ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回、ちょっと長いです。




第57話 “彩気茸(さいけだけ)

翌日―――

 

「あ、関羽さ~ん」

 

「孔明殿」

 

愛紗が廊下を歩いていると、竹籠を背負った朱里に出くわした。

 

「どこかへ行かれるのですか?」

 

「はい、そのことで関羽さんにもお願いが…」

 

「お願い?」

 

「今から山で薬草を採って来ようと思っているのですが、最近戦続きで怪我人が多いので、できるだけたくさん摘みたいんです。

もしよかったら手伝っていただけないでしょうか?」

 

「それくらいでしたら…」

 

「あー!愛紗!孔明もいるのだ!」

 

「⁉」

 

「ルフィさん、鈴々ちゃんも」

 

「何やってんだお前ら?」

 

「今から関羽さんと山に薬草を採りに行くんですけど、よかったら二人も手伝ってもらえませんか?」

 

「おういいぞ」

 

「鈴々に任せるのだ!」

 

「…………」

 

「ん?どうした愛紗?」

 

「べ、別に何でもありません!」

 

「「「?」」」

 

「おお!関羽殿!ルフィ殿達も!ここにおられましたか!」

 

「劉備殿どうされました?少々慌てているようですが…」

 

「実は村の門番から『妙な男と女が村に入ろうとしている』と伝令がありまして…」

 

「妙な男と女?」

 

「何やら物騒な物を持っているようなので、一緒に様子を見に来てもらえないでしょうか?」

 

「わかりました!すぐに向かいましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフィ達5人は伝令に来た村人に案内され、村の門へと向かった。

 

「あ、あの男です!」

 

一人の女を背負った男が門番と言い争っているのが見えた。

 

「だから頼むよ!コイツだけでもいいから村に…」

 

「いや、とにかく劉備殿達が来るまで待って…」

 

「ん?」

 

やがて顔がハッキリ見え…

 

「ゾロォ!」

 

「ん?ルフィ!お前何やってんだこんな所で⁉」

 

「⁉ルフィ殿のお知り合いなのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~屋敷、大広間~

 

「あ~食った食った!」

 

「まともな食事なんて何日ぶりだ~…」

 

ルフィの知り合いなら良いだろうということで、ゾロとその背中に背負われていた女―――翠は村に入れてもらい、拠点の屋敷で食事をしていた。

 

「久しぶりだな~ゾロ~!もぐもぐ…」

 

「…どうしてルフィさんも一緒に食べているんですか?」

 

「しかもこの二人より沢山食べているのだ…」

 

「えっと…ルフィの仲間の“ぞろ”殿だったでしょうか?私は“関羽”、字を“雲長”と申します」

 

「鈴々は“張飛”、字は“翼徳”なのだ」

 

「私は“諸葛亮孔明”といいます」

 

「私は“劉備玄徳”この村の義勇軍の総大将を務めております」

 

「“ロロノア・ゾロ”だ。こいつはルフィと離れてから知り合った…」

 

「“馬超”、字は“孟起”ってんだ。よろしくな」

 

「“馬超”というと…もしや西涼の馬騰殿の娘“(きん)馬超”か⁉」

 

「ああ、その馬超だよ」

 

「そのような豪傑とここで出会えるとは…!」

 

「よしてくれよ。あたしはそういうの…あんまり好きじゃないから…」

 

「でも涼州の馬超さんが、どうしてこんな幽州の州境に?それも行き倒れかけた状態で」

 

「まァ簡単に話すと、武者修行の途中でゾロに出会って、一緒に旅していたんだけど、路銀が底をついてな…」

 

「稼ぐ方法もねェから、動物やそこら辺のキノコや木の実を食ってたんだが…」

 

「三日ぐらい前かな?あたしが食べた茸がある意味大当たりでさ…」

 

「コイツが急に、ネズミがどうとかアヒルが何だの言って、大笑いして踊りだした挙句倒れたもんだから、急いで医者を探してたってワケだ」

 

「その茸はたぶん“彩気茸(さいけだけ)”ですね。幻覚作用があって、並みの神経をしている人だったら、笑い死にしていたと思いますよ。

食べられる物だと確信できない茸や山菜を食べるのは、すごく危険なんですよ」

 

「…ったく、鍛え方が甘ェからキノコの毒なんかでやられるんだよ」

 

「鍛えてどうにかなるものではないと思うのですが…」

 

「食べて三日たってからも生きている馬超さんも、十分おかしいですけどね…」

 

「そういやルフィ、他の奴らのことは何かわかんねェのか?サニー号は?海に出る手筈は?」

 

「それがよォゾロ、ここ異世界なんだってよ。だから海に出ても“偉大なる航路(グランドライン)”には戻れねェんだってよ」

 

「そうか…色々と変だとは思ったが、そういう事だったのか…」

 

「軽い!普通もっと深刻になるのでは⁉」

 

「深刻になってもどうしようもねェだろ」

 

「そうだ。深刻になるだけ無駄だろ」

 

そう言って仲良く鼻をほじる2人。

 

(さすがルフィのお仲間ですな…)

 

(さすがゾロの仲間だな…)

 

溜め息をつく愛紗と翠だった。

 

「ところでゾロ殿、馬超殿」

 

劉備が真剣な顔で2人に向き直る。

 

「“錦馬超”の武芸、馬術といえば大陸中でも有名。

そしてルフィ殿のお仲間ということは、ゾロ殿の武芸もかなりのものとお見受けする。

どうか我が義勇軍にご助力いただけないでしょうか?」

 

「ん~…あたしは構わないかな。

兵を率いて戦うのも一種の武者修行になりそうだし、助けてもらった恩もあるし、賊と戦っている義勇兵を見て見ぬフリするのもなんだし」

 

「おれも構わねェ。飯の恩もあるし、船長が世話になってるワケだしな」

 

「おお!そうですか!ありがとうござい……」

 

…と、そこで劉備をはじめ、他の4人もゾロのある言葉が頭に引っかかる。

 

「「「「「…………船長?」」」」」

 

「「ん?」」

 

 

 

 

 

 

「ええ~⁉あ、アンタがゾロ達の船長⁉」

 

「た、確かに下っ端にしては強いと思いましたが…」

 

「でも、全然偉そうに見えないのだ」

 

「る、ルフィさんが船長って…大丈夫なんですか?色々と…」

 

「お、驚きましたな…」

 

「言ってなかったのか?」

 

「そういや、海賊だってしか言ってなかったな」

 

衝撃の事実に、愛紗達は驚愕するのだった。

 

「まァ何にせよ、お二人が加わってくれるのであれば、ますます我が義勇軍は強くなりましょうぞ!」

 

「あ、そういえばちょっと思ったんですけど…」

 

「どうされました孔明殿?」

 

「今回はルフィさんのお仲間だったから良かったですけど、本当に敵が攻めてきた場合の備えをした方が良いと思うんです」

 

「一応備えとして、見回りや門番をさせているのだが…」

 

「いいえ、それだけでは不十分です。

見張りのための(やぐら)を何か所か建てて、遠くからでも賊の接近に気付けるようにします。

あと村を囲っている塀の周りに堀を掘って、塀自体ももう少し高くした方が良いと思います。

それから敵が攻めてきたときは、義勇軍の拠点であるこの屋敷に籠城して戦うことになりますから、屋敷の周りも同じ様にするべきだと思います」

 

「孔明殿の言うことも理解できるが、そこまでする必要があるか?」

 

「劉備さん、“備えあれば憂いなし”ですよ」

 

こうして、朱里の指示の下、村のあちこちで大規模な工事が行われることになった。

櫓や堀、それに伴うつり橋などを設置し、塀もより高く強固なものを作り直す事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ある日―――櫓の建設現場の一つ~

 

「…………」

 

ルフィは近くに座り込み、工事の指揮を執っている愛紗、朱里、劉備の様子を見ていた。

 

「おーいルフィ!」

 

「何やってんだ?そんな所で?」

 

ゾロと翠がやって来た。

 

「……なーんかあいつ嫌いなんだよなー」

 

「嫌いって…」

 

「あの劉備とかいう奴のことか?」

 

「あいつ戦いの時、後ろで見てるだけで何もしないんだぜ。孔明みたいに作戦考えるワケでもないし…」

 

「戦ってのは、総大将がやられたら終わりだからな。それに作戦通りに指示を出すのだって立派な仕事だろ?

まァ、あたしもそういう奴はあまり好きじゃないけど…」

 

「それにあいつ山賊やっつけて手に入れた飯や金、全部屋敷の蔵にしまって独り占めしてるんだぞ。

肉だったらわかるけどよ」

 

「独り占めって…そりゃ軍備として必要だから…」

 

「愛紗達も同じこと言うんだけど、なんかなァー…」

 

翠の返答にもブツブツと不満を漏らすルフィ。

 

「…………焼きもちとか焼く奴なのか?

 

単純に馬が合わねェだけだろ。おれも正直、あいつは気に入らねェしな。そういや、お前のもう一人の妹はどうした?」

 

「ああ、鈴々なら…」

 

「鈴々義勇軍のお通りなのだー!」

 

「「⁉」」

 

どこからともなく大声が聞こえ、見てみると…

 

「どいたどいたァー!」

 

「あははははっ!」

 

3人の子供達を引き連れ、子豚に乗って走り回る鈴々の姿そこにあった。

 

「ガキ大将やってんのかあいつ…」

 

「いいだろ?楽しそうで」

 

「まァ…似合ってはいるな…」

 

「いや、義勇軍とはいえ一軍の将がガキ大将って…」

 

…と、翠が呆れかけたとき…

 

「あ…雪」

 

「おお、通りで寒いワケだ」

 

「うおー!雪だ~!」

 

「⁉」

 

途端にはしゃぎだすルフィ。

 

「もっと降れ~!雪だるさん作るぞ~!」

 

「…何か、あいつもガキっぽいな…」

 

「基本ガキだからなあいつは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~楽しかったのだ~!」

 

鈴々義勇軍は村の近くの丘で一休みしていた。

 

周囲にはすでに葉が枯れた木がたくさん生えている。

 

「ねェ親びん」

 

「親びんじゃなくて大将なのだ」

 

「じゃあ大将、次は何して遊ぶ?」

 

「う~ん…」

 

「わたし雪合戦がいい!」

 

「それはもっと雪がつもらないとムリだよ」

 

「じゃあお花見!」

 

「それは雪がつもって、とけた後でないとムリだろ!」

 

「この村、お花見できる場所があるのか?」

 

「うん!ここだよ」

 

「春になったらすごいんだよ!桃の花がぶわーってさいて!」

 

「だからこの村“桃の花の村”ってかいて“桃花村”っていうんだよ」

 

「よーっし!それじゃあここの桃が咲いたら、みんなでお花見するのだ!」

 

「「「おーっ!」」」

 

拳を掲げる鈴々義勇軍。

 

「あれ?」

 

…と、女の子が何かを見つけた。

 

「どうしたのだ?」

 

「あれ、何だろう?」

 

鈴々や他の子供達も見てみると、少し離れた林から黒い煙が上がっている。

 

「みんな!鈴々がルフィ達と見て来るから、みんなはお家に帰るのだ!」

 

「う、うん!わかった!」

 

「気をつけてね、大将!」

 

「任せるのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれか…」

 

鈴々の話を聞き、ルフィ、ゾロ、愛紗、鈴々、朱里、翠、劉備が様子を見に、林の中に入って行った。

 

「煙の量から見て、ただの焚火ではなさそうですね」

 

「しかしたかが煙でここまで…」

 

「下手したら山火事になりかねないし、放っておくわけにはいかないだろ?」

 

不満を漏らす劉備をたしなめる翠。

 

「ん?おーい!」

 

近くの木に登って様子を見ていたルフィが叫んだ。

 

「どうされました?」

 

「なんか建物から煙が出てるぞー!」

 

「建物?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは…?」

 

先に進んでみると、大きめの建物から煙が出ていた。

周辺には、黒焦げになった賊らしき人間が数人倒れている。

 

「どうやらここは、賊の隠れ家だったようだな…」

 

「一体何があったのだ?」

 

「わかりません」

 

「っ!誰か出て来るぞ!」

 

「「「「「っ!」」」」」

 

翠の言葉に、ルフィ達は入り口を睨み身構える!

 

やがて建物の戸口から袋を抱えた人影が現れ…

 

「はァ…あんなに苦労してこれだけとは…割りに合わないわねェ…」

 

「ナミ!」

 

「あ!ルフィ!」

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「へ~それじゃああんた達がルフィを…大変だったでしょう?コイツの世話するの」

 

「「「その通り です/なのだ…」」」

 

ナミはその場で愛紗達と自己紹介を済ませ、これまでの事について話を聞いた。

 

「ところで、賊達のこの有様はナミ殿が?」

 

「そうよ。本当は宝だけ奪って逃げるつもりだったんだけど、出くわしちゃったから仕方なく暴れさせてもらったわ」

 

「なんと…!」

 

「このお姉ちゃんも強いのだ…!」

 

「驚きましたな……ナミ殿!もしよろしければ、あなたも我々の義勇軍に…」

 

「ええ、いいわよ」

 

劉備からの誘いを速攻で受けるナミ。

 

「っ!嫌な予感…!」

 

その様子を見てルフィは寒気を覚える。

 

「おお!そうですか!」

 

「ただし…一つ条件があるわ」

 

「条件とは?」

 

「これから義勇軍のお金は、全部私に管理させてちょうだい♪」

 

「え、いやそれは…」

 

「だーーーっ!やめろお前ーーーっ!」

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

反対しようとした劉備を掴みかかって制止するルフィ。

 

「金のことでは絶対ナミに逆らうな!殺されるぞ!」

 

「え⁉」

 

(あ、あのルフィがあそこまで必死になるとは…)

 

(な、ナミさんって一体…⁉)

 

(そ、そんなに強いのか…⁉)

 

「ま、まァ…ここでこのまま話するのもなんだし、一度村に帰ろうぜ」

 

「賛成なのだ!……あれ?そいえばゾロはどこに行ったのだ?」

 

「「「「「あ…」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~その頃―――どこかの山~

 

「―――ったく、あいつら揃いも揃ってどこ行きやがった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらにその頃―――

 

「ハァ…ハァ…ちくしょう…!」

 

何人かの男が林の中を彷徨っていた。

体の一部が焦げているところを見ると、ナミにやられた賊の残党らしい。

 

「何なんだあの女…⁉」

 

「お~い!」

 

「⁉」

 

どこからともなく現れた数人の男が声をかけてきた。

 

「何だテメェら⁉」

 

「そうかみつくな。見た所お前らも同業者だろ?それもおれ達と同族の」

 

「?同業者はまだわかるが、同族ってのはどういう意味だ?」

 

「同じ奴にやられた者同士ってワケだよ」

 

「?」

 

「どうだ?おれ達と手を組まねェか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ナミを加えたルフィ達は、なんとかゾロを見つけ帰村した。

 

義勇軍に加わったナミは軍の経理を担当し…

 

「ナミ殿、そんなに使って大丈夫なのですか?」

 

「ええ。確かにお金は大事だけど、それはお金で物が買えるから。

広範囲で物資が不足するような状況になったら、いくらお金があっても大した量を買えないかもしれないでしょ?

だから常にある程度は物に替えておいた方が良いのよ」

 

「しかし、村人にもかなり分け与えてしまいましたが…」

 

「ああやっておけば恩や信頼を得て、いざという時に人手や物を貸してくれる人が増えるわよ?」

 

「な、成程…」

 

ナミの思惑通り、民からの信頼や支持は向上し、義勇兵の志願者、支援者はますます増えた。

 

また、それまでほとんど朱里一人に任されていた軍師の仕事にナミが加わったことにより、義勇軍はさらに活躍。

雪が溶け始める頃には、桃花村義勇軍の噂は近隣の村まで広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の昼盛り―――

 

一件の飲食店でお茶を飲んでいる一行がいた。

大人の女性と青年、幼い女の子の3人である。

 

「あーん♪」

 

美味しそうに女の子はお団子をほおばる。

 

「璃々、そろそろ出発しましょうか」

 

湯飲茶碗を置き、母親らしき女性が声をかける。

 

「はーい」

 

「あら、口の周りがべとべとじゃない。綺麗にしましょうね」

 

そう言って母親は手拭いで女の子の口をぬぐう。

 

「……おーい、お勘定頼む」

 

青年はその様子を微笑ましそうに見守りながら、店主を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

「はい確かに」

 

「あのう少々お伺いしたいのですが…」

 

「何だい?」

 

「ご主人は“桃花村”って村をご存じですか?」

 

「ああ、知ってるよ。あそこの義勇軍は有名だからな」

 

「そんなに有名なのか?」

 

「ああ。中山靖王の末裔が軍を率いていて、配下の武将も“黒髪の山賊狩り”や“燕人(えんひと)張飛”、“錦馬超”といった豪傑揃い。

軍師の諸葛亮もかなり聡明らしいし、何より天の御使い様がいるって噂だからな」

 

「その天の御使いってどんな奴なんだ?」

 

「聞いた話だと“藁で編んだ帽子を被った男”と“刀を三本持った男”だとか。

あと少し前に“肩に刺青をした女”が加わったそうだが…」

 

「そっか…」

 

「あんた達、義勇軍に参加するつもりかい?」

 

「ああ、おれの知り合いがそこにいるらしくてな」

 

「桃花村までは、あとどのくらいかかりますか?」

 

「そうだなァ…まだ山を二つ、三つ越えなきゃいかんから、子連れだとあと四、五日はかかるな…」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「ご馳走様」

 

「ばいば~い」

 

3人は去って行った。

 

「ふ~…」

 

「店主よ」

 

店主が店の中に戻ると、中にいた一人の客が声をかけてきた。

 

「ご注文ですか?」

 

「ああ、この拉麺を叉焼(チャーシュー)抜き、(ネギ)抜き、煮卵抜き、メンマ大盛で。それから…」

 

「?」

 

「先ほど言っていた桃花村とやらの義勇軍の話、もう少し詳しく聞かせてもらえないだろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、店を去った3人―――ウソップ達は…

 

「“藁で編んだ帽子を被った男”、“刀を三本持った男”、“肩に刺青をした女”か…」

 

「ウソップさんのお仲間でしょうか?」

 

「ああ。たぶん間違いねェな」

 

「ウソップお兄ちゃんのなかまってどんな人?」

 

「すっごく面白い奴らだ。璃々ちゃんもきっと仲良くなれるぞ」

 

「ほんとう⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~洛陽、宮殿~

 

「幽州の州境で反乱が?」

 

官軍の将らしき女性が3人、ある部屋で話していた。

 

「うむ、これが中々手ごわいようでな…すでに討伐隊が何度か向かっておるのじゃが、いまだに鎮圧できておらぬようじゃ。

そこで妾が向かうことになった」

 

「でも、今はあまりたくさんの兵を出す余裕はない筈よ?」

 

「うむ。それ故、兵は曹操をはじめとした周辺の諸侯に協力を依頼し、現地調達する」

 

「それで上手くいくのかしら?」

 

「そうね…今はどこも戦続きで、そこまで大軍を出せるところはないと思うけど…」

 

「じゃがこれ以上野放しにしておけば、朝廷の威信にかかわる」

 

「あ、そうだわ!」

 

「“盧植(ろしょく)”殿、どうかしたか?」

 

「幽州の方から来た商人から聞いたのだけれど、少し前に州境の村で私の教え子が義勇軍を結成したらしいの」

 

「義勇軍?」

 

「ええ。野に埋もれた武人や天の御使いと噂されている人が参加していて、中々強い軍らしいわ。

真っ直ぐで仁愛にあふれる子だから、協力を依頼すればきっと力になってくれる筈よ」

 

「ふむ……噂の真偽はともかく、今は藁にもすがりたい状況じゃ。参陣要請を出してみるか…」

 

「その教え子って何て名前なの?」

 

「“劉備玄徳”。桃色の髪の可愛らしい子よ。ちょっと抜けているところがあるけどね」

 

「“劉”?まさか、天子様の一族なの?」

 

「ええ。中山靖王の末裔らしいわ」

 

ルフィ達がたどり着いた一つの村、桃花村―――

その周辺で、事態は大きく動き出そうとしていた。

 

 




第十一席編完結。
次回から第十二席、一期の最終回に入ります。


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