ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

62 / 178
やっとパソコンがインターネットにつながりました!
真・恋姫無双編、投稿開始します!




真・恋姫†無双編
第62話 “不在の総大将”


「たァーっ!」

 

「はーっ!」

 

「うああっ⁉」

 

「ギャッ⁉」

 

とある谷間で、山賊と武装した民百姓の集団が戦っていた。

 

民百姓の方は2人一組になって互いをカバーし合いながら戦っており、戦況は彼らの方が有利に見える。

 

「オラァッ!」

 

「「「「「「「「「「ギャー⁉」」」」」」」」」」

 

その中に一人、3本の剣を振るい、一度に何人もの賊をなぎ倒す男がいた。

敵を振るってくる剣ごと弾き飛ばし、時には数人分の剣を同時に払いのける!

 

男の隣には、3本の刀が描かれたドクロの旗が掲げられている。

 

「標的にした村におれ達がいたとはな……テメェらは天に見放された様だな…!」

 

「うおりゃーーーっ!」

 

「「「「「「「「「「うわあああああ⁉」」」」」」」」」」

 

そしてもう一人、子豚に乗り戦場を走り回る少女がいた。

少女は自身の身長よりも長い、丈八蛇矛と“張”字の旗を振り回して敵をなぎ倒す!

 

「鈴々様のお通りなのだー!敵将は誰なのだー!尋常に勝負するのだー!」

 

その2人が暴れる戦場のかなり後方で、賊の頭領らしき人物が様子を見ていた。

 

「くっそ~!こんな狭い谷じゃせっかくの数を生かせねェし、身動きもとれねェ!」

 

「このままじゃ全滅しちゃいますぜ?」

 

「さっきはわざと敗走して、おれ達をここにおびき寄せたのか…」

 

「一旦引き返すぞー!広い所で体制を立て直すんだー!」

 

「「「「「「「「「「はーっ!」」」」」」」」」」

 

頭領の言葉を聞き、賊は退却を始める。

 

「あー!待つのだー!みんなー!追撃なのだー!」

 

「おい、待て張飛」

 

「どうして止めるのだゾロ⁉今が好機なのだ!」

 

「……お前、孔明の作戦忘れたのか?」

 

「あ…そういえばそうだったのだ…」

 

「あとは他の奴らに任せるぞ。じゃ、おれは先に村に帰る」

 

「あー!ゾロを一人で歩かせたら、鈴々がみんなに怒られるのだー!だから駄目なのだー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撤退した賊達は少し開けた所に出て足を止めた。

 

「よーし!こんだけ離れりゃいいだろ!お前らァ、ここで態勢を…」

 

ジャーン!ジャーン!ジャーン!

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

その瞬間、周囲の山から銅鑼の音が響き、無数の人影が姿を現す!

 

「うわあ!伏兵だー!」

 

「逃げるぞー!」

 

賊が逃げ出すその様子を、人影の中で一人の少女が見ていた。

 

「作戦通りです!」

 

「孔明殿の言う通り、本当にこれだけで逃げだしましたね」

 

「はい、出陣の時に常に銅鑼をならせば、『銅鑼が鳴ると敵が現れる』と思い込ませる事ができます。

混乱させるだけなら、銅鑼と人影だけで充分です」

 

実際にそこにいたのは銅鑼を持った数人の村人だけで、攻撃するつもりは全くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急げー!伏兵に追いつかれるぞー!」

 

賊が走り去っていく様子を、近くの草むらで一人の男が見ていた。

 

「孔明の言った通りだ。よォしお前ら、行くぞォ!」

 

そして男は後方にいる弓兵達に指示を出し、自身も立ち上がる!

 

「賊共ォ!おとなしく降参しろ!さもなくばおれ達の餌食になるぞォ!」

 

そう言って男はパチンコを構え、後ろにいる兵達も立ち上がり弓矢を構える!

その後ろには、鼻の長いドクロの旗が翻っていた。

 

「こ、こんなとこにも伏兵が⁉」

 

「すごい数だぞ⁉」

 

賊が戸惑う中、後ろの弓兵達は…

 

「孔明殿の策も凄いけど、ウソップ殿もよくこんな事思いつくよな」

 

案山子(カカシ)に服着せて武器持たせて、大人数に見せるだなんてな」

 

「ん?おい、何か後ろにいる奴ら変だぞ?」

 

「あー!ただの案山子じゃねェか!だましやがったな!」

 

「気づかれたか!だが、もう遅せェ!」

 

「賊共よ!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

今度は反対側の崖の上から声が聞こえ、見上げるとそこには人影と“趙”の旗が。

 

「地獄への道案内!この趙子龍が勤めてやろう!丸太を落とせ!」

 

そう指示を出し、星自身は馬で崖を下り斬りかかる!

 

「よーし!こっちも行くぞ!放てェ!」

 

同時にウソップと弓隊も攻撃する!

 

「に、逃げろー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、賊達の何人かは難を逃れ…

 

「ハァ…ハァ…くそ…だいぶやられちまったな…」

 

「なァに問題ねェよ。今頃別動隊が村を襲っている筈だ」

 

「おお!そういえばそうでした!」

 

「連中、きっと今頃大慌てですぜ!」

 

「頭ァー!」

 

…と、そこへ一人の賊が走って来た。

 

「ん?あいつは別動隊に加わっていた…」

 

「おお、どうした?作戦が成功したか?」

 

「それが…別動隊は村に残っていた連中にやられてしまいやした!」

 

「何ィ⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村の門前。

そこにできた累々たる屍の山の上に、一人の女性が立っていた。

隣には“馬”と書かれた旗がある。

 

「こういう事があるから、何人かは村に残っていないとな…」

 

「馬超ちゃーん」

 

櫓の上から誰かが呼びかけた。

櫓には“黄”の旗が立っている。

 

「私、ご飯の用意してくるから後の事は任せて良いかしら?」

 

「おう、良いぞ。黄忠、お疲れさ~ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「別動隊もやられて、残ったのはおれ達だけ…」

 

「とにかく砦に引き返すぞ!砦の奴らと合流すれば…」

 

「あの…お頭…」

 

「何だ?」

 

「その砦が…滅茶苦茶に壊されている様なんですが?」

 

「は?」

 

見てみると、確かに前方に砦らしき建物がある。

しかし、壁や天井が崩れ、とても人が住める様な状態ではない。

 

そして砦の周りには、大勢の倒れた賊が。

 

「何だ…?」

 

賊達が呆然としていると、一人の女性が数人の男と一緒に砦から盗み出した金、武器、食料などを持って出てきた。

男の一人が、舌を出しウィンクをしたドクロの旗を掲げている。

 

「げっ、もう戻って来たの⁉しょうがないわね…こうなったら、私の後から出てくる奴が相手よ!」

 

「「「「「「「「「「お前じゃねーんかい!」」」」」」」」」」

 

女の背後にいた男達と賊達が、思わず息を合わせてツッコんだ。

 

「ナミ~どうした~?」

 

今度は砦から一人の男が出てきた。

背後には同じように数人の男がおり、一人が麦わら帽子を被ったドクロの旗持っている。

 

「麦わら帽子…?」

 

「…ってことは天の御遣いの…⁉」

 

「ん?ナミ、あいつら敵か?」

 

「ええそうよ。やっちゃいなさいルフィ!」

 

「よし!」

 

「「「「「「「「「「ひいいィィィ!」」」」」」」」」」

 

「に、逃げ…」

 

ジャーン!ジャーン!ジャーン!

 

またもや銅鑼の音が響き、一人の女が率いる部隊が退路を塞ぐ。

そして部隊の一人が掲げているのは…

 

「“関”の旗?」

 

「…って事は関羽ー⁉」

 

「乱世に乗じて弱きを虐げる悪党共め…我が青龍偃月刀の威力!思い知るがいい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劉備玄徳を名乗っていた男が、桃花村を出て行ってから数日―――

ルフィ達は義勇軍として活動を続けていた。

 

その日の夜、義勇軍の勝利を祝して宴会が行われていた。

 

ルフィ達は璃々も加え11人で大広間の食卓に着き、酒とご馳走を楽しんでいた。

星はさらに“趙私物”と貼紙をした壺を目の前に置き、中のメンマを堪能している。

 

「いや~、この辺りの賊はほとんど退治されました!これも皆さまのおかげ、村民を代表してお礼を申し上げます!」

 

張世平がほろ酔いした様子で、ルフィ達にお礼を述べる。

 

「しかしながら、“高祖(こうそ)”、“劉邦(りゅうほう)”を助け、漢の礎を築いた“陳平(ちんぺい)”にも劣らぬ、孔明殿の智謀の数々!

皆、感服しておりますぞ!」

 

「そ、そんな…私なんてまだまだ…」

 

照れ臭そうにする朱里。

 

「そう謙遜することはない。我が軍の勝利に、孔明殿の策が大きく貢献しているのは本当だ」

 

「そうそう!孔明の作戦のおかげでおれやナミ、義勇兵達も安心して戦えるってもんだ!」

 

愛紗とウソップも朱里を褒める。

 

「あたしも個人の武ならともかく、兵を率いて戦うのに関しては孔明に感謝しているぜ」

 

そう言うと翠は、隣に座っている星のメンマにそーっと箸を伸ばす。

 

「まァ、ルフィ殿や愛紗が一番おいしい所を持っていく事が多いのは、少し不満だが…なっ!(ギロッ)」

 

「ヒィッ⁉」

 

星の一睨みで、翠は箸をひっこめた。

 

「天の御遣いであるルフィ殿、ゾロ殿、ナミ殿、ウソップ殿の強さは、まさに天下無双!

賊の中には、あの髑髏の旗を見ただけで逃げ出す者も多いとか!」

 

「当ったりめーよ!このキャプテン・ウソップ様の前には、賊の百人や千人、ちり芥も同然よ!」

 

「私達の一騎当千の実力!国中に響かせてやるわよ!」

 

「いつも孔明に頼んで、比較的安全な場所に置いて貰ってんのは、どこのどいつだ…」

 

呆れ混じりに言うゾロ。

 

「そういえば、ありがとうな。おれ達の旗、作ってくれてよ」

 

「まさかここに来て、自分の海賊旗を持てるとは思わなかったぜ」

 

ルフィとウソップが礼を言う。

 

「ルフィ達は義勇軍の将なのですから、旗印は必要でしょう」

 

そう愛紗は言うが…

 

「おれ達は別に、義勇軍に入ったわけじゃねェぞ?愛紗達の事手伝ってるだけで…」

 

ルフィは否定する

 

「ですが、村の皆さんも『義勇軍の総大将は天の御遣い』という認識の様ですよ?」

 

「いくらそう扱われてもな…。天の国ではおれ達は悪党、討伐される側だ。実感が湧かねェし、そういう柄じゃねェ」

 

ゾロも朱里の言葉を否定する。

 

因みにルフィ達はみんなが解りやすいよう、自分達の世界の事を『天の国』と呼ぶ事にしている。

またナミが孫家で得た情報から、自分達がいた世界が天の国で、天の御遣いが自分達を指している事は承知していた。

 

「じゃあ、今の義勇軍の総大将って誰になるんだ?」

 

「もちろん愛紗なのだ!」

 

「何を言うか鈴々!そういうのは、年長の方が務めるのが…」

 

「関羽さん、それはどういう意味かしら?」

 

「⁉い、いえっ!深い意味は…!」

 

「お、落ち着け…!落ち着け~…紫苑…!」

 

紫苑の殺気にあてられ、縮こまる愛紗だった。

 

因みにこういう時に紫苑を宥めるのは、一番付き合いの長いウソップの役目になっている。

 

「だとしたら馬超か?この中では一番名声も高いだろうし…」

 

「ん~…でもやっぱり、先に加わっていた関羽達を差し置いてなるのはな~…」

 

「なら私も違うな」

 

「鈴々も。ルフィと愛紗の妹なのに、二人より偉いのはおかしいのだ」

 

「でしたら、孔明殿はどうであろう?我々に指示を出す立場である訳だし…」

 

「はわわっ⁉そ、そんな…!私なんてただの軍師でしゅし!指示を出すだなんてそんな大層な…!」

 

「確かに総大将は無理そうだな。“はわわ軍師”殿」

 

「は、“はわわ軍師”…」

 

星によって、可愛くも不名誉なあだ名をつけられてしまう朱里だった。

 

「まァ、それについて論ずるのはまたの機会にしよう」

 

「それにしても天の御使い様方を除いても、関羽殿、馬超殿、趙雲殿、黄忠殿と、我が軍は豪傑揃いですな!」

 

張世平が今度は愛紗達を褒め称える。

 

「むっ⁉鈴々が入っていないのだ!」

 

「中でも!」

 

「?」

 

「子豚に乗り、戦場を縦横無尽に駆け、暴れ回る張飛殿は皆に“猛豚将軍(もうとんしょうぐん)”と呼ばれ称えられているそうですぞ!」

 

「にゃ、にゃはは~♪それほどでもあるのだ~♪」

 

((猛豚将軍…))

 

―――――ブヒブヒなのだー!

 

「「ぷっ…!」」

 

ブタの鼻と耳をつけた鈴々を想像し、思わず吹き出すナミと朱里だった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。