ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
ご了承ください。
ある朝。
「何だおっさん、話って?」
ルフィ達は張世平に呼ばれ、屋敷の大広間に集まっていた。
「実は、皆さまにお伝えしたい事がありまして…」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
▽
「村を出て行く⁉」
「どうしてまたそんな事を⁉」
「はい。昨夜も申しました通り、皆様のおかげでこの辺りの賊は一掃され治安が戻りました。
ですから、私も再び商業を始めるため、行商人として近くの村や街を回ろうと思ったのです。
物流が豊かになれば、それはきっと皆さまのお役にも立つと思います。
こちらには定期的に戻る予定です。
無論、私が出て行った後も、この屋敷は自由に使っていただいて構いません」
「成程…」
「そういうことなら、止める理由はありませぬ」
「ご理解いただけたのなら何よりです」
「しかし、賊があらかた退治されたとはいえ、油断はできぬもの。何人か義勇兵をお供として連れて行った方がよろしいでしょう」
「成程、わかりました」
こうして、張世平は村を離れることになった。
▽
数日後―――
「では、行ってまいります」
「おう、元気でな」
「旅の安全と商業の成功を祈っております」
「
「はっ!」
ルフィ達に見送られ、数人のお供を連れて張世平は村を出発した。
「行ってしまったな…」
「さみしいなー…」
「しかし、それはこの辺りが平和になった証拠。喜ばしいことだ」
「そーそー、見送ってやろうぜ!」
▽
張世平達が出発したその日の夜、ルフィ達はいつも通り、大広間で夕食をとっていた。
「…なーんかおっさん達がいなくなって、急にがらんとしたな…」
肉をかじりながらルフィが呟く。
「張世平殿がいなくなったのもそうだが、供として連れて行った兵も、皆この屋敷に寝泊まりしていた者ばかりでしたからな…」
「元々村の住民だった奴らには別に家があるし、今この屋敷で寝泊まりしているのは、ここにいるおれ達だけからな…」
愛紗とウソップも呟く。
「やむを得ん。村に家がある者は、あまり村から離れたくないだろうからな」
「この間みてェな事もあるかもしれねェからな」
「やはり気がかりなんでしょうね…」
星、ゾロ、紫苑が言う。
「やっぱりちょっとさみしいのだ…」
「今朝も言っただろ?これはあたし達の活躍で、この辺りに平和が戻った証拠なんだって!喜ぼうぜ!」
鈴々の言葉にそう返し、翠は大皿に残っていた最後のシュウマイに箸を伸ばす。
「あ!」
同時に鈴々もシュウマイに箸を伸ばした。
「ぬぬぬぬぬっ!」
「にゃにゃにゃにゃにゃっ!」
両者はしばらく箸を振りかざし合い、そして…
「とったどー!」
「あーっ⁉」
翠がシュウマイを勝ち取ったのだった。
「鈴々の焼売~!」
「へっへ~ん!あたしの勝ちだな~!」
「もう!二人ともお行儀が悪いですよ!璃々ちゃんも見ているのに…」
「う…わ、悪かったよ…」
「でも朱里、もっとお行儀が悪い奴がいるのだ」
そう言って鈴々が指した先には…
「んぐ…んぐ…」
大皿を半分ほど口の中に入れ、盛られた麻婆豆腐をのどに流し込むルフィの姿があった。
「
「一周回って注意する気にもならんな…」
「あれ?鈴々ちゃん、ほっぺに何かついてますよ」
そう言うと朱里は手拭いで鈴々の頬を拭く。
「あう…よすのだ朱里~…!自分でできるのだ~…!」
「
その様子を見て璃々が笑いながら言う。
「これ璃々!」
「?」
「いくら親しい相手でも、相手から許しも得ずに真名を呼んではいけません!ちゃんと“張飛お姉ちゃん”と呼びなさい!」
母親らしく注意する紫苑。
「え~…鈴々お姉ちゃん、いつもじぶんのこと“鈴々”ってよんでるよ?」
「それでもです!許しも得ずに真名を呼んだら、どんなにひどい事をされても、文句は言えないのですよ!」
「別に構わないのだ!」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
「璃々はもう家族みたいなものだから、真名で“鈴々”って呼んでもいいのだ!」
「鈴々ちゃん…」
「ふふっ…良かったわね璃々」
「うん!鈴々お姉ちゃん大好き♪」
喜ぶ璃々を見て、皆も嬉しそうにする。
「あ!真名っていえばさ…」
「どうしたのだナミ?」
「張飛ちゃん、どうして急に孔明ちゃんのこと真名で呼ぶようになったの?」
「はにゃっ⁉」
「確かに…前の遠征の後からか?」
「あ…でも孔明はずっと鈴々のこと真名で呼んでいるよな?」
「はい。私が真名で呼びたいって言ったら、呼んでいいって言ってくれたんです。
でも、その時は『私の事を真名で読んだりはしない』って言ってたんですけど…」
「あ…!」
「そうなのか?」
「そ、それは…確かにそう言ったけど…よく考えたら、朱里だけ鈴々を真名で呼ぶのは…ずるいと思ったから…」
「そんなこと言って~…本当はずっと真名で呼びたかったけど、キッカケがなくて困っていたんじゃないの〜?」
「っ!」
ナミの言葉に真っ赤になる鈴々。
「ち、違うのだ!図星だけど、ゼッタイゼッタイ違うのだ~!」
「「「「「「「「「「はははははっ!」」」」」」」」」」
全員で大笑いする中…
「……そういえばよォ…」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
ルフィが静かな口調で喋りだした。
「おれも孔明や馬超達のこと、真名で呼びてェんだけどダメかな?もう仲間みたいなもんだし…」
「私は別に良いですよ」
「あたしもいいぜ!ゾロに真名預けてるし」
「私も構いません」
考える様子もなく承諾する3人。
「ねェ、だったらさァ!」
今度はナミが声をあげる。
「私も張飛ちゃんのこと、真名で呼んでいい?うっかり呼びそうになるし…」
「構わないのだ!もちろんゾロも馬超も、みんな鈴々のことは、真名で呼んで構わないのだ!」
「ありがとう!“鈴々”ちゃん!」
「じゃあおれ達も“鈴々”って呼ばせてもらうぜ」
「あのう!でしたらこれを機に、私達全員で互いの真名を預け合いませんか?」
朱里の提案を聞き、全員の顔が明るくなる。
「おー!良いなそれ!」
「私は構わないぞ」
「賛成なのだ!」
「おれ達は真名がねェから、お前らが良いならいいが…」
「反対なんてするワケないだろ!」
「私も異論はない」
「ま、こういう好意は素直に受け取るべきよね!」
「いいですわね」
「璃々も璃々もー!」
「へへっ!そうしもらえるとなんか嬉しいな!」
「しかし、あまりに年上の方を気安く真名で呼ぶのは、少々気が引けるな…」
「関羽さん、何が言いたいのかしら?」
「い、いえっ!何でもありません!」
「お、落ち着け紫苑…落ち着くんだ…!」
「こほん!……では私から…」
愛紗は気を取り直し…
「我が名は“関羽”、字は“雲長”、真名は“愛紗”!この真名、ここにいる皆に預けよう!」
「鈴々は“張飛”、字は“翼徳”、真名はもちろん“鈴々”なのだ!この真名、皆に預けるのだ!」
「あたしは“馬超”、字は“孟起”、真名は“翠”ってんだ!みんなに預けるぜ!」
「我が名は“趙雲”、字は“子龍”、真名は“星”。この真名、皆に預けよう」
「私は“諸葛亮”、字は“孔明”、真名は“朱里”です。この真名、皆さんにお預けしましゅ…!はわわ!噛んじゃいました…!」
「私は“黄忠”、字は“漢升”、真名は“紫苑”といいます。この真名、皆さんにお預けしましょう」
「璃々は“璃々”でーす!」
「じゃあ、おれ達も改めて自己紹介を…おれは“ウソップ”勇敢な海の戦士になる男だ!」
「私は“ナミ”!改めてよろしくね!」
「“ロロノア・ゾロ”だ。まァ、しばらくはともに戦う仲だ。よろしく頼む」
「おれは“モンキー・D・ルフィ”!海賊王になる男だ!」
「ではみんな!これからもよろしく頼むぞ!」
「「「「「「「「「「おおーーーっ!」」」」」」」」」」
▽
翌日―――
「ん?」
「…………」
ルフィが2階の庭に面した廊下を歩いていると、空を見上げている愛紗に出くわした。
その表情は、何やら考え事をしている様子である。
「おーい、愛紗~」
「!ルフィ」
「どうかしたのか?」
「いや…少しな…」
「?」
「張世平殿や翠が言った通り、確かにこの辺りは平和になった。
だが、この国にはまだまだ苦しんでいる人々がいる…。それを考えると、いつまでもここに居ていいものか…」
「……そうだな。おれ達もサンジ達の事、探さねェといけねェし…」
「では、また旅に出るか?」
「「!」」
背後からの声に2人が振り向くと、星を先頭にゾロ、ナミ、ウソップ、鈴々、朱里、翠、璃々を抱きかかえた紫苑が立っていた。
「いつの間に…」
「知らぬ間にな」
「―――で、どうする?旅に出んのか?」
「そうだな……それもいいかもしれん」
「でも、心配ですね…」
「どうしたのだ朱里?」
「この間みたいに、私達がいなくなった時を狙って、賊が襲ってくるかもしれませんし…」
「可能性は否定できんな…」
「それに…おれみたいに天の御使いの噂を聞いて、おれ達の仲間が村に来るかもしれねェし…」
「その時に皆さんが村を去っていたら、すれ違いになってしまいますね…」
「だったらここを拠点にして、定期的に旅に出て戻って来る、ってのを繰り返せばいいんじゃねェか?」
「……ゾロって、そういう事を考えることはできるんだな(実行はできないけど)」
驚きを隠せない翠であった。
「義勇軍も五百人以上にまで増えてきているし、我々の中からニ、三人残っていれば、村の警備は十分だろう」
「…そうだな。では何人か留守番を残して、また旅に出るとしよう!」
「わかっているとは思うが、その時は私も同行させてもらうぞ」
「……また急にいなくなったりするなよ?」
「おれも行くぞー!」
「もちろん!鈴々も一緒なのだ!」
「おれも行くぜ。留守番は性に合わねェからな」
「できればゾロは、村どころか屋敷からも出したくないけどな…」
「お、おれは留守番でも別にいいぞ!」
「私も可愛いから、まず留守番で」
「そう言うと思っていました…」
「璃々はお母さんと一緒にお留守番していましょうね」
「うん!」
▽
同刻―――
「すいません」
「はい、何でしょう?」
「“桃花村”への道をお尋ねしたいのですが…」
ルフィ達の新たなる旅立ちの時は迫りつつあった―――――
…というワケで、いきなりですが一話目の鈴々と翠の下りは省略しました。
ゾロが翠の事を真名で呼んでいますし、鈴々と翠がそこまで親しいワケではないので。