ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第56話 “どうして?”

翌日、義勇軍に加わったルフィ、愛紗、鈴々、朱里は早速劉備と一緒に、賊退治について話し合っていた。

 

「ここに昨日の賊が根城にしている砦がある。兵は千人以上ということだ」

 

「そいつらをブッ飛ばせばいいんだな?」

 

「良いですか()()()、必ず孔明殿の指示通りに動いて下さいね!絶対に勝手に暴れないで下さいね!」

 

「ああ、わかった」

 

「あれ?」

 

「どうしたのだ孔明?」

 

「関羽さん、昨日までルフィさんの事“ルフィ殿”って呼んでいませんでしたか?」

 

「あれ?そういえばそうなのだ」

 

「どうして急に呼び捨てになったのでしょう?」

 

「う~ん…わからないけど、今の方が仲良しな気がするから、良いと思うのだ!」

 

「ふふっ…そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、義勇軍は砦の近くまで移動した。

 

「それでは作戦を説明しますね」

 

「ちょっと待つのだ!」

 

「どうした鈴々?」

 

「ルフィがいないのだ!」

 

「何ィーーーっ⁉」

 

「はわわーーーっ⁉」

 

「い、いつの間に⁉」

 

「劉備殿ォ!」

 

義勇兵の一人が慌てた様子でやって来た。

 

「どうした⁉」

 

「先ほど、昨日やって来られたルフィという方が、一人で賊の砦に乗り込み―――」

 

「何だと⁉やられてしまったのか⁉」

 

「いえ!賊を全滅させました!」

 

「は⁉」

 

「説明したのに…わかったって言っていたのに…」

 

「孔明、ルフィみたいなのを猪武者っていうのか?」

 

「大正解ですよ…鈴々ちゃん、ちゃんと勉強しているんですね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、作戦を説明しますね」

 

その後、義勇軍は別の盗賊団の拠点を攻撃することになった。

 

「ルフィ。今度こそ、指示通りに動いて下さいね。動いて良いと言われるまで、おとなしくしていてくださいね。でないと殴りますよ?」

 

「あい、わはりまひた…」

 

「関羽さん…」

 

「もう沢山殴っているのだ…」

 

ルフィは愛紗に滅茶苦茶に殴られ、縄で縛られた状態で正座させられていた。

 

「しかし関羽殿、我々は何もせずに勝ったのですから、これで良いのでは?」

 

「いいえ、良くありません」

 

劉備の疑問に朱里が答えた。

 

「いくらルフィさんが強くても、一度に戦える相手には限りがあります。

ルフィさんが遠く離れた場所で戦っている間に村が襲われたら、ルフィさん抜きで戦わなくてはなりません。

ですからルフィさんに頼らず戦える様に、他の人達にも日頃から実戦を経験させておく必要があるのです」

 

「な、成程…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、戦が始まった。

 

十数人の義勇兵が賊の砦に攻撃を仕掛ける。

 

『まず、少人数の部隊が賊を挑発します。相手が挑発に乗って出てきたら、適当に戦ってすぐに引き上げて下さい。

それから、皆さんは無理に敵を倒そうとしないでください。

数人で背中を合わせて戦い、自分達がやられない様にする事を優先して下さい』

 

「撤退だーーー!」

 

「退けーーー!」

 

「撤しゅーーーう!」

 

逃げる義勇軍を見て、賊は砦から軍のほとんどを追撃に繰り出す。

 

「行くぞォー!腰抜けの義勇軍を叩き潰せェーーー!」

 

「「「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」」」

 

『相手が追撃をしてきたら、ある程度の距離をとって逃げ続けて下さい。そして、この谷までおびき寄せます!』

 

「進め進めーーー!逃がすなーーー!」

 

勢いに乗った賊は谷の真ん中まで誘い込まれ…

 

ジャーン!ジャーン!ジャーン!

 

「⁉何だァ⁉」

 

「待っていたぞ賊ども!」

 

「そこまでなのだァーーー!」

 

『賊が谷の真ん中まで来たら、両側に隠れていた関羽さんと鈴々ちゃんの部隊が奇襲を仕掛けます!

その時はできるだけ派手に名乗りを上げて、銅鑼を鳴らし、賊軍の気を逸らして下さい』

 

「乱世に乗じて罪なき人々を苦しめる者共!その命運!ここで尽きたと知れ!」

 

「ケチョンケチョンにしてやるのだーーー!」

 

「しまった!罠だァ!」

 

左右から奇襲した勢いに愛紗と鈴々の強さが加わり、次々と賊を討ちとる。

 

「ひるむなァ!迎え撃てェ!」

 

「グギャァ!」

 

「⁉おい!どうしたァ⁉」

 

「か、頭ァ!正面からさらに義勇軍が!さっきよりも数が多い様です!」

 

「なんだと⁉」

 

「行くぞォ!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおっ!」」」」」」」」」」

 

『関羽さん達が突撃したら、囮の義勇軍はルフィさんと合流して、正面から攻め入ってください!

関羽さん達の銅鑼や名乗りで気をとられていますから、そこを攻めれば賊は混乱します。

その時は旗を沢山掲げ、銅鑼も派手にならして、大軍がいる様に思わせて下さい。

戦う時は二人一組になって、片方が相手の攻撃を防いでいる間にもう一人が攻撃して下さい』

 

「“スタンプ”‼」

 

「ぐあっ⁉」

 

「な、何なんだコイツ⁉」

 

「つ、強ェぞ!」

 

「か、頭ァ!どうしましょう⁉」

 

「いったん退くぞ!砦に戻って体制を立て直す!」

 

頭領の言葉で、賊軍は慌てて砦へ引き返す。

 

「今だ!追撃だァ!」

 

同時に義勇軍は追撃を開始する!

 

「「「「「「「「「「うおおおおお!」」」」」」」」」」

 

「「「「「「「「「「ひいいいいい!」」」」」」」」」」

 

追撃を受ける側は必然的に不利になるため、かなりの数が討ちとられた。

 

「くそォーーー!」

 

頭領はわずかな手勢と共に砦に辿り着く。

 

「おい!門を開けろ!」

 

そう砦に呼びかけるが…

 

「一足遅かったようだな!」

 

「⁉」

 

砦から顔を出したのは劉備だった。

 

『劉備さんは賊が追撃に出ている間に、別動隊を率いて砦を占領して下さい!』

 

「この砦は我ら義勇軍が頂いたぞォ!」

 

「なっ⁉」

 

その後、拠点を失った賊の頭領は残党と共にどこかへ消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、ルフィ達は桃花村周辺の賊を次々と退治していった。

 

朱里は作戦を立て、自身も戦場に赴き様子を見ながら的確な指示を出す。

 

「今です!岩を落としてください!」

 

愛紗と鈴々はそれぞれ二、三十人の部隊を率いて敵軍に突っ込み、敵を次々と討ちとる。

 

「覚悟ォーーー!」

 

「ぐああっ⁉」

 

「とりゃーーーっ!」

 

「うわァァァ!」

 

劉備は総大将として五十人以上の兵の指揮を執る。

 

「突っ込めーーーっ!」

 

「「「「「「「「「「やーーーっ!」」」」」」」」」」

 

ルフィは斥候や合図を出す為の十人程の兵と行動し、圧倒的な兵力差を埋める為、数百から千人以上の敵にあたる。

 

「“ゴムゴムの”ォ…“銃乱打(ガトリング)”~~~‼」

 

「「「「「「「「「「ギャアアアアア⁉」」」」」」」」」」

 

ルフィ、愛紗、鈴々は敵将を何人も討ちとり、その強さもあって義勇軍はどんどん勢いづいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある夜、義勇軍の勝利を祝し、拠点の屋敷全体で大宴会が行われていた。

 

 

 

大広間にて。

 

「いやはや、ルフィ殿達が義勇軍に加わってから連戦連勝!

義勇兵は皆さんからの指南を受けて強くなり、人数も最初は百数人だったのが、二百人以上にまで増え、この辺りにはすっかり治安が戻りました!」

 

盃を手に、張世平がルフィ達を褒め称える。

 

「関羽殿と張飛殿の武芸も見事ですが、孔明殿の知略も素晴らしいですな!

その名軍師っぷりといえば、かつて“項羽(こうう)”と“劉邦(りゅうほう)”を助けた “張良(ちょうりょう)”に勝るとも劣らぬもの!」

 

「そ、そんな名軍師だなんて…!私はただ、ほんの少し助言をしているだけで…」

 

照れ臭そうにする朱里。

 

「そうなのだ!」

 

「「?」」

 

「別に小難しい策なんかなくたって…むぐ…鈴々達にかかれば賊退治なんてちょちょいのぷ~なのだ!」

 

そう言って鈴々は肉をかじり、大笑いする

 

「はっはっは!頼もしいですな張飛殿!」

 

「当然なのだ~!」

 

「そして何より、千人もの賊をたった一人で退治される天の御遣い、ルフィ殿の……おや?ルフィ殿はどちらに?」

 

「あれ?そういえばいないですね」

 

「愛紗と劉備もいないのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷の2階、中庭に面した廊下で愛紗は夜空を仰いでいた。

中庭も宴会場になっており、愛紗の耳にも微かに宴の騒ぎ声が聞こえる。

 

「…………」

 

「関羽殿」

 

「!これは劉備殿」

 

「どうかしましたか?何か宴で気に入らぬ事でも?」

 

「あ、いえ。そうではなくて、月が綺麗だなと思いまして…」

 

「月?…………おお、確かにこれは美しい」

 

「はい」

 

「もっとも…」

 

「?」

 

「関羽殿の美しさには及びませんがな」

 

「⁉何を言って⁉か、からかわないでください…」

 

思わず愛紗は顔を赤らめうつむく。

 

「関羽殿…」

 

「何でしょう?」

 

「いきなりこんな事言っては迷惑かもしれませぬが…この先も、ずっと私と一緒にいていただけないでしょうか⁉」

 

「え⁉そ、それは一体…⁉」

 

「私は中山靖王の末裔とはいえ、今はただの雑軍の総大将。あなたの様な豪傑の主に相応しいとは言えない。

だが私も、いつまでもこのままでいるつもりはない!

賊討伐で名をあげ、兵を増やし、力を蓄え、いずれは一角の将として身を立てるつもりだ!

そうして、あなたに相応しい主となった後……いえ、あなたに相応しい主となる為に、あなたの力を私に貸して欲しい」

 

「……ああ、そういう意味…」

 

「どうだろう?私に仕えては貰えぬだろうか?」

 

「まァ、そういう事でしたら…」

 

「おお!承知していただけますか!」

 

「⁉」

 

愛紗の手をとる劉備。

 

「りゅ、劉備殿!」

 

「関羽殿…」

 

「?」

 

「もしあなたが…また別の意味で、私をあなたに相応しい人物だと認めてくれるのであれば…私の傍に居てくれるというのであれば…」

 

そう言って愛紗の顔を―――目をみつめる劉備。

 

「りゅ、劉備殿…そ、それは…」

 

「お~い!お前ら~!」

 

「「⁉」」

 

不意に下の中庭から大声で呼びかけられ、下を見ると…

 

「る、ルフィ⁉」

 

「ルフィ殿!そこで何を?」

 

例のごとく鼻に箸を入れ、ザルをもったルフィの姿があった。

周りの義勇兵達も何人かマネしている。

 

「何って、踊ってんだよ!」

 

「劉備様、この方本当に最高ですよ!」

 

「戦って強いし!踊って楽しいですし!」

 

「劉備もやるか⁉」

 

「い、いえ…私は遠慮しておきます…」

 

「ん?そーか?」

 

「それで関羽殿…」

 

劉備はそこで会話を止め、愛紗と話の続きをしようとするが…

 

「あれ?関羽殿?関羽殿ー?」

 

いつの間にか、愛紗は姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はァ…はァ…」

 

愛紗は屋敷の中をよく考えもせず走り、どこかの廊下で息を整えていた。

 

(お、驚いた……まさかルフィが中庭にいたとは…てっきり大広間で鈴々達と食事をとっているものだとばかり…。

にしても危なかった……劉備殿と…あの様な所をルフィに見られるのは………見られるのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……どうして…困るのだ?)

 




とある世界のとある海には、こんな諺があるという。
『恋はいつでもハリケーン』!


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