

誘拐犯の大半は逃げてしまったが、黄忠が捕まえた1人の男は役人に引き渡された。

その男の口から、今回の暗殺を企てた、領主の側近のこともバレ、逮捕されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、街の外にて―――

 

「ウソップさん…本当に何とお礼を言ったら良いのか…」

 

「お兄ちゃん、ありがとう!」

 

「いいよ、お礼はもう十分すぎるほど、言ってもらったし。

それに言っただろ、おれは自分のためにやっただけだって」

 

「あの…ウソップさんはこれから、どうするつもりなのですか?」

 

「また、旅を続ける。逸れちまった仲間がいるから、まずそいつらを探さねェと」

 

「よろしければ、私達も同行させてもらえないでしょうか?」

 

「え?」

 

「実は、私達が暮らしている村も、治安が悪くなってきて、離れる住民が増えていたのです。

だから、私と璃々も近いうちに村を離る予定だったのです。

どこに行くか、行き先も決まっていませんでしたし、ウソップさんが他国から来た方なら、この辺りのことに詳しい私は、きっと力になれると思います。

どうでしょうか?」

 

「気持ちは嬉しいんだけど…一つ問題があってな…」

 

「問題?」

 

「おれは…海賊なんだ」

 

「え⁉」

 

「いくら何でも、賊なんかと一緒にいたら迷惑がかかるし、あんた達だって嫌だろう?だから…」

 

「…いいえ、私は構いません」

 

「え⁉」

 

「たとえ海賊でも、ウソップさんは私達を助けてくれました。

自分の誇りのためだと、自分の仲間に顔向けできないと言って。

それに今の世の中では、賊だとか役人だとかいうのは、あまりアテになりませんから…。

だから、私はウソップさんとその仲間を信じます。

璃々もそれで良い?」

 

「うん!お兄ちゃんわるい人じゃないもん!」

 

「…そういうわけですから、同行させてもらえないでしょうか?」

 

「…そうか、ありがとうな。それじゃあ、よろしく頼む」

 

「はい、では改めて自己紹介を…。私は“黄忠漢升”、真名は“紫苑(しおん)”といいます。

これからはどうぞ、紫苑とお呼びください」

 

「璃々は“璃々”でーす!」

 

「おれは“ウソップ”。“紫苑”、“璃々”ちゃん、これからよろしくな!」

 

こうして、ウソップ、紫苑、璃々の3人旅が始まったのだった。

 

 




麦わらの一味で子供の相手が上手くできそうなのって、ナミ、ウソップ、ロビンだと思うんです。
あとは、チョッパーとブルックが出来なくもないかなといった感じです。
そのため、紫苑、璃々と行動させるのは、この3人の誰かにしようと思っていました。


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