ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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なんか第八席編は、書いていると勝手に話が出来上がっていく感じがすごくします。




第41話 “熊”

~華琳チームside~

 

「あっ!」

 

小さい岩の上で、桂花が持っていた棒が反応した。

 

「この下に何かあります!」

 

「温泉っすか⁉」

 

「それはまだわからないわ、掘ってみないと」

 

「それじゃあこの岩をどかして、掘ってみましょう」

 

「あ、その前に…」

 

「華琳様?」

 

「ちょっとのどが渇いたから、さっき通り過ぎた小川で水を飲んでからにしましょう」

 

そう言って来た道を引き返す華琳。

 

「私ものどが渇きましたわ~」

 

「私も…」

 

「シャンもお水飲む~」

 

「あたしも行くっす~」

 

「私もお供します」

 

「それじゃあ私も…」

 

そして、華琳達は全員その場を離れた。

 

「どうやら見つけたようですわね」

 

華琳達がいなくなったのを見て、麗羽達は近くの茂みから姿を現した。

 

「それにしても曹操さん達、行っちゃいましたね」

 

「ぞろぞろと連れ立って、どこへ行ったのかしら?」

 

「きっと厠ですよ。あたい達も良く連れ立って行くじゃないですか」

 

「とにかく、今のうちに宝をいただきますわよ!」

 

そして麗羽達は岩をどけようとする。

 

「いきますわよ!」

 

「「「「せーのっ!」」」」

 

ゴロン!

 

「よっしゃーじゃあ早速お宝を…」

 

そう言って岩があった場所に目を向ける。

 

すると…

 

「「「「…ひっ!」」」」

 

ワラジムシやムカデなどの虫が大量に這っていた。

隠れ家にしていた岩がなくなった虫たちは、麗羽達の足元を這いずり回る。

 

「「「「いやあァァァーーーっ⁉」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ナミ、シャオside~

 

「?」

 

「どうしたのよナミ?」

 

「なんか悲鳴が聞こえたような気がして…」

 

「気のせいじゃない?」

 

「そうかもしれないわね」

 

ナミは購入したツルハシと、一枚の地図を手に歩き、シャオはその後に付いて行く。

 

「ね~ナミ~…さっきから地図と周りを見てばっかりで、全然地面を掘ってないじゃない。

温泉探さないの?」

 

「いいシャオ?温泉っていうのは、適当に掘って見つかるようなものじゃないの。

溶岩ってわかる?」

 

「火山とかから出てくる、赤くて熱いドロドロしたやつのこと?」

 

「そう!それが地下にある水を、温めてできるのが温泉なの。

だから地下水と溶岩の両方が地面の近くにある場所でないと、温泉は出てこないの。

溶岩や地下水があるかどうかは、地形や山の形を見れば、ある程度予想することができるから…」

 

「それで地面と山の形を見ているの?」

 

「そういうこと」

 

「じゃあさっき、街で地元の人から色々聞いて、地図に書いていたのは?」

 

「温泉って湯気が出ているでしょ?

だから温泉がある場所は、その湯気が原因で、変な雲がずっとあったり、湯気に反射して光の柱が出来ていたり、自然現象がよく起きるのよ。

それで地元に人に、そういうのを見たことがある場所を訊いて、地図に記していたってワケ」

 

「ふ~ん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~麗羽チームside~

 

「全く…何だったんですのさっきのアレは⁉」

 

「曹操達が仕掛けた罠だったんじゃないですか?」

 

「あの金髪クルクル小娘ェ~…いつか絶対あの金髪を、元に戻らなくなるくらい引っ張ってやりますわ!」

 

「あと、腰が抜けるほど烏賊(いか)と玉葱食わしてやりましょう!」

 

(あわび)の肝も良いですわね!」

 

「それから目の前で、蜜柑の皮の汁を跳ばしてやるのも効きますよ!」

 

「衣服の中に(どじょう)蛞蝓(なめくじ)も入れてやりますわ!」

 

「あとは…」

 

「あ!麗羽様、文ちゃん、真直ちゃんも、あれを!」

 

麗羽と猪々子が話していると、先頭を歩いていた斗詩が何かを見つけた。

 

3人が見てみてみると…

 

「あれは…」

 

オレンジの髪の女と、ピンクの髪の少女が歩いているのが見えた。

 

「…どうやらあの者達も宝探しに来たようですわね」

 

女が持っている地図とツルハシを見て、麗羽が呟く。

 

「麗羽様、あの女が持っている地図、私が持っている物より保存状態が良さそうです」

 

「あれなら宝の場所がハッキリわかるかもしれません!」

 

「じゃあ隙をみて奪いましょう!」

 

「そうですわね!」

 

こうして、再び尾行を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

~ナミ、シャオside~

 

「ね~ナミ~…まだ見つかんないの~?シャオ退屈~…。

あ、(ウサギ)!」

 

野生のウサギを見つけ、思わず追いかけるシャオ。

 

「待ちなさーい!」

 

「あ、コラ!シャオ!」

 

ナミが呼び止めるのも聞かず、林の奥へと消えていき…

 

「きゃ~⁉」

 

すぐに戻ってきた。

シャオが追いかけて行ったウサギも一緒に戻ってきた。

 

そして、その後ろには…

 

「クマ~⁉」

 

「グアァァァーーーッ!」

 

「「きゃ~っ⁉」」

 

慌てて逃げだす2人。

 

 

 

 

 

 

一方、麗羽達も尾行をしていた相手がクマに出くわし、困惑していた。

 

「ちょ…ま、真直さん!どうするんですの⁉」

 

「ど、どうするって…猪々子!斗詩!な、なんとかしてあの熊を…」

 

「いや、得物があるならともかく…」

 

「こんな状態ではさすがに…」

 

「残念ですけど…あの女の地図はあきらめましょう…」

 

「し、仕方がないですわね…」

 

「アレ?…あの…麗羽様?」

 

「「「?」」」

 

猪々子に言われ、再び熊の方を見ると…

 

「「「え?」」」

 

熊が立ち止まり、鼻をクンクンさせながらこっちの方に近づいてくる。

 

「な、何かあの熊、こっちに来てませんか?」

 

「な、何で?」

 

「……あのう、麗羽様…」

 

「何ですの真直さん?」

 

「ひょっとして昨夜から今朝にかけて、お香とか焚いていましたか?」

 

「ええ、宝探しですから気合を入れようと、甘い香りのするお香をたくさん焚いてきましたわ」

 

その言葉を聞いて3人は確信した。

『それが原因だ』と。

 

「グルアァァァーーーッ!」

 

「「「「ひィィィーーーっ!」」」」

 

そして麗羽達を見つけ、襲い掛かる熊。

必死に逃げる麗羽達。

 

無我夢中で逃げていると…

 

「「「「?」」」」

 

不意に足元から地面の感覚がなくなる。

 

「「「「いやァァァーーーっ!」」」」

 

そして4人は崖から真っ逆さまに落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃―――

 

「おい桂花。全く湧いてこないぞ」

 

ツルハシで地面を掘りながらつぶやく春蘭。

 

華琳達は先ほど岩があった場所を掘り進めていた。

 

「仕方ないでしょ。

これは場所がわかるだけで、深さまではわからないんだから。

とにかく、何かが埋まっているのは間違いないんだから、何か出てくるまで黙って掘りなさい!」

 

「少しぐらいお前も掘れ!」

 

「いやよ。何でそんな脳筋の専業を、頭脳派である私がやらなきゃいけないのよ?」

 

「なんだとォ!」

 

「春姉ェ!ケンカしてないで早く掘るっす!」

 

「春蘭様、桂花も止めて…」

 

「フン!」

 

「むう…」

 

同じ様に地面を掘っている、華侖と香風に言われ、とりあえず黙る2人。

 

「ああ…香風さんすっかり泥だらけになって…私手拭いを濡らしてきますわ」

 

そう言って、先ほど水を飲んだ小川の方へ行く栄華。

 

「そういえば…尚香ちゃん達の方はどうなっているかしら?」

 

「さあね?」

 

柳琳と華琳がそんな会話をしたときだった。

 

「キャーッ!」

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

栄華の悲鳴が聞こえ、華琳達が振り向くと…

 

「ガアァァァーーーッ!」

 

「「「「「「く、熊ァーーーっ⁉」」」」」」

 

「ひィィィーーーっ!」

 

「ちょ、ちょっと春蘭!何とかしなさいよ!」

 

「む、無茶言うな!武器も何もない状態で!」

 

「なによ役立たず!」

 

「お前が言うな貧弱貧乳猫耳頭巾!」

 

「何ですってェ⁉」

 

「二人ともケンカしている場合じゃないっすよ!」

 

「早く逃げた方が良い!」

 

「お、お姉様!」

 

「ええ!大至急全員撤退!」

 

「グアァァァーーーっ!」

 

「「「「「「「わあああァァァーーーっ!」」」」」」」

 

一目散に逃げだす華琳達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらにその頃―――

 

「ハァ…ハァ…もう追って来てないみたいね…」

 

「ナミ~…ここどこ~…?」

 

「ちょっと待って…地図で確認するから…」

 

そう言ってナミが地図を取り出そうとした時…

 

「「「「「「「あああァァァーーーっ!」」」」」」」

 

「「?」」

 

何者かの悲鳴が聞こえ、振り向くと…

 

「な、ナミ…あれって…!」

 

「げっ!」

 

「グルアアアァァァーーーっ!」

 

「「さっきの熊ァーーーっ⁉」」

 

「あ!あんた達!」

 

「は、早く逃げるっすよー!」

 

「ちょ、こっち来ないでよ!」

 

「いやーーーっ!」

 

そして9人になって、熊から必死に逃げ続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらにさらにその頃―――

 

「?ここは…?」

 

麗羽が目を覚ますと、そこにはとても綺麗な川と花畑が広がっていた。

そう、まるで()()()()()()()()()()()()()綺麗な川と花畑が―――

 

「あら?」

 

そして麗羽は川の対岸にいる、1人の人影に気付く。

 

「あれは、私が幼い頃に亡くなった御婆様?

私を呼んでいるのですか?わかりました、今そちらに…」

 

そして川をわた…

 

『『『麗羽様ァーーーっ!』』』

 

「⁉」

 

…ろうとした瞬間、3つの呼び声が聞こえると同時に、見えない力で引っ張り戻される。

 

「か、川を…!川を渡っておばあ様にっ…」

 

 

 

 

 

 

「!」

 

そして、麗羽は本当に目を覚ました。

 

「あ!麗羽様!」

 

「気が付いたんですね⁉」

 

「よかったァ!」

 

目を覚ました瞬間、泣いて喜ぶ猪々子、斗詩、真直の3人の顔が、麗羽の目に飛び込んできた。

 

「麗羽様ァ!本当に死んじゃったかと思ったじゃないですか!」

 

「猪々子…」

 

「本当によかったですよォ!」

 

「斗詩…」

 

「ほんっっとうに心配かけて!いい加減にして下さいよォ!」

 

「真直…」

 

麗羽に抱き着いて泣きじゃくる3人。

 

(三人とも、こんなに私のことを心配して…)

 

その時だった。

 

「「「「「「「「「あああァァァーーーっ!」」」」」」」」」

 

「「「「?」」」」

 

大勢の悲鳴が聞こえ、4人が振り向くと…

 

「麗羽⁉」

 

「な、何でアンタ達がここに⁉」

 

「あんたらこのクマなんとかしてー!」

 

「華琳さん⁉」

 

「さっきの二人⁉」

 

「それに…」

 

「さっきの熊ーっ⁉」

 

「ガアァァァーーーッ!」

 

「「「「「「「「「「いやァーーーっ!」」」」」」」」」」

 

そして麗羽達も混ざり、13人で走る。

 

「ナミ~…シャオ…もう限界…」

 

「華琳様…私も…」

 

「お姉様…恥ずかしながら…私も…」

 

「あーもう!どいつもこいつも役に立たないわね!

あいつらだったらこんな熊、素手でも瞬殺できるのにィ!」

 

半ばヤケクソになったナミは武器である“天候棒(クリマ・タクト)”を取り出し…

 

「“電気泡(サンダーボール)”‼」

 

バリバリバリッ!

 

「グアァァァーーーッ⁉」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

ドスゥゥゥン…

 

ナミの攻撃をくらった熊は、しばらく倒れていたが、やがて静かに起き上がり…

 

「グウゥゥ~…」

 

恐れをなしたのか、去って行った。

 

「は~…助かった…」

 

安堵のあまり、膝をつくナミ。

 

「…ちょっとナミ…」

 

「「「「あなたねェ…」」」」

 

「アンタ…」

 

「キサマ…」

 

「?」

 

「「「「「「「「「「そんなコトできるなら最初から やんなさいよ!/やりなさいよ!/やれェ!/やってよ!」」」」」」」」」」

 

華侖、香風以外の全員が心の底からナミを怒鳴りつけた。

 

「何言ってんのよ⁉私はこの中で一番かわいくて、体つきもいいんだから一番戦うべきじゃない人でしょう⁉」

 

よく解らない理屈で当然のように反論するナミ。

 

それにしても本当に何を言っているのだろうか?

 

「何言ってるのよ⁉その理屈で言えば一番戦うべきではないのは華琳様でしょう⁉」

 

「その通りだ!華琳様こそ至高の美だろ!」

 

少々論点がずれた反論をする桂花と春蘭。

 

気にするのはソコですか?

 

「ちょっと!

どうしてそんな金髪クルクル貧乳チンチクリンの成り上がり小娘が、この名門袁家の現当主であり、容姿端麗才色兼備である私よりも優遇されるのですか⁉」

 

「相変わらず好き勝手言ってくれるじゃない麗羽…!」

 

「いいえ!一番優遇されるのは、香風さんや尚香ちゃんのような少女です!この幼げで愛らしい体形こそ守るべきです!」

 

「あんた良いこと言うじゃない!理由がちょっと気になるけど…」

 

一方…

 

「柳琳、止めなくていいんすか?」

 

「姉さん、こういう時は自然に収まるまで待つのが一番いいのよ…」

 

「下手に止めようとしたら、逆効果…」

 

「じゃ、あたい達はしばらく高みの見物といくか」

 

「“触らぬ神に祟りなし”だね…」

 

「…論点がおかしいし、あんな不毛な争い、関わらないのが一番よ…」

 

華侖、柳琳、香風、猪々子、斗詩、真直は、少し距離をとって、様子を見るのだった。

 

 




可愛いは正義というけれど、自分で言う奴には腹が立つ。


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