ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
桃花村。
朱里の指示の下、村人達は全員屋敷への避難を終えた。
「これで全員ですね⁉守りを固めて籠城します!」
屋敷の堀の跳ね橋を上げ、門を閉ざし守りを固める。
一方屋敷の中では、唯一村に残っていた義勇軍の主力―――鈴々が出陣の準備をしていた。
寝間着から普段着に着替え、襟巻を巻き、丈八蛇矛を携え、ルフィから預かった麦わら帽子を被る。
「負傷者の手当てを最優先に!それから西の櫓に増援を!」
「私達が行きます!」
「狙撃の腕の見せ所だァーっ!」
「え?」
見慣れない男女が向かうのを見て、朱里は少々気になるが…
「!鈴々ちゃん⁉」
屋敷から出てきた鈴々に気づき、振り返る。
「まさか、そんな体で戦うつもりですか⁉」
「村が大変な時に…鈴々が寝ている訳にはいかないのだ…」
「でも…まだ熱も下がっていないのに!」
「鈴々はルフィ達に留守を頼まれたのだ…!だから村は鈴々が守るのだ!村を守って…村の子達とお花見をするのだ…」
「鈴々ちゃん…」
「
「!」
「あとを頼むのだ!」
「……わかりました!ご武運を!」
そうしている間にも、賊達は跳ね橋の縄を切って橋をおろし、丸太で屋敷の門を攻め立てる。
「あとはこの屋敷だけだァ!この門ももうじき開く!一気に攻め落とすぞォ!」
そしてついに門がこじ開けられてしまう。
「よォし!」
「「「「うわああ⁉」」」」
しかし、同時に丸太を持っていた賊が丸太ごと堀に投げ出される。
「な、何だァ⁉」
「通さない…!ここは絶対に通さない!ここから先は…この“張翼徳”が絶対に通さないのだァ‼命が惜しくない奴はかかってくるのだァ‼」
蛇矛を振り回し、橋の上に立ち塞がる鈴々。
「あ、あれが“燕人張飛”…!」
「何ぐずぐずしてるんだ⁉相手はたった一人!やっちまえェ!」
「「「「「「「「「「おおーーーっ!」」」」」」」」」」
「うりゃーーーっ!」
向かってくる賊を片っ端から薙ぎ払う鈴々!
鈴々本人はそこまで深く考えていなかったが、立っていたのが橋の上だった為、一度に襲ってくる人数は限られていた。
また、敵が来るのは前方に限られていた為、特に何も考えず前にだけ集中していれば良かった。
「いけいけェー!数で勝負だァー!押しまくれェー!」
しかし、まだ風邪が完治していない鈴々は、少しずつ動きが鈍くなる。
(熱で…体が思うように…動かないのだ…!
でも、負けないのだ…!ルフィと…愛紗と…みんなと約束したのだ…村を守るって…!……村を………約束…………を……………)
ガァン!
「…っ!」
とうとう力尽き、蛇矛を叩き落されて座り込んでしまう。
「その首もらったァー!」
そして相手の武器が鈴々に振り下ろされる!
…かと思われた次の瞬間―――
ガキン!
「⁉」
賊の得物が
そのまま鈴々の目の前に突き刺さった
(……愛紗の…青龍偃月刀⁉)
鈴々が夜空を見上げると―――
「鈴りーん!」
馬に跨り、賊の大群を飛び越えて来る愛紗の姿があった。
「…!愛紗!」
愛紗は空中で馬から飛び降り、着地と同時に鈴々の前にいた賊を踏みつける!
「ぐあっ!」
「よく頑張ったな」
「愛紗…うゥっ…!」
安堵のあまり涙を浮かべる鈴々。
愛紗は偃月刀を手に取り、賊達に向き直る。
「義妹が世話になった様だな…礼は百倍、いや千倍にして返させて貰うぞ!」
「く、“黒髪の山賊狩り”まで来やがった…!」
「何ビビッてんだ⁉一人増えただけだろうが⁉やっちまえ!」
「頭ァ!後方から何者かが…!」
「⁉」
「おそらくナミ殿と馬超だろう」
▽
「子供一人相手に!何人がかりでイジメてんのよ⁉」
「西涼の馬騰が一子、馬超推参!」
「敵の増援か⁉」
「迎え撃てェ!」
▽
「後方の敵に構うな!この屋敷さえ落とせばこっちの勝ちだァ!」
「やれるものなら…!」
「関羽!張飛!伏せろォ!」
「「!」」
後方から聞こえた声に二人が身をかがめると―――
「“二刀流七十二
「「「「「「「「「「ギャアアアアア!」」」」」」」」」」
後方から斬撃が飛び、敵を吹き飛ばす!
無論、斬撃を放ったのは…
「ゾロ!……どうして屋敷の中から出てくるのだ?愛紗達と一緒に遠征していた筈なのに?」
「“ゴムゴムの”ォ…」
「!」
再び上空から声が聞こえ見上げると…
「“雨”‼」
「「「「「「「「「「ギャアアアアア!」」」」」」」」」」
「ルフィ!」
「悪ィ!道に迷って遅くなった!」
愛紗と同じ様に賊の大群を飛び越え、鈴々達の隣に降り立つルフィ!
「て、天の御遣いがさらに二人…」
「悪党ども!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
不意に明後日の方向から声が聞こえ、賊だけでなくルフィ達も声の方を見る。
「どうやら年貢の納め時が来た様だな…!」
すると近くの屋根の上に、月明りを背後に一人の女が立っていた。
「何だテメェは⁉」
「ある時はメンマと酒を好む謎の美女…またある時は美と正義の使者“華蝶仮面”…しかしてその実態は―――」
「おお!星!来てくれたのか⁉」
「星?」
「星がどこにいんだよ?」
「コホン!―――またある時は美と正義の使者“華蝶仮面”…しかしてその実態は―――」
流れを壊された華蝶仮面は、改めて名乗りを上げると仮面を投げ捨て…
「“
そして星は賊の大群に身を投じ…
「でりゃーーーっ!」
「「「「「「「「「「ぐあああああっ⁉」」」」」」」」」」
多くの賊を吹き飛ばしながら、ルフィ達の下に駆け寄る!
「次から次へと…!」
「弓だァ!まとめて弓で仕留めろォ!」
頭領の声に何人かが弓を構える。
「よォし!一斉に…」
「ギャア⁉」
「ぐあっ⁉」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
しかし、弓を構えていた賊達が次々と謎の攻撃にやられる!
「今のは…⁉」
「櫓から⁉」
一同が櫓の上を見てみると…
「弓なら、私達が相手をします!」
「こっから先へは、一歩も入れさせねェぞ!」
「ウソップ!お前、何でここに⁉」
「話は後だ!ルフィ!とにかくこいつら全員ブッ飛ばせェ!」
「ああ!」
思いがけずに再会した仲間との会話を終え、ルフィは改めて賊に向き直る。
「お前らが山賊やってるのは別にいい。おれも海賊だからな!でも、おれの仲間に手ェ出すんなら、おれはお前らをブッ飛ばす!」
「おれ達にケンカ売ったこと、地獄の底で後悔しな!」
「星!背中は預けたぞ!」
「こちらこそ背中を頼むぞ!愛紗!」
そしてルフィ、ゾロ、愛紗、星は賊の中に躍り出る!
「よーし!こうなったら鈴々も負けてられないのだーっ!」
さらに大好きな
「反撃に出ます!戦える人は二人一組になって、一人の敵にあたってください!」
その様子を見て、朱里も攻勢に回るよう指示を出す!
「物だけ奪って逃げてりゃ、まだ見逃してあげても良かったのに!余計なモンにまで手ェ出した以上、タダじゃ済まさないわよ!」
「あたしは今、燃えに燃えているんだ!火傷したい奴はかかってこい!」
後方ではナミと翠が大暴れし…
「お母さん!ウソップお兄ちゃん!がんばって!」
「奪う事しか知らぬ賊どもよ!守るものがある我らの強さを思い知れ!」
「弱い者イジメばかりしてきた奴らが、いくつも死線を越えて来たおれ達に勝てると思うなよ!」
櫓の上では璃々に励まされ、ウソップと紫苑が奮戦する!
「必殺“手裏剣流星群”‼」
「“
「“
「“サンダーボルト=テンポ”‼」
「“
「“三刀流”…“龍巻き”‼」
「“
「“
「“ゴムゴムの”…“
「「「「「「「「「「ギャアアアァァァ!」」」」」」」」」」
圧倒的な強さを誇る9人の猛攻により、たちまちの内に形勢は逆転した。
成す術なく多くの賊がやられ、こうなると己の利潤の為に数を頼りに群れているだけの賊は、次々と臆病風に吹かれ始める。
「だ、駄目だ!敵いっこねェ!」
「に、逃げるしか…!」
「おい待て!後ろにまだ何かいるぞ⁉」
「軍旗か⁉」
「あれって…曹操軍の徐晃の旗だぞ⁉」
「な、何故ここに⁉」
「逃げ道は塞いだ…!覚悟しろ!」
香風の部隊の協力もあって、賊は今度こそ一人も逃す事なく壊滅したのだった。
▽
全てが片づいた頃には、すでに日が昇りきっていた。
仕留めた賊は、全て香風が連行していくことになった。
そして今、村の入口にて…
「徐晃殿、この度は本当にありがとうございました」
「ホント助かったよ。後で華琳にもお礼言いにいくよ」
「その必要はないと思う。華琳様はシャンに見回りに行くように命令しただけ。たまたまその途中で、賊を見つけて退治しただけだから」
「そうか?でも、本当にありがとうな!」
「うん!お兄ちゃん達、またね!」
「またな~!」
香風達は引き揚げて行った。
「それからウソップと…」
「“黄忠漢升”と申します。こちらは娘の“璃々”。
ウソップさんに璃々を助けて頂いた事がありまして、その恩返しがしたいと思い、一緒に旅をしておりました」
「そうか。お前らもありがとうな」
「ルフィ!」
「ん?」
「この帽子、返すのだ!」
「ああ!」
しゃがんだルフィに、鈴々は帽子を被せた。
「…って、そういえば鈴々、風邪はどうしたのだ?」
「なんか、ひと暴れしたら治ったみたいなのだ!」
「治ったって…全くお前は…」
ため息交じりに鈴々の頭をなでる愛紗。
「そういえば星、星はどうして華蝶仮面になっていたのだ?」
「おお、そうだった!説明せねばなるまいな」
鈴々の問いかけに、星は懐から例の仮面を取り出す。
「実はお主達と逸れた後、私は崖から落ちて一度死んだのだ」
「「「「「「「「「「えェ⁉」」」」」」」」」」
「しかし、私が落ちた崖の下は古代の神殿のような場所でな…
『お主のような者が現れるのを待っていた。お主に新たなる命と共に、正義の力を授けよう。
どうか我らの意思を受け継ぎ、世に太平を取り戻してくれ』
…と、そのような声が聞こえ、気が付くと体中の怪我が治り、手の中にこの仮面があったのだ。
それから私は華蝶仮面として、この仮面をつけて戦っていたという訳だ」
「何とも奇怪な…」
星の話を聞き皆が驚く中、ウソップが一人…
「お前…それウソだろ?」
「ああ、そうだ」
「「「「「「「「「だあああっ⁉」」」」」」」」」
2人以外、全員がズッコケた。
「よく嘘だとわかったな」
「まァ…同じホラ吹きとして、何となくな…」
「星…相変わらずだな…」
▽
その後、夜通し戦った疲れが出たルフィ達は、日が高くなるまで屋敷で眠った。
璃々以外の全員が目を覚ました後、それぞれが出会ったいきさつ、ナミと愛紗が天の御遣いについての情報などを話した。
そして、ルフィ達が遠征してからの事を話し…
「劉備さんがそんな事を…!」
「前々から気に入らなかったけど、やっぱり嫌な奴なのだ!」
「その劉備とかいう男、とんだ食わせ物だな」
「その人が掲げる正義や大義は、おそらく口先だけのものですね」
「村の事って聞いて、村人の命じゃなくて拠点や軍資金の事が真っ先に浮かぶような奴は、十中八九『力がないから救えねェ奴』じゃなくて『力があっても救う気がない奴』だろうな…」
「ルフィ殿ー!関羽殿ー!皆様ー!」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
一人の村人が、屋敷に駆け込んで来た。
「お主は確か、遠征に出ていた…」
「はい!村の事が気掛かりだったので、攻撃が終わった後に様子を見に来たのです!
村を守って下さり、本当にありがとうございます!皆も喜ぶでしょう!」
「そうだ!ついでに聞きたいのだが、遠征はどうなったのだ?」
「あ、はい。劉備殿はお借りした官軍の兵を先頭に、予定通り夜明けと同時に正面から攻撃しました。
ですが、皆様の様な主力の将がいない状態で、あの様な無謀な攻撃が成功する筈もなく、すぐに敗走しました」
「そうか。被害の方は?」
「あー…それなんですが…」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
「我々は元々民百姓であったため、賊はともかく領主の圧政に反旗を翻した領民が相手では戦意が湧かず…そのうえ村の事が気掛かりで、戦所ではなかったのです。
それ故、先に攻め入った官軍が敗れた途端、全員ろくに戦いもせず逃げ出しまして…。
官軍の方は、かなりの重軽傷者が出たそうですが、義勇兵の方はほとんど無傷のまま終わりました」
「それは不幸中の幸いだな。劉備殿は?」
「『無様に敗れ、朝廷の威信を深く傷つけた』という事で、朱儁様から深く叱責され、官軍への起用の話は白紙になりました。
その後は『これ以上は威信の下がりようが無い』と朱儁様も開き直った様で、曹操様に指揮を執らせて兵糧攻めをし、降伏を促すそうです」
「そうか。なら、反乱は無事治められそうだな」
▽
桃花村の防衛戦から3日後、義勇軍の本隊が引き揚げてきた。
当然、この男もいけしゃあしゃあと戻って来た。
「や、やァ皆無事で何より!勢ぞろいでお出迎えとは恐れ入る!」
ルフィ達はウソップ、星、紫苑、璃々も加え、一応屋敷の門前で出迎えはしているが、誰一人歓迎している様子ではない。
「おや?私の知らない顔がいるが、新たな義勇軍の加入志願者か?」
…と、ウソップ達の顔を順に見ていくが…
「んっ⁉こ、黄忠⁉何故キサマがここに⁉」
紫苑の顔を見た瞬間青ざめる。
「知り合いか紫苑?」
「いえ、初対面の筈だと思うのですが…あれ?でも、あの剣どこかで見た様な?」
…と、劉備の腰の剣を見て考え込む紫苑。
「あ!わるい人!」
「璃々?」
「どうしたんだ?」
「あのね!あの人まえに…」
「やべっ!」
「何だって⁉」
「それじゃあ…!」
3人が話している隙に…
「ハイヨー!」
劉備は大慌てで馬に飛乗り、村から飛び出してしまった。
「あ!こら!」
「待ちなさい!」
「どうしたんだウソップ?」
「それに劉備の奴、どうして逃げちゃったのだ?」
「ほら!前に璃々が誘拐されて、紫苑が暗殺をさせられそうになった時の事話しただろ⁉そん時の誘拐犯の黒幕があいつだったんだよ!」
「なんだって⁉」
「おそらく、裏家業的な悪事だけでは飽き足らず、世の乱れを利用して成り上がろうと考えたのでしょう」
「つー事は、アイツが中山靖王とかいう偉い奴の子孫だとかいうのは…」
「真っ赤なウソでしょうね。血脈の証だとかいうあの宝剣も、ニセモノか盗んだものよ」
「そうなると、“劉備玄徳”という名前が本当かどうかも怪しいですね」
ゾロ、ナミ、朱里がそう見解を述べる中、翠が愛紗に近寄り…
「良かったな。そんな奴に唇奪われなくて」
「⁉み、見ていたのか⁉」
「あともう少しって所で、突き飛ばしちゃうんだもんな~」
「どうかしたのか愛紗?」
「あ、いや…!」
「何かあったのなら教えて欲しいのだ」
「べ、別にその…!」
「何だ?」
「る、ルフィは絶対に聞くなァーっ!」
バキッ
「う゛っ…!」
▽
「はァ…はァ…くそっ!ここまで来て!」
桃花村から逃げだした“劉備玄徳”を名乗っていた男は、馬から降りて休んでいた。
「このままでは終わらんぞ…!どこか…別の村で…」
「おいテメェ!」
「⁉」
声が聞こえ見てみると、山賊らしき男が3人いた。
「命が惜しかったら金目の物を…ん?おめェどっかで見たような?」
「あ、あの剣!こいつ義勇軍の総大将ですぜアニキ!」
「⁉」
どうやら数日前の賊の大群に加わらずに、難を逃れた賊の残党らしい。
「丁度いいぜ!あの時の恨み…」
「ひィィィ!」
またしても一目散に逃げだす男。
「あ!コラ!」
「テメェ!」
「逃げ足の速い奴だなァ…!」
▽
馬で走り回りながら男は考える。
(ま、マズイ!もうかなり顔が知られているうえ、この剣を持っていると目立ってしまう!少々惜しいが…)
走りながら男は剣を鞘ごと放り投げた。
(とにかく今は、ココから離れるんだー!)
そして男はどこかへと去って行った。
この時捨てられた宝剣は賊に拾われた後、ある者の手に渡る。
そして再びルフィ達と関わる事になるのだが、それはまた別の話。
次回、一期編完結です。