ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第66話 “華蝶参上”

夜―――

 

「は~…お風呂なんて久しぶり~…」

 

劉備は、屋敷の風呂に入っていた。

 

「え~っと…黒髪が綺麗なのが“関羽”さんで、その義妹の鈴り…じゃなくて“張飛”ちゃん。

良い子な方の小さい子が“孔明”ちゃんで、言葉にしがたい雰囲気の“趙雲”さん。

眉毛が太いのが馬超さんで、一番年う…」

 

ゾクッ

 

「―――じゃなくておっぱいが大きい“黄忠”さんと、その娘の“璃々”ちゃん!」

 

湯に浸かっているに筈なのに何故か寒気を感じ、劉備は慌てて訂正した。

 

「鼻が長いのが“ウソップ”さんで、肩に刺青をしているのが“ナミ”さん。

刀を三本持っているのが“ゾロ”さんで、藁で編んだ帽子を被っているのが“ルフィ”さん。

みんないい人達ばっかりだったな~…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝―――

 

「それじゃあ皆さん、本当にお世話になりました」

 

ルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、愛紗、鈴々、星、朱里は、出発する劉備を村の入口まで見送りに来ていた。

 

「また賊に襲われないように気をつけてな」

 

「はい。でも、私だってそう何度も襲われるほど間抜けじゃないですよ」

 

「あ…いえ、そういう意味では…」

 

「元気でな~!」

 

「皆さんも~!」

 

そして、劉備は去って行った。

 

「……行ったようだな」

 

「じゃ、私達は戻りましょうか」

 

「そうだな」

 

「んで、おれ達もおれ達の旅の予定を考えるか」

 

「うむ、そうし…」

 

「きゃーっ!」

 

「「「「「「「「⁉」」」」」」」」

 

一同の耳に劉備の悲鳴が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劉備は、昨日の賊に再び捕まってしまっていた。

 

「おとなしくしやがれ!」

 

そう言って賊は劉備の服を破く。

 

「きゃあ⁉」

 

「昨日はしくじったが、今日こそは…」

 

「そこまでだ!」

 

「「「「⁉」」」」

 

そこへルフィ達6()()が駆けつける。

 

「また、テメェらかよ⁉」

 

「それはこっちの台詞だ!性懲りもなく悪行を繰り返しおって!今度こそ、この青龍偃月刀の錆にしてくれる!」

 

そう言って愛紗は偃月刀を振り回し、ルフィ達も身構える。

 

しかし…

 

「へっ!だが、昨日のようにはいかねェんじゃねェか⁉」

 

そう言うと賊は劉備に剣を突きつける。

 

「ひっ!」

 

「おのれ!卑怯な!」

 

「どうだ⁉人質がいればどうすることもできねェだろ⁉」

 

「すげェぜアニキ!本物の悪党だ!」

 

「さ~て、テメェらにも昨日の借りを返させてもらおうかね⁉」

 

「手ェ出すんじゃねェぞ?手ェ出したらコイツがどうなるか…」

 

「“ゴムゴムの”…」

 

「「「「「「「「「?」」」」」」」」」

 

「…“スタンプ”!」

 

「ふげっ⁉」

 

躊躇いなく賊の顔面を蹴り飛ばすルフィ。

 

「ルフィ⁉」

 

「アニキー⁉」

 

「て、テメェ!今、手ェ出すなって言ったばかりだろうが⁉」

 

「足」

 

「「「「「いやいやいや…」」」」」

 

(成程…!)

 

劉備だけが納得していた。

 

「とにかく!これ以上何かしようとしたら…」

 

「そこまでだ!」

 

「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」

 

突然上から何者かの声が聞こえ、見上げると近くの木の上に人影が…

 

「なーあれって…」

 

「またやってるのか…」

 

「久しぶりに見たのだ…」

 

「どうしてわざわざ…」

 

その人物に見覚えがあるルフィ達は呆れ気味になる。

 

「何だテメェは⁉」

 

「ある時はメンマを好む旅の武芸者…またある時は月明りを背後に佇む謎の美女武芸者…。

しかしてその実態は―――乱世に舞い降りた一匹の蝶!美と正義の使者“華蝶仮面”推参!トウッ!」

 

名乗りを上げ、せ…華蝶仮面は飛び下りる。

 

「アレが…“華蝶仮面”…」

 

「ちゃんと見るのは初めてね…」

 

「悪党ども…観念するなら今の内だぞ…」

 

「へっ!何言ってやがる!こっちには人質がいるんだぜ!」

 

余裕を見せる賊に対し…

 

「……やむをえん…この技だけは使いたくなかったが…秘儀“影分身”!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

すると、華蝶仮面は賊の周囲を高速で走り回り、残像を作る!

 

「すげー!」

 

驚くルフィ。

 

「…すごいのか?アレは?」

 

「すごい速さではありますが…」

 

「あ、アニキ!仮面の奴が…どんどん増えて…!」

 

「び、ビビんじゃねェ!ただの目くらましだろう…!」

 

「―――っ!」

 

「「「⁉」」」

 

そして華蝶仮面はぴたりと動きを止め―――

 

「…………」

 

「な、何だ…?何をする気だ…?」

 

「…………」

 

「「「…………」」」

 

「…………目が回った…」

 

「「「だあァァァっ⁉」」」

 

思わずズッコケる賊。

 

「っ!隙あり!」

 

「「「ああっ⁉」」」

 

その隙をついて劉備を助け出す華蝶仮面。

 

「もう大丈夫だぞ」

 

「はい…あ、ありがとうございます…華蝶仮面様…♡」

 

頬を朱に染める劉備。

 

「ボケ倒して相手をズッコケさせ、その隙をつく…!人間の心理を巧みに利用した、見事な策と言えましょう…!」

 

真顔で言う朱里。

 

「朱里…それは本気で行っているのか?」

 

「……いえ、冗談です」

 

またも真顔で言う朱里。

 

「そ、そうか…」

 

「安心したわ…冗談で…」

 

「て、テメェ卑怯だぞコラァ!」

 

「美と正義の使者に向かって卑怯とは失礼千万!この華蝶仮面への侮辱、地獄で償ってもらうぞ!者ども!やってしまえ!」

 

「……てめェはやんねェのかよ…」

 

「何で鈴々達があいつの手下みたいになっているのだ…」

 

「気持ちはわかりますが、今は賊を成敗しましょう…」

 

「それもそうね…。さあ!ルフィ!ゾロ!愛紗!鈴々ちゃん!やってしまいなさい!」

 

「…そういえば、ナミさんもそういう人でしたね…」

 

「もういい…ささっと終わらせるぞ…」

 

「ああ、わかった」

 

そして…

 

「「「ぎゃーっ⁉」」」

 

昨日同様、賊は空の彼方へと消えていったのだった。

 

「終わったな…」

 

一同が一息ついたとき…

 

「賊はどこだ⁉賊は⁉」

 

…と、わざとらしく振る舞いながら星が出てきた。

 

「賊なら、もうルフィさん達が退治してくれました」

 

「くそっ!出遅れたか!」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

その様子を見て、ルフィ達は顔を寄せ合う。

 

「どうするのだ?」

 

「何が?」

 

「メンマ仮面の正体の事よ」

 

「とりあえず、話合わせてやった方が良いんじゃねェか?」

 

「だな、あとでへそを曲げられても面倒だ」

 

「そうですね。星さんただでさえ面倒くさいところがあるのに、これ以上は…」

 

「そういえば、劉備殿」

 

「何ですか?」

 

「お主、賊に人質にされていたのであろう?どうやって助かったのだ?」

 

「はい!華蝶仮面と名乗る、とってもカッコイイ方が現れて、私を賊の手から救い出してくれたんです!」

 

「「「「「…………カッコイイ?」」」」」

 

ルフィ以外の5人が疑問の声をあげる。

 

「ほほう…そんなことがあったのか…♪」

 

露骨に嬉しそうにする星。

 

「ああ…もう一回、ちゃんとお礼を言っておきたかったのに…いつの間にかいなくなっていて…」

 

「カッコイイうえに礼も言われぬうちに姿を消すとは、きっと謙虚で慎ましい人柄なのであろう♪」

 

「……よく言うのだ…」

 

「…っていうか劉備さん、本当に正体に気付いていないの?」

 

「凛々しくも美しいあのお姿…きっと仮面の下の素顔も、さぞかし素敵なのでしょうね…♡」

 

「……気付いてないみたいですね…」

 

「ルフィや鈴々と同じ系統の人間か…」

 

「どこの世界にも似たような奴っていんだな…」

 

「まー嬉しそうだし、良いじゃねェか!」

 

「そうかそうか!その華蝶仮面とやらは、そんなに凛々しく美しかったのか!」

 

「はい!」

 

「なァルフィ殿、愛紗、皆も、やはり今の世の中は物騒だ。劉備殿だけではまた賊に襲われる可能性がある。

我々も新たに旅に出ようと考えていたところだし、公孫瓚殿の所まで送ってやってはどうだろう?」

 

「星さん、劉備さんの事がすっかり気に入ってしまったようですね」

 

「そうみたいね」

 

「でもまァ確かに、丁度いいかもしれねェな」

 

「そうだな」

 

「よっし!じゃあ決まりだな!」

 

「鈴々達も一緒に出発なのだー!」

 

「どうであろうか、劉備殿?」

 

「……それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」

 

「それではまず…」

 

…と、愛紗は劉備の方を見て…

 

「劉備殿の服装をなんとかせねばな」

 

「へ?…………きゃあァっ⁉」

 

…と、そこで劉備はようやく、自分の上半身が裸同然だったことを思い出すのだった。

 

ちなみに…

 

(くそっ…完全に出るタイミングを見失った…!)

 

近くの茂みで、仮面をつけた鼻の長い男が体育座りをしていたそうな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一行はウソップも加えて村に引き返し、劉備の服を調達することにした。

 

「うん、寸法は丁度いいな」

 

「昨日町で買った、愛紗さんの替えの服があって良かったですね」

 

「あ、あの…本当にいいんですか?服までいただいて…」

 

「なァに、これからしばらくはともに旅をする仲だ、つまらん遠慮は無しだ」

 

「で、でも…」

 

「くれるって言うんだから、ありがたく貰っておきなさいよ。似合ってるんだし」

 

「そ、それじゃあ」

 

「おーい、終わったかー?」

 

「ええ、いいわよ」

 

別の部屋にいたルフィ達が入って来た。

 

「よし!じゃあ行くか!」

 

「留守番ばっかで退屈だったからな…!さっさと行こうぜ!」

 

うずうずしている様子のルフィとゾロ。

 

「おいナミ、あの二人が行くとなると…」

 

「少なくとも、私達のどっちかは一緒に行った方が良いわね…」

 

「やっぱそうなるよな…」

 

「そーね…私が行くから、あんたは留守番してて」

 

「え⁉意外だな!お前が進んで面倒ごとを引き受けるなんて…!」

 

「何よ⁉それじゃあまるで私が、面倒ごとを他人に押し付けちゃダメみたいじゃないの!」

 

「押し付けてる自覚はあんのか…」

 

「そりゃ私は可愛いし、スタイルもいいんだから押し付けて当然でしょ⁉」

 

「いやいやいや、何言ってんだお前…」

 

「けど、璃々ちゃんがあんなにあんたに懐いているのに、離れ離れにしたら可哀想でしょ⁉璃々ちゃんを連れて行くワケにもいかないし…」

 

「ああ、そういうことか」

 

「それでは一緒に行くのは私と愛紗とルフィ殿、それにゾロ殿とナミ殿と…」

 

「愛紗とルフィが行くなら、鈴々も一緒に行くのだ!兄妹だからいつでも一緒なのだ!」

 

「そうだな。朱里はどうする?」

 

「私もお供します。そろそろまた旅に出て、見聞を広めたいと思っていたので」

 

「成程…旅をして、世に埋もれている未知の体位を見て回る、というワケか!」

 

「はい!広い世の中には、私には想像もつかないような格好でぐんずほぐれつ…ってそれだけのために行くんじゃありません!」

 

(そのために行くことは否定しないのか…)

 

「何の話だ?」

 

「“タイイ”って何なのだ?」

 

「お二人は知らなくていいです~!」

 

その手のことを全く知らないルフィと鈴々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、村の入口にて―――

 

「それでは、留守を頼みます」

 

「あたしとウソップと紫苑は留守番か~…」

 

ウソップ、翠、紫苑、璃々に見送られ、ルフィ達は出発する。

 

「村の事は三人に任せたのだ!」

 

「わかった…」

 

「サンジ達が来たら頼むぞ!」

 

「おう!」

 

「みんな~いってらっしゃ~い!おみやげかってきてね~!」

 

「こ、こら璃々…!」

 

「ええ、任せておいて」

 

笑顔で応えるナミ。

 

「やった~!」

 

「あ、間違えた。こいつらに任せておいて」

 

「「お前買わねーんかい!」」

 

ゾロとウソップがツッコむ。

 

「みんな!にゃはは♪」

 

ウソップ達に笑顔を向ける鈴々。

 

「へへっ!」

 

「ああ!」

 

「うふふ…」

 

「えへへ♪」

 

そして4人も笑顔を向ける。

 

「?何だ?新手のにらめっこか?」

 

その様子を見て星が訊ねる。

 

「違うのだ。人は次に会う時まで、別れ際の顔を覚えているから、鈴々はみんなにとびっきりの良い顔を見せて、それを覚えてもらっているのだ」

 

「…で、あたし達もとびっきりの良い顔を見せて、鈴々に覚えてもらっているってワケ」

 

「成程…それでは私もとびっきりの顔を…」

 

そう言うと星は息を吸い込み、表情を作る。

 

「「「………ヒイィッ⁉」」」

 

その瞬間、3人の顔が青ざめる。

紫苑はとっさに手で璃々の目を覆う。

 

「?お母さ~んみえない…」

 

「どうだ?私のとびっきりの顔、覚えてくれたか?」

 

「あ、ああ…今のは忘れようにも忘れられねェぜ…」

 

「…っていうか今夜、夢に出て来そう…」

 

……一体どんな顔をしていたのか?

 

「よーし!出発だー!」

 

「「「「「「おー(なのだー)!」」」」」」

 

こうして、ルフィ、ゾロ、ナミ、愛紗、鈴々、星、朱里、そして劉備の旅が始まったのだった。

 

 




~没案~

「そこまでだ!」

「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」

突然上から何者かの声が聞こえ、見上げると近くの木の上に人影が…

「何だテメェは⁉」

「私の名は“そげキング”!狙撃の島で生まれたヒーローだ!」

「あのう…あれは…」

「お前らが考えてる通りだ…」

「天の国にも似たようなことを考える人がいるんですね…」

「まあね…」

「新しい変態仮面なのだ!」

「えー⁉そげキング⁉何でお前がここに⁉」

「狙撃の島は君たちの心の中にある…だから私は、君たちがいる場所には必ずいるのさ…」

「何を言っているんでしょう…?」

「…っていうかルフィも鈴々も、なぜあの鼻で気付かないのだ?」

「全くね…」

(しまった!先を越された…!)



他にも華蝶と二人で登場する展開とかも考えたんですけど、ルフィと鈴々にそげキングの正体を説明するシーンを入れても入れなくても違和感が出てしまうので、没にしました。


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