ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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ちょっとだけ別の話を挟みます。




第64話 “家族”

「…とは言ったものの…」

 

ある日、ルフィ達は屋敷の大広間で会議をしていた。

 

「義勇軍の鍛錬の予定がすでにだいぶ決まっている以上、すぐに出発するワケにはいかんな…」

 

「うむ。今から少しずつ、日程を調整するとしよう。ルフィ殿達もそれで良いか?」

 

「ああ、いいぞ」

 

「それに天の御使いの噂を聞いて、向こうからやってくるかもしれないし。

他の奴らの事も何らかの形で噂になって、こっちに聞こえてくるかもしれないし。

だから、そこまで急ぐ必要はねェよ」

 

「確かに。ルフィさん達の仲間なら、噂になりやすいかもしれませんね」

 

「チョッパーとかブルックなんて特にな…」

 

「あいつらどうしてるかな~…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少々遡り、ある夜の涼州、武威郡―――

 

「よし!これで全部だな」

 

その城の一室―――月達に用意してもらった医務室で、チョッパーは診察日誌の整理をしていた。

 

チョッパーは董卓陣営に加わってから、医者としての診察や薬剤調合はもちろん、新しい医者達への教育やそのための教科書作り、さらにそのためにこの世界の文字を覚える勉強など、忙しい日々を送っていた。

 

「せっかくだし、もう少し勉強するかな…」

 

『チョッパー、いる?』

 

部屋の外から誰かが呼びかけてきた。

 

「その声、恋か?いいぞ入って」

 

チョッパーが答えると、恋が入って来る。

恋は両手に一人の少女を抱え、後ろにセントバーナードらしき犬を連れていた。

 

「どうしたんだそいつら?」

 

「拾って来た。この子、倒れていた。診て欲しい」

 

 

 

 

 

 

チョッパーは、恋が拾って来た少女を寝台に寝かせて診てみた。

一緒に連れてきた犬は、寝台の横に座らせている。

 

少女はチョッパーと同じくらいの身長で、制帽を被っており、明るい緑色の髪を首元で二つ縛りにしている。

 

「…栄養失調だな。もう何日もロクに食事してないんだと思う」

 

「食べ物、持ってくる?」

 

「そうだな。果実を絞った汁とか、羹とか飲めるくらいの物が良いよ」

 

『ちょっとチョッパー!恋来ていない⁉』

 

またもや部屋の外から誰かが呼びかける。

 

「詠か?うん、ここにいるぞ」

 

「やっと見つけた!」

 

「何?」

 

「“雪羅(せつら)”から聞いたわよ。また何か拾って来たんだって?しかも二匹」

 

「うん」

 

「…ったくもう、これで今月に入ってから何度目よ…」

 

(イー)(アル)(サン)……たくさん」

 

「いいわよ数えなくて!

もうここには、あんたが拾って来たのがわんさかいるんだから、今更一匹や二匹増えたって変わんないわよ。

飼うのはいいけど、ちゃんと躾けなさいよ」

 

「躾けはちゃんとやってる」

 

「躾けてんのほとんどチョッパーでしょうが!

何度も言うようだけど、チョッパーはいつまでもボク達の所にいるワケじゃないんだからね!

出ていった後も大丈夫なように、自分で躾けなさいよ!」

 

「わかった」

 

「…それじゃあね」

 

詠は部屋を出て行った。

 

「恋は食べ物取って来る」

 

「おう。コイツらはとりあえずおれが見て…」

 

「ちょっと待てェーい!」

 

もの凄いスピードで詠が戻って来た。

 

「何?」

 

「何じゃないわよ!

そっちのでっかいワンコは良いとして、よく見たら寝台で寝ているのは人間じゃない!」

 

(よく見ないと気付かなかったのか?)

 

心の中でツッコむチョッパーだった。

 

「一体どういうことよ⁉」

 

「おい、詠。一体どうしたんだそんなに騒いで?」

 

…と、廊下の向こうから華雄がやって来た。

 

「…って、そうよ雪羅!どういう事よ⁉聞いてないわよ⁉」

 

どうやら“雪羅”というのは、華雄の真名のようである。

 

「何がだ?」

 

「あんたさっき、恋がばっちいのを()()拾って来たって言ったわよね⁉」

 

「ああ、言ったぞ」

 

「二匹じゃなくて一人と一匹じゃないのよコレ!」

 

「同じような物だろ?恋もそう言っていたし…」

 

「うん。この子ばっちいけど可愛い。あっちもばっちいけど可愛い。だから同じ」

 

「同じじゃない!」

 

「詠ちゃん。そんなに騒いでどうしたの?」

 

月までやって来た。

 

「月!大変よ!恋がこのワンコと、あの女の子を拾って来て…!」

 

「女の子?」

 

「ああ、あの寝台に寝ている奴なのだが…」

 

「あの子、どこの子よ⁉歳は⁉名前は⁉拾って来たって、まさか可愛いからって、どこかから攫って来たんじゃないでしょうね⁉」

 

「それは違うぞ詠。こいつらは帰る場所がなくて困っていたところを、恋が見つけて連れてきたんだぞ」

 

チョッパーがそう言う。

 

「はァ⁉何であんたがそんな事知って…」

 

「わふっ!」

 

「ああ…そっちのワンコから聞いたのね…」

 

「う~ん…」

 

「「「「!」」」」

 

少女が目を覚ました。

 

「……あれ…ここは…?……!張々(ちょうちょう)⁉張々はどこなのです⁉」

 

少女は上体を起こし、困惑した様子で辺りを見渡す。

 

「わん!」

 

「ああ…!張々、よかったのです…!」

 

犬が近づいて顔を見せると、少女は安心したように犬の頭をなでる。

 

張々というのは犬の名前のようだ。

 

「気が付いたか?」

 

チョッパーが少女の顔をのぞきながら訊ねる。

 

「へ?……うわあああ⁉狸が喋ったのです⁉」

 

「トナカイ!鹿の仲間だおれは!」

 

「えーっと…ちょっといい?」

 

「…⁉」

 

今度は詠が話しかける。

 

「あんた名前は?」

 

「ね、ねねは“陳宮(ちんきゅう)”、字は“公台(こうだい)”なのです。こっちの犬は“張々”というのです。

ここはどこなのです?」

 

「ここはこちらにいる武威郡太守、董卓様のお城よ」

 

「太守様の…?どうしてねね達はここにいるのです?」

 

「ここにいる呂布が、あんた達を拾って来たのよ」

 

「ねね達を拾った…?」

 

ぐ~…

 

「あ」

 

陳宮のお腹から大きな音がした。

 

「とりあえず何か食べ物持ってくるね」

 

「いいよ月。それならボクがやるから…」

 

「い、いらないのです!」

 

「「「「「⁉」」」」」

 

陳宮が叫ぶ。

 

「ね、ねねは物乞いじゃないのです!だ、だからいらないのです!」

 

「「「「「…………」」」」」

 

陳宮があまりにも必死に否定するので、チョッパー達は少し困惑した。

 

「……はァ、わかったわよ」

 

「?」

 

「食べた分はちゃんと働かせてあげるから、とにかくまずは食べなさい」

 

そう言うと詠は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

しばらくして、詠が器に入れたスープと肉を一切れ持ってきた。

 

「……あの…本当に食べていいのですか?」

 

器を受け取った陳宮は、おそるおそる訊ねる。

 

「「「「「…………」」」」」

 

一同はいまだに食べようとしない陳宮を、しばらく困ったように見ていたが…

 

「恋はお腹が空くと、ご飯が食べたくなる」

 

やがて恋が口を開いた。

 

「ご飯を食べると幸せになる。一人だけで幸せになるより、みんなで幸せになった方が良い。だから、お腹が空いているなら食べると良い」

 

「…っ!ありがとう…なのです…!」

 

そうして陳宮はスープを飲み始めた。

張々も肉を食べ始める。

 

「…美味しいです…!」

 

腹と舌、そしてさらに別の()()が満たされていくのを感じ、陳宮は涙を流す。

 

(おれが()()()()()()()()と同じ味がするんだろうな…)

 

その様子を見て、チョッパーはそんなことを思うのだった。

 

 

 

 

 

 

「…ご馳走様なのです」

 

「それで、陳宮さん」

 

陳宮が満腹し落ち着いたのを確認して、月が訊ねた。

 

「陳宮さんはどうして、この子と一緒に倒れていたんですか?」

 

「話せば、長くなるのですが…

 

 

 

 

 

みなしごだったねねは、子犬の頃から買っていた張々の引く荷車に、絞った家畜の乳を乗せ、街まで運ぶ仕事をして暮らしていたのです。

 

でもある大雨の日の夜、宿代わりに寝泊まりさせてもらっていた水車小屋から火が出て、火事になったのです。

本当は、水車をちゃんと整備していなかったから、歯車の摩擦で火が出たのですが、ねねの火の不始末が原因と決めつけられて、村を追い出されてしまったのです。

 

その後ねねは、張々と村から村へ旅を続け、掃除や荷物運びなどで日銭を稼ぎながら生活していたのです。

でも、治安が悪くなって、税の取り立てが厳しくなって、みんな生活が苦しくなってきて、だんだんねねは仕事をさせて貰えなくなってきて…。

 

『お願いです!何でもいいから仕事をさせて下さいなのです!一生懸命働きますから!もう十日も何も食べていないのです!』

 

『うるせェ!』

 

『うあっ⁉』

 

『ここんとこただでさえ仕事がねェのに、オメェみてェな他所からの流れ者にやる仕事なんかねェよ!

物乞いならテメェの村でやりゃいいだろ!』

 

そんな風に言われて、日銭稼ぎもできずに彷徨って、廃墟に寝泊まりして生活を続けていたのです。

 

『っ!…も、物乞いじゃ…ないのです…。ねねはただ…ご飯を食べるために…働きたいだけなのです…』

 

 

 

 

 

…で、今日の夕方、少しは雨風を凌げそうな大木の下で寝て、気が付いたらここにいたのです」

 

「それであんたさっき、『物乞いじゃない』ってあんなに言い張っていたのね…」

 

「陳宮ちゃん…大変だったんだね…」

 

話を聞き月は静かに涙を流す。

 

「う゛ゥ~…づら゛がっだな゛~お゛ま゛え゛ら゛~…」

 

チョッパーに至っては号泣している。

 

「…とりあえず、食べた分は働いてもらうから、今日は身体を洗ってもう休みなさい。良いわね?」

 

「まァ、部屋の掃除ぐらいはやらせて貰えるだろう。ゆっくり休め」

 

「それじゃあ陳宮ちゃん、明日からよろしくね」

 

そう言って詠、華雄、月は部屋を出て行った。

 

「…で、お前どうする?ここでこのまま寝るか?それとも…」

 

「え、えっと…」

 

「恋が連れて行く」

 

「え?」

 

「恋が拾って来た。だから恋が面倒みる」

 

「そうか、わかった。そういうワケだから、今日は恋の部屋で寝てくれ」

 

「わ、わかったのです…」

 

「こっち」

 

未だに困惑気味の陳宮と張々を連れ、恋は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋を出た恋が陳宮達を連れて向かったのは浴室だった。

 

「ばっちいままだと詠が怒る。だから綺麗にする」

 

そういって陳宮の体を洗う恋。

 

「ひゃああ⁉く、くすぐったいのです!じ、自分でできるのです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入浴後、陳宮は恋の寝台を貸してもらい、横になっていた。

張々は寝台の横で丸くなって寝ている。

 

(お布団で寝るの久しぶりだから、却って寝付けないのです…)

 

「ちんきゅ」

 

「ひゃああっ⁉」

 

恋が顔をのぞき込んできた。

 

「び、びっくりしたのです…」

 

「…眠れない?」

 

「は、はい…」

 

「…それじゃあ…」

 

恋が寝台に入って来た。

 

「え?」

 

そして一緒に横になり、陳宮を抱きしめる。

 

「拾ってきた子たちの中に、すぐには(うち)に慣れなくて眠れない子達がいた。そういう時、恋はいつもこうしている」

 

(……いい匂い…それにあったかい…。どうしてかわからないけど…すごく懐かしい気がするのです…)

 

「恋が拾ってきた子達は、みんな恋の家族。だからちんきゅもそう」

 

「…!」

 

「だから、安心して眠ると良い」

 

「うう…!」

 

その時、陳宮は決意した。

 

(この人に付いて行くのです…!ずっと一緒にいるのです…!少しでもこの人の役に立てるようになるのです…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝―――

 

「お願いなのです!ねねをここで働かせてほしいのです!」

 

陳宮は月達に頭を下げて、懇願していた。

 

「ここで働きたいのです!呂布殿の…皆様のために働きたいのです!」

 

「う~ん…働きたいっていっても…」

 

「……詠ちゃん…」

 

「ええっ⁉ちょっ…月⁉」

 

「お願い…」

 

上目遣いで頼む月。

 

「ううっ…!」

 

「詠」

 

「?」

 

「ちんきゅは恋が拾って来た。恋が面倒みる。だからお願い…」

 

「れ、恋まで…」

 

「お願い…」

 

恋も上目遣いになって懇願する。

 

「う~ん……まァ、雑用係としてなら…」

 

「ありがとうなのです!」

 

「良かったな陳宮!」

 

「さすが詠だな。そう言うと思ったぞ」

 

「ありがとう詠ちゃん!大好き!」

 

「ありがとう詠」

 

詠に抱き着く月と恋。

 

「ちょ…⁉いちいち抱き着かないでよ!特に恋!力つよ…いだだだだ⁉」

 

恋が腕を回した部分からメキメキと嫌な音が響きだし、悲鳴を上げる詠。

その様子を見て、二人は詠から離れる。

 

「それでは陳宮さん、これからよろしくお願いしますね」

 

「はい!では、改めて自己紹介を!我が名は“陳宮公台”!真名は“音々音(ねねね)”!これからお世話になるのです!

親しい者達からは“ねね”と呼ばれていたので、そうお呼び下さい!」

 

「私は“董卓仲穎”、真名は“月”です」

 

「ボクは“賈駆文和”、真名は“詠”。言っとくけど同僚として働いてもらう以上、容赦はしないからね!」

 

「私は“華雄”、真名は“雪羅”だ。これからは、共に主のために頑張ろうぞ!」

 

「恋は“呂布”、字は“奉先”、真名は“恋”」

 

「おれは“トニートニー・チョッパー”だ。これからよろしくな」

 

こうして、“陳宮公台”こと“音々音”―――通称“ねね”が董卓陣営に加わったのであった。

 

 




今後の展開的に、ねねの話を先にどこかに入れておかないと違和感があったため、今回投稿しました。

あと、華雄さんの真名はオリジナルで考えました。

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