ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
それから数日間、ウソップと燈は紫苑から得た情報を参考に、偵察、調査を続けた。
そしてある日、一同は食事をとっていた。
「もぐもぐ…あれ?ウソップさん、茸食べないの?」
「あ、ああ。子供の頃、あたったことがあって、それ以来苦手でな…」
「それわかる。ボクも寄生虫にあたってから魚が苦手で…」
「そうなのか。おれは魚は大好物だけどな。特に旬の魚が」
「ふふっ…」
「どうした?」
「いや、ボクは茸とかが好物だから、ウソップさんとは正反対で、でも嫌いな理由は似ていて、なんか面白いなって」
「確かにそうだな」
「………!」
「ん?どうした璃々?」
「璃々、喜雨お姉ちゃんがわらったの、はじめてみた!」
「え⁉そうかな⁉」
「言われてみれば、喜雨ちゃんが笑うところ、あまり見たことないわね」
「ぼ、ボクだって笑うことくらいあるよ…」
「でも人と話して笑ったのは初めてじゃない?」
「か、母さんまで…」
「っ!静かにっ!」
「「「「!」」」」
紫苑に言われ、一同は口を閉ざし、食事の手を止める。
「「「「「…………」」」」」
「黄忠の目撃情報は?」
「何もねェ」
「だが、街を出た情報がない以上、必ずどこかに居る筈だ」
「そろそろ強制的に家宅捜索に入るか?」
「そうだな」
「「「「「…………」」」」」
人の気配は去って行った。
「隠れるのもそろそろ限界だな…」
「そうだね…」
「情報は十分集まりましたし…」
「明日、作戦を決行しましょう」
▽
「じゃあ、作戦を確認するぞ。
まず、おれ達は四手に分かれて行動する。
そして、それぞれ街の四隅の馬小屋に火をつける。
おれが南東、紫苑と璃々が北東、燈が北西、喜雨が南西だ。
火をつけた後は、騒ぎを煽りながら街の中央の広場に集合する。
その後、燈と喜雨は璃々を連れて安全な場所に避難。
おれが楊齢を、紫苑が韓玄を討ちに向かう。
韓玄は有事の際、十中八九この北の門から脱出する筈だから、おれと紫苑は合流後、北に向かう。
燈達の身に危険が生じた場合は、北に向かいおれ達と合流する。
以上だな」
「あの、本当にウソップさんを燈さん達に付けなくて大丈夫ですか」
「大丈夫ですよ。璃々ちゃんはちゃんと守りますから」
「それもありますが、お二人の身に何かあったら…」
「大丈夫だよ。ボク達だって護身の術ぐらいは身に着けているから。
それより、紫苑さんこそ璃々ちゃんもいるのに、一人で大丈夫?
あと、本当にあの楊齢をウソップさん一人で相手にするの?」
「璃々を一人にしておくのも危ないですし、だったら自分の目が届く所に置いておきたいんです」
「それに、紫苑は韓玄の暗殺に集中する必要があるし、騒ぎがでかくなった後は、璃々を守る役目が必要だ。
おれ一人でやるしかねェだろ」
「…うん、そうだね…」
「では、今夜それぞれ四隅の馬小屋へ移動し、夜が明け始めたら作戦を開始しましょう」
「あ、そうだ。お前らに
「?何これ?」
▽
~翌日、夜明け前―――城壁~
「ふあ~…」
「おい、見張りの兵があくびなんかするな」
「何言ってんだよ。こんな街を襲うような賊なんていると思うか?」
「それもそうだな。何せこの街の金品は全て、韓玄様が没収しているんだからな。
韓玄様の身の回りだけは楊齢将軍が固めているし、民を襲ったって盗める物なんか…」
「火事だァ!」
「「⁉」」
▽
「一体何が起きた⁉」
「敵襲か⁉反乱か⁉」
「いや、まだよくわからな…」
ヒュン!
ドスッ!
「ぐあっ!」
「うわァ⁉」
「何だ⁉この矢、誰が撃ったんだ⁉」
「わからねェ…誰がこんなことを⁉」
▽
~南西門付近~
「ハァ…ハァ…」
馬小屋に火をつけた後、喜雨は物陰に隠れながら集合場所へ向かっていた。
(母さんの言った通りになってきた…。
『とりあえず、火をつけるだけでいいと思うわ』
『本当にそれだけで、領主が逃げ出すほどの騒ぎになるのか?』
『ええ。ここの兵士や役人は、自分達の保身や贅沢しか考えないような人が大半。
敵襲か反乱かよくわからない事態が生じたら、そんな人達はどうすると思う?』
『火事場泥棒として略奪、もしくは敵味方の区別がつかないまま同士討ちを始める。
そういったところかしら?』
『そうなるでしょうね。ただ、騒ぎが大きくなるように、多少は煽る必要があると思うけど…』
『それは、私とウソップさんがやりましょう。いいですね』
『ああ。任せておけ!』
ウソップさんと紫苑さん、上手くやっていると良いけど…)
「大変だァ!急いで南東に向かえ!」
「おい!どうした⁉」
「城門が一つ吹っ飛んだそうだ!とんでもなく強い敵が襲って来たぞ!」
「何ィ⁉」
(じょ、城門が吹き飛んだ⁉南東って…う、ウソップさん何をしたの⁉)
▽
~南東門付近~
(こっちに来てから、火薬が手に入らなくてあまり使わないようにしてたけど、今回は使って正解だったな)
ウソップは火をつけた後、火薬星で城門を1つ吹き飛ばした。
さらに…
「『大変だー!向こうの通りで民百姓が暴動を起こしたぞー!』」
「何ィ⁉」
「鎮圧しろォ!」
「急げェ!」
得意のウソで兵士達を混乱させつつ、集合場所へ向かう。
(へへへっ!こういうのは得意分野だぜ!)
▽
~北西門付近~
(喜雨、大丈夫かしら?)
火をつけた後、燈は集合場所へ向かっていた。
「コラァ!何やってんだお前ら⁉持ち場に戻って戦え!」
「やなこった!こういう機会をずっと待ってたんだ!」
「ここにはおれ達の給料の、何年分もの金があんだからな!」
「これだけの宝を盗みだせば、兵士を止めても十分食っていけますわ!」
「いつ死ぬかわからん兵士として勤めるより、こっちの方がいいですわい!」
(火事場泥棒が現れた…思惑通りね)
「ん⁉誰だキサマ⁉」
「!(敵兵!見つかった!)」
「ほお、良い女じゃねェか!連れて帰ってたっぷり良いことして…」
「ていっ!」
びゅっ!
兵士が言い終わらないうちに、燈は何かを投げつける!
パキャッ!
「痛ェっ!うわっ、何だコレ⁉くせェ!」
兵士がひるんだすきに燈は逃げ出す!
(それにしても…ウソップさんがくれた
『あ、そうだ。お前らにコレら渡しておく』
『?何これ?』
『おれが身を守るときに使う小道具だ。
まずこれは“煙星”。
投げると辺り一面に煙が広がり、相手の視界を奪う。
次にこれが“唐辛子星”。
粉末状にした唐辛子を団子にしたもので、これを顔にぶつければ、唐辛子の粉が目、鼻、口に入り相手を苦しめる。
効果は身をもって実証済みだぜ!』
『あ、うん…そうだね…』
『喜雨?どうしたの?』
『で、こいつは“ケチャップ星”だ。
これを潰すと赤い液体が飛び散る。
相手にぶつけて大けがをしたと思わせたり、自分の体につけて死んだフリをしてやり過ごすのに使う。
これは、腐った生卵だ。
卵ってのはぶつけると結構痛いし、腐っているから割れた瞬間、臭いで相手をひるませることができる。
武器よりは安全だから璃々にも持たせられるし、用意しておいたんだ。
いざとなったら、これらをうまく使って身を守れ』
『成程』
『わかったわ。有効に使わせてもらいましょう』
唐辛子や腐った生卵に、こんな使い方があったなんてね。
使い手の危険が少ないから、老若男女問わず持たせられるし、いいわねコレ。
徐州に帰ったら、護身用の道具として普及させようかしら?)
▽
~北東門付近~
「ハァッ!」
ヒュン!
ドスッ!
「ぎゃあっ!」
火をつけた後、紫苑は隙を見て敵兵を射殺しながら、集合場所を目指していた。
璃々は背中の竹籠の中にいる。
「璃々、大丈夫?」
「うん」
(混乱がだいぶ激しくなってきたわね…)
「こ、こらキサマら!は、反乱は重罪…」
「うるせー!役人ども!」
「よくも今までやってくれたな!」
暴動を起こす民も現れ始めていた。
(これだけやれば十分ね。あとは合流することに集中しましょう!)
そして早足になり、通りを抜けると―――
「久しぶりだな紫苑」
「見つけたぞ黄忠」
「―――っ!」
目の前に韓玄と楊齢が現れた。
▽
~中央広場付近~
「お前が裏切り者か⁉」
「何をする⁉」
「ぎゃあ⁉」
「死ねェ!」
兵士達による同士討ちも激しくなってきた。
「敵の指揮を執っているのは誰で、何人いるんだ⁉」
「知るか⁉」
「とにかく不審な奴は全員やっちまえ!」
「こっちには…」
兵士の一人が路地裏を除く。
「死体ばっかだな」
「他に行くぞ!」
「おう!」
(……もう行ったね)
兵士達が去った後、頭から血を流した死体が一つ、起き上がった。
(ウソップさんの言った通りにしたら、本当にやり過ごせた。
この…“けちゃっぷ”だっけ?ちょっと良い臭いするけど、何で作ってるんだろう?)
そんなことを思いながら、喜雨は歩き出す。
「!喜雨!」
「!ウソップさん!」
「お前それ―――はケチャップだな。怪我はないか?」
「うん。ウソップさんも無事でよかったよ」
「そろそろ紫苑と燈も来ると思うんだが……あ!燈!」
「母さん!」
2人は少し離れた所に燈の姿を確認した。
「ああ!ウソップさん!喜雨も……⁉」
…と、燈は突然血相を変えて走って来る!
「喜雨!」
「か、母さん⁉」
「ど、どうした燈⁉」
いつになく取り乱した様子の燈に驚く喜雨達。
「どうしたじゃないでしょう!ひどい怪我じゃない!すぐに手当てしないと!」
「だ、大丈夫だよ!これは…」
「大丈夫なワケないでしょう⁉そんなに血を流して!急いで…」
ドスッ!
「うっ!」
「え…⁉」
その時、どこからか飛んできた矢が、燈の足に刺さった。
「ううっ…!」
その場にしゃがみ込む燈。
「か、母さん!」
「大丈夫よ!足に刺さっただけだから!それより喜雨の方が…」
「ボクは怪我なんてしてないし、これは血じゃないよ!」
「え…⁉」
「とにかくまず燈の手当てをするぞ!どっか、物陰に…」
「ウソップお兄ちゃーん!燈さーん!喜雨お姉ちゃーん!」
「⁉璃々⁉」
「どうしたの⁉」
「璃々ちゃん、紫苑さんは⁉」
「お母さんは……わるい人とたたかっているの……!」
「何だって⁉」
「どんな人…⁉」
「う~んとね、二人いた。一人はキラキラした服をきた、えらそうな人。
もう一人はくさりをもった、つよそうな人」
「韓玄と楊齢かな?」
「十中八九そうでしょうね」
「璃々はにげられたから…お兄ちゃんたちをよんでこようとおもって…」
「わかったわ。ありがとう璃々ちゃん。ウソップさん、早く紫苑さんの所へ!」
「でも、燈のケガ…」
「私達は大丈夫です!それより韓玄と楊齢を討って、作戦を…!」
「………っ!わかった!」
ウソップは走って行った。
「母さん!璃々ちゃんも!早くどこかに隠れないと!」
「喜雨、璃々ちゃんを連れて行きなさい!」
「え…⁉」
「足を怪我している私が一緒に行くと、足手まといになるわ!だから二人だけで…」
「そんな!嫌だよ!」
「行きなさい!言う事を聞きなさい!」
「嫌だ!絶対に嫌だ!」
子供が駄々をこねるように叫ぶ喜雨。
「おい!誰かいるぞ!」
「「「!」」」
どこからか数人の兵士達が現れた。
「女のようだな」
「中々上玉だな。捕まえるか!」
3人の下へ迫る兵士達。
「!喜雨!璃々ちゃんを守りなさい!」
「―――っ!わ、わかっ…」
「“メタリックスター”‼」
ガン!
「ぐあっ⁉」
「「「⁉」」」
その時、突然兵士の一人に何かがぶつかった。
「い、今の…⁉」
「い、一体何だ⁉」
ヒュン!ヒュヒュン!
ガン!ガガン!
「ぎゃあ!」
「ぐあっ!」
「イテェ⁉」
同じ様に他の兵士達も謎の攻撃をくらう。
「お嬢さん達!今のうちにこっちへ!」
「「「⁉」」」
何者かの声が聞こえ振り向くと、1人の人影が少し離れた所に立っていた。
「早く!」
「う、うん!」
燈に肩を貸し、璃々と手をつないで、喜雨はその人物の方へと歩き出す。
「今のはテメェの仕業か!」
「兵士に手を上げてタダで済むとおも…」
兵士達も人影に気付き、武器を構えるが…
「“
ボカァァァン!
「「「「「うわァァァ⁉」」」」」
「「「⁉」」」
謎の人物の一撃で全員吹っ飛ぶ。
「大丈夫かい⁉お嬢さん達!」
その人物が喜雨達の下へ駆け寄ってきた。
「ここでは目立つ!どこか隠れる場所を探そう!」
「う、うん」
その人物が燈を背負い、喜雨は璃々を抱いて4人はその場を離れた。
▽
4人は、路地裏に隠れた。
「母さん、大丈夫?」
「ええ。応急措置はすんだわ。そこまで深い傷ではなかったし」
「良かった…」
胸をなでおろす喜雨。
「危ないところだったね。助けられて良かったよ」
「うん。えっと…それで…」
そして喜雨は、先ほど自分達を助けてくれた人物に向き直る。
「おっと紹介が遅れたね。初めまして、私の名は“そげキング”!」
…と、仮面を着けた鼻の長い、ものすごくウソップに似たその人物は名を名乗る。
「……えっと、何やってるのウソ…」
「喜雨」
「……ウン、初メマシテ。助ケテクレテアリガトウ、ソゲきんぐサン」
燈の言葉で、状況を理解し空気を読む喜雨だった。
「何、礼には及ばない。危険な目に遭っている女性を助けるのは、当然のことだ」
(ウソップお兄ちゃん、なんでお面してるんだろう?)
「今、そこの家屋を確認してみたが、空き家のようだ。ほとぼりが冷めるまで、そこに隠れていると良い」
「うん。そうするよ」
「うむ。申し訳ないが私は行く。助けなければならない人がまだいるのでね」
「うん。気を付けてね」
「では、さらばだ!」
ウ…そげキングは去って行った。
「そげき~の島で~♪生まれたお~れ~は♪100ぱ~つ100ちゅ~♪ルルララル~♪」
「……何?あの歌?」
「さあ?」
「ねずみの目玉もロックオン‼♪お前のハートもロックオン‼♪そげき~の島から来~た男~♪」
「……歌う意味あるの?」
「さあ?」
「ルルル~♪ルルララ♪それ逃げろ~♪」
(ウソップお兄ちゃんおもしろ~い♪)
▽
~北の路地~
その頃、紫苑は楊齢と対峙していた。
「うあっ!」
紫苑は楊齢と対峙した後、璃々を守ることを最優先に戦った。
そのため攻撃を避けられない攻撃、避けきれない攻撃があり、致命傷は負っていないものの、所々負傷してしまった。
そして璃々を逃がした後も、苦戦を強いられていた。
(この男の武器……一体何なの⁉)
「もうあきらめろ紫苑」
「お前が…私の真名を呼ぶな!」
腕や足にやけどの跡ができ、服も所々焼け焦げている。
「自慢の弓の腕も、ここまで相手に接近されてしまっては役に立たんな」
「くっ!」
「楊齢、腕と脚の骨を折ってやれ。顔と体は傷つけるなよ」
「はっ!」
鉄球を構える楊齢。
「このっ…!うっ!」
紫苑も武器である大弓“
「観念するんだな!」
「それはお前の方だ!必殺“火薬星”ィ‼」
ボゴォン!
「「「⁉」」」
突然、何者かの声と共に楊齢の頭が爆発する!
「楊齢!」
「心配無用だ、ちゃんと鎖で防いだ」
煙が晴れると、無傷の楊齢が姿を現した。
「そ、そうか…!しかし今のは一体⁉誰がどこから⁉」
韓玄は当たりを見渡すが、誰もいない。
「あ…!」
しかし、紫苑の目は捉えた。
自分たちがいる通りの突き当たり、ずっと離れた場所にある人影を。
「加勢に来たぜ紫苑!」
「ウソップさん!」
満を持してヒーロー登場!